川崎寛治の発言 (本会議)

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○川崎寛治君 今、日本の民主主義が世界から問われております。
 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表して、自由民主党の政治改革関連法案に対して、意見を交えながら質問をいたします。
 質問に入ります前に、去る四月八日、カンボジアで殺害されました国連ボランティアの中田厚仁さんの御冥福をお祈りをし、御家族の御心中を察し、心から哀悼の意を表します。政府は、カンボジアにおける状況を正しく把握し、PKO協力法五原則を厳格に解釈して、今後対応するよう強く求めます。
 まず、戦後政治の負の遺産としての政治腐敗についてであります。
 アメリカの新聞ロサンゼルス・タイムズは、ことし三月、ともに政治スキャンダルに揺れる日本とイタリアを比較する興味深い記事を掲載いたしました。その中で、同紙は、どちらの国も腐敗の源は同じようなものであるが、両国の間には決定的な違いがあると論じております。それは、イタリアには自己浄化作用があるが、日本には自浄作用がなく、日本の見通しは暗いというのであります。
 日本とイタリアの政治には確かに大きな共通点があります。両国とも、戦後の冷戦構造の国内的投影としての左右の対立の中で、企業が「自由主義社会を守る」と称し、保守の各政党に極めて寛容な資金提供を行ってきました。
 しかし、冷戦の終結した今日、もはや腐敗に目をつぶる必要のなくなったイタリアでは、御承知のとおり、「清潔な手」作戦と呼ばれる、検察官たちの断固たる違反政治家の摘発が進んでおり、既に二千人近い人が捜査通告を受けております。これにより国内政治は大混乱に陥っていますが、それは、見事な自浄作用と見ることができます。
 これに対して、我が国はどうでありましょうか。金丸前自民党副総裁が逮捕されたのは、議員を辞職したからではなかったでしょうか。議員を辞職することなく、厳しい国民の批判を浴びながら、なおその地位にしがみついている政治家には、依然として検察は捜査の手を伸ばすことをちゅうちょしているではありませんか。
 私は、思い切った自浄作用を示しているイタリアに対して、自浄作用が不足している我が国の現状を憂慮するものであります。保守支配の戦後政治の負の遺産である政治腐敗を終わらせることを目的とする社会党及び公明党の政治改革案に比べて、逆にこれを隠ぺいし、これまでの責任についてはおかぶりしたまま、なお支配の永続を目指す自由民主党の政治改革案について、幾つかの疑問点をお尋ねしたいと思います。(拍手)
 改めて言うまでもなく、保守支配のもとでの我が国の戦後政治は、疑惑と腐敗の歴史でありました。
 昭和二十九年の造船疑獄では、後に総理となった佐藤栄作氏が、法務大臣の指揮権発動で逮捕を免れたのを初め、与党の政治家のかかわる汚職事件は、売春汚職、武州鉄道汚職、田中彰治事件、大阪タクシー汚職などと続いたのであります。昭和五十一年にはロッキード事件が発生をし、さらにダグラス・グラマン事件が続きます。また、昭和六十三年にはリクルート事件、その後、共和、佐川、そして今回の金丸事件と、腐敗が極めて大規模で、悪質化し、かつ発生のサイクルが極めて短くなりました。政治腐敗が構造化しているとさえ言えるのが、今日の自民党支配下の政治なのであります。
 自民党の腐敗政治の構造がどのようなものであるかは、金丸前自民党副総裁の事件が如実を示しております。
 金丸事件が明らかにしたことの第一は、後に自民党副総裁に就任したとはいえ、基本的に政府及び国会の何らかの公的地位にない一政治家が、政界の実力者として君臨することにより、庶民には想像もつかない巨額の金が流れ込んでいたという事実であります。ここには、公的な権限と責任を有しない者が、派閥の数の力を頼りに、いわはやみの支配力を握るという構造、そして、そのやみの支配力に対して、大企業を初め多くの企業が政治家、財界、官僚の癒着構造のもとで巨額の政治献金を、しかも裏金で提供する仕組みなど、いわば今日の保守政治の統治のからくりが露呈をされております。
 民主政治は、何よりも主権者たる国民の意思が政治を決める仕組みであるはずであります。このような民主主義の理念からすれば、金丸支配はまさに民主主義に対する挑戦であり、冒潰であったと言わなければなりません。
 金丸事件が明らかにしたことの第二は、巨額のやみ献金が金丸被告の私財に化けていたということであり、それが公共事業などのバックマージンである限り、国民の税金によって不正蓄財をなしていたということであります。
 金丸被告は、常々、政治は国家国民のためにある、政治家のためにあるのではないとい三言葉を口癖にしていたのであります。その金丸被告がこのような行為に及んでいたことは、政治に対する国民の信頼を徹底的に打ち砕くものであり、しかも国民の多くは、このような行為が金丸被告一人のものだとは信じておりません。これもまた、今日の政治腐敗の構造の一端であり、戦後の保守支配の負の遺産なのであります。
 塩川氏の提案理由説明にも、小渕氏の質問にも、自民党一党支配による腐敗政治の原型を示した金丸事件に一言も触れておりません。
 このような構造化された腐敗政治を見れば、まずしなければならないことは明らかであります。それは、引き続き存在する疑惑を徹底的に解明すること、同時に、責任の所在を明らかにし、けじめをつけることではありませんか。(拍手)
 衆議院及び参議院における東京佐川事件、皇民党事件、そしていわゆる金屏風事件に対する自民党の消極的な姿勢は、決して許されません。このような姿勢で政治改革を提唱することは、国民の目から政治腐敗の現実を覆い隠し、責任を負うべき者を免罪し、そして腐敗を今後に生き延びさせることにほかならないのであります。(拍手)
 私は、ロッキード、ダグラス・グラマン、リクルート事件等の腐敗政治を追及してまいりましたが、残念ながら、今日なお腐敗防止の制度をつくり得ないております。
 アメリカの議会は、強力な調査能力を持ち、事実の解明を行って、国民の知る権利にこたえております。ウォーターゲート事件は、一九七二年の大統領選挙において、ニクソン大統領の選挙スタッフが民主党本部に盗聴器を取りつけ、逮捕された事件でした。上院本会議は、共和党を含め、全会一致で調査のための特別委員会設置の決議をいたしました。共和党政権の基盤を揺るがしかねないものであったにもかかわらず、賛成したのであります。
 アメリカにおける企業献金の禁止は、今世紀初め、一九〇七年のティルマン法で定められております。ウォーターゲート改革では、個人献金の限度額を定めるとともに、連邦選挙委員会という第三者監視委員会をつくったのであります。アメリカの議会人の民主主義を守るための態度を自由民主党の諸君はどのように受けとめられますか、伺いたいのであります。(拍手)
 上院の予備金から五十万ドル出し、九十人のスタッフを抱えて調査の体制を整備し、偽証罪適用の強い権限を持って調査を行い、千二百五十ページに及ぶ報告書を刊行し、国民の知る権利にこたえておるのであります。
 小渕氏の言うとおり、国会こそ国権の最高機関であります。我が国の国会も、今こそ腐敗防止の制度を確立し、アメリカ並みの調査能力を持つことこそ、国民にこたえる国会改革ではありませんか。佐川急便等調査特別委員会の設置に、宮澤総理も提案者も御異論はないと思いますが、いかがでありますか、はっきりとお答えいただきたいのであります。(拍手)
 宮澤総理、あなたはたびたび国務大臣の要職につかれましたが、竹下内閣では、リクルート事件で副総理並びに大蔵大臣を辞任されました。そして一昨年の秋、金丸信氏の一声で自民党総裁になり、総理大臣になられたのであります。戦後政治の腐敗構造にまず責任を負うべき自由民主党総裁として、一体これまでの責任をどのようにとられるのか、そしてどのようにけじめをおつけになられるのか、明らかにしていただきたいのであります。(拍手)次に、政治改革そのものに対する基本的な考えについてお尋ねします。
 これまでに述べました我が国の政治の問題点を前提とすれば、今、我々が政治改革においてやり遂げなければならないことは明らかであります。何をおいても、我々は、戦後保守政治の腐敗構造から決別しなければなりません。自由な民主主義を健全に発展させるためには企業献金が必要だと三好経団連事務総長は言っておりますが、何をもって自由な民主主義と言うのでありましょうか。やみ献金がわいろの性格を持っていることは言うまでもありません。
 自由民主党への政治献金は、表の国民協会、裏のやみ献金から成っております。平成三年度の国民協会からの政治献金は百七十四億六千万円であります。大手ゼネコンのやみ献金については、金丸事件で明らかになったとおりであります。国税庁の調査では、使途不明金は五百数十社で五百五十八億円ありました。企業献金を廃止せよというのが国民の世論であります。(拍手)
 そのために、社会党、公明党両党案では、政治改革の最も重要な柱の一つとして、政治資金規正法の改正により、政治腐敗の温床である企業、団体の献金を禁止することを打ち出しております。
 これに対して自民党案では、逆にその温存を図っているのであります。自民党案においても、一定の経過措置を講じた後、政治家は二つの資金調達団体を通じて、一企業からそれぞれ年間二十四万円、合計四十八万円しか受け取れないこととなっております。しかし、政党への献金は野放しで、しかも、その献金枠は従来の二倍に増大されているのであります。これは、企業献金の禁止を求める国民世論への挑戦ではありませんか。(拍手)
 自民党案は、もはや政党間のイデオロギー対立が意味を持たなくなった冷戦終結後の今日においても、なお「自由主義経済を守るため」と称して、企業から潤沢な資金の提供を受けたかつてのやり方を、そのまま踏襲するどころか、むしろ拡大さえしようとしているのであります。これは、今回の政治改革の意義を全くわきまえない、これまでの腐敗政治の巧妙な生き残りのための戦略にすぎません。自民党の皆さんは、国民の求める企業献金を禁止せよという世論に挑戦し続けるつもりなのかどうか、明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 次に、今日のような政治腐敗を許してきたいま一つの大きな要因は、戦後の一時期を除いて、政権交代がなかったということであります。この点については、政権獲得を至上命題として最大限の努力を払わなかった野党にも大きな責任があります。そこで、社会党、公明党両党統一案においては、民意を正確に反映させることにより、確実に政権交代が生ずるように、選挙制度については、小選挙区併用型比例代表制の導入を提案しているところであります。これに対して、自民党は、完全小選挙区制を提案しております。
 過日発表されたこれまでの選挙結果をもとにした新聞社のシミュレーションによれば、自民党案では、自民党は、総定数五百のうち、実に九九・四%、四百九十七議席を獲得することが可能となるのであります。これは、これまで述べた戦後政治の腐敗構造に対する自民党の責任を隠ぺいし、逆にその政権独占を永続化させるための謀略としか言いようがなく、我々は絶対に認めることができないのであります。(拍手)
 自民党政権は完全に行き詰まっております。マスコミの世論調査によれば、国民の七〇%以上が、自民党政権は終えんすべきものと答えております。
 我が国の歴史を振り返れば、御承知のとおり、足利幕府は十五代で終わりました。徳川幕府もしかりであります。二百六十余年にわたる長期政権の果て、大政奉還を行ったのは第十五代将軍徳川慶喜でありました。ところで、くしくも、宮澤総理は自由民主党第十五代総裁であります。内閣支持率が二〇%に低迷する今日においては、まさしく大政を奉還すべきときに至っていると言わざるを得ないのであります。(拍手)
 しかるに自民党の単純小選挙区制案は、既に民心の去った自民党政権を生き延びさせるための案でしかありません。このおよそ非民主的な案を速やかに撤回すべきであります。価値観の多様化した時代に、さまざまな民意を反映させて、国会を国民の意見の縮図の場とし、そこで白熱の論議を行うことにより、真に国民のための政治の選択が行われることを可能にする社会党、公明党両党の小選挙区併用型比例代表制に同調されることを強く望むものであります。宮澤総理のお考えはいかがでありましょうか。
 単純小選挙区制については、さらに疑問を禁じ得ない点が幾つもあります。
 全国を五百の小選挙区に割れば、一選挙区当たりの人口は約二十五万人であります。私の選挙区である鹿児島市の人口およそ五十四万人ですから、これが二つあるいは三つの選挙区に分割されるわけであります。市会議員より狭い選挙区から選出される議員は、決して国民の代表ではなく、地域代表にすぎません。果たして、大所高所から日本と日本国民の未来について論じ、そのための立法に携わる者として、ふさわしい存在になり得ましょうか。むしろ、現在よりもはるかにきめ細かに、日々利益誘導に明け暮れる政治となることは、火を見るよりも明らかであります。(拍手)
 また、このような狭い選挙区における選挙運動は、いみじくも自民党内からも「自転車選挙運動」という声が出ているように、現在の中選挙区制に輪をかけた地盤培養型の選挙運動となることでありましょう。当然、買収、供応などの腐敗行為は、減るどころか、ますます横行をきわめることになるでありましょう。これでは、一体何のための政治改革でありましょうか。提案者の明確なお答えをお願いをいたします。(拍手)
 最後に、宮澤総理に、政治改革実現の決意のほどをお伺いします。
 総理は、政治改革に関して、何度も「不退転の決意」を口にしております。

発言情報

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発言者: 川崎寛治

speaker_id: 34024

日付: 1993-04-13

院: 衆議院

会議名: 本会議