平井卓志の発言 (本会議)

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○平井卓志君 私は、平成会を代表し、ただいま議題となっております金融関連法案につき、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 まず、住専処理法案について伺います。
 政府の住専処理スキームは、昨年の十二月に発表されて以来、衆参の予算委員会並びに衆議院の金融問題特別委員会においてあらゆる角度から議論がなされてまいりましたが、いまだ国民の納得が得られていないのは明白な事実であります。
 全く密室で、しかも母体行、農林系金融機関等の当事者間の責任のなすり合いの結果、突如として六千八百五十億円の財政資金投入が決定されたのでありますが、この数字に理論的根拠があろうはずもなく、今回の住専処理策はその第一歩において誤りがあったと言わざるを得ません。
 与党三党は、三月に入り国民の批判がおさまらないと見るや、金融機関及び農林系金融機関に対して、七年間でリストラによって財政資金に見合う税収増を図るとする住専処理追加策を発表しましたが、これほど見え透いた詭弁、まやかしはありません。この追加策は、住専という私企業の破綻になぜ税金を投入するのかとの疑問に対し、税金は投入するがいずれ国庫に返ってくると抗弁するためのトリックにすぎず、国民を愚弄する全くお粗末な内容のものとの評価が下されたのであります。政府・与党は、この国の金融機関をどういう方向に持っていこうかという構想が決定的に欠けているのであります。
 母体行、一般行及び農林系金融機関は繰り返しぎりぎりの負担であると強調し、政府も苦渋の選択としております。しかし、その実、参議院での証人喚問でも五千三百億円の積算根拠を知らないと答えるほど今回の処理策が政府・与党の協議の中で生まれた政治的産物であり、そろばんが合わなければ税金投入といった論理的整合性のないものであると言わざるを得ません。
 今回の住専処理が唯一の選択であり、金融システム安定化に資するとする明確な理由をまず総理にお示しいただきたいのであります。
 また、預金者のいない住専処理への財政資金投入に係る基本的な諸問題も依然解決しておりません。具体的に言えば、法的拘束力のない覚書がどうして住専処理の指針となるのか、住専の再建策に関与していながら問題の先送りをした大蔵省に責任はないのか、債権回収に伴って発生する二次損失の半分を政府が負担する理由はどこにあるのかなと、官僚の言葉でなく総理みずからの言葉でお答えいただきたいのであります。
 これに関連して、今回の政府の住専処理スキームがいかに将来の見通しのない、国民の目を欺く虚構の上に成り立っているのか、まずこの点について伺います。
 住専から住専処理機構が引き継ぐ債権六兆七千八百億円のりち、正常債権三兆四千九百億円、回収に時間がかかる債権を二兆五百億円、回収困難な債権一兆二千四百億円と試算しており、これを十五年間かけて回収する計画となっております。
 しかし、これは昨年一月時点の路線価を基準に算定した数字であり、三月十一日に国土庁が発表した公示地価を見ましても、都市部の地価、特に商業地の地価の下落が依然続いていることから、今年の路線価がさらに下がるのは確実であります。そうなれば、時間がかかっても回収可能と判断した二兆五百億円の債権の一部が回収困難な債権に振りかわったり、正常債権の一部も不良債権化する可能性があります。
 報道によれば、住専処理機構の収支に関する試算が示されておりますが、これによると、九七年から地価が毎年三・五%ずつ上昇し、公定歩合が現在の〇・五%から二・五%程度に上昇した場合でも、十五年後に住専処理機構の損益は約四兆二千億円の赤字になると見通しております。このりち半分は財政資金で賄うこととなっておりますから、約二兆二千億円の財政支出が必要となります。
 当初の損失処理に伴う六千八百億円の財政資金と合わせると、約三兆円近い財政支出を求められる可能性があります。この試算がもし誤りだとおっしゃるのなら、大蔵大臣は住専処理機構の損益に関する試算をお示しいただきたいのであります。
 次に、政府の答弁によればへ住専処理機構を設立して悪質な借り手を地の果てまで追いかけ債権回収を行っていくとしておりますが、この処理機構がどのような体制となるのか明確になっておりません。東京協和、安全の二信用組合の債権回収が順調に進んでいない例を見ても、本来損失とすべき債権の処理の先送りが債権回収を決定的に困難なものとし、また、不良債権化を進めていくのであります。
 政府の案では、債権の回収について預金保険機構と一緒になって体制を整備し、協力していくこととなっておりますが、住専処理機構そのものは株式会社であり、特別な権限を持っているわけでなく、会社更生法の管財人のような否認権であるとか、特別の権限を持っておりません。
 政府提出の金融法案の中に金融機関の更生手続特例法案がありますが、この法案の趣旨は、破綻処理の迅速化及び多様化のため会社更生手続を金融機関にも適用するとあります。これは政府が会社更生法を金融機関に適用するメリットは十分にあることを認めたことにほかなりません。我々が提案している会社更生法の適用及びそれを支援する日本版RTCの設立による住専処理策と同様の考え方であり、政府も不透明な住専処理策を捨て、我々のこのような処理策について同調できると考えますが、総理の御見解を伺います。
 さらに、強力な管財人の権限を有しない住専処理機構が、今後、預金保険機構とどのように協力して借り手や住専経営者の刑事、民事の責任を追及していくのか、どのような陣容で債権を回収していくのか、その具体像を大蔵大臣に明らかにしていただきたいのであります。
 次に、預金保険法改正案について伺います。
 この法案には、五年間の時限措置として預金保険機構に信用組合と一般金融機関の破綻に対処するために特別勘定を設定し、特別保険料を徴収するとともに、この信用組合勘定は東京共同銀行を改組した整理回収銀行の処理財源とし、五年後の清算時に不足すれば財政資金で補てんすることとなっております。
 まず、預金保険料というものは究極だれが負担しているのか考えなければなりません。一般的に預金保険料は金融機関の経営コストとみなされておりますが、最終的には預金者に転嫁されていると考えます。いたずらに預金保険料をふやし、機構の責任準備金を充実させることにばかり注目していると、この点を見逃してしまいます。預金金利が自由化された現在、預金者の得べかりし利益を超えた負担が金融機関の経営維持のために回ることは許されず、適正な負担にとどまらなければなりません。
 こうした観点から、保険料が既に四倍に引き上げられた一般保険料と合わせて七倍に引き上げられることの妥当性はどのように検証されているのでしょうか。大蔵大臣にお伺いいたします。
 次に、財政資金投入のスキームは信用組合の破綻に限定されており、銀行など一般金融機関に対してはこの措置はとられておりません。また、今回提出されております農水産業協同組合貯金保険法改正案についても、同様に財政資金投入は予定されておりません。これはいかなる理由に基づくものか、大蔵大臣並びに農水大臣に明確にしていただきたいと思います。
 見方によっては、信用組合を除く一般金融機関には責任準備金がなくなってしまうほどの倒産は起きない、また起こさない、つぶすのは信用組合に限定したものという政府の方針を法案に反映させたものとも受け取られかねません。場合によっては、信用組合から他業態へ大きな資金シフトが生ずる懸念もあります。
 そして、八年三月期における信用組合の貸出金残高は十七兆四千億円であり、このりち不良債権は約二兆円という状況でありますが、これとあわせて、既に破綻している木津、大阪、山陽、けんみん大和の各信用組合についても特別勘定を使った処理が行われる方針が示されており、かなりの財政資金が必要になるのではないかと考えますが、政府の試算、見込みについて明らかにしていただきたい。
 また、都市部を中心とした信用組合に対し業態転換を促す意見もありますが、金融システムの中で信用組合をどう位置づけていくのか、その必要性、存在意義についてあわせて大蔵大臣に伺います。
 さらに、農水産業協同組合貯金保険機構の場合はこの特別保険料はどの程度の水準になるのか、預金保険機構のそれと異なる水準ならばそれはいかなる理由によるものなのか、農水大臣に伺います。
 住専の処理が終わったとしても、今後、農林系金融機関にはノンバンクへの貸出金処理等多くの問題が山積しているのであります。当面の負担能力ばかりを考慮していると判断を誤るおそれがあります。この点についても農水大臣の見解を求めます。
 次に、金融機関の経営の健全性確保法案における早期是正措置について伺います。
 これは金融機関の自己資本比率等を基準にランクづけを行い、そのランクに応じてあらかじめ定めた指導を行うものであると言われておりますか、法案では「自己資本の充実の状況によって」とされているだけであって、自己資本の定義やどのような指導内容となるのか、その具体的内容は政省令にゆだねられており、経営改善計画や業務停止命令の発動基準が明確になっておりません。
 このため、早期是正措置の内容によっては金融当局が各金融機関の生殺与奪の権利を握ることになり、権限を拡大する懸念があります。自己資本比率として不良債権のロス見込み額を差し引いた実質自己資本比率を用いることとなれば、不良債権の査定について裁量の余地が出てくることになります。裁量の余地のない米国の早期是正措置と比較して今回の措置はどのような内容になるのか、金融行政の透明性が求められている現在、客観的な基準を策定することが必要と考えますが、大蔵大臣の答弁を求めます。
 以上、金融関連法案について質問してまいりましたが、今、必要なことは、我が国金融システムの抱える不良債権に係る全体処理の原則を確立することにあります。
 金融機関が抱える不良債権は、大蔵省の調査でも約三十四兆七千億円、外国の調査機関には百兆円にも上るとの見方があります。政府は、まず不良債権の全体像とその処理策の原則を示さなければなりません。
 もちろん、金融行政の責任も問われずには済みません。不明朗な処理策をつくった大蔵官僚の責任はもとより、金融行政の転換、さらには大蔵省の機構改革も避けて通れない問題であります。不良債権処理については、市場原理に基づき自己責任で処理するという大原則に立ち、国民に開かれた状況の中で行うことが必要であります。住専処理も、この原則に照らし政府の処理策を改めなければなりません。誤った方式による住専処理は、六千八百五十億円の投入にとどまらず、将来にもっと大きな禍根を残すことを申し上げ、最後に総理に、不良債権の今後の処理原則、今後の金融行政のあり方について明確な見解を求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 113615254X02519960610_015

発言者: 平井卓志

speaker_id: 9906

日付: 1996-06-10

院: 参議院

会議名: 本会議