三石久江の発言 (本会議)

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○三石久江君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました外国人登録法の一部を改正する法律案に対し、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 第二次世界大戦における敗戦から約半世紀、平和憲法のもとで、今や日本は世界第二の経済大国となっております。我が国の国際的役割は急速に拡大し、国際交流の活発化、経済社会の国際化の進展に伴い、日本に入国、滞在する外国人見近年大幅に増加しております。今後とも在留外国人はますます増加していくものと思われ、外国人の人権尊重は一層の重要性を増しております。
 このような状況に照らしてみますと、施行後四十年を迎えようとしている外国人登録法は、このような社会経済情勢の変化、国民意識の変化等に対応し、また外国人の人権尊重の立場に立って、緊急、抜本的に見直すべき時期に来ているのではないでしょうか。
 我が党は、このような認識のもとに、人権尊重を求める国際的潮流を考慮し、我が国が主体的な立場から在日外国人の人権状況を改善していくために、衆議院においては、とりあえず現実的に対処するため、政府原案の内容を改善、敷衍する対案を提出したのであります。最終的には、我が党を初め四党の共同提案により、我が党が対案で主張している内容は修正により一部実現される運びとなり、また、他の事項の多くも附帯決議に盛られましたので対案は撤回いたしましたが、なお本院において我が党本来の考え方の実現を図るように、衆議院送付案に対する疑問点の幾つかを順次お尋ねしていきたいと思います。
 最初に、外国人登録法の目的と意義について伺います。
 外国人登録法の目的につきましては、従前からの政府答弁では、外国人の身分関係及び居住関係を明確に把握することを目的とし、これらの関連事項を登録させる、すなわち、外国人の在留管理のほかに行政目的への利用のためであるとしております。そして、これは日本人と外国人との間の法的な地位の相違に起因するものであり、不正規在留者と区分けする必要があり、その見きわめの手段を確保する必要があるとしてまいりました。
 ここから、現行の写真の提出、指紋押捺の義務づけ、五年ごとの確認制度、外国人登録証明書携帯制度などが採用され、ひいては違反者等に刑事罰を科すという体系ができ上がっているのではないかと思うのであります。これは我が国の行政目的のために外国人を管理するという発想のみで、外国人に対する人権尊重、配慮への感覚が全く欠如している法律立言わざるを得ないのであります。
 外国人登録法は、敗戦後の混乱時期ならいざ知らず、また、指紋押捺制度が導入された一九五二年当時の混乱していた経済社会情勢と現在とがほとんど変わっていないのならともかく、今日我が国の置かれている経済社会情勢や国際的な立場に立って考えれば、その目的、意義については、もはや時代にふさわしいものに見直すべき時期に来ているのではないでしょうか。
 かつて我が党は、外国人登録法の目的を在留外国人に関する行政の円滑化のための法律に改正するよう提案したことがありますが、この点に関する所見を含めて、外国人登録法の目的、意義、今日のあり方について、まず総理の見解、認識を問いたいのです。
 次に、指紋押捺の廃止問題について伺います。
 本案では、永住者等の指紋押捺は、鮮明な写真、署名及び一定の家族事項の登録をもって同一人性の確認手段とすることにより廃止することとしております。一律に一年以上の在留者に対し指紋押捺を義務づけている現行法よりは多少の前進との評価ができるかもしれませんが、これは子細に検討するまでもなく極めて問題の多い改正であると指摘せざるを得ません。
 そこで、伺います。
 政府は、指紋制度の必要性については、不正登録等に対する抑止的効果を含め指紋押捺制度が正確な登録制度の維持に果たしている役割は大きいとし、短期の滞在者に比べて長期、中期の在留者の同一人性の確認ということの必要性はより大きいためであると従来から説明してまいりました。
 ところが、本案では、従来の答弁とは裏腹に、我が国の社会で長年にわたり生活し、本邦への定着性を深めた永住者及び特別永住者については指紋押捺を廃止することとしたいと趣旨説明でも述べております。これは従来の方針を百八十度転換するものなのでしょうか。
 また、必要性のより大きいとしていた長期、中期の在留者とを言える特別永住者の指紋押捺を廃止するのに、従来の説明によればより必要性の低いともとれる他の在留者の指紋押捺を存続させることは、整合性に欠けるのではありませんか。どうして一律廃止ができないのでしょうか。一部で報道されているように、警察庁が治安維持対策等を理由に反対したからなのでしょうか。この際、一律廃止としないことについての明確な説明をいただきたいと思います。
 さらには、廃止に伴い不要となる登録原票等は直ちに廃棄すべきであると思いますが、どのように処置する方針なのか、明確にしていただきたいと存じます。
 また、同一人性の確認手段として、鮮明な写真、署名及び一定の家族事項の登録が要件とされておりますが、写真、署名の詳細は規則事項とされております。趣旨説明で強調している鮮明な写真とは、どのような規格のものを想定しているのでしょうか。署名は、現行登録の氏名における扱いと同様に、原則として漢字またはアルファベットによることを想定しているのでしょうか。民族固有の文字による署名は認めるのでしょうか。これらについては、心理的負担軽減との関係でも十分な配慮が必要であると思いますが、どのような対応を考えているのでしょうか。家族事項の法定範囲についても、どのような考え方のもとに決められたのでしょうか。戸籍のない外国人に家族事項を登録させることの意義はどこにあるのでしょうか。
 また、その他の登録事項は今回どのように検討されたのでしょうか。依然として職業及び勤務所または事務所の名称及び所在地を残す理由はどこにあるのでしょうか。電算機の活用等によって現在では必要な情報は管理できるのですから、少なくとも登録証明書への記載は取りやめるべきではありませんか。
 さらに、登録証明書の携帯義務については、依然改善が図られていないのは大変残念です。日韓覚書は制度自体の法改正を表明しているものではないので、常時携帯について法改正を行わないとしても日韓覚書には反しないというのが政府答弁ですが、これこそ人権感覚の欠如した答弁以外の何物でもありません。日韓覚書で明記されているされていないの問題ではなく、当事者の立場に立って可能な改善を図っていく、それが政治というものではないでしょうか。我が党が対案で提示したように、政令で定める一定の方法で保管することによっても制度が機能するような仕組みを考えていくことこそ、今求められているのではないでしょうか。総理の政治決断を求めたいと思います。
 さて、一番重要なことは、さきの三点によって同一人性の確認を担保できる確率をどのように見ているのでしょうか。指紋は万人不同、終生不変ですから絶対的な担保であるとしてきた方針は転換し、より必要性の大きいとしていた長期、中期の在留者でさえ、この程度の確認手段による蓋然性で十分であるということなのでしょうか。指紋制度を導入してから他人の登録証明書を不正使用した例は一件もないというのが過去の国会答弁でありますが、今回、プラスチックカードにより、偽造、変造、不正使用も今後は極めて困難になることは容易に推定できます。この面からも、指紋押捺による同一人性確認の必要性は、もはや理屈面の精神論のみとなってしまったのではないでしょうか。
 ところで、一九九〇年の外国人登録は、永住者等が六十四万五千人余りで全体の六〇%、指紋押捺が除外されている一年未満の在留者は十万九千人余りで全体の一〇%、両者で全体の七〇%を占めております。逆に言えば、改正後も指紋押捺を義務づけられる在留者は三十二万人余りとなりますが、法務省推定でさえ昨年五月時点の不法就労外国人が十六万人弱としておりますが、そのうち外国人登録の対象にもならない観光等の短期滞在による入国者が十二万八千人余りとしております。
 このような現在の日本社会、入管行政の現状に照らしてみると、正規に登録している三〇%の一年以上の在留者に依然として指紋押捺を強制することの意義はどこにあるのでしょうか。今後新規に指紋押捺を義務づけられるようになる外国人についてはどのように推定しているのでしょうか。これについても明らかにしていただきたいと思います。
 次に、登録事務は機関委任事務として市町村でも行われることになります。現行では写真と指紋に関しては在留期間によりいわば二本立てで処理しているわけですが、改正案では署名が加わって三本立てになります。事務が煩雑になるばかりでなく、市町村レベルで実際の確認に十分な対応ができるのでしょうか。
 最後に、附帯決議の検討結果と不署名罪の新設について伺います。
 趣旨説明で衆参両院の附帯決議並びに日韓覚書に触れておりますが、昭和六十二年第百九国会における外国人登録法改正の際の本院法務委員会の附帯決議はどのように検討されたのでしょうか。刑事罰のあり方については外国人登録制度のあり方の基本的な問題だと思いますが、これらについてはどのように検討されたのでしょうか。
 また、今回、不署名罪を新設しようとする真意はどこにあるのでしょうか。現行の指紋押捺拒否等に対するものと並行的に考えたのかもしれませんが、従来からの国会論議での要請から見ても逆行するものではありませんか。
 今回、衆議院修正で居住地等の変更登録義務違反に係る罰則について自由刑を廃止し罰金刑のみとしたことは現行よりは一歩前進と言えますが、刑の新設は依然として外国人に心理的負担を強いることにはなりませんか。仮に何らかの強制措置を担保しようとするのであっても、せいぜい我が党が対案で提示したように刑罰ではなく過料で十分ではありませんか。指紋押捺の一部廃止に伴って、現行法第十八条以下の罰則こそこの際抜本的に見直すべきではありませんか。
 外国人登録制度は時代の要請にこたえるものでなければなりません。今後とも検討し、最終的には指紋押捺制度の全廃、外国人登録証明書の常時携帯義務及び罰則の見直し等、行政側の都合だけではなく在留外国人の人権にも十分配慮したものとして再構築していく必要があると思いますが、最後にこの点についての総理の所見を伺って、私の質疑を終わります。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 112315254X01119920420_005

発言者: 三石久江

speaker_id: 32336

日付: 1992-04-20

院: 参議院

会議名: 本会議