小池寛治の発言 (外務委員会アジア・太平洋に関する小委員会)
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○政府委員(小池寛治君) 防衛庁国際参事官の小池でございます。
それでは、お手元の資料「朝鮮半島の軍事情勢」を配付させていただいておりますけれども、それに従って御説明いたします。
朝鮮半島の軍事情勢は、総じて言いますと、韓国、北朝鮮の南北の対立というのが過去四十年間、朝鮮戦争終了時からずっと継続している状況というのは基本的に変わっておりません。韓国、北朝鮮合わせて百五十万人を超える地上軍が非武装地帯を挟んで対峙している状態でございます。
まず、北朝鮮軍の動向について御説明いたします。
一昨年の七月に金日成主席が死去して二年近くたちますが、いまだ国家主席、党総書記は空席のままで、後継者と目されております金正日書記は就任しておりませんけれども、国防関係のポストについては、人民軍最高司令官には一九九一年になっておりますし、国防委員会委員長にはほぼ三年ほど前についておりまして、制度的には金正日書記が軍を完全に掌握しているという状況でございます。
北朝鮮は、九〇年以降、経済的にはマイナス成長が続いて、食糧難それから外貨不足など深刻な経済困難に直面しておりますけれども、それにもかかわらず軍事面に国力を重点的に配分する、軍事力の近代化を図って即応態勢を維持するということに努めていると見られております。
軍事費の国民総生産に対する割合は四分の一ないし五分の一に達していると推定されております。一つの推計によりますと、九四年の北朝鮮のGNPは二百九億ドル、それに対して国防費支出が約四分の一ないし五分の一に当たる五十六億ドルに上るというふうに言われております。
それから、総人口は約二千三百万人ですけれども、総兵力約百十三万人、すなわち総人口の約五%が現役軍人と推定されております。それに加えまして、一説には約五百万とも六百万とも言われる予備役が存在しているというふうに言われております。
それから北朝鮮の軍の配備ですけれども、地上戦力の約三分の二を非武装地帯付近おおむね百キロメートル以内に前方展開しておりますし、また前方展開した基地などかなりのものを要塞化しております。加えまして、長射程の火力、例えば二百四十ミリ多連装ロケット、射程約七十キロメートル、それから百七十ミリ砲、射程約五十キロメートルと言われておりますけれども、それを非武装地帯付近に増強配備しているという状況でございます。これは何を意味するかといいますと、この前方展開によって再度改めて展開することなく韓国を奇襲できるとか攻撃できる態勢にあるということです。また、それは韓国側から見ると、警報を発する時間が極めて限られておるという状況でございます。
北朝鮮の装備の多くは旧式ですけれども、装備の近代化を図っている。その大きな特色としては、奇襲戦それからゲリラ戦を行う特殊部隊用の装備を多数保有しているという特色を持っております。
各軍について見ますと、陸軍は二十六個師団、約百万人で北朝鮮の総兵力の約九〇%を占めている、すなわち陸軍中心の構成になっております。歩兵が中心になっておりますけれども、約三千両の戦車を含む機甲戦力あるいは長射程の火砲を保有しております。兵器の数量では、後でちょっと述べますけれども、韓国を上回っているという状況でございます。もう一つの大きな特色としては、ゲリラ戦などを行う特殊部隊を多数保有しており、その数は約十万人ほどにも達するのではないかというふうに見られております。
それから海軍ですけれども、海軍は合計約六百三十隻、約八万七千トンを保有している。その内容としましては、ミサイル高速艇などの小型艦艇が中心になっております。それと、先ほどちょっと触れました特殊部隊の潜入、あるいはそれを運搬するためと見られているミゼット潜水艦、これは乗員を含めて十人程度が乗り組む極めて小型の潜水艦ですけれども、そのミゼット潜水艦あるいはエアクッションの揚陸艇を多数保有しております。エアクッション揚陸艇というのは四十ないし五十名程度の兵員の輸送が可能という揚陸艇でございます。
それから空軍につきましては、作戦機を約七百七十機程度有していると見られております。ミグ29あるいはスホーイ25などの第四世代に属する新型機も保有しておりますけれども、保有している大部分は中国製あるいは旧ソ連製の第一世代、第二世代の旧式機が占めているという状況でございます。そのほか特徴的なのは、特殊部隊の輸送に使用されると見られるアントノフ2型、翼が二段になっている複葉機を多数保有しております。
それから核兵器開発疑惑につきましては、九四年十月の米朝枠組み合意により一応問題解決の道筋が提示されたところでございます。それに従って北朝鮮は、現在、黒鉛減速炉及び関連施設を凍結する、最終的にはそれを解体しIAEAによる保障措置協定を完全に履行するということをコミットしております。これに対してアメリカは、代替エネルギーの供与あるいは北朝鮮への軽水炉供与のアレンジメント等を実施するということで、それに基づきましてKEDOと北朝鮮の間で軽水炉供給取り決めが締結されたということは先生方御承知のとおりでございます。
それから、北朝鮮のミサイルの開発、生産、配備でございますけれども、北朝鮮はスカッドB、スカッドCなどを生産、配備するほか、ノドン一号を開発中と見られております。スカッドBというのは射程約三百キロメートル、スカッドCは射程約五百ないし六百キロメートルを生産、配備しております。そのほか輸出もしているというふうに見られております。
それから、ノドン一号は射程約一千キロメートルのものを開発中というふうに見られております。射程一千キロメートルということは、北朝鮮のどこに配備するか、その配備位置によっては我が国の大半がその射程内に入る可能性があります。ノドン一号は現在まだ開発中と見られますので、その詳細は明らかではございませんが、いろんな情報を総合的に勘案してある程度の推定をいたしますと、射程が約一千キロメートルぐらい、弾頭重量は一千キログラム程度ではないかというふうに見られております。
それから食糧事情については、先ほど外務省の方から御説明がありましたけれども、恒常的な食糧不足に陥っていたと見られますが、特に昨年の水害等により現在北朝鮮の食糧不足は一層深刻化したというふうに見られております。
それから最近の北朝鮮軍の動向でございますが、ことしの三月末、金光鎮人民武力部第一副部長が、朝鮮半島における休戦状態は限界点に達しているという談話を発表いたしました。また、四月四日には、人民軍の板門店代表部スポークスマンが、休戦協定に基づいて負っている軍事境界線と非武装地帯の維持及び管理に関する任務を放棄する、あるいは板門店共同警備区域と非武装地帯に出入りする北朝鮮側要員と車両に、定められたすべての識別標識を使用しないことにするという談話を発表して、その直後、四月五日から三日連続で、迫撃砲、無反動砲、機関銃などで武装した兵士が板門店の共同警備区域内に進入して、応急陣地等の構築訓練を行った後、二、三時間後に撤収したという事件がございました。
これに対して、四月五日、韓国の国防部は、米韓連合軍の監視体制、ウォッチコンと呼ばれておりますけれども、監視体制を従来の三から二に引き上げたという旨を発表いたしました。報道によりますれば、その監視体制ウォッチコンというのは四区分になっておりまして、平時を四、それから最緊急時を一としているということのようでございます。
それから五月十七日には、軍事境界線の別のところですけれども、軍事境界線を越えて韓国側に北朝鮮軍兵士が侵入した。それで、一時間後に警告射撃に遭って撤収したという事件もございました。
それから海の方では、西海岸の方ですけれども、四月十九日には北朝鮮の警備艇二隻が、黄海に設定されている南北の境界線、北方限界線を越えて韓国領に侵入して、韓国海軍の艦艇が出動して北朝鮮の警備艇は北朝鮮側に戻ったという事件がありました。同様の事件は五月二十三日、このときは警備艇五隻にふえておりますけれども、同じように北方限界線を越えて韓国側に侵入したという事件がございました。
それから五月二十三日には、ピョンヤンの近くにありますオンチョン基地から飛び立った北朝鮮空軍のミグ19戦闘機一機が、韓国機に誘導された形で韓国の空軍基地に着陸して、パイロットは亡命したという事件があったことは先生方よく御承知のとおりでございます。
次に、これに対する韓国軍の動向ですけれども、毎年GNPの約四%前後を国防費に投入しており、陸軍の近代化及び海空軍の近代化に努めている。陸軍は二十二個師団、約五十五万人、海軍は約二百二十隻、約十四万トン、海兵隊二個師団、約二・五万人、空軍はF16を含む作戦機約四百九十機を有しております。
それから在韓米軍ですけれども、在韓米軍は米韓相互防衛条約に基づきまして、歩兵師団それから第七空軍等約三万六千人の部隊を韓国に配置しており、陸軍部隊等は非武装地帯付近に前方展開しております。
米国は、在韓米軍の役割をできるだけ主導的なものから支援的なものへと縮小しており、平時の作戦統制権を韓国側に返還しております。
それから、米国は東アジア太平洋地域における安全保障戦略、EASRにおきまして、今後もアメリカは韓国における軍事的プレゼンスを維持するということを確認しております。特に、戦争の抑止の重要性を強調しているところです。ちょっとそのEASRから韓国の関連部分についてアメリカの考え方というのを御紹介させていただきたいと思います。
「韓国における抑止力の維持」という中で、「米国と韓国は、北朝鮮による韓国に対する侵攻を打ち破ることができるであろう。しかしながら、戦争が再び起これば、非武装地帯の両側で甚大な損害がもたらされることになるであろう。特に、非武装地帯からわずか二十六マイルしか離れておらず、韓国の政治、経済及び文化の中心であるソウルについてはなおさらである。したがって、韓国にとって問題なのは、単に戦争に勝つのみならず、より重要なことは、北朝鮮による侵攻を抑止することであるという点を認識しておく必要がある。」「この文脈で、」「韓国における米軍のプレゼンスは、北朝鮮の侵略に関し、かかる紛争に米国が自動的にかつ直ちに関与することをまがうことなく明確にすることにより、これを抑止することに役立つものである。」というふうに述べて、その基本的な重要な任務が抑止にあるということを述べているところでございます。
以上でございます。