市川正一の発言 (本会議)
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○市川正一君 私は、日本共産党を代表して、羽田総理の所信表明に対し、総理並びに外務大臣に質問を行うものであります。
羽田総理の所信表明は、先日、衆議院において我が党不破委員長が厳しく追及したように、国民の前に釈明すべき三つの問題、すなわち細川前総理が資金疑惑で政権を投げ出した問題、首班指名の直後に政権の基盤を変えるような暴挙を行った問題、永野前法務大臣の暴言問題、そのいずれについてもみじんの反省もない無責任なものでありました。
その反面、二っの重大な政策方向については具体的に提起しています。その一つは、消費税の税率引き上げを年内にやるということ。その二つは、朝鮮問題で緊急の事態が起こったときには、アメリカ及び南朝鮮と緊密に連携し、協調して対処するということであります。こうした羽田政権の方向は、小選挙区制の導入、米の輸入自由化などを強行した細川前内閣以上に強権的で危険な政権であると断ぜざるを得ないのであります。
まず、金権問題についてでありますが、政治改革を看板にした細川前総理が金権疑惑で退陣を余儀なくされたことは、次期政権に対して何よりも清潔な政治姿勢を求めるものでありました。それにもかかわらず、金権腐敗根絶の問題は所信表明において全く欠落しています。
そこで、総理に伺いたい。
あなた方の言う政治改革とは、結局小選挙区制の導入によって完了すると言われるのですか。
第二に、実際にもロッキード、リクルートなどの灰色高官と言われている加藤六月氏の入閣は、国民世論への挑戦であるという厳しい批判をどう受けとめておられるのか。
第三に、細川前総理が一億円借り入れ問題などについて国会と国民を欺く虚偽の答弁と資料提出を行ってきたことは、細川前総理自身の辞任の記者会見でも明らかになったところであります。先日の本院予算委員会における藤木参考人の陳述でも、前総理の答弁が信用できないことはいよいよ明白になりました。
ところが、この細川疑惑について総理は、プライベートな問題という答弁を繰り返しています。事は単なるプライベートの問題ではありません。一国の総理大臣をめぐる国政上の重大問題であり、国会の権威にもかかわる問題であります。したがって、細川前総理の証人喚問、深山元秘書を含め、疑惑の徹底解明は当然であります。羽田総理にその意思があるのかどうか。
以上、三点について明確な答弁を求めます。
次に、総理は間接税の税率引き上げを中心とした税制の抜本的改革、すなわち消費税の税率引き上げを六月中に結論を得て年内に実施すると述べています。また皆さん、今、国民生活は深刻化する不況のもとで重税と物価高が暮らしを直撃しております。その中での消費税の増税は、国民福祉税で示された七%の引き上げとすれば、勤労者の一世帯当たり平均で二十六万円の大負担になるものです。したがって、どの世論調査をとっても国民の多数が消費税の増税に反対し、廃止を要求しているのは当然のことではありませんか。
そこで伺いたいのは、さきの総選挙において、連立与党は消費税の税率引き上げを国民に約束したのですか。事実に基づいて明らかにしていただきたいのであります。
一九八九年十二月、第百十六国会の本院において消費税法廃止法案が多数で可決されました。この法案の提案者として、社会党、公明党、民社党、連合などの代表は、この参院の議政壇上に立って消費税廃止を論じたのは記憶に生々しいところであります。例えば、次のような発言もありました。
憲法の前文におきましても、「国政は、国民の厳粛な信託による」と記されております。国民は無条件で信託したのではなく、信託の条件は選挙公約であり、したがいまして選挙における公約は極めて重いものであると考えるものであります。今回の参議院選挙の結果は、一つには公約違反に対する国民の厳しい審判であると考えるものであり、これは、本日もここに出席しておられる民社党議員の発言であります。
総理、国民は消費税を引き上げる政党や政府を選んだ覚えは毛頭ありません。いかなる名称、形態であろうとも、消費税の税率引き上げ計画は直ちに撤回すべきであります。答弁を求めます。
次に、北朝鮮をめぐる問題であります。
日本共産党は、ラングーン事件、大韓航空機爆破事件、日本漁船銃撃事件など、国際法を踏みにじる北朝鮮の無法行為に対して最も厳しい糾弾、批判を行ってきたことは周知のところであります。
また、北朝鮮の核兵器開発に対しても反対であることを繰り返し明らかにしてまいりました。それは核保有国の核独占を容認する立場からではなく、核兵器の全面廃絶という立場からであります。これに反して、アメリカは核保有大国の既存の核兵器は問題にせず、核不拡散条約、NPTの無期限延長によって核兵器独占を合理化しようとしています。
そこで質問したいのは、世界でただ一つの被爆国である日本の政府が核兵器保有大国の不当な特権を永久化し核兵器廃絶に逆行するこのNPTの無期限延長をなぜ支持するのか、国民の前に明らかにしていただきたいのであります。
国の政治責任者が外国のマスコミに対して核兵器を持たないと言明しているのに、アメリカが北朝鮮の核開発疑惑を一方的に認定して直ちに制裁せよと主張するのは、アジアと世界の平和を脅かす無法行為と言わなければなりません。そもそも制裁を強行する根拠は一体国連憲章の何条に規定されているのか、伺いたいのであります。
総理は、まだ決議されていない今の段階では差し控えたいとして答弁を拒否しておりますが、そもそも国連の決議はまだなされずに、その内容もわからない段階早々、無条件に製措置に従うなどと言明しているのは連立与党であり、日本政府自身ではありませんか。そのことに国民が大いなる疑問と不安を持つのは当然であります。
そこで、以下具体的にお聞きしたい。
一つ。制裁措置に従うと言うが、どんな制裁に加わるというのですか。
二つ。湾岸戦争の際、多国籍軍、米軍は、経済制裁の実施を確保するためと称して臨検や海峡監視など事実上の海上封鎖を行い、必要な場合発砲することも認めていました。アメリカ国防総省の報告では、臨検を行った艦船数は七千五百隻に上りました。こういう行動への参加は、これまでの政府の憲法解釈からしても、第九条が禁止している武力の威嚇に当たることは明白ではありませんか。
三つ。緊急事態に日米、日韓で共同するとしておりますが、この緊急事態に備えるとはどういうことなんですか。その場合、自衛隊が米軍に対する輸送や補給、洋上給油などの協力を行うのですか。
四つ。新生党小沢一郎代表幹事は、連立与党代表者会議で、経済封鎖や海上封鎖になった場合、有事立法という形で国内法改正の準備をしておかないと何もできないと述べ、また、総理も衆議院の答弁で有事体制づくりを表明しております。かつて一九六五年、自衛隊制服組がひそかに行った朝鮮半島有事を想定した三矢作戦研究が暴露され大問題になりましたが、今、北朝鮮問題を口実にして憲法に反するこういう有事立法を推進するというのですか。
以上、四点についてお答えいただきたいのであります。さらに羽田総理は、四月二十三日のインタビューで、集団的自衛権の行使を容認する方向で議論を進めるべきだとの考えを明らかにいたしました。また柿澤外相も、集団的自衛権行使について憲法を見直すと発言いたしました。これは、集団的自衛権の行使は憲法上許されないという従来の政府解釈を変更するものではありませんか。総理並びに外相の責任ある答弁を求めます。
さらに総理は、集団的自衛権の問題で、これが国際的な当然の権利であって、これを行使し得ないことがあたかも日本の憲法の残念な弱点であるかのような説明を繰り返しています。しかし国連は、もともと集団的自衛の名による軍事同盟が二度にわたって世界大戦を引き起こしたことの反省に立って、軍事同盟のない世界を目指して設立されたものであります。日本の憲法の立場は、この国連憲章の根本精神に照らして先駆的意義をこそ持つものではありませんか。総理の見解を改めて求めるものであります。
このように見てまいりますと、今回の永野前法務大臣の暴言問題は、個人の問題にとどまらず、総理を初め羽田内閣の閣僚が有事立法とか集団自衛権とか憲法の解釈変更などを平気で発言していることの一つの象徴ではありませんか。
総理、あなたが憲法第六十六条の規定を無視し、永野氏が旧帝国陸軍の職業軍人、自衛隊の最高幹部であった経歴、そしてまた今も深い軍国主義思想の持ち主であることを承知の上で法務大臣に任命した責任は重大であります。そのような首相と内閣が国際社会に参加し、国政の任に当たる資格を持っているのかどうかが今や問われているのであります。総理の責任を明確にすべきであります。
この際、総理が十二日、衆議院で否定答弁を行った核密約問題についてただしたい。
第一に、六九年の佐藤・ニクソン会談におけるこの密約の内容と経過の詳細が、七九年刊行のキッシンジャー元大統領補佐官の著書に続いて、今回、若泉敬元京都産業大学教授の新たな著書で明らかにされ、合意議事録の全文も判明いたしました。また、我が党の上田副委員長は、木村俊夫元官房副長官が若泉氏が密使であったと認めたことを先日記者会見で公表いたしました。
総理は、調査もせずにどういう根拠で交渉当事者の二人と佐藤内閣の当事者が確認をしたこの歴史的事実を否定できるのですか。
第二に、真田元法制局長官の答弁によれば、国と国との取り決めは、不公表であっても廃棄されない限り拘束し続けるものとなっております。公表された合意議事録の末尾には、その一通を日本側は極秘に首相官邸でのみ保管すると記してあります。たとえ羽田総理が知らなくても、非核三原則に背いて沖縄への核再持ち込みを約束したという重大な内容のこの密約文書を直ちに調査し、国会に報告し、廃棄することを要求し、答弁を求めるものであります。
最後に私は、羽田政権なるものが今や衆議院では三分の一、この参議院では二百五十二議席のうち六十二議席、四分の一にすぎないという少数与党内閣であり、政権の存立基盤そのものが崩壊していることを指摘しなければなりません。この少数与党政権が国民の信も問わないまま、以上論じてきたような一連の悪政を強行しようとすることは、憲政の常道に真っ向から反するものであります。
国民世論も六割から七割の多数が解散、総選挙を要求しております。
もともと細川前内閣のもとで強行された小選挙区並立制は、一度も民意に問うたことのないものであります。その小選挙区制を含め、消費税の増税、有事立法など重大問題で信を問うという場合、民意をゆがめ、少数意見を切り捨てる小選挙区制ではなしに、民意をよりよく反映する現行中選挙区制のもとで行うことは当然の道理であります。小選挙区制を何年かけて仕上げたとか、そういういきさつを云々するような技術論、経過論ではなしに、解散で民意を問うという本質論の立場に立つことこそ議会制民主主義の本筋であります。
私は、現行中選挙区制のもとで早期に解散、総選挙を行うことこそ、今、羽田内閣が国会と国民に対してなすべき役割であるということを主張し、答弁を求め、質問を終わるものであります。(拍手)
〔国務大臣羽田孜君登壇、拍手〕