井上裕の発言 (本会議)

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○井上裕君 ただいま議題となりました平成八年度予算三案につきまして、予算委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 平成八年度予算の内容につきましては、既に久保大蔵大臣の財政演説において説明されておりますので、これを省略させていただきます。
 平成八年度予算三案は、一月二十二日、国会に提出され、一月二十六日、久保大蔵大臣より趣旨説明を聴取いたしましたが、衆議院において修正議決の上、四月十一日、本院に送付されましたので、四月十二日、上原衆議院予算委員長より衆議院における修正部分の説明を聴取した後、質疑に入りました。
 自来、昨日まで審査を行ってまいりましたが、この間、四月十九日及び二十二日には住宅金融専門会社問題に関する参考人質疑を、また四月三十日には公聴会を、さらに五月一日及び二日には住宅金融専門会社問題に関する証人喚問を、五月七日には委嘱審査を、五月八日には住宅金融専門会社問題、経済及び財政に関する集中審議をそれぞれ行うとともに、予備審査中の一月三十日から二月二日にかけては、三重県、京都府、大阪府並びに愛媛県、香川県にそれぞれ委員を派遣して現地調査を行うなど、本日に至るまで効率的かつ濃密な審査を行ってまいりました。
 以下、質疑のりち主なもの若干につき、その要旨を御報告申し上げます。
 まず、住宅金融専門会社問題について、「今回の政府の処理スキームにおいては六千八百五十億円もの財政資金を投入することとなっているが、多くの国民が反対している財政資金をなぜ投入しなければならないのか。住専の不良債権処理問題は、六千八百五十億円を予算から削除し、法的処理によって解決すべきではないのか。また、昨年の地価を基準に算定している政府の損失処理案は、地価下落が続いている現状ではさらに損失額が拡大し、国民の負担増につながるのではないか。住専に多額の紹介融資を行い、その大部分を焦げつかせた母体行の責任は特に重く、母体行に追加負担を求めるべきではないか。さらに、母体行ばかりでなく、住専から融資を受けた借り手はもちろんのこと、行政や系統金融機関にも責任はあるが、これらの責任にどう対応するのか。また、いわゆる覚書についてはどう解釈しているか。この際、日銀法の改正を含め、金融行政全体を見直す必要があるのではないか。衆議院で修正された「制度を整備した上で措置する」については、どのように受けとめ、解釈しているか」との質疑がありました。
 これに対し、橋本内閣総理大臣及び関係各大臣並びに日本銀行総裁より、「今回の住宅金融専門会社不良債権処理スキームをまとめたのは、現在我が国金融が抱えている巨額の不良債権を早期に処理し、内外の信用と信頼を確保することによって、金融システムの安定化を図るとともに、回復基調にある経済を軌道に乗せ、最終的に預金者を保護することが政治の任務であるとの考え方に立っている。住専の問題が民間企業の債権債務の問題であることは十分承知している。しかし、今日、巨額の不良債権を抱えた住専の処理を民間だけの処理に任せたのでは、関係者が多数に上り、かつ時間がかかり過ぎて、不良債権の早期解決と金融システムの確立という政治の責任を果たすことが困難となるおそれがあるので、大蔵省を中心にして関係金融機関等との間で処理策について真剣な検討が加えられ、最終的に当事者間の合意事項としてまとめられ、その結果として六千八百五十億円の財政支出を行うことになったものである。もし法的な処理をとる場合には、仮に会社更生法によることとすると関係者の間の合意が必要であるが、現状では関係者の意見が厳しく対立しており、更生計画案決定に必要な債権額の三分の二以上の同意を取りつけることは難しいものと思われる。したがって、六千八百五十億円を予算から削除して法的な処理にゆだねるより、今回のような関係者の間の合意によって解決することの方がより適切と考えている。処理案における損失額の算定については、昨年の路線価を基準に評価していることは事実であるが、路線価は地価公示価格の八割相当額となっているので、そこには二割程度の安全度が見込まれているものである。しかし、ことし一月時点での公示価格は大都市圏では一七%も下落しているところもあり、非常に厳しいものになることも予測されるので、担保処分による債権の回収にはより一層の努力を要するものと考えている。さらに、住専の設立に出資者として関与した母体行は、役員を含めて人材派遣を行うなど経営に深く関与していたほか、多額の紹介融資を行い、しかもその九割が不良債権化するような事態を生み出している。このような経緯を持つ母体行は、銀行という公共性、社会的責任という立場にかんがみてその責任は極めて重いと考えている。母体行も債権の全額放棄、低利融資及び拠出基金の分担などの負担を行うことになっているが、母体行の責任がこれで十分だと考えているものではない。紹介融資の責任については、それぞれの事情に応じて、あらゆる法的手段を含めて厳格にその責任を追及し、結果として損害賠償を求める場合もあり得ると考えている。また、母体行のみならず借り手についても債権の回収のために万全の措置を講ずる必要があり、特に、返すつもりもなく借りた悪質な借り手は徹底的に追及し、刑事上及び民事上の責任を可能な限り明らかにし、決して許さない覚悟である。さらに、検査・監督の責任のある大蔵省も最善と考えることを精いっぱい行ってきたが、結果的にその対応は必ずしも適切でなかった点もあり、今日の事態が起きていることに責任があると考えている。この上は、住専問題を適切に処理し、問題が解決に向かう段階において、とるべき責任があればこれを明確にすることを橋本内閣の発足に当たって確認しているところである。系統金融機関においても、多額の融資を行った結果責任は免れず、五千三百億円を贈与の形で負担するが、今後は系統金融のあり方について抜本的な検討を加えていく必要があると考えている。住専の第二次再建計画策定の際、大蔵、農水両省の局長間において取り交わされた覚書については、法律上の拘束力を持つというものではなく、文言どおりであるが、系統側においては元本の保証について期待感を持ったものと理解している。今回の金融不良債権問題を機に金融行政のあり方が議論を呼んでいるが、既に与党内では改革のためのプロジェクトチームが発足し、議論が始まっている。また、大蔵省においても新時代の金融行政のあり方についての検討を行うためのプロジェクトチームを発足させたところであるが、大蔵省としては、現在の機構組織を防衛するためのものでなく、新しい時代にふさわしい金融行政のあり方がまとめられ、改革の方向がスタートできるようにしたいと考えている。さらに、日銀法の改正については、これまで現行の日銀法のもとで特に政策運営上支障が生ずることもなく、法改正の緊急性はないとの議論が行われてきた。しかし、今後、経済の市場化や金融の国際化がさらに進展していくことを考えれば、現在の法律のもとでは、中央銀行に対する信任を維持しながら適切な政策運営を保持していくという点で必ずしも十分に対応できない可能性もあり、時代の要請に即応できるような改善が行われることは大変望ましいものと考えている。しかし、中央銀行の独立性を高めるということになれば、同時に国の金融システム、経済システムの根幹にも触れる決意がなければならないし、当然に中央銀行の政策決定過程の透明性を高めたり、あるいは国会報告義務など、責任の重みを果たし得るような制度の改革が必要になるものと考えている。衆議院の与野党合意における「制度を整備した上で措置する」については、徹底した債権回収を図るための体制整備に一層取り組むとともに、今後の住専特別措置法案の審議における議論を十分踏まえて措置していくことと受けとめている」との答弁がありました。
 次に、財政問題について、「我が国財政は赤字国債の発行や国債残高の累増が進み、先進諸国の中でも財政状況が最も悪い国となり、まさに財政は危機的状況にあるが、政府はこのような財政をどう改善していく考えか。また、政府の主張する財政の健全化とは財政がどのような状態になることを言うのか。新しい経済五カ年計画における経済見通しは名目で三・五%程度を見込んでいるが、その場合の税収の増加はどの程度と見込まれるのか。さらに、その税収で赤字国債依存体質から脱却できるのか。財政改革は、歳入歳出を機械的に伸ばしただけの現在の中期展望ではなく、もっと踏み込んだ財政計画のようなものが必要ではないか。そのためには、例えば財政改革推進委員会の設置、あるいは財政再建法を策定すべきではないのか」との質疑がありました。
 これに対し、橋本内閣総理大臣及び大蔵大臣より、「バブル経済崩壊後の厳しい経済情勢に対応するため相次いで経済対策が打ち出されたが、これは景気の回復を最優先にし、一時的な国債の発行増加はやむを得ないと考え、積極的な景気回復策をとってきたことによるものであるが、その結果、今年度末の国債残高は二百四十一兆円に達する見込みで、我が国財政はまさに危機的状況に直面している。現在、財政制度審議会及び与党三党においても財政構造改革に関し検討をお願いしているが、今後はこうした幅広い論議の中から改革の方向を打ち出していきたいと考えている。財政の健全化については、必ずしも一義的な定義はないが、健全な財政と言えるためには、まず赤字国債の発行や国債費による政策的な経費の圧迫がない状態になることが必要だと考えている。名目成長率三・五%を前提にすると、税収は平年度で約二・四兆円の増収が見込まれるが、他方、歳出面においては、国債費や地方交付税、さらに一般歳出の増加額が約三・五兆円と見込まれるので、差し引き約一・一兆円ずつ赤字額は拡大することになり、いわば発散型の財政構造で、赤字国債依存からの脱却は極めて困難な状況である。現在国会に提出している財政の中期展望は、現行の制度、施策を前提にして将来の財政の姿を投影したものであるが、本年度は議論の素材としてさらに幾つかの仮定を置いて将来を推計したものも示したところである。しかし、収支相償う財政計画というものは我が国においてはいろいろな問題があり、いまだ検討の緒についていない状況である。財政改革推進委員会創設の提言については、新たな審議会を設置するよりも、既存の財政審を中心に税制調査会や経済審議会等が横の連携をとり、それぞれの特色を生かしながら方向づけができるような工夫をしてみたい。財政再建法の策定については、今は何といっても景気を回復軌道に乗せることが最優先であり、現状においては財政再建法を策定する考えは持っていない」との答弁がありました。
 経済・景気動向につきましては、「景気は全体として回復に向かっていると言われているが、今後の経済運営にはどのような基本的姿勢で臨むのか。特に、今なお厳しい状況が続いている中小企業への対策はさらに必要ではないか。政府は、新しい経済五カ年計画で今後の経済成長率を三・五%程度と見込んでいるが、達成の見込みはあるのか」との質疑があり、これに対し橋本内閣総理大臣及び関係各大臣より、「我が国経済はようやく回復の動きが出始めているが、なお力強さに欠けているので、今後はこれが本格的な民需主導の回復につながるよう切れ目のない適切な経済運営を行っていくことが必要だと考えている。特に注意が必要なのは雇用情勢と中小企業の動向であるが、今回の景気回復局面では中小企業に活気が見られず、廃業者の数もふえており、これらが雇用面にも響いていることに注意を怠ってはならないと考えている。しかし、ごく最近になって中小企業の経営状況にも改善を示す指標が見え始めており、今後は大企業から始まった設備投資の回復が徐々に中小企業にも広がり、全体として回復につながっていくものと期待している。今後の経済成長率の見通しについては、昨年決定した新経済五カ年計画で、名目三・五%、実質三・〇%の成長を見込んでいるが、一方では、もし構造改革が思うように進まなかったら名目でも半分の一・七五%程度の成長にとどまることもメッセージとして書き添えてあり、構造改革がまさに差し迫った課題であることを示しているものである」との答弁がありました。
 次に、沖縄米軍基地問題につきましては、「沖縄米軍基地問題の象徴である普天間基地が、総理の政治決断とリーダーシップにより全面返還されることになり、加えて過去二十五年間の実績を上回る基地縮小の中間報告が発表されたが、今後は返還に伴う移転先の問題など調整の積み上げが必要になってくると思うが、どう対応するのか。普天間基地は五年から七年の間に本当に全面返還されるのか」との質疑があり、これに対し橋本内閣総理大臣及び各大臣より、「日米安全保障条約を基盤にした日米関係により沖縄県に非常に多くの基地が重なった結果、不幸な事件が発生したことは大変残念なことであったが、これを機に基地の整理・統合・縮小が大きな問題として持ち上がった。沖縄県の方々の気持ちを酌みながら、同時に米軍の機能・能力を低下させないよう必死で取り組んできたつもりである。普天間基地の返還が五年から七年の間に実現できるかどうかは沖縄県の御協力が得られるかどうかが一番大事なことだと考え、事前に沖縄県知事にお会いをし、お考えを聞くなどしてきたところである。そうした結果、ヘリポートを県内の他の基地に移設しなければならないとしても、人口過密地帯の普天間基地を閉鎖することができれば一歩前進と考え、決断したものである。今後その実現のためには、ヘリポート移設先の住民の方々の同意と理解、返還後の跡地利用計画、環境アセスメント等々の手順と作業を踏まなければならないが、その作業においては、沖縄県知事にお願いし、副知事あるいは調整監に内閣官房副長官のもとにつくるタスクフォースの中に加わってもらい、一緒に作業をしてもらうこととし、知事の快諾をいただいているところである。県も協力を約束してくださり、関係者の協力が得られれば、普天間基地の返還は必ず実現できるものと信じている。費用については、現時点で算定できるものではないが、十分かつ適切な措置を講じていきたいと考えている」との答弁がありました。
 日米安全保障共同宣言につきましては、「今回の共同宣言は、東西冷戦終結後における日米同盟の将来にとって極めて重要と思うが、今回の共同宣言の性格は何か。また、宣言の中で使われているアジア太平洋地域とはどこを指し、安保条約第六条にある極東の範囲とどのような関係になるのか」との質疑があり、これに対し橋本内閣総理大臣及び関係各大臣より、「今回の日米安全保障共同宣言は、これまでの安全保障分野における日米間の緊密な対話の成果を踏まえ、日米安保体制の重要な役割を改めて確認し、二十一世紀に向けた日米同盟関係のあり方についての内外の意思を明らかにしたものであると考えている。共同宣言で使われているアジア太平洋地域の範囲については、経済的、文化的に交流のある地域で、政治面でも互いに共通の利害あるいは安定を維持していくことに関心を持っている地域であり、我が国はその中心にあるが、どこからどこまでという画然と線の引けるものではない。さらに、安保条約第六条の極東の範囲とはフィリピン以北の日本周辺地域という従来からの政府統一見解があり、今回の共同宣言で変更することはない。共同宣言において述べていることは、日米安保体制によって支えられている米軍のプレゼンスがアジア太平洋地域全体の安定に効果があることを再確認したものであり、極東の範囲とアジア太平洋地域とが必ずしも一致しているものではない」との答弁がありました。
 質疑は、このほか、薬害エイズ問題等広範多岐にわたりましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
 質疑を終局し、討論に入りましたところ、平成会を代表して都築委員が反対、自由民主党並びに社会民主党・護憲連合を代表して山本委員が賛成、日本共産党を代表して有働委員が反対の旨、それぞれ意見を述べられました。
 討論を終局し、採決の結果、平成八年度予算三案はいずれも賛成多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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発言情報

speech_id: 113615254X01619960510_002

発言者: 井上裕

speaker_id: 25737

日付: 1996-05-10

院: 参議院

会議名: 本会議