西岡武夫の発言 (本会議)

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○西岡武夫君 私は、新進党を代表して、橋本総理の所信表明について質問いたします。
 去る十月二十日に行われた第四十一回総選挙は、小選挙区比例代表並立制による初めての選挙でした。残念ながら我が党は第二党に終わりましたが、第一党となった自民党も過半数を待ちれず、少数単独政権として第二次橋本内閣がスタートしたのであります。
 ところが、自民党は、単独政権をよいことに、国政を壟断し、国民の税金を公然と党利党略に使う方針をあらわにし始めたのであります。報道によれば、十一月二十五日の自民党役員会において、大型プロジェクトの予算は選挙の結果を考えて配分するべきだ、名古屋、大阪は自民党議員が少ない、こういうところの知事に予算をやることはないなどといった信じがたい議論が行われ、二十六日には、予算は自民党議員が多いところに重点的に配分すべきなどの方針を確認したと報じられております。さらに、二十七日には、橋本総理は記者団に、加藤幹事長は記者会見で、このことを容認する旨の発言をしているのです。
 自分の党が敗北した都道府県や選挙区に対して政権政党が制裁措置を予告する恫喝政治は、我が国の議会政治を破壊するものであります。(拍手)そして、こうした恫喝は、今回の総選挙中も自治体や各種業界や団体に対して行われたことを指摘しておかなければなりません。
 総理、あなたは、自民党の総裁としてまた内閣総理大臣として、公金を党利党略に使うことを見過ごすことなく、この言語道断な方針を全面撤回し、この議場から国民の皆様方に謝罪するよう強く要求いたします。(拍手)一政治と行政に対する国民の不信について質問いたします。
 質問に先立ち、我が党に所属していた友部達夫参議院議員がオレンジ共済問題で強制捜査を受け、多くの方々に御迷惑をかけ、被害者を出していることはまことに遺憾であり、党として国民の皆様方に衷心よりおわびいたします。我が党は、これまで本人並びに関係者に対し調査を行い、国会議員として許されないこととの結論に達し、議員辞職を勧告したところであります。新進党は、ここに、改めて襟を正して国政に取り組む決意を表明するものであります。
 今回の岡光前厚生事務次官を中心とした厚生省の社会福祉法人の贈収賄事件は、その実態が明らかになるにつれて、腐敗の根深さに唖然とする思いであります。これは、さきのエイズ問題とあわせて厚生省の構造的腐敗の実態を示すものと言わざるを得ません。また、住専問題で明らかになった金融機関をめぐる大蔵省官僚の姿勢や、さらには巨額の脱税容疑で逮捕された泉井容疑者と通産省幹部の癒着など、今や公務員に対する不信と国民の怒りは頂点に達しています。しかしながら、こうした数々の疑惑に対する橋本内閣の対応は極めて不十分であり、真剣さが感じられないのであります。
 私は、ここで、厚生省の問題を中心に橋本総理の見解をただしてまいりたいと思います。
 厚生省の岡光事務次官がみずからの所管分野の業者と癒着し、多額の現金を受け取り、飲食、旅行などの接待、車の提供を受けるなど、国民全体の奉仕者たる公務員にあるまじき行為を平然と行い、しかも、その提供された金品が国民の税金である補助金で賄われていたことは驚くべきことであります。このほか、社会福祉法人の代表者が主宰する私的な勉強会には厚生省職員二十数名が名を連ね、接待、ゴルフなどの利益供与を受けていたことが明らかになっております。昨年来の薬害エイズ問題をめぐる不祥事に続き、今回、政官業の癒着が厚生省全体に拡大しており、まさに厚生省ぐるみの構造汚職というべきであります。
 橋本総理、あなたは、今日まで長年にわたり厚生関係議員のトップに立ってこられました。そして、ミドリ十字などの製薬会社を初め、各種厚生関係の業界、団体から多額の政治献金を受けておられ、その深いかかわりは世に知られているところであります。一方、小泉厚生大臣は、岡光前事務次官に対し、行政処分を行うことなく本人の辞表を受理するという決定をしております。小泉厚生大臣自身、市中引き回しの上、打ち首、獄門という感じがあるのを承知していると語っておられますが、それならば、なぜ懲戒免職でなく辞表受理なのか、理解に苦しむところであります。橋本総理の御見解をお聞かせいただきたい。
 橋本総理と小泉厚生大臣は、岡光前事務次官が利益供与を受けた小山氏の関連会社ジェイ・ダブリュー・エムの大株主が関係する日本病院寝具協会及び日本メディカル給食協会から政治献金を受けているとのことでありますが、そのことが岡光氏の処分を鈍らせたのではないかという見方もあります。
 私は、福祉行政の周辺に政治連盟をつくり、そこから政治資金を得るという仕組みがあることを今回の事件で初めて知りました。我が国の最大の内政問題であり、今後の国民の税負担のあり方の根幹にかかわる福祉の分野で、このような形で政治資金を集めることが異常なことだと橋本総理はお考えにならなかったのですか。そして、このことは、政治資金として適正に処理されているからいいと言える問題でしょうか。橋本総理の率直な見解をお聞かせいただきたい。(拍手)。
 政府は、今国会に介護保険法案を提出しています。ところが、この法案の担当者であり直接の責任者である和田審議官は、今回の一連の不祥事と深くかかわっていることが明らかになっているのです。現時点で、厚生省が新たな国民負担を求める資格はなく、法案提出自体不見識であります。厚生省が試算した社会保障のコストそのものも見直す必要があり、法案の前提となっているゴールドプランをこの機会に洗い直す必要があります。
 一方、何よりも、厚生省に対する信頼回復に全力で取り組み、一連の不祥事の徹底究明こそ先決であります。このことに関連して、先月二十七日に厚生省から綱紀粛正策が発表されましたが、公務員全体の倫理規定を定めた公務員倫理法を制定すべきだと考えます。総理の見解を伺います。
 新進党は、今回の総選挙において、国民との五つの契約を提示いたしました。
 我が国は今、表面上、一見豊かで平穏な状況が続くかに見えます。しかし、現実は、厳しい歴史的試練にさらされていると新進党は認識しております。国家社会全般にわたる改革を断行しなければ、衰退と没落の道をたどる危機的状況にあると私は考えます。構造的変化に対応し切れず、経済不振は長引き、何よりも将来の展望がないことこそが重大な問題であります。(拍手)
 失業と生活不安、急速な高齢社会がもたらす老後への不安、子供たちの心と体を破壊する薬物汚染の激増、衰退する過疎地域、殺伐とした過密都市、借金財政と硬直した行政、増大する政治不信、崩れ去った安全神話、国際社会からも取り残されようとしているなど、日本は、出口のない閉塞状況の中で、危機に陥る直前の一時的静けさを保っているにすぎません。政治に今求められていをことは、我が国が置かれている歴史的状況を正じく認識し、危機に陥る前に真の改革を政治の責任において断行することであります。(拍手)
 新進党は、この自覚に立って、さきの総選挙において、我が国の仕組みを根本から改革し、日本を立て直すため、国民との五つの契約を提案したのであります。
 契約の第一は、消費税は三%に据え置き、さらに所得税、住民税の半減を中心とし、法人税の減税等、来年度から十八兆円の大減税を実施することであります。
 橋本総理にお尋ねしますが、総理は、日本経済の現状をどのように認識しておられますか。
 去る十一月二十七日に発表された日銀の企業短期経済観測においても、日本経済の見通しは全く不透明です。国家社会の仕組みを改革するためには、低成長にあえぐ我が国経済をまず安定した成長軌道に乗せ、国民の雇用や生活に不安なく改革を進めることが必要であります。
 我が国経済の潜在的成長力は三%台であるのに、本来の景気対策でない金融機関の不良債権処理のための低金利政策や、公共事業に頼る従来型の政策により、過去数年間の実質成長率は一%台の低い伸びにとどまっております。景気を回復し、我が国経済を実力相応の三%台の安定した成長軌道に乗せ、改革を進める基盤を整えなければなりません。そのためには、国民総生産の約六割を占める個人消費の喚起が不可欠であります。このことから、消費税の据え置きはもちろんのこと、大胆な大減税を実施し、景気の回復を図る必要があるのであります。
 契約の第二は、大胆な行政改革、地方分権、規制撤廃を断行し、国と地方の経費を二十兆円以上削減するというものであります。
 中央集権、官主導の行政システムの根幹をなす許認可権限や補助金の配分は、今回の社会福祉法人と厚生省官僚との贈収賄事件に見られるように、国民の税金の膨大な浪費を生んでいるのであります。地方分権と地方自治体の再編、規制の撤廃による経済のダイナミックな展開と、新しい産業、雇用の創出、補助金の廃止による腐敗構造の根絶などの行政改革は、我が党の改革案の根幹をなすものであります。
 第三は、公共料金を二割から五割引き下げることであります。
 世界は大競争時代を迎え、国が企業を選ぶ時代から、企業が国を選ぶ時代に変わりつつあります。日本経済の高いコストは、強い規制と相まって、海外の企業は日本進出を避け、邦人企業は次々と海外に移動するなど、産業の空洞化現象を引き起こし、日本経済をむしばんでおります。我が国経済の高いコストの最大の原因は、国民の生活や企業活動の源となる公共料金が海外に比べ高いことにあり、これを国際的水準並みに引き下げなければなりません。また、これは官営事業の徹底した改革を促すことにもなるのであります。
 第四は、年金、介護を保障し、老後の不安を解消することであります。
 本格的な高齢社会の到来とともに、国民の間に年金財政に対する不安、介護に対する不安が広がっております。これまでの画一的な福祉行政を改めなければなりません。民間の活力を生かした介護制度を確立するとともに、公的年金を将来とも安定的に保障する体制を整えることが重要であります。そして、国民一人一人のライフサイクルに応じた福祉ニーズに対応し、自己実現を支援する選択肢のある公正な生きがい社会の実現を図ることであります。
 なお、介護保険制度について、我が党は通常国会に独自の対案を提出する考えであります。
 第五は、官僚依存を排し、政治家が責任を持つ政治を実現することであります。
 国民から遊離し、信頼を失った政治を再生するためには、官僚依存、一利権追求型の政治と決別し、政治家が責任を持つ政治を実現しなければなりません。国会の審議は、官僚による答弁をやめ、議員の間の討論を通じて立法府としての意思を決定していく仕組みに改め、副大臣・政務次官制度を導入し、政治家が政府の政策決定に責任を持つ体制をつくらなければなりません。また、痛みを伴う改革に国民の皆様方の理解と協力を求めるためには、国会議員の定数を削減し、みずからが改革の先頭に立たなければなりません。
 選挙の結果、国民の皆様方との契約は成立しませんでしたが、新進党は日本の再生をかけて公約の実現に邁進していく決意であることを改めて表明するものであります。(拍手)
 総理、国政の最高責任者として、我が党の提案に対して、総理が総理自身の考えと言葉で、日本の置かれた状況をどう認識し、これを打開するため具体的に何をなされようとしているのかを、審議会の意見を聞くまでもなく、国民の前で明らかにすべきであります。お考えをお聞かせください。
 次に、消費税について総理にお尋ねいたします。
 政府は、消費税率を引き上げる一方、特別減税は中止する方向と聞いております。そして、自民党は、景気対策として従来型の公共事業を中心とした補正予算の編成を求めております。個人の消費は抑えながら公共投資はふやすというまことに一貫性のない政府・与党のやり方は最悪の選択であり、これでは景気回復も財政の再建も不可能であります。総理、果たしてこのようなやり方で本当に景気の回復ができるのか、その根拠を明確に示していただきたい。
 また、自民党は、消費税率について我が党の小沢党首の発言を故意にねじ曲げたり、細川連立政権時代のことをあげつらいながら、みずからは消費税の将来見通しについて今なお口を閉ざしているのです。自民党の山崎政調会長によると、消費税五%を十年間継続するということでありますが、総理は、消費税率五%をいつまで続けるのか、将来の消費税率をどのように考えるのか、明らかにすべきであります。
 新進党の公約の基本的考え方は、経済再建なくして財政再建はないというものであります。これに対して政府の方針は、増税による財政再建であります。すなわち、消費税率引き上げで約五兆円、特別減税打ち切りで約二兆円、国民年金や健康保険料引き上げで約二兆円、合わせて約九兆円の国民負担増を図ろうとしていることが明らかになっているのであります。
 行政改革なき消費税率の引き上げはやらないというのが、自民党としても本来の国民との約束だったはずであります。今回の総選挙を通じて、自民党の公認候補の多くが、消費税五%に反対の意思を演説や文書で明らかにして当選されております。選挙期間中、党首脳もそのことを黙認すると公式に発言しておられるではありませんか。公約の重みを考えれば、我が党が今国会に提出した消費税三%据え置き法案は、与野党ともに成立させなければいけないのです。
 橋本総理、現にあなたの内閣の閣僚の中でお二人は、ここにその実物がございますが、コピーがございますが、ここにあるとおり、選挙公報でそのことを明記しておられるのです。この選挙公約の重さについて、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。増税による財政再建路線で財政再建が果たしてできると考えておられるのか、明確にお答えいただきたいのであります。(拍手)
 行政改革は、我が党の国民との契約の中でその根幹をなす改革であります。この問題については、あすの本会議において我が党の石田幸四郎議員が政府の姿勢をただすことにいたしております。したがって、私からは一点だけ総理にお尋ねいたします。
 行政改革についてはこれまで既に議論が尽くされており、今さら一年もかけて論議するというのは結局問題の先送りでしかありません。総理が所信表明で述べられたように、身を燃焼させ尽くしてもやり抜く決意ならば、直ちに国会に関連法案を提出すべきではありませんか。この点について総理の明確な見解を求めるものであります。
 次に、安全保障政策について総理の見解をただしたいと思います。
 本年四月十七日の日米安保共同宣言に基づき、極東有事の日米協力のあり方を協議するため、日米防衛協力のための指針の見直し作業が行われており、九月に中間報告が行われました。中間報告を見る限り、国連及び国際世論の動向への考慮が全くなされておらず、日米有事協力を二国間だけの論議と位置づけております。
 日米安保条約がアジアの安定に大きな役割を果たしていることは事実でありますが、日本周辺有事という不特定の有事に際しての日米間の防衛協力を完全に規定することは、日米安保を変質させ、かえって外交選択を固定化するおそれもあると言わざるを得ません。日本周辺有事であれ中東有事であれ、軍事行動に国際世論の合意があるのかどうかの視点こそ、冷戦後ますます重要と考えます。
 さらに、この防衛協力の指針見直しは、単に政府間の合意だけで済まされる問題ではありません。当然、条約として批准し、国民的合意を得る必要があると考えます。あわせて、見直しに当たっての総理の基本方針を伺いたいと思います。
 憲法で許される自衛権の行使のあり方については、これまでさまざまな議論がありました。我が国として海外での武力行使は行うべきでないことは明らかであります。我が国の有事や周辺有事の際の日米協力、国連部隊等への参加のあり方などについて、安全保障基本法を制定してその原則を明らかにするとともに、有事に際して超法規的な行動をとることのないよう有事法制の整備を進めるべきと考えますが、総理の所見を明らかにしていただきたいと考えます。(拍手)
 最後に、沖縄基地問題について伺います。
 本日の日米協議で沖縄基地問題の最終報告が行われましたが、焦点の普天間基地の代替海上ヘリポートについては明記されておりません。この海上ヘリポートは、総理の肝入りでこれまで日米交渉が進められてきました。しかし、沖縄の県議会を初め県内のすべての市町村が県内移設に反対しており、地元沖縄の理解を得ることは極めて難しい状況にあります。もし地元の理解がないまま日米両国政府がこれを強行するならば、沖縄基地問題は完全に暗礁に乗り上げることは明白であります。
 技術的にも未知数な海上ヘリポートを数千億円という巨額の経費をかけ建設する意味が果たしてどれだけあるのか、そもそも普天間の返還期限である七年後以降いつまで沖縄に海兵隊が存在し続けなければならないのか、その理由は何か等々、国民に納得いく説明がなされたとは到底考えられません。
 米国内では、最近、沖縄海兵隊撤退の議論が高まってきており、米国は明年、海外兵力構成の見直しか行われる予定になっていると聞いております。私は、これまでの交渉の経緯にとらわれることなく、国際情勢を十分勘案しつつ、いま一度沖縄基地問題の原点に立ち返り、海兵隊存在のあり方について再検討すべきだと考えます。政府内には一カ月以内に結論を出すべきなどの主張もありますが、少なくとも総理は、地元の同意なしに海上ヘリポート建設を決定しないことをこの際明言すべきであります。総理の明快な答弁を求めるものであります。
 橋本総理、総理は最近発刊された「担税同盟」という本を御存じだと思います。担税とは、税金を拒否するという意味であります。私たちが今、与党だとか野党だとかの立場を超えて、政治の責任において本物の行政改革と地方分権を実現させ、規制撤廃によるコストの高い社会からの脱皮を図らなければ取り返しのつかないことになることを恐れます。日本は国際社会で孤立し、内にあっては担税同盟に象徴される、よい国家をつくるために国家を壊すという運動が起こらないという保証はどこにもないのです。担税同盟がインターネットを戦場として戦う図式は、決して荒唐無稽な出来事でないことを橋本総理も想像されることでしょう。
 私は、この二十年間、平時の革命の必要を訴え、あるときは行動し、しかし、なおみずからの非力を恥じ続けてまいりました。橋本総理にも、この私の危機感は必ず理解していただけると信じます。
 昭和三十八年、橋本龍太郎総理と前自民党副総裁小渕恵三君とともに、私は二十代で衆議院議員に初当選いたしました。当時二十代だった私たちも、三十年を超す政界における年輪を経、率直に申して残された時間はわずかであります。その中で、総理大臣となった橋本龍太郎が、二十六歳で衆議院議員に当選したときの初心に返り、今おのれを捨て平時の革命を決断されることを、野党第一党の幹事長の立場を超えて心から期待し、私の代表質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕

発言情報

speech_id: 113905254X00219961202_003

発言者: 西岡武夫

speaker_id: 16289

日付: 1996-12-02

院: 衆議院

会議名: 本会議