青木幹雄の発言 (本会議)
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○青木幹雄君 私は、自由民主党、社会民主党・護憲連合及び新党さきがけを代表いたしまして、ただいま議題となりました国連海洋法条約及び関連法案に対し、橋本総理並びに関係大臣に質問をいたします。
国連海洋法条約は、海洋についての憲法あるいは基本法とも言われるほど広範な内容を含むものであり、政府も本年二月二十日の閣議了解の中でこの国連海洋法条約について、「国際社会における安定した海洋の法的秩序の確立に資するのみならず、海洋国家としての我が国の国益に沿うものである」といたしておるところでありますが、四方を海に囲まれ、古くから水産物を利用してきた我が国にあっては、特に水産業とのかかわり合いが深いことは言うまでもないところであります。
私は、まずこの法案を審議するに当たって、我が国水産業がいかに厳しい苦しい現状にあるかを十分に理解し認識をしていくところから始めていかなければならないと考えております。
御承知のとおり、我が国水産業は、国民に対して動物性たんぱく質の約四割を供給し、健康で豊かな日本型食生活を実現していく上でも大きな役割を果たしているのみならず、国土の均衡ある発展と漁村地域社会の活性化等にも重要な役割を果たしてまいりました。
しかしながら、我が国水産業は、今日、未曾有の困難と言っても過言ではない状況に直面をいたしております。
まず、生産量は平成元年以降六年連続して減少しており、平成六年は約八百万トンと最盛期の三分の二足らずの水準にまで落ち込んでおります。資源状況を見ても、高水準にあるのはサンマや人工放流が行われておる瀬戸内海のマダイ、ヒラメなど、ごくわずかなものに限られており、急速に減少しているマイワシ資源を初めとして、大部分が悪化、減少の一途をたどっておる現状であります。
一方、魚価は、円高等による水産物輸入の増大、景気の低迷に伴う食料消費の伸び悩み等によって低下しており、平成六年の産地卸売価格指数は、平成二年を一〇〇とすると九一となっております。
我が国水産業は、このような生産量の減少と魚価の低下という二重の打撃に見舞われており、その結果、漁業経営をめぐる状況は大変に厳しいものとなっております。特に中小漁業の経営は、平均で見ますと三年連続の赤字となっているだけでなく、ほぼ半数の経営体が赤字経営を余儀なくされております。
このほか、餌料用イワシ価格の高騰による養殖業経営の悪化、漁業経営の悪化に伴う漁業協同組合経営の悪化、漁業就業者の減少及び高齢化、漁村地域の活力の低下など、我が国水産業はまことに憂慮すべき状態に現在置かれております。
私は、今回の国連海洋法条約の締結及び関連法案の整備は、我が国周辺水域における資源管理に遺憾なきを期するとともに、我が国水産業の再生を図る絶好の機会と考えているところでありますが、我が国水産業の置かれている現状につきまして政府としてどのように認識をしておられるのか、農林水産大臣の御所見をお伺いいたします。
去る二月二十八日、日本武道館におきまして全国漁民大会が開催されました。この法案の一日も早い成立と実行を願って、全国から約六千人の漁民が集まりました。
そして、各政党からもそれぞれの代表の方々が出席をされました。そして、出席された各政党の代表がその席でこの法案に対する各党の決意を漁民の前に表明をしてこられました。自民党は加藤幹事長、社民党は佐藤幹事長、さきがけは鳩山代表幹事、新進党は愛知政策審議会長、共産党は立木中央委員会副議長であります。そして、六千人の漁民と一緒になって次のような決議がなされました。「漁業資源の持続的利用を図るため、国連海洋法条約の批准に合わせ、二百海里排他的経済水域を全面設定・全面適用すること」という決議であります。すなわち、全政党を挙げて二百海里の全面設定・全面適用を国民の前に、漁民の前に公約をしてまいったわけであります。
したがいまして、私は、この法案につきましては全会一致で一日も早く成立をさせ、全面設定・全面適用に向けて最大の努力をする責任が私どもにあるということを痛感いたしております。
この法案は、四つの委員会にまたがり、内容が非常に複雑多岐にわたっております。本来ならば、それぞれの法案の内容について各大臣にお尋ねをするのが本筋であることを私も十分承知をいたしております。しかし、これらの法案は、日韓・日中漁業協定の改定が行われて初めて有効に働くものであり、万一、万一であります、不幸にして日韓・日中の交渉が不調に終わった場合、私どもがいかに熱心に審議をしても絵にかいたもちにならざるを得ない法案であります。しかも、領土問題の絡んだ複雑な交渉がこれから始まろうとしている、今、大切な時期であります。私は、細部にわたる質問をすることは差し控えたいと思います。
そこで、私は、水産に関した分野でごく基本的なことについてのみ質問をいたしたいと考えております。
今回、政府より提案のあった排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律案及び海洋生物資源の保存及び管理に関する法律案におきましては、排他的経済水域においていわゆる全面設定・全面適用が行われることを前提として、我が国周辺水域における水産資源を我が国が責任を持って主体的に管理する体制の整備を図ることといたしておりますが、国連海洋法条約の締結及び関連法案の整備だけではその実現が望めないことは、政府及び議員各位よく御承知のとおりであります。
周知のとおり、東経百三十五度以西の日本海側には漁業水域が設定をされず、また、現行日韓漁業協定及び日中漁業協定が、自国漁船の取り締まりはそれぞれの漁船の所属する国が行ういわゆる旗国主義を採用しておるところから、漁業水域が設定されている水域についても、韓国、中国についてはその適用を除外するという変則的な状態が今日までなお続いております。
漁業者を初めとする関係者は、我が国漁業者が操業の自粛、資源の保護のために懸命の努力を行っている中、韓国漁船、中国漁船が勝手気ままに操業しているのを指をくわえて見ているしかないという現状に強いいら立ちや危機感を抱いてまいりました。まことに残念なことであります。
国連海洋法条約の締結という機会をとらえて、排他的経済水域を日本海の西側にも設定するとともに、日韓漁業協定、日中漁業協定を改定して、韓国漁船、中国漁船についても我が国のルールを適用するいわゆる全面設定・全面適用を求める強い声が漁業者を初めとする関係者から提起されていることは御承知のとおりであり、当然のことであります。
私ども連立与党は、去る三月二十六日の閣議決定に先立って、日韓漁業協定及び日中漁業協定の見直し交渉を精力的に行い、早急に結論を得るよう、また「本年中に改定方針の合意を得ることを基本とし、一年以内を目途に交渉を進めること」等を内容とする申し入れを政府に対して行ったところであります。交渉事でありますので、竹島、尖閣列島の領有権問題等、厳しい問題もあろうかとは思いますが、幸い韓国との間では、領土問題については切り離して交渉に臨むという方針が橋本総理と金大統領との間で了解をされているところであります。また、韓国は既に本年一月末に国連海洋法条約を批准しており、中国も去る五月十五日に全国人民代表大会において批准が承認されたことが伝えられているところであります。日韓漁業協定、日中漁業協定を改定し、国連海洋法条約の趣旨に即した資源管理体制を構築するための基本的な条件は、今、整っていると言っても差し支えないのではないでしょうか。
そこで、総理に、日韓漁業協定及び日中漁業協定の見直し交渉に当たっての政府としての基本的な姿勢と決意をお伺いしたいと思います。また、協定改定交渉の現状と見通しを外務大臣にお伺いをいたします。
日韓・日中の漁業交渉はまだ緒についたばかりであり、また、相手のあることでありますので、許される範囲においてお答えを願いたいと思います。国連海洋法条約の趣旨に即した排他的経済水域の全面設定・全面適用及び漁獲可能量すなわちTAC制度の導入による資源管理体制の構築は、我が国水産業の現状を打破し将来を築くために不可欠なものでありますが、反面、農業におけるガット・ウルグアイ・ラウンドの受け入れにも匹敵する改革を我が国水産業に迫るものであります。韓国及び中国との協定改定交渉の結果、相手国排他的経済水域から我が国漁業者が締め出されるということがあるかもしれません。また、漁獲可能量の設定に伴って減船が必要となるような事態が起こってくるかもしれません。
農業においては、ウルグアイ・ラウンドの受け入れに当たって、あらかじめ新農政というものを打ち出し、さらに総額六兆百億円という財政措置が講じられたわけであります。水産業においても、この大きな変革期に当たって新水産政策を打ち出し、その実現のために必要な財政措置を積極的に講じていくことが必要と思うわけであります。
そこで、水産業に大きな変革をもたらす国連海洋法条約の締結と関連法案の整備に当たって、この点についての総理の前向きな御決意をお伺いしたいと思います。
国連海洋法条約及び関連法案は、海洋に関する新たな秩序を形成するものであり、海洋国家としての我が国の国益に沿うものであることは言うまでもありませんが、それが真に国益に沿うものとなるかどうかは、外交交渉や制度の運用等政府の今後の対応のいかんにかかっております。
我が国は、独立主権国家として、竹島等を含む領土問題については常に毅然たる態度で臨んでいかなければなりません。その中にあって、英知をめぐらしつつ、漁業交渉等が現実的、円満に実を結ぶよう政府として万全の取り組みをしていただくことを切に要望するものであります。
最後に、今国会は住専国会と言われてまいりました。まさにそのとおりであったかもしれません。住専処理に対する各政党の考え方の違いから、漁民の生活のかかったこの大切な法案が会期末を控えて今やっとこうして参議院本会議で質疑をさせていただいております。全国津々浦々で海を相手に一生懸命に体を張って生きている漁民の皆さんは、住専問題とは何ら関係のない皆さんであります。何ら責任のない皆さんであります。衆議院のことはいざ知らず、参議院においては、一日も早く漁民の願いをかなえてあげるべくみんなで努力をすることが私は本当の意味での参議院の主体性、独自性の確立てあり、参議院の良識ではないかと考えております。このことを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕