有働正治の発言 (本会議)

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○有働正治君 国の財政の破局的破綻は、今日、もはやだれの目にも明白であります。同時に、重大なことは、地方財政は一九五〇年代前半、七〇年代後半に続く戦後三度目の深刻な危機に見舞われているのであります。私は、その特徴と原因をめぐり、主として政府の施策とのかかわりで質問いたします。
 第一は、今日の地方財政危機の特徴をめぐってです。
 過去二回の財政危機は、赤字団体数、赤字額の顕著な増大にも示されたように、不況の中で法人税収の激減などがもたらしたものでした。ところが、今日の財政危機は、赤字がほとんど出ないかわりに、自治体の借金、地方債の増大、その残高の雪だるま式の増大という形をとっているのが新しい特徴となっています。
 およそ年間の地方債発行額は、七〇年代後半の七八年度約五兆円だったのが、九二年度に十兆円を突破、九六年度は十三兆円弱と、この十八年間で二・五倍にはね上がり、その残高は、九七年度末には地方債だけで百九兆円弱、これに公営企業債の普通会計負担分二十四兆円弱、交付税特別会計借入金の地方負担分十五兆円強を含めますと、合計百四十六兆九千億円に達すると見込まれています。
 自治大臣は、戦後地方財政史上から見た今日の地方財政危機の新しい特徴をどう考えるか、事実関係を含め、所見を求めます。
 第二は、なぜ地方債が近年異常に膨れ上がったのか、その根源と責任をめぐってであります。
 その要因の一つには、税収の落ち込み、一方、経常的支出の一定の増加もあります。同時に顕著に目を引くのは、投資の増大、わけても、地方自治体が国から補助金や負担金を受けずに一般財源と地方債とに基づいて単独で、時には補助事業を継ぎ足す形で行う地方単独事業の異常な増大であります。
 八〇年度、全国の合計で補助事業八兆七千億円弱に対し、単独事業は五兆四千億円弱、つまり単独事業は国の補助事業の約六割でありました。それが九四年度には、補助事業十一兆二千億円弱に対し、単独事業は十七兆円強にふえています。この十五年間の国の補助事業の伸びが三割に満たないのに対し、単独事業のそれは十倍以上の三・二倍に膨張しています。
 公共事業の費用を国と自治体がどう分担しているかを見ると、九三年度には総額五十一兆一千三百億円弱のうち国負担十七兆八千億円、自治体の負担は三十三兆三千三百億円弱で、自治体は国の二倍負担し、十九兆円余に上る市町村の負担分だけで国負担分を大きく上回っているわけであります。
 自治大臣、このように地方単独事業とその地方負担が近年急激に増大している事実をどう認識していますか。
 私どもは、ここにゼネコン型公共事業への自治体財政の強力な動員の姿があらわれていると考えています。その姿は、大型開発へは何百、何千億円と投入させながら、敬老祝い金の廃止や小中学校のトイレットペーパーの父母持参など、終戦直後を思わせるような福祉・教育への徹底したしわ寄せとしてあらわれ、それが自治体リストラの名で、実態的には自治省の干渉と強要のもとで強引に推し進められているのであります。その中で、福祉や健康、安全を守る自治体本来の姿が失われていることが近年の自治体の姿ではないでしょうか。
 そこで、総理に聞きます。
 地方単独事業のこのような急膨張が地方財政破綻の原因となっていること、今日の自治体が本来の姿と相入れない姿になっているとの厳しい指摘をどう受けとめるのか、総理の見解を求めます。
 第三に、このような地方単独事業の増大については政府に重大な責任があるのであります。
 この間の自治省の出した通達を調べてみると、八七年五月二十九日の「緊急経済対策について」、八七年六月二日の「昭和六十二年度上半期における公共事業の事業施行等について」、九〇年六月二十九日の「公共投資基本計画について」、同じ日の「日米構造協議長終報告に関する日本側の措置について」、その後の九二年八月二十八日の「総合経済対策について」、以下一連の政府の景気対策に伴う自治省通達で、政府は次々に自治体に地方単独事業の拡大を要求し、事実上強要してきました。この四回の景気対策における地方自治体への単独事業の追加は四兆九千億円に上っています。
 自治大臣、この点間違いないかどうか。そして、こうした自治省通達による地方単独事業の事実上の強要こそ地方債増大に拍車をかけたことは明瞭ではありませんか。責任ある明確な答弁を求めます。
 通達は、その後、従来の港湾、有料道路等の事業を借金財政で一層促進できるようにするための九四年四月二十六日付「地域開発事業債の取扱いについて」の通達など、既に破綻し、その根本的見直しが求められている事業を含め、借金で促進させる通達などが相次いでいるわけであります。
 また、六百三十兆円の公共投資計画の中でも、前期の四百三十兆円の公共投資計画の中では明記されていなかった地方単独事業を明記して特別に位置づけ、各長期計画のその合計金額は前の計画の二倍以上に増額されています。そして、今後も長期にわたり借金財政の上乗せを強要しようとしているわけであります。
 このように、法律によらない通達指導による行政指導で自治体に公共事業を事実上強要することは、憲法九十二条の「地方自治の本旨」に反するもので、自治体の自主性を奪うものであり、やめるべきであります。そして、公共投資計画は地方財政危機対策の上からも根本的に見直すべきであります。総理の明確な見解を求めます。
 関連して、白川自治大臣に聞きます。
 政府は、公共事業、地方単独事業の伸びについて、よく高齢化社会への対応とか災害対策や福祉施設などに力を入れていると述べるわけであります。しかし、事実はどうか。
 九四年度実績で見ると、地方単独事業費のうち、福祉施設など民生費には単独事業費のわずか四・三%にすぎません。道路、橋梁・街路、河川、区画整理などの土木費に五一・三%、金額的には八兆七千三百七十二億円も注ぎ込まれており、この土木費などの地方単独事業の急増が自治体の財政破綻をもたらした大きな要因であることを否定できないことは極めて明白であります。高齢化社会のためなどという言い分は、数字の上からいっても看板に偽りあると断ぜざるを得ないではありませんか。所見を求めます。
 第四に、政府がその政策を自治体を通して推進するための仕組みで見逃せないいま一つは、政府中央省庁から自治体への出向、天下りの人事配置による地方自治体への締めつけがあります。
 都道府県の課長級以上に出向している国家公務員が、自治省の百七十七人を初め七百人を超えており、特に自治省から地方自治体へ出向している職員は二百四十人で、これは自治省本省の定員数の半分に当たります。しかも、都道府県の副知事、総務部長、企画調整部長などに加えて、財政課長だけをとってみましても、出向、天下りているところが全国の約六割の道府県に達し、政府・自治省の地方単独事業拡大政策を推進する役割を果たしてきたのであります。
 都道府県あての自治省通達の中にいつも盛り込まれる「市町村へも徹底されたい」という、いわば旧内務省的感覚とも言うべき自治体締めつけの言葉の背後に、こうした人的配置が構造的に機能しているからではありませんか。地方自治を侵すこのような体制は、速やかにメスを入れ是正するのが当然ではありませんか。総理と自治大臣の見解を求めます。
 ことしは、憲法と地方自治法が施行されて五十周年を迎える記念すべき年であります。地方自治制度は、憲法の大原則の一つとして、住民の身近な行政は自治体が行う制度であり、地方自治法第二条で示されている自治体の仕事の第一に「住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること」と書き込まれているとおり、憲法のもとで地方自治体の果たす役割がいよいよ重要になっています。
 ところが、今日、最大の問題となっているのは、私が以上指摘してきたように、自治体の第一の仕事を果たせないほど政府が自治体を従属させる政策、仕組みを温存し、借金をふやし続けさせていることであります。今こそ真の地方自治の拡充が求められています。そのため、このゆがめられた構造に根本的にメスを入れることを要求いたします。
 この点での総理の所見を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壊、拍手〕

発言情報

speech_id: 114015254X00919970317_015

発言者: 有働正治

speaker_id: 17580

日付: 1997-03-17

院: 参議院

会議名: 本会議