谷本巍の発言 (本会議)

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○谷本巍君 私は、社会民主党・護憲連合を代表し、臓器の移植に関する二つの法律案の提出者及び関係大臣に質問をいたします。
 なお、便宜上、衆議院送付案を中山案、本院の議員提出法案を猪熊案と呼ばせていただくことについてお許しをいただきたいと存じます。
 去る四月二十七日の読売新聞全国世論調査によりますと、脳死容認派は前回調査よりも一〇ポイント近く減少しまして半数を切ったことが明らかにされております。衆議院で脳死を人の死とする中山案が可決された直後に報道されたこの調査結果を、中山案の提出者はどのように受けとめられておるでありましょうか。この結果をもって脳死を人の死とすることについて社会的合意ができていると言えるのかどうか、まずお伺いいたしたいのであります。
 また、中山案では、脳死者の保険適用について当分の間存続させることとしております。ここで言う「当分の間」とはいつまでのことなのか。さらに、自賠責や民間医療保険における取り扱いについてどのようにお考えになっておるか、お聞かせいただきたいのであります。
 次に、猪熊案についてお伺いいたします。
 猪熊案では、脳死を人の死とせずに脳死状態の人からの臓器移植を可能としております。
   〔議長退席、副議長着席〕
 そこで伺いたいのは、生きている人から臓器を摘出することは本来なら殺人罪に該当いたします。これを違法性阻却で説明することが果たして可能なのでありましょうか。また、刑法における同意殺人の取り扱いや、判例が求める安楽死の要件との均衡についてどのようにお考えになっておるか、お聞かせいただきたいと思います。
 また、猪熊案は、究極の自己決定権を理由に、生きている脳死状態にある者からの臓器移植を認めているにもかかわらず、臓器摘出の要件に家族の承諾を加え、家族が承諾しなければ本人の意思にかかわらず臓器摘出を認めないこととしております。このことは、自己決定権の尊重という観点からいたしますというと矛盾しかねませんが、その点どうお考えになっておるか、お伺いいたします。
 一方、中山案、猪熊案いずれの立場もとらず、脳死状態の臓器移植を希望する人については脳死を人の死として認め、それ以外の場合には従来の三徴候説をとる、いわゆる個別死を主張する第三の声があることを私どもは承知いたしております。このいわゆる個別死の考え方について、両案の提出者はそれぞれどのようにお考えになっておるでありましょうか。
 以下、中山、猪熊両案についてお伺いいたします。
 脳死を人の死とすることにためらいを見せる人たちの理由の一つに、脳死判定基準、いわゆる竹内基準への不安があるように思われます。脳死判定基準は竹内基準で必要十分であるとお考えでありましょうか。
 この竹内基準の脳死判定について、日本医師会の生命倫理懇談会の最終報告は、できれば主治医と複数の専門医師による三人以上の医師の関与があることが望ましいとしておりますが、この点についての御所見をお伺いいたします。
 なお、脳死判定基準については、大学病院等において竹内基準に幾つかの要件を付加した基準等が複数存在しております。このうち最もポピュラーなのが観察時間の延長であります。中山案は、竹内基準の六時間という観察時間は必要十分な時間とお考えでありましょうか、御見解をお伺いいたします。
 次に、本人の意思及び家族の承諾に関連して両案の提出者にお尋ねいたします。
 まず、本人の同意という観点から、臓器の摘出が可能な年齢について両案の提出者はどのようにお考えでありましょうか。また、知的障害者がドナーあるいはレシピエントになる可能性及びその要件についてもお伺いいたしたいと思います。
 同時に、この問題及び竹内基準で六歳未満の小児を除外していることに関して、仮に法案が通っても子供の臓器移植は現実問題として難しいのではないかとの指摘がなされていることについての御所見と、移植に際してその承諾を必要とする遺族あるいは家族の範囲についてお示しいただきたいと存じます。
 さらに、両案に設けられました見直し規定でありますが、それぞれ三年後もしくは五年後とされた根拠及び想定される見直しの主眼点について御説明いただきたいのであります。
 次に、臓器移植を円滑に推進するためのネットワークの整備、ドナーカードの普及方策並びに移植コーディネーターの資格、要件及びその養成策について中山案提出者の御所見をお伺いいたします。
 最後に、臓器移植は本来的には過渡的医療であるという立場から、人工臓器の開発を初めとする医療の充実についてお尋ねをいたしたいと存じます。
 今日、臓器移植によってのみ助かる命が多数あるということについては私どもも十分承知いたしております。しかし、臓器移植はあくまで他人が脳死状態に陥ることを前提にして成立するものであり、また、移植を受けた人にしましても、生涯免疫抑制剤を飲み続けなければならないなどの根本的な問題を有しております。その意味では、我々はいつまでも臓器移植に頼るべきではありません。人工臓器の開発等医療技術の進展と、これに基づく医療の充実にこそ全力を注ぐべきであると思います。この点について、厚生大臣の取り組みをお伺いしたいと思います。
 冒頭に申し上げました世論調査の結果は、脳死と臓器移植に対する複雑な思いが交錯する国民感情を如実に示したものと言わなければなりません。その意味からも、本院における精力的かつ慎重な審議により、脳死及び臓器移植について国民的世論の喚起がなされることを念願いたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔衆議院議員横光克彦君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 114015254X02619970519_021

発言者: 谷本巍

speaker_id: 27165

日付: 1997-05-19

院: 参議院

会議名: 本会議