鳩山由紀夫の発言 (本会議)

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○鳩山由紀夫君 私は、第百三十九回国会の開会に臨み、民主党代表としての所信を述べ、橋本総理の所信表明に対して質問をいたします。
 まずは、第二次橋本政権の発足につきましてお祝いを申し上げます。ぜひとも、総理を初め各閣僚の皆さん方が責任を持って内閣のかじ取りを進められ、日本の未来に誤りなき進路を示されんことを切に期待する次第でございます。
 しかし、総理の所信演説でも述べておられますように、日本社会は今多くの困難な課題を抱えており、それらの課題をどのように解決していくか、実に大切なときを迎えています。こうしたときに、泉井石油卸商事件やオレンジ共済事件、厚生省の不祥事など、政官業の利権構造がもたらす汚職と不正が続発したことはまことに残念であり、同じ政治家の一人として責任を痛感するものでございます。
 一連の不祥事の周辺では、総理御自身のお名前も登場する政治献金が必ず話題になっています。また、特に政官業癒着を露骨に演じた茶谷容疑者は、総理が総裁を務める政党の公認候補でございました。その茶谷候補の応援と称して、岡光次官が医師会に数千万円もの政治資金提供を求めていたことも報道されています。しかも、その行為が発覚するや否や、自民党のある議員は何と、厚生省の役人が立候補するのだから医師会の支援をもらおうと厚生省のトップが出向くのは当たり前と言ってのけたのであります。明らかに憲法違反ではないですか。政権与党の候補を省庁の幹部や業界が応援するのは当然だと、それが当たり前だとずっと続けてきたのではないでしょうか。
 私は、総理がこうした政治の醜悪な現状を問うことなくして、あたかも公務員の綱紀の粛正問題に矮小化しようとする姿勢に、残念ながら真摯なものを読み取ることができないのでございます。(拍手)
 敗戦後間もない昭和二十年十二月一日、第八十九回帝国議会の衆議院本会議が開かれておりました。そして、まさにこの本会議場で戦争責任案が可決されています。戦争の原因とその責任を国会みずからが明らかにし、責任をとって議員個々人の去就をはっきりさせようではないかと激しい論議が行われた末の可決でありました。実際、この戦争責任決議を受け、実に十一名もの国会議員が辞職をしているのでございます。おかしいと思っても、軍部の独走と横暴を抑えることができなかった。それをやり遂げる勇気を示すことができなかったという深い反省から出た行動選択でございました。
 しかるに、今日、私たち政治家は官僚の独走と横暴を抑制することもできずにいるのでございます。まさに政党政治の危機と言わなければなりません。総理の演説にそうした危機の意識が残念ながら感じ取れないのは、まことに不幸なことでございます。(拍手)
 ここで、私は民主党の代表として、民主党の目指すべき方向とその実現に向けての覚悟を述べたいと思います。なぜ私たちは既成政党を離れ新党を立ち上げたのか、私なりに三点に集約して申し上げます。
 第一に、時代認識でございます。
 今日は、明治維新以来の社会構造そのものが大変革されなければならない時代でございます。単に金権腐敗やいわゆる国対政治を克服するのにあらず、明治国家以来続いてきた官主導、政官業のもたれ合いによる追いつけ追い越せ型社会構造そのものを次の百年に向かって超えていかなければなりません。そのことによって、政治が行政への依存や癒着から解放され、自立と復権を果たすことができるのです。民主党はいまだ未熟な政党ではありますが、政官業のもたれ合いからみずからを解放し、変革を担い切る自立した政治家の集団となることをここにお誓い申し上げます。
 第二は、未来への責任です。
 社会構造の大変革をなすためには、過去の経験や発想の延長線上での漸進的な改善ではなく、それらを一たん断ち切って、十年後、二十年後の未来から大胆に今をとらえ直すという政策的発想が極めて重要であります。そうでなければ、目の前の問題に実務的に対処することに得意な官僚体制への依存を断ち切ることはできないと思うのです。
 第三は、市民が主役となる政治の実現です。
 これまでの政治は、弱者を定め、彼らに保護を与え、補助金などの予算で救済してきました。このような官主導の上からの保護政策は、財政硬直の原因となったばかりでなく、甘えの構造から人々の自立する意欲を奪ってきました。民主党は、一人一人の人間は、みずからの運命をみずから決定する権利と、選択の結果に責任を負う義務があるという個の自立の原理を尊重したい。市民のためにプロの政治家が政治を行うのではなく、市民自身が政治を行う力量を持ち、実際に政治を行い、プロの政治家は彼らの行う政治を助けるための道具であるとの自覚を持たなければなりません。
 民主党は、今述べました考えのもとで野党として出発をいたします。しかし、単に与党の足を引っ張り権力の座から引きずりおろすことばかりを考える野党ではなく、時の政権がしっかりとした時代認識を持ち、未来への責任と市民中心型の政治を志す限りにおいては、積極的に協力することもやぶさかではありません。議会人として、議院内閣制のもとで、政治による行政のコントロールを可能にするために立法府をよみがえらせることに全力を挙げたいと思うのです。
 総理は、所信表明において、五つの改革と並ぶ内閣の重要課題として、沖縄の諸課題を挙げられました。私は、総理が就任以来、沖縄の米軍基地問題の解決に相当の努力を払われ、普天間飛行場の返還を初め一定の成果を挙げられたことを率直に評価申し上げ客ものですが、本当り正念場はこれからだと考えます。
 本日、沖縄行動委員会、SACOの最終報告が出され、一年以止にわたって続けられた日米協議は一応の結論を見ることになりますし小し、これは一つの区切りにすぎず、合意事項の実現を図り、さらに米軍基地の整理、統合、縮小を進めていくために、新たな出発が求められていると考えます。SACOの最終報告の発表を踏まえ、総理御自身が沖縄の米軍基地問題も地域振興について今後いかなる新たなる出発を切ろうとなさっておられるのか、所見を伺いたいと思います。
 阪神、淡路大震災の被災地では、依然、自立の意思を持ちながらも生活の再建や事業の復活という困難に直面している方々が少なくありません。一年十カ月を過ぎた今日に至ってもそうした状態が放置され、不備な環境の中で孤独死や自殺者も続いている現状にあります。事態はもはや人権問題とも言える状況です、現在の災害関連法では補うことができない陰のすき間があり、それが行政の力では処理し切れない悲惨な事態をつくり出しているのであります。このようなときこそ、まさに政治の出番だと言わなければなりません。被災者個々人にも手が届くような対策が可能な、きめの細かい支援制度を確立する必要があると考えるのですが、総理の所見をぜひお尋ねしたいのでございます。
 公的介護保険の導入に関して、総理は選挙期間中、今臨時国会に不退転の決意で提案を行い、その実現を目指すと発言しておられました。介護保険制度の所管庁たる厚生省事件の解明が続いている中、この大きな政策課題についてどのように取り組まれようと決意しているのでしょうか。
 公的介護については、その早期の導入「整備を望む声が強いことは総理も十分認識しておられるものと推察いたします。一人一人のお年寄りとその介護者の人権と人間としての誇りにも触れる大事であるだけに、不祥事を理由に制度の実現を先送りすることは許されないと考えますが、いかがでしょうか。総理の所見を伺います。
 景気対策と称して再び公共事業中心の補正予算が与党内部で議論されていると聞いています。財政赤字に対する無責任ぶりとともに、構造的な欠陥を改善することなく、財政支出によって抜本的な産業構造の転換を先送りするようなやり方を続けるならば、結果として二十一世紀の日本経済活力をそぐことにもなりかねません。
 今求められているのは、一時的なカンフル剤を注入することではなく、将来の日本経済を見据えて大きな規制緩和の必要性を主張しておたれますが、政官業のしがらみをみずから断ち切る勇気なくしてそれを果たすことはできないと見ております。経済審議会や行政改革委員会の報告を受け、具体的にどのような規制緩和を断行されようとしておられるのか、総理の決意をお尋ねいたします。
 次に、行財政改革について民主党の基本姿勢を述べたいと思います。
 官僚主導の行政を市民が主役の行政に変えていくには、政官業の癒着で閉塞状況に陥った政治と行政を厳しく監視し、誤った政策や予算のむだ遣いを正すことができる体制をつくることから始めなければなりません。この考えに立って私たちが今国会に提出したのが行政監視院法案でございます。
 総務庁の行政監察局は、これまでに、今回の小山容疑者のように補助金を受けた社会福祉法人が関連業に事業発注をしないように是正勧告をしたことがありました。しかし、その後は厚生省が十分な対応をしないままに見過ごしてきました。その結果が、前事務次官や茶谷容疑者の収賄など一連の汚職事件の発生となっているわけです。行政内部のチェックだけで事足れりとして、国民には十分な情報を公開せずに、よらしむべし知らしむべからずで来た。薬害エイズでも問われた内向きの行政の矛盾が今まさに霞が関じゅうに噴き出しているのです。この構造を変えるため、ぜひとも行政監視院が必要です。
 私たちは、この行政監視院法案に対する賛否を、橋本内閣が本気で行政改革に取り組もうとしておられるかどうかをはかるリトマス試験紙にしたいと考えています。行政の監視を行う機関を国会に設置するという政策は、自民党自身がさきの、総選挙で掲げていたものでもございます。行政監視院法案をこの臨時国会で成立させることに賛成か否か、情報公開の早期実施に対する姿勢を含めて橋本総理の明確な答弁を求めます。(拍手)
 橋本総理が火だるまになる覚悟で取り組むという中央省庁の再編成について、それを単なる数合わせや縦割り行政の組み直しに終わらせてはなりません。政治任命者のチームが責任を持って予算の骨格を決めるという予算編成の根本から変えて、また地域主権の国をつくっていくという観点からも、国と地方の役割分担や税財源配分を見直し、補助金漬けの中央集権の行政を改めなければ、今回のような不祥事を根絶することはできないのであります。
 しかるに、総理の足元では、自民党単独政権になった途端に、議員会館には補助金の獲得を目指す陳情の人波が押し寄せてまいりました。連立政権時代は少なくともこんな光景はありませんでした。橋本総理が所信表明で行革、財政再建に取り組むと幾ら言っても、こうした状態を放置していたのでは、とてもそれを信じることはできません。果ては、自民党が勝った地域には補助金をつけるが負けた地域にはっけないなどということがまじめに政権政党の役員会で議論されていると伝えられています。自民党は、国民が納めた税金を私物化し、選挙の道具に使おうというのでしょうか。総理の所見を伺いたいと思います。
 いわゆる橋本行革の試金石となるのが、大蔵省の改革です。民主党は、大蔵省の改革に当たって、財政と金融の完全分離という原則を堅持していくべきと考えています。野球に例えて、プレーヤーとコミッショナーとアンパイアの仕事まで一人で兼ねるということになれば、ゲームがつまらなくなり、また不正が生じるのは当たり前ではないでしょうか。また、世界的な金融市場の自由化の進展の速度を考えれば、可能な限り早期に思い切った金融の規制緩和、いわゆる日本版ビッグバンを実現する必要があります。金融自由化時代に対応できる金融行政の体制を構築するためにも、財政と金融の分離は一刻の猶予もありません。総理は、金融行政に関する大蔵省改革を先行し、次期通常国会で大蔵省設置法などの改正を実現するお考えかどうか、明確な御答弁を求めます。
 ここで、会計検査院の検査官大事について一言申し上げたい。
 会計検査院は、大蔵省が作成した決算を審査する機関であり、その独立性を確保するためにも、大蔵省OBが検査官の一人を占め続けてきた人事慣行は改めなければならないと考えます。総理の決意がしっかり示されることを期待しております。
 次に、財政再建に関して総理の基本的な姿勢を伺います。
 予算編成を前に、公共事業の長期計画の満額獲得を目指す大会が開催されています。これをすべて言い値で認めていけば、必要経費はおよそ一千兆円にも上ります。従来聖域とされてきた分野についても、思い切った歳出削減にまず取り組まなければなりません。公共事業の中期計画の総点検と執行の効率化、一般競争入札の拡大など発注方式の見直し、補助金等の削減、特殊法人や公益法人の関連予算の削減などに大なたを振るわなければならないと考えます。また、財政再建のためには、米国の包括財政均衡法のように、中期的な目標を設定して財政赤字を計画的に削減していくように政府に義務づける立法措置が必要と考えます。財政再建の具体策に関する総理並びに大蔵大臣の見解をお尋ね申し上げます。
 次に、外交と安全保障問題についてお尋ねいたします。
 総理は五つの改革を最重要課題と位置づけられましたが、私はこれに加えて外交・安全保障政策もまた改革を迫られていると考えるものでございます。冷戦時代においては、日本のとるべき外交選択の幅は狭く、米国主導の外交につき従うことが多くならざるを得ませんでした。しかし、今日、市場経済のもとで力をつけつつある多様な国々が台頭する中にあって、日本はより自立的でダイナミックな外交政策を、特にアジアの近隣諸国に対して展開することが求められるようになっています。
 民主党は、冷戦後の新たな国際情勢や日本の国際的地位の変化を踏まえ、日米関係を新たな次元においてとらえ直し、日米安保を基盤として、多国間安保のあり方を同時に追求することがこれから求められる道だと考えています。すなわち、アジア太平洋地域における安定要因としての米国の存在を確保しつつ、日米両国がこの地域において、多様な手段を用いながら紛争要因の除去に努め、安全裸陣対話を推進し、地域的な安全保障の枠組みづくりに寄与することであります。また、とりわけ北東アジア地域で、いかにして信頼醸成と平和的共生の枠組みをつくり出していくのかということにこそ日本外交の真価が発揮されなければなりません。
 そこで、橋本総理にお尋ねいたします。
 二十一世紀に向けて日米関係の進むべき方向について、どのようなお考えをお持ちでしょうか。また、外務大臣に対して、北東アジアの地域的安全保障体制の構築に向けた日本の具体的役割について御所見を伺います。
 総理は、所信表明演説において、日米関係と並んでアジア諸国との関係の重要性を指摘されました。私も全く同感でございます。しかしながら、特にアジア諸国との関係においては、過去に誠実に向かい合うことなしに、未来を開く扉のかぎを日本はしっかりと握り締めることはできないのであります。過去にばかりこだわらず未来を見詰めるべきだと言う方々もおります。しかし、私たち民主党は、未来の日本の姿にこだわるからこそ、日本という国の尊厳を回復するためにも過去の過ちに対する責任を避けてはならないと考えるものでございます。
 私は、まさにそのような考えのもとに、先ごろ、結党後初の訪問国として中国を訪れてまいりました。私が会談した胡錦濤中国共産党常務委員は、「前事を忘れず後事の戒めとする」ことの重要性を強調されました。言うまでもなく、これは一九七二年に周恩来首相が田中角栄総理に披露した言葉であります。くしくも来年はその年から二十五年目に当たります。そのような記念すべき年を目前にして、改めて日中両国民がこの言葉の重みをかみしめ、未来に向けて新たな出発を始めなければならないと強く思うのであります。
 総理が靖国神社参拝を行って近隣諸国の反発を招いたことはまことに残念なことでありますが、他方、さきのAPECマニラ会議において、昨年八月に植民地支配と侵略についての痛切な反省とおわびの気持ちを表明した村山前総理の談話を尊重すると明言されたことを歓迎するものであります一そこで、今度は国民に向かって改めて総理のお考えとしてお聞かせいただきたいと思います。また、明年の二十五周年を控えて、さまざまな問題を抱えている日中関係をどのように発展させていくおつもりか、御所見を伺います。
 私は、アジア太平洋地域は、今なお冷戦の残り火を抱えてはいるものの、これからは非軍事的な脅威、例えば環境破壊、エネルギー不足、人口増大、食糧不安などの問題が大きな比重を占めるようになると認識しています。これらの非軍事的な脅威にかかわる諸問題にAPEC加盟国が共同で取り組んでいくことを目指す必要があります。わけても日本は、そのために持てる力のすべてを投入する気構えで臨むことが特に重要であると考えるのです。総理の御所見をお伺いいたします。
 また、これからは人権を普遍的な価値として外交の重要な柱と位置づけ、その原則に基づいて人権外交を推し進めていくべきであると考えるものでありますが、残念ながら、その点において日本外交の評価は決して高いものではありません。ミャンマー軍事政権への対応を含めて、人権擁護のために果たすべき外交の役割について総理のお考えをお聞かせください。
 次に、核廃絶と国際軍縮に向けた日本の役割についてお尋ねいたします。
 私たちは、唯一の被爆国である日本こそ核廃絶に向けた国際努力の先頭に立つ責任と資格を有していると考えるものであります。しかし、残念なことに、政府はこのほど国連総会第一委員会において採択された核廃絶条約の締結交渉の早期開始を呼びかけた決議案に棄権をしたのでございます。私は、包括的核実験禁止条約の早期発効とカットオフ条約交渉の早期開始など、現実的なステップを積み上げていくことも重要ではありますが、何時に、日本が核兵器の使用と威嚇が国際法に違反することを明確にした上で核兵器禁止条約の締結を呼びかけるならば、核廃絶に向けた国際世論の喚起に極めて大きな影響を与えることになると考えます。総理の御見解を求めるとともに、核廃絶の具体策について外務大臣にお伺いいたします。
 ことし五月には、特定通常兵器使用禁止制限条約の改正が行われました。しかし、地雷の全面禁止に向けてはまだ道半ばと言わざるを得ません。総理は、国際社会に向かって、対人地雷撤去に対する積極的な取り組みを表明しておられますが、国内において自衛隊は百万個以上の地雷を保有しで国内数カ所に備蓄をし、その埋設。散布訓練を行っています。来年度予算にも最新式の地雷の製造が盛り込まれているのでございます。対人地雷の全面禁止に向け総理の御決意を伺うとともに、その具体的方針について防衛庁長官にお尋ねをいたします。
 明治の超然内閣の存在からスタートした日本の行政府の体質は、極めて独特な民衆観の土壌から生まれています。それは一言で言えば、民、すなわち市民や民業に対する不信であり、すなわち官尊民卑の思想にほかなりません。そして、こうした思潮が役人の横暴を生み、民間業界の卑屈をもたちすのであります。その傾向は中央と地方との関係にも蔓延し、保護する者と保護される者との縦の関係の中で、地方は官官接待で国の機嫌を伺い、国はますます権威主義的になる、そこから卑屈と傲慢が混在する世界がつくられてまいりました。
 一体、今日私たち政治家が直面している行政改革とは何でありましょうか。それは、政官業の構造とそれがもたらした卑屈と傲慢が共存するいびつな政治文化そのものの変革を進めることなのであります。それは、明治の近代化以来の官尊民卑の風潮を改め、市民感覚に見合った新しい政治文化を育てる、いわば世直しの取り組みであると断言しなくてはなりません。(拍手)
 さて、私はさきの訪中の中、大連市で中国残留日本人孤児の養母である宋桂栄さんにお目にかかってまいりました。宋さんは、手塩にかけて育てた我が子が日本人となって戻る、その別れのつらさを超えて、初対面の私に対し、あの子が日本人だろうと中国人だろうと関係ない、自分の子供でないと思ったこともないと目を潤ませながら語ってくださいました。この一人の女性に友愛の原点を見た気がいたしました。それに比べ、政治は何をしてきたのでしょうか。目先の利害にとらわれて深い歴史意識を見失った小政治の繰り返してはなかったかと、私は恥ずかしい気持ちを抑えることができませんでした。
 グローバリズムが叫ばれる中、本当に日本人の心は世界に向かって開いているのでしょうか。国境を越えた協力のネットワークを創造するためにも、こうした信頼のかけ橋を広げることが日本のとるべき道だと考えます。憲政の神様と称される尾崎行雄は、愛され、尊敬され、信頼されることが日本のあるべき道だと説いています。ドイツとフランスとの和解に貢献したフランク・ブックマンは、一国の最大の安全は隣国の尊敬と感謝を受けることにあると述べています。今最も大切なことは、政治家みずからが自己の尊厳を高め、みずからを律することによって市民の意識にも働きかけ、政治家と市民との周に地球規模の愛、信頼、尊敬のきずなを構築することではないでしょうか。
 昨年の代表質問で私は、リベラルは愛と述べました。愛の反対は憎しみではなく無関心であります。その意味において、今回の総選挙で投票率が低かったことは、民主主義にとって大変危険なことと言わなければなりません。政治家は市民に票を求めることではなく、みずからの理念を示して市民と対話し、市民と共有する新しい思考を育てていくのでなければなりません。
 私は、友愛の精神こそ、自由と平等、公正のかけ橋であり、地球市民としての自立と共生のメッセージであると信じています。橋本総理も、このような精神のもとに、現下の幾多の困難な課題に立ち向かっでいただきたいと存じます。
 民主党は、この旗を高く掲げ、未来からの責任を強く意識しながら、時代が私たちに与えた使命を果たすべく最善の努力を尽くすことを約束して、代表質問といたします。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕

発言情報

speech_id: 113905254X00219961202_012

発言者: 鳩山由紀夫

speaker_id: 11584

日付: 1996-12-02

院: 衆議院

会議名: 本会議