矢追秀彦の発言 (本会議)
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○矢追秀彦君 私は、公明党・国民会議を代表し、ただいま議題となりました自由民主党提案の政治改革四法案に対し、総理並びに提出者に対し質問をいたします。
質問に入ります前に、去る四月八日、カンボジアにおいてボランティアとしてUNTACの活動に献身的に参加されていた中田厚仁さんの痛ましい殉職に対し、衷心より哀悼の意を表するものであります。そして、深い悲しみの中におられます御両親を初め御家族の方々に対し心からお悔やみを申し上げますとともに、二度と再びこのような犠牲者の出ないよう、特に文民の方々に対し万全の安全対策を講じられることを総理に強く要請申し上げるものであります。(拍手)
総理、あなたは、平成三年十一月、海部前総理の後を受け、総理に就任された最初の所信表明において「政治改革はこうした時代の要請であります。海部前総理は、その実現のため心血を注いでこられました。私は、前総理のこの御努力に深い敬意を表するとともに、その志を継いで、真摯に政治改革に取り組んでいく決意であります。」と述べられました。そして、今日まで一年半が経過いたしました。
総理、このわずか一年半の間に、共和事件に始まり、次いで佐川急便事件と皇民党事件、そして金丸自民党前副総裁の巨額脱税による逮捕と、実に大きな政界不祥事件が相次いで明るみに出たのであります。その結果、国民は、今政治不信の極にあります。最近の総理府の世論調査では、「民意が国政に反映されていない」が過去最高の七〇%を記録し、その他マスコミの多くの世論調査もすべて、政治不信、政治家不信、政党不信が高まっております。これでは、我が国の議会制民主主義は危機的、末期的症状にあると言っても過言ではありません。
振り返りますと、昭和三十年の保守合同以来、自民党政権は腐敗と汚職の歴史を続けてまいりました。その主なものでも、東独カリ輸入事件に始まり、共和製糖事件、ロッキード事件、そして佐川急便事件、金丸事件と、実に三十七年間で主なものだけでも四十件に上るという汚職・疑獄事件を数えるのであります。その都度、政治倫理の確立、政治改革が叫ばれながら、自民党政権はその金権体質を改めることなく、今日まで政界浄化の実を上げることができなかったのであります。この責任似、挙げて総理、あなたの率いる自民党ではありませんか。このたび、与野党で選挙制度を含む政治改革法案を国会に提出し、本格的に議論するに至ったことは、いまだかつてなかったことであります。
総理、昨年十月の所信表明で、「今日の政治不信を招来した根本的要因にさかのぼった思い切った政治改革を実現するため、不退転の覚悟で取り組んでまいります。」と述べられ、本年一月には「今や政治改革こそがすべての変革の出発点であります。」と決意を披瀝されました。よもやお忘れになってはいないと思います。今こそ正念場であります。もし、今国会で選挙制度を含めた政治改革が実現しなかった場合、その責任は重大であり、内閣総辞職にも値すると思いますが、総理の御所見をお伺いしたい。(拍手)
佐川急便事件が発覚し、金丸氏が五億円の政治献金を不正に受け取っただけでも大きな衝撃でありましたが、さらに金丸氏は、所得隠し総額十八億四千八百万円、脱税総額約十億四千百万円で、二度にわたり起訴されました。しかも、ゼネコンを初めとする企業、団体からのやみ献金を元手に割引金融債、株券などで蓄財しただけでなく、金の延べ棒までも蓄えるに至っては、もはや怒りを超えて、あいた口がふさがらないのであります。しかも、昭和六十二年、六十三年、平成元年分であります。このとき既に、政治倫理綱領、行為規範は議決されており、以来、全国会議員はこれを遵守することを決意し合ったばかりではありませんか。
金丸氏は、自民党の最高幹部として政権の中枢に存在し、しかも、宮澤政権誕生に大きな役割を果たしてきた人であります。NHKの全衆議院議員に対するアンケート調査によりますと、金丸事件の原因は、癒着を生むシステムが五三%、自民党の長期政権二二%であり、個人の問題とする人はわずか一八%にしかすぎません。政官財癒着の自民党政治の体質そのものが問われているのであり、金丸氏個人の問題として、議員辞職をもってすべてが終わりでは済まされません。党総裁でもある総理に極めて重大な責任があると考えますが、いかがですか。
さらに私は指摘しておきたい。政治倫理審査会は、野党の再三にわたる申立書提出にもかかわらず、自民党の反対で今までことごとく開会が見送られてまいりました。全く政治改革への前向きの姿勢が見られません。いかに選挙制度を変えようと、政治資金規正法を厳しくしようと、政治倫理の確立が根底になければ、ますます悪質、陰湿になってしまうことは、過去において、規正法が厳しくなっても、汚職、不祥事が絶えないところか、ますます巨額化、陰湿化している状況にあります。したがって、政治倫理綱領、行為規範のみでは不十分であります。
先ほどの御答弁でも、政治倫理審査会は強化をされた、あるいはまた資産公開法がこのたび成立をしたと言われておりますが、昨日の締め切りでなおこの中の数十人の方がまだ出していないのであります。なぜ守られないのですか。隗より始めよではありませんか。
だから、私は、政治倫理確立のためには、政治倫理法を制定し、国会の自浄能力を高める必要があると主張する次第でございます。アメリカで一九七六年成立した政府倫理法は、その実を上げております。このたび、社会、公明両党は政治倫理法案を提出いたしました。政治倫理の確立をどう考えておられるのか、お答えいただきたい。
次に、選挙制度についてお伺いいたします。
一昨年、海部内閣は小選挙区比例代表並立制を提案いたしましたが、廃案となり、その結果、海部内閣は総辞職に追い込まれたのであります。今回自民党提案の全国一律単純小選挙区制は、前内閣の提案した小選挙区比例代表並立制よりもさらに改悪され、その上、全く時代逆行のものであり、これを臆面もなく提案されてきた提出者の神経を疑うものであります。(拍手)
私も、中選挙区制が、選挙区内の同士打ちにより、政策本位の選挙が行われず、地元サービス合戦、利益誘導など、かえって金がかかる選挙になり、その結果、派閥、族議員を生み、腐敗政治の要因ともなり、既に制度疲労を起こしているという認識は持っております。しかし、単純小選挙区制になればそれらの解決が可能になるでありましょうか。私は、ノーと答えざるを得ないのであります。
単純小選挙区制は、四割の得票率で八割の議席を占めるときもあれば、立候補者数によっては三割の得票率で九割の議席を占める場合もあります。多くの死票が出、民主主義の基本である少数意見の尊重が抹殺されると指摘されております。この制度は、現在の日本の政治状況の中では、自民党の一党支配がますます強化され、衆議院においては三分の二以上の議席獲得が可能となり、参議院の現在の逆転状況にもかかわらず、あらゆる法案をも成立させることができるという、自民党の党利党略優先の意図をむき出しにした法案ではありませんか。そして、絶対多数の権力を背景に、憲法改悪でも福祉切り捨てても、あらゆることが可能となり、議会制民主主義はその機能を失い、独裁政治となり、日本は破滅の道を歩むであろうことを憂うるものであります。この点をまずお伺いしたい。
次に、単純小選挙区制と金の問題であります。
単純小選挙区制は、中選挙区制と比較して金がかからないとかねてから言われてまいりました。しかし、単純小選挙区制によって金がかからないという保証は全くありません。単純小選挙区制は、既に帝国議会において多くの弊害が指摘され、その反省の中から、大正十四年に廃止されたのであります。一昨年の本会議におきましても、私は次の文章をもってこの弊害を指摘をいたしました。もう一度申し上げます。このときの第五十回帝国議会における選挙法改正理由書の中に、「小選挙区制に在りては選挙競争区域狭小となるが為に選挙運動余りに周密激甚となりて動もすれば之に伴う種々の弊害を誘起するの虞多く又候補者の濫立を促すの感あり」また、「小選挙区制に於ては選挙費用を減少せしめるの利ありとの説あるも従来の実績を見るに必ずしも然りと云うことを得ず」と明確に弊害を述べております。
以上述べたごとく、単純小選挙区制の導入は金がかかり、弊害のみ多いものであり、この導入には断固反対であります。(拍手)
単純小選挙区制の実施のモデルであるイギリスにおいては、今小選挙区制度の見直しの議論が起こり、一九九一年五月のオブザーバー紙の世論調査を見ても、比例代表制に賛成する人は全体で五〇%、反対は二三%となっており、保守党支持者でも賛成三九%、反対三六%、労働党支持者は賛成五三%、反対一八%、自民党支持者では賛成七〇%、反対一二%と、すべての政党支持者が比例代表制に賛成し、現在の単純小選挙区制を変えようとする世論が巻き起こりつつあります。アジュダウン自民党党首は、単純小選挙区制は民主政治の理想を損なう現在の信用できない制度であり、これによって成立する強い政府を、多数の意思に反して、少数者の意思を強制するような強さと批判しているのであります。
小選挙区制というのは、少なくとも実力伯仲の二大政党が存在し、得票率においても両党の実力は僅少差であり、しかも、両党が外交、防衛など国の基本政策で大枠が一致しているという条件や前提を満たして初めて機能する制度であります。
さらに、カナダ、韓国などほとんどの国において選挙制度がうまく働かず、地域分断を助長している現状は、もはや単純小選挙区制自体が、国民各層のさまざまな民意を反映できない時代おくれの制度であると言わざるを得ません。歴史の流れに逆行し、現実の日本の政党のあり方を無視する単純小選挙区制の導入を国民は決して望んでいないのであります。これでも強引に単純小選挙区制を導入したいとお考えになっているのかどうか、お伺いしたい。
ここで私は、日本の現状においては、比例代表制を基本とした社会、公明両党提案の選挙制度こそ最もすぐれたものであると強く主張するものであります。現に世界で十四カ国が比例代表制を採用し、そのほとんどはEC参加国であります。ドイツにおいては比例代表制の歴史は長く、民意の的確な反映のため比例代表制と小選挙区制を併用し、顔の見える選挙を行い、今日まで政権交代可能な安定した政治を行ってまいりました。
社会、公明両党提案の小選挙区併用型比例代表制は、ニューマイヤー方式とドント方式との違いはあっても、おおむねドイツ方式を取り入れております。この制度が現在の日本の政治状況の中でベストであるという主な理由の第一は、政策本位、政党本位の選挙が行われること、第二は、多様な民意をそのまま国政に反映できること、第三は、政権交代が可能になることであります。
特に、比例代表制の場合、先ほども議論が出ておりましたが、小党分立連立政権になるので政局が不安定になるとの説が長い間信じられてきたのであります。しかし、テキサス大学のローレンス・ドッド氏の調査研究により、それは神話にしかすぎなかったことが証明されたのであります。すなわちドッド氏は、議院内閣制をとる西欧十七カ国について、第二次世界大戦前の二十年と戦後三十年のすべての内閣の寿命を調べた上で、単独内閣で不安定な政権もあるし、連立内閣で安定した政権もあるということが明らかにされ、平均寿命では連立内閣が短いとは言えるが、五十カ月かそれ以上続いたすべての内閣のうち、平均六〇%は多党制議会から生まれた連立内閣であったと指摘しており、比例代表制によって不安定な政権ができるという批判は当たらないのであります。以上、私が指摘したように、単純小選挙区制は時代逆行であり、自民党がどうしてこのようなものにこだわるのか。思い切って自民党提案の単純小選挙区制の導入を撤回し、社会、公明両党提出の小選挙区併用型比例代表制に賛成されてはどうでしょうか。これこそ国民の期待にこたえられる政治改革への第一歩であると思いますが、いかがでしょうか。お答えいただきたい。(拍手)
次に、政治資金規正法改正案についてでありますが、最も根本的で重要な問題は、企業・団体献金を容認したことであります。
今ゼネコンからの膨大なやみ献金、公共事業費の中からのバックマージンなどが国民の大きな批判の対象とされているとき、政治腐敗の根源ともいうべき企業・団体献金の禁止こそが、政界浄化、国民の信頼回復の第一歩ではありませんか。自民党案では、政治家個人に対する献金を禁止し、企業献金も政治団体には禁止し、資金調達団体には二十四万円を上限とするなど、一歩前進は見られますが、政党への献金については、従来の枠を二倍に広げるなど、後退が見られます。その上、政党助成を国民の税金から行うとなれば、なおさら企業・団体献金はこの際、禁止することが道理であると考えますが、いかがでしょうか。お答えいただきたい。(拍手)
最後に、総理にいま一度申し上げたい。
今度こそ政治改革は待ったなしであり、ラストチャンスであります。今、日本の政治が国民の信頼を完全に失っておりますとき、今国会で選挙制度を含めた政治改革が実現できなければ、議会制民主主義は事実上崩壊し、国際社会において名誉ある地位を目指す日本の権威は音を立てて崩れてしまうのであります。
総理、あなたは、サミット主催国の首脳としてどのような顔をして参加国の首脳と相まみえるのでしょうか。
政治改革の中心課題は選挙制度の改革であります。自民党も、政治腐敗、金のかかる政治の原因は現行の中選挙区制にあると再三指摘しております。ここに、現行中選挙区制度を改めなければならないという共通認識が生まれていることは極めて重要であります。私は、現行の中選挙区制を廃止し、今国会中に必ずこれにかわる新しい制度をつくり上げることを、この際、与野党の決議あるいは宣言を行うべきであると提案するものでありますが、提出者の御見解を伺いたい。(拍手)
ここで私は、全議員の皆さんに訴えたい。イギリスの政治学者マコーレーは、「政治はただ国民の福利のためのみに存在する」と言い、アメリカ大統領ジェファーソンは、「あらゆる権威は人民に属する」と言っております。政治改革、特に選挙制度は、選ばれる側の利益を優先にしてはなりません。選ぶ国民の側に立って決めるべきであります。政治家一個人の利益や派閥の利益、党利党略を優先したのでは絶対になりません。あくまでも国民の立場に立って議論を展開し、おのおのの政党がおのおのの身を削ってでも、この際、合意点に達しなければなりません。公明党は、党利党略を乗り越えて、今国会において必ず選挙制度を含めた政治改革法案を一括して成立させ、次期衆議院選挙より新たな制度で選挙を行い、日本の政治変革に全力を挙げて取り組む決意であります。もはや、これ以上国民を欺くことは断じて許されるべきではありません。
今、私は、腐敗防止法制定当時のイギリス首相グラッドストーンの「政治の目的は、善をなすに易く悪をなすに難しき社会をつくるにあり」との言葉を思い起こすのであります。
総理、今こそ真の政治改革を断行し、公正で信頼のある民主的な政治を実現し、二十一世紀へ向けて新しい日本の黎明を告げる鐘を鳴らそうではありませんか。総理の勇断と決意を促し、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕