堀昌雄の発言 (予算委員会)
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○堀委員 私が議会に出てまいりましたころというのは、日本経済は、昭和三十三年という時期ではまだ必ずしも十分な整った状態になっておりませんでしたものですから、この時期は、要するに貿易収支の赤字の問題というのが非常に大きな問題になっていた時期でございます。国民の大変勤勉な努力と、そうして科学技術に対する学者や技術者の皆さんの努力、そうして政治に携わる皆さんの努力によって、今日、日本経済というものは世界の中で最もバランスのとれた経済ということになってまいりましたけれども、その反面、実は今お話のありましたように、一九九二年度で一応千二百六十一億ドルの経常収支の黒字が出るということは、その反対側に千二百六十一億ドルの国際収支の赤字があるという認識をまず最初にしておかなければならないと思うのでございます。
そこで、こういう黒字を反映して円が大変強くなってまいりまして、百十円台まで入ってくるというような格好になってまいりました。考えてみますと、私、ずっとそういう為替の経過、三百六十円できておりました固定相場が御承知のように自由な形になり、その間いろいろな問題がありましたが、その当時は当委員会ではなくて大蔵委員会で、この問題の所管委員会として担当させていただいておりましたので、今日になってみましてまことに感慨無量といいますか、悩みが、かつての赤字の悩みから黒字の悩みに変わった。赤字の悩みよりは黒字の悩みの方がいいのでありますけれども、しかし、今度は黒字を減らすというのは、またこれなかなか実は赤字を減らすよりは難しい問題だ、こう考えているわけであります。
そこで同時に、あわせて円が強くなりました。かつて一ドル三百六十円という時期があったわけでありますけれども、それが百十五円とか百十円台に入ってきたというようなことは、とてもあの三百六十円の固定為替のときには考えられないことでございまして、それだけ為替の関係で、特に日本は原材料を輸入をする立場からしますと、これは大変大きなプラスになってきておると、こう思うのであります。
同時に、そういう円高であっても、実はなおかつ日本の貿易はどんどんと伸びている。こういう環境は、ある意味では大変恵まれた環境だと思うのでありますけれども、しかし、さっき申し上げましたように、その裏側にある国際収支の赤字の側の皆さんの立場も考えないで、ひとりよがりで黒字になってよかったというわけにはいかないと、私はこう考えておるわけでございます。
ただ、もう一つ申し上げておきますと、実は為替の問題が出てまいりましたころに、当時私は大蔵委員会で、何か円を切り上げるということには国民世論は大変反対でございました。しかし、私はそのときに、それはおかしいんじゃないかと。要するに、円が上がるということは、日本の国民の労働力がそれだけ高く評価されて海外に売れるということになるので、まさに同じ単位時間で日本の皆さんが働いておられる労働の結果としての産物がそれだけ高く評価されるということは、これからますます日本国民が一生懸命働いて、新しい科学技術を開発をして、そうしてやっていくことが日本の経済にとっては大変プラスだ、こういうことで、当時、そのころは一般世論は何か円高になることに対しては大変消極的でございましたけれども、私は大蔵委員会でそれは間違っているとかなり世論に反した論議をしてまいったことがございますが、しかし、ここまで参りますと、今度は円が強ければいい、こういう話だけではなくて、今の千二百六十一億ドルの黒字というものはもう何とか少し減らしてまいりませんと、これは国際的にやはり適切でない、こういう感じがするわけでございます。
しかし、なかなかこれは、赤字を減らすのよりは、私は黒字を減らすというのは難しいと思うのです。赤字を減らすというのは、しっかりいい物をつくって、そうして価格を下げて売れば売れるということになるのでありますけれども、今いい商品で、そうして値段も安い物を私ども売っているわけでありまして、いろいろ議論のありますときに、私は若いころに申したのですけれども、我々は外国に輸出をしているというのは、何も無理に押し込んでいることはありません、向こうの消費者のニーズにこたえる商品をつくるから、そうして値段も安いから世界の国が日本の商品を買っていただいているのです、ですから、その限りにおいて私たちは後ろめたい気持ちは一つもありませんと。その国の皆さんがよりよい品物をより安く買っていただけるようにするということは、私はマイナスでも何でもないと思います。しかし、その結果として貿易収支が大変黒字になってきて、向こうが赤字になるということは、私たちも十分考えなきゃならないだろう。
そこで、私は社会党でございましたけれども、経済というのは競争原理が働くのが当然だと。要するに、自由な経済というのは競争原理に基づいて結果が出てくる、こういうことであるべきだということを党の中で、まだなかなか当時はかたい考え方の方の多い中で、率先して社会党の中で競争原理、自由経済、市場問題というものを訴えて、今日もう党も完全にそういうベースになってきたわけでありますけれども、そういうことを振り返ってみますと、これから国際的に見て、私は、これは多少の黒字がある方がいいですから、例えば年間三百億ドルとか五百億ドル以内の黒字でしたら、やはりリスクの関係もありますから、あっていいと思うのですが、ちょっと一千億ドルを超える黒字というのは、これはこのまま、よそはもう辛抱しろ、こっちはもうまじめにやっているのだからでは通用しない、こう思うのでございます。
そこで、まず総理に基本的な認識として、これから日本経済をどういうふうに運営をしていけばこの問題に対処できるか、ちょっと総理のお考えを承りたいと思います。