久保亘の発言 (本会議)
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○久保亘君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました平成四年度総予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。
宮澤内閣発足から五カ月余りが経過いたしました。発足当初の宮澤内閣へのある種の待望論や本格政権論は今や完全に消え去り、日本列島は宮澤内閣への大きな失望感に包まれております。発足当時の五〇%を超えた支持率は、最近のマスコミの調査によれば、宮澤総理の実行力と調整能力の欠如を理由にわずか二二%へと急落し、不支持は七〇%近くに達し、まさに政権の末期的状況に近づいていると言えます。
政治改革に執念を燃やしながら何もできないまま退陣した海部内閣を引き継いだ宮澤内閣は、決断と実行を掲げ、政治改革の断行を国民に公約いたしました。しかし、リクルート事件の全容解明も終わらぬうちに、共和事件、佐川急便事件と次々に疑惑が発覚し、多数の政治家の関与が報道されながら、リクルート事件では総理みずからの疑惑すら解明にはほど遠い状態であります。
また、共和事件では、宮澤派元事務総長阿部文男君が収賄容疑で逮捕されたのに続き、塩崎元総務庁長官、鈴木元総理の事件への関与が衆議院予算委員会での証人喚問及び参考人招致によっていよいよ明白となり、宮澤派ぐるみの構造汚職の疑惑がますます深まったと言わなければなりません。さらに、佐川急便事件の疑惑究明はほとんど手つかずの状態で、これら疑惑の解明には当参議院においても阿部文男代議士を初め事件解明のかぎを握る証人の喚問が不可欠でありますが、政府・自民党は、我々の民主主義のルールにのっとった喚問要求を全会一致を盾に拒否し続け、動議の採決引き延ばしを図り、ついには採決を拒否するに至ったことは疑惑解明にふたをするに等しく、これでは失われた政治に対する信頼を取り戻すことは到底不可能と言わなければなりません。
また、一方、経済・景気動向を見ると、昭和六十二年の超低金利とだぶつく財政支出によって地価及び株価の異常な暴騰を招き、史上最悪のバブル経済のもとで国民の間に耐えがたい格差をつくり出したのは当時の宮澤大蔵大臣であり、今またバブル経済の崩壊過程でも、宮澤内閣のもとで景気の読み違いから政策対応が後手後手に回り、ついに昨年十-十二月期は消費税導入時のごたごた以来というマイナス成長を余儀なくされ、なお景気は悪化の一途をたどっております。これによって平成三年度の三・七%の実質成長が完全に不可能となったばかりか、それを土台にして立てられた四年度の見通し三・五%の成長もまた不可能になったと言わざるを得ず、バブルがもとで広がった資産格差の是正に手がつけられないうちに、今度は景気鈍化の波をかぶらされる中小企業初め一般国民こそは政府の失政のしわ寄せを受ける最大の犠牲者と言わなければならないのであります。
決断と実行力を欠いた指導力ゼロの宮澤内閣のもとでは、抜本的政治改革は不可能であるばかりか、東西冷戦構造が終えんし新しい世界秩序の構築に向けてますます厳しさを増す国際情勢の中で真の世界平和と人類の繁栄のために日本がリーダーシップを発揮することは全く期待できないことを申し上げるとともに、このことを強く警告し、以下、順次反対の理由を申し述べます。
反対理由の第一は、宮澤内閣の公約違反と勤労大衆重課の税政策についてであります。
所得、消費、資産の間に均衡のとれた税制改革をうたい文句にして、政府は、昭和六十三年、消費税を強行導入いたしました。しかし、四年度の税の直間比率は直接税が実に七四%を超え、過去最高だった元年度とほぼ同水準に達しております。景気後退とともに法人税収が急激に落ち込んでいる中で直接税の比率が上昇していることは、所得税がいかに重課となっているかを示しており、パート減税が最優先で必要となっていることを物語っているのであります。
また、一月から施行された地価税についても、政府はみずから増収を目的としないと言明する一方、財政審からも所得税減税をあわせて行うべきとの答申を受けておきながら、これを無視してわずかに土地関連支出をふやすことでお茶を濁し、そのほとんどを一般財源として使ってしまったことは、国民に対する重大な背信行為と言わなければなりません。
さらに、六十三年の所得税減税以来消費者物価が九%近くも上昇しているにもかかわらず、この間全く所得税減税が行われなかったため、物価上昇分が確実に実質増税となっております。しかし、政府は、所得の伸びを理由にこの間の実質増税を否定しこれを認めようとしないことは、生活大国を掲げる宮澤内閣がいかに国民生活を軽視しているかを示すもので、到底認めることはできません。
反対理由の第二は、東西冷戦構造が終えんし新しい平和と秩序が模索されているにもかかわらず、相変わらず軍備拡張が行われていることであります。
ベルリンの壁崩壊に続き旧ソ連邦の消滅によって、今や世界は全く新しい時代に入ったのであります。軍事力による対立と均衡の時代から、相互の理解と協力による共生の時代に移ってきたと言えるのであります。
早くも世界の主要各国は軍事予算の実質的な削減に向けて動き出し、米国は九三年度五・三%減、ドイツは九二年度三・九%減と、まさに目に見える軍事費削減を行っているのであります。
しかし、四年度の防衛関係予算は、その伸び率を初めて一般歳出以下に抑制したとはいえ、依然三・八%増、千六百五十八億円余も拡大しているのであります。特に、PKOによるカンボジアヘの自衛隊の海外派兵を先取りしたと思われる地雷処理車両の新規計上は、憲法の理念を大切にする国民感情から見ても、自衛隊の運営の基本は国会の統制下にあることに照らしても絶対に認めることはできません。
政府が防衛費拡大のよりどころとしている中期防衛力整備計画について、政府は昨年末の野党党首との会談においてその見直しを認めましたが、さらに抜本的見直しか必須であると同時に、東西冷戦構造を前提に策定された防衛計画の大綱そのものも根本的に見直すことが不可欠であることは論をまたず、その即時見直しを強く要求するものであります。
反対理由の第三は、生活大国を政権のキーワードにするならそれが予算案にもあらわれて当然なのに、全然見えてこないことであります。
宮澤総理は施政方針演説で、高齢化社会を目前にした我が国が今後一層取り組むべき目標は生活大国化であることを明言し、その実現には、不足している社会資本の整備充実を初め、老人や身障者、女性の社会参加など六項目にわたる目標を掲げられました。
しかし、肝心の社会資本の整備充実では、公共事業の項目別、省庁別の配分比率は経済大国を築き上げてきた時代とほとんど変わらない産業優先の構造をそのまま踏襲しているのであります。三年度から設けられた生活関連重点化枠も二千億円のまま据え置かれ、住宅、下水道施設、公園緑地建設などの生活関連社会資本の割合を目に見えて変えるにはほど遠く、到底生活重視の政策とは言えません。
また、高齢化社会を迎えた生活大国とは、老人が安心して生きがいを持って生活できる社会であり、そのための諸施策が不可欠であるにもかかわらず、ゴールドプランの中で高齢者の生きがいを推進させる予算がほとんど伸び率ゼロに抑制されているのは到底認めることはできないのであります。
反対理由の第四は、景気対策としての予算が極めて不十分であることです。
いざなぎ景気以来と言われた大型景気も昨年半ば以降急速に鈍化傾向を強め、特に年末以降は悪化の一途をたどっております。生産が減少する一方で在庫は積み上がり、景気動向指数は昨年十月以降五〇%を下回ったままであります。しかし、政府の景気判断は、つい本年の一月までは拡大を続けているとの判断を変えず、景気の現状認識を完全に間違えてきたのであります。その結果、年末の予算編成では一般会計公共事業費総額の伸びは四・五%増と昨年の五・一%を大きく下回る伸びしか確保されておらず、到底景気配慮型の予算とは言えません。
その一方で、地方単独事業費は三年度及び四年度と一〇%を上回る伸びを確保しており、景気対策も地方に押しつけており、政府の予算は明らかに景気への配慮を欠いており、到底認めることはできないのであります。
反対理由の第五は、三年度に続き八千五百億円の地方交付税の特例減額が行われていることであります。
政府は、みずからが招いた失政によって税収不足に陥った分を三年度に続き四年度も交付税の特例減額として処理しようとしておりますが、これこそ中央のツケを地方に押しつけるものと言わざるを得ません。五十年代後半以降毎年度繰り返されてきた交付税法附則第四条による地方への負担の押しつけは、四年度でついに三兆三千億を超え、年々累増の一途をたどっております。
政府は、根拠に乏しい地方富裕論を振りかざして特例減額や負担の繰り延べの論拠にいたしておりますが、全く論外であります。これでは地方の活性化も地方自治の確立も名ばかりで、中央政府には権限も金も地方に渡そうとする意思のないことを示しているに等しいと言わなくてはなりません。地方と国は車の両輪と言いながら、このような負担の押しつけを続けるならば両者の信頼関係喪失にもつながりかねず、到底容認できないのであります。
「本当に民のために、民をとうとしとなすという気持ちで」、「もう少し総理は勇気を出して先頭に立って実行なさることを要望したい」、これは予算委員会における与党自民党議員の総理への要望であったことを思い出していただきたいのであります。
「宮澤さんは自分が何で総理に選ばれたのか全く認識していない、どうして宮澤さんは政治家を選んだのかというのが第一の疑問、なぜ総理総裁を目指したのかというのがもう一つの疑問、一日も早く退陣なさった方がいいのではないかと思う」、これは、ある著名な女性政治評論家とニュースキャスターの対談の言葉です。支持率急落の原因とも言えるこの批判に、宮澤首相が真正面から答えられんことを期待します。
最後に、政府の顔である予算案の審議を終えるに当たり、政治において意図的うそは国民に対する裏切りであり、結果的うそは政権の無策を示すことを申し上げて、私の反対討論を終わります。(拍手)