斉藤鉄夫の発言 (本会議)
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○斉藤鉄夫君 私は、平和・改革を代表して、原子力基本法及び動力炉・核燃料開発事業団法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
まず初めに、先日、米国が行った臨界前核実験に対し、平和・改革は、昨日、抗議声明を発表いたしました。また、報道によりますと、ロシアも臨界前核実験を定期的に実施してきたと原子力省高官が明らかにしました。私たちは、ロシアに対しても強く抗議するものでございます。
アメリカ、ロシアの論理は、実際に核爆発を伴わないのだから、包括的核実験禁止条約、CTBTに違反しないというものです。しかし、アメリカ、ロシアは、これまでの核実験の莫大なデータの保有があります。臨界前核実験は、そのデータを有効に利用して、より高性能の核兵器を開発するためのものです。核実験データの独占的保有があるから臨界前核実験に意味があるのです。これは、核大国の核保有の固定化とその脅威性を高めるものであり、国際社会の相互不信がより一層増幅されることになります。このように考えますと、臨界前核実験がCTBTの精神に反することは明らかであります。
総理、我が国は、核兵器廃絶に向けて指導的役割を担っていると思います。臨界前核実験を即刻中止するようアメリカ、ロシアに要請すべきと考えますが、いかがでしょうか。(拍手)
さて、私たち平和・改革は、原子力を否定する立場はとりません。特に、地球温暖化防止のための二酸化炭素排出抑制を考えれば、原子力の重要性は今後いよいよ増してくるとさえ考えております。
しかし、今国民が原子力を見る目はどうでしょうか。昭和三十年代、被爆国であるにもかかわらず、日本は生まれたばかりの原子力の平和利用に温かいまなざしを向けておりました。鉄腕アトムの妹はウランちゃん、かわいいキャラクターで、まさしく原子力が一つの希望であったことをあらわしています。
それが今では、例えば大学では、昔たくさんあった原子力工学科という名前はほとんど姿を消し、量子システム工学科とかエネルギー科学科に変わっています。ちょっと聞いただけでは何をやっているのかわからない名前になっています。原子力と名がつくと学生が来ないのだそうです。原子力に対して、国民はかつての温かいまなざしから冷たいまなざしに変わっています。これは、国の原子力行政の失敗を意味していると思います。それを国民が確信したのが、今回の動燃の一連の不祥事です。
総理、昭和三十年代初期に、国民に温かく迎えられて始まった我が国の原子力平和利用の歴史と、その結末としての今回の動燃の不祥事に対してどのような感想をお持ちかお伺いいたします。
国の原子力行政の失敗の大きな原因の一つは、研究開発というオープンで自由な競争の場であるべきところに、官僚主導という我が国独特のやり方を持ち込んだ点にあるのではないかと思います。金融業界に対する大蔵の裁量行政と同根の問題だと思います。
国の金をつぎ込む原子力のようなビッグプロジェクトに、多少の官僚主義が入り込むのはやむを得ないとの意見がありますが、日本は外国に比べ度を越しております。一つは、一度決めたことは世の中の状況がどう変わろうが最後まで変更しないという点です。いい例が原子力船「むつ」です。計画段階では確かに商用原子力船の研究は必要だったのですが、途中で商用原子力船は市場競争力を持たないことがわかっても、日本は当初の計画を変更しない、放射線漏れ事故を起こしてその改修に多大の追加研究費がかかろうとも、当初の計画は絶対に貫徹するというその硬直性です。先輩が決めた方針は後輩が変えられないという官僚主義です。
米国の場合、世の中の状況とそれに敏感な政治の力によって大きなサイエンスプロジェクトがすぐ変更になる、途中で打ち切りになるということがたくさんあります。その一貫性のなさを外国から非難されるぐらいです。日本と全く逆です。私は、その中間あたりが、税金の有効利用という意味では一番いいのではないかと思っておりますが、いずれにせよ、日本の硬直性は行き過ぎです。
日本の科学技術国家プロジェクトが官僚主義に陥った二番目の理由は、役所、特殊法人、民間企業一体となった閉鎖性だと思います。私は、日本、米国の両国で国のビッグプロジェクトに参加するという経験を持ちました。民間の一研究者としてです。
日本の場合、トップにお役所があり、その下に役所から天下りを迎えた特殊法人があり、その下で民間企業の研究者がいるという構成になります。ここでお役所の方針は絶対であり、民間人である私などは、お役所の課長補佐さんなどまさに雲の上の人、声もかけていただけないという感じの中で研究が進みます。フランクな意見交換などほとんどない中で、役所、特殊法人、民間がそれぞれ余り情報の交流、共有がないままおのおの固まって、役所の決めた方針で進んでいくという閉鎖集団ができ上がっていきます。
米国での経験は全く逆で、能力による厳しい選別はありますが、一たん認められれば役人、マネジメント、民間研究者が他の分野の人も交えてフランクに意見交換し、それが全体の方針変更にも十分つながり得ました。
私は、ここで原子力及び原子力行政が国民の信頼を回復するためには、この官僚主導、閉鎖性をなくし、原子力基本法にうたわれた自主、民主、公開の原則に立ち返り、オープンな自由競争と議論が重要だと考えますが、総理並びに科学技術庁長官のお考えをお伺いいたします。
また、動燃改革検討委員会の結論では、一連の動燃不祥事の根本原因を経営の不在と結論づけています。私の言う官僚主導と相通ずるところがあると思うのですけれども、それを克服するために、新しい機構においては、理事長や各事業所長の権限、裁量権を大幅に強化し、科学技術庁は結果を評価、監査するだけとなっています。その点は評価しますが、動燃に限らず他の巨大科学プロジェクトも、動燃と同様の経営不在、官僚主導が存在すると容易に類推できますが、国民の不信を取り除くために今後どのような対策をとられるのか、科学技術庁長官にお伺いします。
さて、官僚主導を克服し、自主、民主、公開で、透明な科学技術行政、エネルギー行政とするために、二つの側面から質問します。
一つは、原子力の基本計画を策定する原子力委員会、そして安全規制の立場からチェックする原子力安全委員会、この二つの委員会の問題です。
本来、行政から独立した存在であるべきですが、現実には、科学技術庁、通産省と一体であると言われております。計画、推進、規制が一つになってしまっているということです。両委員会とも、スタッフも少なく、事務局は科学技術庁がやっているということではそうなるのもいたし方ないわけで、本来の機能を果たしていない。独立した三条行政委員会として機能を拡充すべきで、これが日本の原子力行政の透明化の第一歩と考えますが、総理のお考えはいかがでしょうか。
二番目は、情報公開です。
官僚化、閉鎖集団化を防ぐもう一つの有効な手段は情報公開です。動燃は情報公開指針を出しましたが、それは研究成果の公表という意味合いのものでしかありません。本当の情報公開は、経営実態や、科学技術庁、通産省とのやりとりである通達、指示、報告などについても行われるべきです。特に、事故隠しや情報改ざんなどにより信用を失墜した後ということを考えれば、経営及び管理にかかわる実態がわかるような資料も対象とすべきと考えますが、科学技術庁長官、いかがでしょうか。
また、理事長が非公開と判断したものについて、請求者が不服を申し立てることのできる手続についても定めるべきと考えるが、科学技術庁長官、いかがでございましょうか。
さて、今回の動燃改革において、新しい機構は三つの主要な事業に限定されることになりました。すなわち、高速増殖炉、再処理、高レベル放射性廃棄物です。そしてそのほかの、これまで行ってきた新型転換炉、ウラン濃縮、海外ウラン探鉱などの業務から撤退をすることになりました。
このうち、ウラン濃縮、海外ウラン探鉱については、技術を民間に移転するとのことですが、コスト意識の高い民間で、国主導で開発された高コストの技術がうまく受け入れられるのか、また、技術は人にくっついているという属人的な性格もあり、技術移転に伴う研究者の移動も不可避と考えられますが、その体制は整備されているのか、科学技術庁長官にお伺いします。
さて、ウラン濃縮の研究プラントは、山深い、岡山県と鳥取県の県境、人形峠にあります。動燃人形峠事業所です。昭和三十年、ウラン鉱床が発見されて以来、四十数年間の日本の原子力開発の歴史を刻んできたところです。ウラン鉱の採掘そのものは昭和六十二年に終わっていますが、海外産のウランを使ったウラン濃縮研究が続けられています。今回、動燃は、ウラン濃縮研究から撤退し、民間である六ケ所村の日本原燃に移転することにより、この事業所もいずれはなくなることになりました。そして、地元岡山県上斎原村は、今、雇用の不安や、コミュニティーそのものが存続できるかどうかの不安に大きく揺れております。
私たち平和・改革は、先日、大野由利子科学技術常任委員長を先頭に、人形峠事業所、そして上斎原村に視察団を派遣し、実情を調査してまいりました。ウラン濃縮研究からの撤退、民間への移転という方針は我々も正しいと判断しますが、しかし、これまでその研究開発を支えてきた地域コミュニティーについても、撤退に当たって十分な配慮が必要と感じました。
上斎原村の人口は約千人、人形峠事業所に働く人は約四百六十人、まさに事業所がなくては存続できない地域コミュニティーになっております。ウラン鉱山跡地という環境上の問題もあります。東海村に並ぶ日本の原子力の原点の地として科学教育上の施設を誘致できないものかとの村長さんの提言もありました。将来にわたる地域コミュニティー対策について科学技術庁長官にお伺いします。
さて、新しくできる核燃料サイクル開発機構の最大の任務は高速増殖炉です。高速増殖炉にはこれまで一兆円近い国費が投入されてきました。高速増殖炉は、ウラン燃料を今ある軽水炉より数十倍有効に使える夢の原子炉というふれ込みですが、技術的には本当に難しく、商業的に成り立つという意味での実用化のめどは立っていません。うまくいって実用化のめどは二〇三〇年ごろと言われております。
今、高速増殖炉を研究開発していこうという国は、先日フランスが脱落して日本一国となりました。これからも多額の資金を投入して研究を続けるのか、それともやめるのか、いずれにしても、ここで大いなる議論をすべきと考えています。成功すればこれほどの人類への貢献はないし、失敗すれば投入したお金は基本的にはむだになります。総理及び科学技術庁長官の率直な御見解をお伺いします。
新型転換炉は、三千五百億円の国費を投入しながら、国会で一度の議論をされることなく、三年前中止になりました。中止されること自体を悪いと言っているのではありません。その決定が、国民の代表たる国会で一度も議論されることなく、科学技術庁、通産省、そして電力業界三者で密室で決められたことが大きな問題であると言っているのでございます。
高速増殖炉はこれから数兆円かかるプロジェクトです。今回の動燃改革法を契機にこの国会において大いに議論をして決めるべきであると主張して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕