照屋寛徳の発言 (本会議)

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○照屋寛徳君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、ただいま中川科学技術庁長官から報告がありました高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故に関して質問を行いたいと思います。
 さて、昨年一九九五年は戦後五十周年という歴史的節目の年でありましたが、同時に、我が国の国家システム全体において安全神話の崩壊を予兆せしめる年でもあったような気がいたします。
 昨年一月十七日に発生した阪神・淡路大震災はその被害の甚大性において都市と建築技術の安全神話を、三月二十日に発生した地下鉄サリン事件などオウム真理教による未曾有の凶悪犯罪は治安と防犯の安全神話を、九月四日に発生した沖縄県でのアメリカ海兵隊員らによる少女暴行事件は日米安保条約という我が国の安全保障の神話を、住専問題は金融システム全体の信用と安全の神話を、そして十二月八日に発生した「もんじゅ」の事故こそは、我が国の原子力行政における安全神話を一瞬にして打ち砕いたと言えるのではないでしょうか。
 「もんじゅ」の事故から四カ月余りがたちました。この間、事故原因の究明が進められてきましたが、国民の、とりわけ地元住民の動力炉・核燃料開発事業団と監督官庁である科学技術庁に対する不信と怒りはいまだ消えておりません。
 私も、本年三月二十日、福井県敦賀市在のもんじゅ建設所を訪ね、「もんじゅ」に立ち入って事故発生状況等を検分してまいりました。私が現認し説明を聞いた限りにおいて、今回の事故は動燃が言うような想定の範囲の軽微な事故ではなく、極めて重大かつ深刻な事故であります。
 高速増殖原型炉「もんじゅ」開発の最大の技術的課題として、ナトリウム使用の技術的困難性、危険性などがこれまでも数多く指摘されてきました。今回の事故はその懸念が現実のものとなったという点で極めて重大であります。また、地元自治体への通報のおくれ、運転手順書いわゆるマニュアルの欠陥、事故発生直後のビデオの隠匿など、動燃の不誠実きわまりない対応が厳しい批判にさらされてまいりました。
 去る二月九日に科学技術庁は、「高速増殖原型炉もんじゅナトリウム漏えい事故の調査状況について」を発表しました。この中で科学技術庁は、
 一 もんじゅの施設・設備は設計、製作、建設及び試験検査を通じて高い信頼性を確保することとしていたにもかかわらず、現実に漏えいが発生した。二 漏えいを初期の段階で掌握し、火災拡大に至らないように適切に対処できなかった。三 事故後の現場入域調査の結果が、ビデオによる情報を含め、規制当局に正しく提供されず、速やかな公表もされなかった。ことなどについて、「極めて重く受けとめる必要がある」と述べております。指摘事項は至極当然であります。
 科学技術庁の調査報告は、事故後の拡大防止について、原子炉を手動で緊急停止すべきであったのに、異常時運転手順書、運転員の判断にミスがあったこと、事故発生第一報体制の不備、不適切な対外情報提供などにおいても安全規制の基本を揺るがす問題があったとの認識を示しております。事故調査は、今後に残された課題も数多くあり、まだまだ不十分で、緒についたばかりと言えましょう。
 そこでお伺いいたします。
 第一は、事故原因の徹底究明であります。絶対に起きないと繰り返し説明してきたナトリウム漏えい事故の重大性を認識し、事故に関する資料やデータを詳細かつ速やかに公表する姿勢を堅持すべきです。その上で、徹底的な原因究明を当事者と利害関係のない第三者的独立調査機関のもとで行う必要があるのではないでしょうか。
 動燃は事故の当事者であり、原子力安全委員会は「もんじゅ」の安全審査を行って合格の判を押してきた当事者であって、今度の事故に対してはむしろ責任をとらねばならない立場にあります。推進の役割と規制の役割を果たす専門家を明確に分離して考えるべきではないでしょうか。調査の客観性を確保するためにも、高速増殖炉を推進してきた科学技術庁から独立した第三者機関に事故原因の究明と今後の対策の検討をゆだねるべきだと思いますが、橋本総理大臣の御見解をお伺いいたします。
 第二に、今回の「もんじゅ」ナトリウム漏えい事故の直接原因と言われる二次主冷却系熱交換器の出口付近に設置された温度計の問題です。
 ナトリウム温度計のさやの細管部分が折れたのは、高サイクル疲労による破壊の可能性が高いと発表されております。だが、「もんじゅ」においては、温度計の設計だけでなく、炉心の核設計及び液体ナトリウムの伝熱流動設計及び配管システムの構造設計などにも欠陥が指摘されておるのでございます。この際、「もんじゅ」全体の安全性について徹底的な見直しを行うとともに、原子力発電所に対する国の安全審査や検査体制を再検討する必要があると思いますが、科学技術庁長官の御見解をお伺いいたします。
 第三に、破壊した温度計さや管が、去る三月二十八日、蒸気発生器のナトリウム入り口部分で発見されました。単刀直入にお伺いいたします。本件温度計は重大な設計ミスではないでしょうか、科学技術庁長官に伺います。
 第四に、プルトニウムリサイクル計画についてお聞きいたします。
 「もんじゅ」の運転停止や新型転換炉実証炉の建設中止などの実態を踏まえれば、プルトニウムの長期需給計画を早急にかつ全面的に見直す好機だと思います。私は、高速増殖炉を中核とする我が国のプルトニウム計画全体の進め方を見直し、経済、環境、核拡散、地域の安定化などのあらゆる側面から再検討すべきであると提言いたします。その上で、原子力にかえて水力や風力、地熱、太陽光などの自然エネルギー利用を柱に据えた総合エネルギー政策を確立するための研究開発を進めることが必要だと考えますが、科学技術庁長官にお伺いいたします。
 第五に、「もんじゅ」の今後についてであります。
 高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開に当たっては、事故原因の究明結果と防災・安全対策の確立などで地元自治体や住民の合意が得られるまで行わないことを確約すべきと思います。少なくとも「もんじゅ」のシステム全体の安全性を再点検すること、次にシステム全体の製造・施工の再検査であり、最後に液体ナトリウムが漏れても火災・爆発事故に発展しないようにシステムの部分的改造を図ることが必要であるとの専門家の意見を最大限尊重すべきと考えますが、橋本総理大臣の御見解をお伺いいたします。
 原子力の開発利用にとって国民の信頼は欠かせません。原子力長期計画でも、国、原子力事業者に対する国民の信頼感、安心感を得ることが重要であると指摘し、具体的には、国民参加型の行政運営、情報公開、情報の提供への一層の配慮、方策の充実を指摘しております。
 この点で、高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故に関してさきに指摘した動燃の対応は、国民の信頼を損なうものとして厳しく批判されなければなりません。また、指導監督の任務を負う科学技術庁の責任も重大であります。
 今後とも事故原因を徹底的に究明するとともに、地元住民の信頼を回復するため、積極的かつ速やかな情報公開を推進し、地元住民が納得する安全対策が講じられるまで「もんじゅ」の運転再開は凍結するよう強く求めます。
 「もんじゅ」の名は釈迦如来の脇士の一つである文殊菩薩に由来すると言われます。文殊菩薩は知恵の象徴でありますが、人類の知恵は原子力を自在に操る技術をいまだ手にしておりません。私は、人間が唯一頼りにすべきは確かな地球の存在そのものであると考えます。
 この際、原子力政策、とりわけプルトニウム利用を中心とした核燃料リサイクル計画を抜本的に見直し、高速増殖炉からの勇気ある撤退を求める声が日増しに高まっていることを申し上げて、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 113615254X01019960410_008

発言者: 照屋寛徳

speaker_id: 24406

日付: 1996-04-10

院: 参議院

会議名: 本会議