米沢隆の発言 (本会議)

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○米沢隆君 私は、新進党を代表して、ただいま議題となりました金融関連六法案につき、反対の立場から討論を行います。(拍手)
 まず、討論に先立って申し上げたいことがあります。それは、国会運営のあり方についてであります。
 顧みるに、村山政権誕生以来、たらい回しでできた橋本政権の今日まで、この連立政権の国会運営は、議会制民主主義の最低のルールを守るどころか、たびごとに数を頼んだファッショともいうべき暴挙を続けており、我が国の議会主義、民主主義にとってゆゆしき問題であることを声を大にして指摘しておきたいと思います。そして、昨日も同じ暴挙が繰り返されました。与党の強引な委員会運営並びに委員長の職権乱用による議事進行であります。
 金融問題に関する特別委員会は、言うまでもなく、平成八年度予算成立の際の四党国対委員長間で行われた合意事項にある「現行の金融、税制、財政制度全般にわたる改革を行い、あわせて金融機関等の諸問題について協議し処理するための特別委員会を設置する」という条項に基づき設置されたのは御案内のとおり。にもかかわらず、同委員会の実態は、政府・与党の党利党略に基づく、単に政府提出の法案を成立させるだけを目的とする通過儀式の場になってしまったのであります。
 本来、委員会運営は理事会での合意によって行うべきところ、委員長職権と称して議事を一方的に進め、野党に対して十分な審議時間を与えず、また重要法案の議決には不可欠な公聴会も開かす、あまつさえ一般質疑を続行中であるにもかかわらず突然の質疑打ち切り動議により強行採決を行いました。まことに憲政史上まれに見る暴挙であり、改めて強く抗議するものであります。(拍手)
 また、四党合意の折、「証人喚問問題については、真摯に対応する」という合意がなされました。しかるに、住専スキームの作成に中心的な役割を果たした加藤幹事長に対する共和、つまり住専からの借入先である会社からの献金疑惑が大きく報ぜられ、また、一方の当事者である水町元後援会会長が証人として出頭することを明らかにししいるにもかかわらず、幹事長の証人喚問も与党り反対により行われませんでした。先般行われた参考人質疑でも、翌朝のマスコミは一同にますます疑惑は深まったという記事で埋まったのであります。なぜもらっていないものを返す必要があるのか、解けない疑惑であります。我々は、依然として喚問要求を続けていきたいと思います。(拍手)
 政党政治の基礎は、公党間が信義を守ることにあります。公党の約束が守られないままに強行採決が行われたことに大きな怒りを感じるものであります。
 さて、我が国の不良債権問題の処理は、ひとり我が国経済の問題であるのみならず、広く世界経済に影響するものであり、我が国がこれにどのように対処するかを世界は注目しております。また、この処理が、二十一世紀に向けて我が国経済が順調に発展していくか否かを決するものであると考えます。このような重要問題であるにもかかわらずへこの住専処理法案は、我が国における不良債権が一体どのぐらいあるのか、これに国がどう対処するのかという原理原則も決めないままに、安易に場当たり的に公的資金を導入するといり、財政民主主義にも反する欠陥法案であることは言うをまちません。
 これを数字で説明したらどうなるか。住専七社の債権は約十三兆円と言われております。そのほぼ半分が不良債権であります。住専以外のノンバンクの持つ債権はおよそ九十兆円と伝えられ、その不良債権は正確には把握されておりません。住専以外のノンバンクも、住専と同様、不動産担保り貸し付けがほとんどであって、住専の場合と回し基準で不良債権を評価すれば、その額は二、三十兆という額になるのではないかと推定されます。ちなみに系統農林金融機関の住専に対する債権額は五兆五千億でありますが、ノンバンクに対するものは七兆円近くあると言われております。
 これが不幸にして破綻に向かえばどうなるのか。現在、政府は、ノンバンクの破綻に対して公的資金は用いないと言っておりますが、住専と全く同じ性格のノンバンクに公的資金を投入せず、住専だけにこれを投入するということが果たしてできるのか。公的資金の使用の原理原則は何かという問いに、政府はいまだに全く答えていないのであります。
 こうしたノンバンクのほかに、多くの信用組合の破綻に見られますように、数多くの信用組合や力の弱い銀行が危機に直面しております。こうした不良債権の全貌を把握した後、その一環として住専処理が行われるならいざ知らず、それが全然明らかにされないままに安易に公的資金の導入を認めることになるならば、今後、どのような場合に、またどういう基準で税金を使うべきかが明らかでなく、その額は、またぞろ談合の繰り返しで、結果として際限がなくなるという事態も予想をされるのであります。
 住専は、本来、預金者を持たない金融会社であります。民間の会社が倒産したときに、政府が税金を出した例がかつてあったのか。阪神大震災の被災者の中には、家を失いながら今でも住宅ローンを返し続けている人も数多いのであります。営々として築いてきた会社が不況により倒産してしまった人もたくさんおられます。こうした人々に対し、政府はいささかの面倒でも見てきたのでありましょうか。バブルに踊った企業の倒産に国が税金を使ったことが今まであったのでしょう
 まじめに働く国民の九割がこの処理に反対しているのは、厳然たる事実であります。この民意を生かすことこそ、政治の責任ではないでしょうか。残念ながら、政府は欠陥法案を丸のまま強行成立させたことにより、国民はまたまた裏切られたのであります。
 かつて、諸外国においても同じような不良債権問題が発生しました。御案内のとおり、例えばアメリカにおいても貯蓄信用組合の倒産が相次いだ時代がありましたが、その際、アメリカ政府は、預金者保護のためという原則一点にかけて国費投入の理解を求め、同時に、RTCという機構をつくり、経営者たちの責任を徹底的に追及するということで、広く国民の理解を得たのであります。こうした原理原則に基づいた処理によって、国民も税金の使用に同意したのであります。
 しかるに、今回の我が国の措置は、自己責任の原則を棚上げした上、市場経済のルールを無視し、預金者の全くいない普通の企業である住専の不良債権を、七社分を一括して住専処理機構という株式会社に移し、関係者の責任追及を極めてあいまいにして封じ込めてしまうのみならず、債権者間で合意のできなかった損害分担額について国が肩がわりをするという極めて不透明な処理を行ったのであります。
 民間企業の債権者同士の争いは、あくまで当事看同士で解決すべき問題であります。合意が成立しない場合は国が税金で面倒を見るというようなこととすれば、国の負担は際限がなくなるのではないでしょうか。預金者の保護のためにのみ公的資金を使うという原理原則を守ることによって、初めて国民の理解を得られるのであります。
 もし六千八百五十億円の使用によって不良債権問題がすべて解決するというのであれば、納得のしようもあるかもしれませんが、そうではなく、住専問題は不良債権問題の入り口であります。入り口においてその場その場を取り繕う処理をするならば、国費の投入には歯どめがなく、また不公平なケースが次々と生み出されることは明らかでありましよう。
 このように、原理原則が明らかでないことに加え、国への負担分六千八百五十億円の算出根拠はいまだに極めてあいまいであります。また、第二次損失が生じた場合、二分の一を国が負担するということでありますが、その根拠も全く明らかでありません。地価が下落しつつある現状において損失額は拡大する一方であり、この半分を国が負担するということは、何の根拠もなくして国費が使われるということではありませんか。
 また、住専処理機構というシステムも、アメリカのRTCとは全く似て非なるものであります。株式会社であるため、RTCとは比較にならないほど住専経営者などの関係者への責任追及も十分に行うことはできません。
 また、担保物件の価値の下落が予想される現在、債権の回収は極めて困難であります。優良な土地を大量に保有していたあの国鉄清算事業団でさえ巨額な赤字を抱えている状況でありますが、住専処理機構は、これ以上に処分不可能な、困難な土地を抱えているわけであります。将来にわたって巨額な赤字を生んでいくものと言えましょう。
 このように、長い目でこの措置の持つ意味及び効果を考えるとき、その及ぼすマイナスの影響ははかり知れないものがあると考えます。我々国民は、みずからの納める税金が意義のある用途に横われることを信じて納税するものであります。このようなあいまいな理由で根拠のない支出がなされたならば、国民の納税のモラルは著しく低下することとなりましょう。このことこそが最も憂慮される問題であります。
 次に、いわゆる金融四法案について申し述べます。
 我々は、これら法案の基本的な考え方については、その重要性を了といたします。
 しかし、金融機関の健全性確保法案については、早期是正措置がいたずらに行政庁の権限を強化することにはならないのかという疑問があります。また、更生手続特例法については、なぜ、協同組合組織について行政庁の申し立て権があるのに、農協等は除外されているかなどの疑問があります。また、預金保険法については、信用組合の監督庁である地方公共団体の財政負担の問題や保険料の算定基礎の問題、貯金保険法については、事業収益と金融収益とが一体となっている系統金融機関が果たして貯金者の保護をみずからの力で行っていけるのかなどの問題があります。
 こうした多くの論点が残っているにもかかわらず、委員会において十分審議が行われないままに審議が打ち切られ、数に威をかりて採決を強行したことは、いわば国民を冒涜するものであると言っても過言ではないと思うのであります。(拍手)
 したがって、我々はこうした不十分な法案について賛成するわけにはまいりません。
 また、時効停止の法案については、時効制度の本質と相反する、政府提案にもなり得ないお粗末な法案であります。
 こうした個々の法案の批判はともかく、我々が指摘したいのは、これらの法案と住専処理法案との矛盾についてであります。
 金融四法案の基本的な理念は、今後、金融機関がその健全性に留意し、自主性を増し、一定のルールのもとに活動できるようにすること、そして預金者の保護を完全に行うことを主眼としていると言うことができます。その基本には、破綻に瀕したものは、金融機関といえども法的手続により処理するという原則があります。つまり、保護すべきものは、金融機関ではなく預金者であるということが明らかにされているのであります。
 このように、金融機関においてさえ法的処理を前提としているのに対し、預金者のいないノンバンクの一つである住専について異例の扱いをすることは、まさに大いなる矛盾ではないでしょうか。金融機関の自己責任主義をうたったこれら法案と住専処理法案とは、その基本的考え方において全く相反するものがあるわけであります。
 我々は、住専処理法案が欠陥法案であるのみならず、政府が本来の原則に反した法案を提出しているこの矛盾を指摘したいのであります。
 政府・与党は、新進党に対し、反対提案がないではないかと主張しておられます。我々は、母体行、一般行、系統がそれぞれどの程度の損害を負担するかという談合の割合を変更しようなどという、国際常識にも反し、こそくで責任追及封じ込めのスキームはだめだと言っておるのでありまして、法治国家としてはごく当たり前の市場経済の原則に基づき問題を処理せよと主張しているのでありまして、いわば金融三法案の基本的考え方そのものが我々の提案と言っても過言ではないのであります。(拍手)
 我々は、住専に対して多額の不良債権を持っている系統金融機関の苦境、厳しい現状を知っております。住専処理法案は、系統金融機関に経営危機が生じないようにとの配慮が優先したための措置であったと言うこともできます。しかし、系統金融機関の救済あるいは再建の問題は、農業政策の一環として別途に行うべきものではないでしょうか。
 金融不安の防止という大義名分を用いて、住専の破綻処理のような、本来は民間同士の話し合いで解決すべき損失負担問題に、国が税金投入をもって介入すべきではないのであります。系統の預金者保護の問題は預金者保護の問題として解体すべきだと考えます。
 これとともに、我々は、系統金融機関のように、資金は集まるがこれをどのように運用していいのか、その使い道のない金融機関を今後どう改めていくのか、活性化していくのかを真剣に考えなければなりません。そして、その基礎となっている農業そのものを、生産性の高い産業として、二十一世紀において自立できるものとして育てていく政策こそが今必要だと考えます。そして、系統についてのこの考え方は、協同組合組織をとっている信用組合の金融機関一般についても言えることでありまして、我々はこの機会にこれら金融機関の見直しに着手すべきであると考えます。
 戦後、我が国は長い間、資金が足りない時代が、資本過少時代が続きました。この間、金融機関は預金を集めることに狂奔し、いわゆる預金獲得競争が金融業務の中心であったわけであります。それが、資金があり余る時代、資金過剰時代となったのであります。それとともに、金融はますます国際化してまいりました。こういう環境の大きな変化に対して、我が国の金融機関が適応できるかどうかが問われている基本的な問題であります。
 現在、都市銀行、長信銀、地方銀行、信用金庫、それに信用組合、系統金融機関等の協同組合がそれぞれ存立し、これに住専に象徴されるような預金受け入れ機関ではないノンバンクが金融業務に参入しているのが現状であります。それが、大蔵省、地方公共団体、農水省、通産省を監督官庁としておるのでありまして、このほか巨大なものとして郵便貯金があります。こうした金融機関が護送船団方式のもとに業務を行っているのでありまして、ノンバンクや信用組合が不良債権の山を築き、大きなブラックホールになっているのが今日の実態ではないでしょうか。
 不良債権問題は、我が国金融機関がこうした環境変化に適応できなかった結果であり、また、これから乗り越えるべき試金石であると言えます。この金融四法は、この問題解決のための第一歩となるべきものでありますが、審議が尽くせないまま、不十分な姿であることは甚だ残念であります。そしてまた、住専処理法案は、本来金融のあるべき流れに逆行する法案であると言わざるを得ないのであります。(拍手)
 我々は、こうした金融機関を取り巻く環境変化を踏まえて、市場原理を中心とした、自己責任原則に基づいた二十一世紀にふさわしい金融制度をつくっていかなければなりません。そのためには、長期的な、また国際的な視野に立った政策が必要なのであります。
 かつて、我々はバブルを発生させ、これを急速に冷やすという大きな政策上の過ちを犯しました。長期的見通しを欠いた政策によってどのように大勢の人々が不況と倒産に苦しんでいるか、我々はみずから反省しなければなりません。国の政策いかんにより、多くの人々が苦しまなければならないのであります。
 今回の住専処理は、どう逆立ちしてみても、長期的な見通しのもとに決定された政策と言うことはできません。住専処理は、不良債権処理の入り口であります。その入り口において、我々は間違ってはならぬのであります。
 世界は我々の住専処理を見守っております。その処理に当たって、国際的常識に反する密室の談合にも等しい処理と無原則な国費導入を行うならば、世界の金融界は歓迎するどころか、かえって失望するでありましょう。そして、日本政府の危機管理能力に大きな疑問を持つのではないでしょうか。
 国民は決して愚かではありません。今回の法案が多数の暴力によって国会を通過したとしても、さらに大きな国民の審判を受けることがあるであろうことを予告いたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 113605254X03419960607_011

発言者: 米沢隆

speaker_id: 14893

日付: 1996-06-07

院: 衆議院

会議名: 本会議