戸田邦司の発言 (本会議)
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○戸田邦司君 平成会の戸田邦司でございます。
私は、平成会を代表して、ただいま趣旨説明のありました国連海洋法条約及び関連国内法案等について、総理及び関係大臣に質問いたします。
我が国は、四方を海に囲まれた典型的な海洋国家であり、古来、海の幸により豊かな食文化を醸成してきており、大陸からあるいは西欧からの外来の文化はすべて海を渡って我が国にもたらされ、今日の日本文化を形成しているのであります。また、資源の乏しい国家として原材料のほとんどを外国に依存している我が国の産業経済を支えているのは、我が国を中心とする海上輸送であう、その輸送量は世界の海上輸送量の二〇%にも達しております。
このように、我が国にとって海は我が国の産業経済、国民生活を支える重要な存在であり、今日の我が国あるは海との深いかかわりなしには語ることができません。
海洋法の秩序は、数百年以上にも及ぶ国際関係の歴史の中で形成されてきており、各国の政治、経済あるいは軍事上の権益の争いの中で、定着と変革を繰り返しながらその秩序も変遷し、それぞれの時代の国際関係の現実を反映しつつ、国際法上の権利義務を定めてきております。
第二次世界大戦後、国際連合は、一九五八年に第一次国連海洋法会議を開催し、ジュネーブにおいて海洋法四条約を採択しており、さらに一九七三年より開催された第三次国連海洋法会議においては、それまでの海洋法を補完しただけではなく、その基本的な枠組みを変え、将来を展望しつつ、十年の歳月を費やして一九八二年四月に画期的かつ包括的な国連海洋法条約を採択しております。一般的には海の憲法と呼ばれておりますが、本条約はむしろ海の国連憲章と呼ぶべき性格を有しており、我が国にとってこの条約の締結は極めて重要な意義を有するものと考えられます。
そこで、まず総理にお伺いします。
本条約が採択されて十四年を経過し、一九九三年十一月に発効要件が整い、さらに一九九四年十一月に発効して一年以上を経過して初めて条約締結の承認を求めて今国会に提出されたのでありますが、何ゆえに我が国の条約締結のための手続がこのように遅くなったのか、また、それによって国家としていかなる得失があったのか、御見解をお伺いいたします。
一般的にいいまして、我が国は、国際条約、国際協定の処理については、発効ぎりぎりになって、あるいは発効してから国会に承認を求めるということが間々あるように見受けられます。条約実施のための国内法整備、国際折衝等を考えると簡単にはいかないということも理解できないわけではありませんが、時が来れば何とかなるだろうという気持ちもあながち否定できないところではないかと思われます。
私は、このような重要な案件の処理についてはより一層積極的な姿勢で臨んでいただきたいと思いますが、外務大臣の御見解をお伺いいたします。
海洋大国である米国は条約の採択に反対したままいまだその態度を変えず、連合王国、ノルウェー等はいまだ条約を批准せず、いずれも条約の内容を実質的に取り込んだ国内法を制定して国家権益は確保するという、いわゆる条約のつまみ食いをしているという現実があります。
海洋大国についてこのような状況が放置されますと、それらの国による条約の規定の選択的、恣意的な行使により、海洋法条約の運営の安定を脅かすことも考えられます。国連海洋法条約締約国の一員として、我が国は今後それらの国々に対し何らかの働きかけをなすべきではないかと思いますが、外務大臣の御見解をお伺いいたします。
次に、領土問題であります。
北方領土問題はいまだロシアとの間で解決を見ないところであり、また、本条約の締結に当たって、竹島問題及び尖閣諸島問題についても外交上の重要案件として早急に解決を迫られております。我が国は、これまで外交的な場でこれらの領有権について機会あるごとに相手国に注意を喚起してきたところでありますが、これらの領有権については我が国の主張するところを明確に示して、我が国の国民はもちろん、国際的な世論にも訴えていかなければならないと思いますが、この問題についての御見解を総理及び外務大臣にお伺いいたします。
次に、本条約の実施に当たり直ちに問題になりますのは、竹島及び尖閣諸島の領有権問題であります。
まず、竹島問題については、これまで韓国政府との間で紆余曲折があり、この問題を国際司法裁判所で解決しようという我が国の提案については韓国側がこれを拒否するという姿勢を示し続けていることを考えると、国際司法裁判所による解決は極めて難しく、また、本条約の規定するところによって領土問題を解決することは不可能であるということを考え合わせると、竹島の領有権問題の解決には並々ならぬ決意と努力が必要でありますが、総理及び外務大臣の御見解と御決意をお伺いいたします。
韓国との交渉につきましては、総理は、竹島問題を切り離して漁業協定の締結を優先することに合意しているとのことであり、また、日中非公式漁業交渉において政府は領土問題を切り離して漁業交渉を進めようとしているとのことでありますが、領土問題の切り離しは、これに直接つながる領海及び排他的経済水域の設定にかかわる問題の解決を先送りして、将来、我が国の立場を一層困難なものにするのではないかと深く危惧するところであります。
領土問題を切り離して領海及び排他的経済水域の設定をどのように進め、この問題と深くかかわっている日韓・日中漁業交渉をどのように進めるのか、外務大臣と農林水産大臣の御見解をお伺いいたします。次に、我が国周辺水域における漁業問題であります。
今回、国連海洋法条約に基づく国内法によって、排他的経済水域において魚種別の漁獲可能量すなわちTACを定めることになっております。このTACを制定するに当たっては、当面これまでの漁獲実績を尊重するとのことでありますが、そのような対応ではTAC本来の目的を達成できるかどうか甚だ疑問に思うものであります。可能な限り速やかに、より科学的な資源調査に基づいてTACを決定できるよう、早急に調査体制及び海洋資源の適正配分体制の整備を進めるべきであると考えます。農林水産大臣の御見解をお伺いいたします。
さらに、今回の国連海洋法条約の締結に伴い我が国漁業にいかなる利益がもたらされるのか、また、失うところはないのか、それは我が国漁業者の最大の関心事であり、漁業者はさらに減船問題等が生ずるのではないかとの深い疑念を持つ向きもあると聞いておりますが、農林水産大臣の明快なる御答弁をお願いいたします。
次に、海底資源の問題であります。
我が国周辺海域における海底資源開発に関しては、例えば日中間の大陸棚の境界線の画定等、今後、鉱物資源の探査、開発及び管理を行っていくに際して解決を迫られている大きな問題が残されておりますが、これらの問題にどのように対応されるつもりか。また、深海底資源の問題については国際海底機構により管理されることになっており、今後の公平な運営が期待されているところでありますが、我が国はどのように対応されるのか、総理の御所見をお伺いいたします。
冒頭述べましたように、我が国の輸出入量は世界の海上輸送量の二〇%に達しておりますが、それらの大部分は外国籍船により輸送されており、また、多数の外国漁船が我が国周辺海域で操業しているという現実があります。
このような状況において、我が国周辺海域での密航者、密輸等の犯罪防止、漁業権益の確保、海洋環境の保護などのための監視・取り締まり海域が大幅に拡大することになり、海上保安庁のそのための体制の大幅な整備拡充が必要になってくると思われます。特に、海上保安庁の船艇等の機材を見ると老朽化したものも多々あり、現場の職員が荒れ狂う孤独な海で安心して任務につくことができますよう、機材の更新拡充はもちろん、人員増も不可欠であります。
海上保安庁の体制及びその活動について特に御理解の深い橋本総理は、これらについてどのような対応が必要であると考えられるか、御所見をお願いいたします。
それにしても、日本の海洋科学技術は米国、フランス等に比べおくれていると言わざるを得ない状況にあります。海洋科学技術の研究開発は、特に深海の資源探査、海洋汚染の監視、海洋環境の保護等から考えて重要な分野であり、我が国は重大な決意をもって対処しなければならないと思いますが、科学技術庁長官の御所見をお伺いいたします。
また、先般、偵察衛星についての議論がありましたが、一方で漁業資源の調査のための衛星の可能性についても話題になっているところであります。海洋汚染の防止及び海洋環境の保護という観点からの衛星の活用にも大きな効果が期待できると考えられますが、これらのための衛星の開発利用についてはどのように考えられるか、科学技術庁長官の御所見をお伺いいたします。
最後になりますが、私は、一人のヨット乗りとして、時に波のまにまに、風のまにまに海の上に漂うことを至上の喜びとしておりますが、海はまた海洋レジャーの場としても極めて重要であり、健全な海洋レジャーを通じて、より一層国民の生活が豊かになりますよう願うものであります。
四面海に囲まれた我が国にとり、海は国民の偉大なる共通の財産であります。ことしの七月二十日には、国民の祝日として初めての「海の日」を迎えます。国民の一人一人に海の重要性を認識していただけますように切に望みまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕