田村秀昭の発言 (本会議)

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○田村秀昭君 私は、平成会を代表して、ただいま議題となりました日米の物品役務相互融通協定の承認及び自衛隊法の改正につきまして、防衛に関する基本的事項を踏まえて、橋本内閣総理大臣及び関係大臣に質問をいたします。
 まず、昨日発生したリムパックの事故について、事実関係と政府の見解を承りたいと存じます。
 去る四月四日、衆議院安全保障委員会において新進党の西村眞悟委員が質問に立ち、臼井防衛庁長官に対し、自衛隊は軍隊ですかと質問いたしましたところ、通常で言う軍隊とは異なるが、国際法上は軍隊として取り扱われていると理解しているとの答弁でありました。
 私は、ここで二つの問題点を指摘し、改めて自衛隊の最高指揮官たる橋本内閣総理大臣に、自衛隊は軍隊ですかとお尋ねしたいと思います。
 問題点の第一は、F15戦闘機百五十機以上、P3C対潜哨戒機九十八機、イージス艦三隻、九〇式戦車百十両以上を保有する自衛隊が軍隊でないとなりますと、国際社会、とりわけアジアの近隣諸国から不信の念を持たれることになると考えられます。
 第二は、自衛隊が国内においては軍隊でないということになりますと、国内で行われることが想定される自衛戦争で、侵略側に一九四九年のジュネーブ四条約における捕虜の待遇を拒否する口実を与えることになるのではないかと予想されます。捕虜は軍事裁判を受ける権利を持っているのでありますが、軍隊でない、軍人でないということになりますると、侵略側は裁判を経ずしてゲリラとして処断することができるという口実を与えることとなります。
 そこで、改めて橋本内閣総理大臣に質問をいたします。自衛隊は軍隊ですか。
 次に、自衛官はもちろんのこと、防衛庁の職員の方々は、入隊に際して、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め」ること、すなわち命をかけて国を守るという宣誓をいたすことは御承知のとおりであります。
 平成七年十月十六日の参議院予算委員会におきまして、私は、当時の村山内閣総理大臣及び当時の橋本通商産業大臣に次のような質問をいたしました。
 我が国土、国民の生命、財産を守り、国民が安心して生活できる社会を築くことは政治の基本であります。命をかけて国を守る人たちに対して、普通の民主主義国家は十分な誇りと十分な名誉を、地位を与えております。命をかけて国を守る人たちに対して国が名誉と地位を与えないような国、農民が農業から離れる国、船乗りが海離れをする国は必ず滅びるというのが歴史の教訓であります。命をかけて国を守るということの価値をどのようにお考えになっているのかという私の質問に対し、当時の橋本通商産業大臣は、「宣誓書の重みというものは、本当にどれだけ感謝をしても足りないもの」があると答弁されました。
 ここで、自衛隊の最高指揮官である橋本内閣総理大臣に改めて質問をいたします。
 命をかけて国を守ることの価値をどのようにお考えになっておられますか。国を守ることは崇高な任務であるとか宣誓の重みはどれだけ感謝しても足りないものであると御答弁なさると予想されますが、それではなぜ防衛庁が国家行政組織法上、総理府の外局となっているのでしょうか。これでは我が国は守る価値がない共同体であるということを天下に公言しているという意見もあります。
 冷戦後、今こそ自衛隊の位置づけを明確にして、防衛庁を国防省に昇格させ、自衛隊を国防軍とするお考えはあるのかないのか、橋本内閣総理大臣にお尋ねいたします。
 次に、国を守ることが崇高な任務であるならば、命をかけて国を守ることを誓った自衛官の最高位にある統合幕僚会議議長及び陸海空幕僚長がなぜ認証官ではないのでしょうか。橋本内閣総理大臣にお尋ねいたします。
 次に、集団的自衛権についてお尋ねいたします。
 歴代内閣法制局長官は、集団的自衛権を行使することは我が国の自衛のために必要最小限度の武力行使の範囲を超えるものであって憲法上許されないと答弁され、それを政府統一解釈であるとされてきております。また、国際法上、集団的自衛権を有していることは主権国家である以上当然であるとも答弁されております。しからば、保有はしているが行使できない権利とはいかなるものか、私どもを含めて大多数の国民が理解に苦しむところであります。
 ここで、昭和三十四年十二月十六日の砂川事件の最高裁大法廷判決に際しての当時の田中耕太郎最高裁長官の補足意見を引用してみたいと思います。
 今日はもはや厳格な意味での自衛の観念は存在せず、自衛はすなわち「他衛」、他衛はすなわち自衛という関係があるのみである。従って自国の防衛にしろ、他国の防衛への協力にしろ、各国はこれについて義務を負担しているものと認められるのである。
 自国の防衛を全然考慮しない態度はもちろん、これだけを考えて他の国々の防衛に熱意と関心とをもたない態度も、憲法前文にいわゆる「自国のことのみに専念」する国家的利己主義であって、真の平和主義に忠実なものとはいえない。私は、この補足意見のとおりであると考える者の一人でありますが、橋本内閣総理大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
 集団的自衛権を行使することは憲法上許されていないとの解釈に固執されるのであれば、極東有事に際して我が国の国益を大きく損なうことになると私は懸念いたしております。極東有事に際して集団的自衛権を行使しないことに伴う国損はどの程度大きなものになるとお考えなのか、橋本内閣総理大臣、池田外務大臣、臼井防衛庁長官にお尋ねいたします。
 集団的自衛権の問題につきましては、形式的な論争に終わることなく、広く国民一般に理解できる実りのある議論がなされることを期待するものであります。
 次に、日米物品役務相互融通協定いわゆるACSAについて、臼井防衛庁長官に御質問いたします。
 本年四月十五日に署名されたACSAは、日米防衛協力の貴重な第一歩であると認識し、私も高くこれを評価するものであります。
 しかしながら、ACSAの締結時期について見ますと、NATO諸国におきましてはベルギー等が一九八二年に締結いたしており、また、アジア地域におきましても韓国が一九八八年に締結しており、我が国はNATO諸国に比べて約十数年、アジア諸国に比べましても七、八年おくれているわけであります。我が国の締結は余りにも遅きに失したのではないでしょうか。臼井防衛庁長官の御所見を賜りたいと存じます。
 次に、ACSAに関連して、日米間の物品・役務の転移は、日米共同訓練、国連平和維持活動、人道的国際救援活動の事態に限定されるとのことでありますが、日米がそれぞれ個別に訓練を行っている場合は適用事態には該当しないということは腑に落ちないところであります。私は、本協定が日米が個別に行う単独訓練にも適用されることを強く期待するものであります。臼井防衛庁長官の御答弁をお願いいたします。
 最後に、極東有事に際しての物品・役務の相互支援につきましては、現在、政府・防衛庁において検討中であると承知しておりますが、私は、極東の平和と安定を維持するために作戦行動中の米軍に対して物品・役務を提供するいわゆる後方支援ができないようでは、日米安全保障体制の堅持はおぼつかないと思うものであります。極東有事の際の物品・役務の相互支援について、臼井防衛庁長官にお尋ねいたします。
 最後に、私の所見を申し述べて結びといたしたいと存じます。
 大東亜戦争中、南方特別留学生として日本に留学した経験を有し、マレーシアの独立をかち取り、ASEAN創設の功労者として名を残したマレーシアのラジャー・ダト・ノンチック元上院議員の「日本人に対するメッセージ」は、私の現状認識と全く同じであるので、読み上げさせていただきます。
 かつて日本人は清らかで美しかった。かつて日本人は親切で心豊かだった。アジアの国のだれにでも自分のことのように一生懸命尽くしてくれた。
 戦後の日本人は、自分たちのことを悪者だと思い込まされた。学校でも、ジャーナリズムも、そうだとしか教えなかったから、自分たちの父親や先輩は悪いことばかりした残酷無情なひどい人たちだったと思っているようだ。
 だからアジアの国に行ったら、ひたすらぺこぺこ謝って、私たちはそんなことはいたしませんと言えばよいと思っている。そのくせ、経済力がついてきて技術が向上してくると、自分の国や自分までが偉いと思うようになってきて、上辺や口先では済まなかった、悪かったと言いながら、ひとりよがりの自分本位の偉そうな態度をする。そんな今の日本人が心配だ。
 自分のことや自分の会社の利益ばかり考えて、こせこせと身勝手な行動ばかりしている。自分たちだけで集まっては自分たちだけの楽しみやぜいたくにふけりながら、自分がお世話になって住んでいる、自分の会社が仕事をしている、その国とその国民のことをさげすんだ目で見たりばかにしたりする。こんな人たちと本当に仲よくしていけるだろうか。どうして、どうして日本人はこんなになってしまったんだろう。
 一九八九年四月クアラルンプールにて。
今の日本はまさにこのとおりであり、亡国の一途をたどりつつあると言わざるを得ません。
 命をかけて国を守る人たちに地位と名誉を与えない国が、我が国憲法の前文に掲げる「国際社会において、名誉ある地位」をどうして占めることができましょうか。心を失った日本を立て直すのが、国民の負託を受けた我々政治家が果たすべき責任ではないでしょうか。
 国民に選択された政権ではない橋本政権は、早急に解散をして国民に信を問うべきことを強く要求して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕

発言情報

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発言者: 田村秀昭

speaker_id: 13624

日付: 1996-06-05

院: 参議院

会議名: 本会議