鶴岡洋の発言 (本会議)

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○鶴岡洋君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました小渕総理の所信演説を中心に、山積する内外の諸問題について質問いたします。
 我が国経済は、二年連続でマイナス成長に陥り、失業率は四%を超え、有効求人倍率も〇・四八倍で過去最低記録を更新するなど、これまでに経験したことのない深刻な事態であり、経済危機からの一日も早い脱出が最優先課題となっております。
 昨年来、増税や医療費負担の引き上げなど、政府の誤ったデフレ政策や年金、医療、介護等の社会保障に対する先行き不安などによって消費が大幅に落ち込んでおります。その結果、生産設備や労働力が過剰となるデフレギャップが発生し、今や我が国の需給ギャップは三十兆円とも言われております。今、小渕内閣が最優先して取り組むべきことは、今日の沈滞した国民の消費マインドを喚起し、景気回復を図ることであります。
 世界第二位の経済大国日本の経済の動向は、そのまま通貨・経済危機に瀕しているアジア諸国の経済に連動し、さらには世界経済へと波及していくのであります。先般、クリントン・アメリカ大統領や江沢民中国国家主席が来日した際も、経済問題を中心に広範にわたる諸問題について首脳会談が行われましたが、このような状況を見ましても、我が国のトップリーダーである小渕総理の責任は国内的にも国際的にもまことに重大であります。
 それでは、質問に入ります。
 まず最初に、自民党と自由党の連立問題についてお伺いします。
 七月の参議院選挙では厳しく対立、対決してきた自民党と自由党が、突如として閣外協力から来年通常国会では本格的な連立へと進展するやに言われております。国民は、一体参議院選挙での厳しい審判は何だったのかとの思いがするのではないでしょうか。政治・行政改革、安全保障、税制改革など両党の政策合意を見ると、これまでの自民党政権の政策から相当に踏み込んだ内容となっております。総理、これまでの経緯と今後の見通しを含めて、国民に明確に説明すべきであります。お伺いいたします。
 次に、アジアの通貨・経済危機についてお伺いいたします。
 さきにマレーシアで開かれたAPECは、ロシア、ペルー、ベトナムの新規加盟で二十一カ国・地域となり、地理的にも世界経済的にも巨大な存在となりました。その首脳会議では、深刻なアジアの通貨・経済危機への対応が最大の緊急課題となったことは周知のところであります。
 我が国がこのアジアの通貨・経済危機にいかに取り組み、アジア太平洋経済の安定、世界経済の回復のためにどのように対応するか注目される中で、金融支援策として総額三百億ドルの宮澤構想を提案し、APEC首脳宣言に盛り込まれました。私は、この宮澤構想については率直に評価し、期待しております。また、ヘッジファンドなど短期資本取引の監視強化と取引資本の流れを把握するための作業部会の設置を確認できたことも評価するものであります。
 ただ、ここで総理に一点確認しておきたいことがあります。最後まで紛糾した我が国の水産物、林産物など九分野の早期自主的自由化問題は、来年のWTO、世界貿易機関の閣僚会議で再び協議することになったとのことでありますが、参加各国からは冷ややかな視線が送られたとも言われております。我が国の漁業者や林業者などの関係者、さらには消費者、国民も大変心配しております。政府は来年のWTO交渉にはどのようなスタンスで臨まれるのか、お伺いします。
 次に、第三次補正予算案の骨格になる緊急経済対策についてお伺いします。
 十一月十六日に政府は、過去最大規模の対策として二十四兆円に及ぶ緊急経済対策を決定いたしました。株式市場、外為市場の反応は冷たく、総じて民間の評価も景気回復の力強さに欠けるというものでありましたが、政府はこれによって九九年度には確実にプラス成長を実現すると表明しております。
 しかし、二十四兆円といっても直接的な需要の喚起につながらない部分も多く、消費や設備投資など民間需要を喚起する効果はいささか懸念されるところであります。また、経済の牽引力である設備投資は、昨年の四月から六月期に比べ、ことしの四月から六月期は約八兆円も減少している上、従来型の公共投資も目立つことを考えると、政府の方針どおりはっきりとプラスになるかどうか、非常に疑問であります。
 総理は、八月六日、第百四十三臨時国会における初めての所信表明演説で、政治主導のもとスピーディーに政策を実行してまいりますと、政策決定の迅速化を約束し、六兆円を上回る恒久減税の実施を表明いたしました。以来、四カ月が経過しておりますが、今もって所得税、住民税の恒久減税の中身が具体的には示されておりません。
 総理、経済が非常事態にあることを考えると、こうした悠長なことは許されません。しかも、緊急経済対策の四兆円規模の恒久減税は、金額的には既にことし実施した四兆円の特別減税に相当するものであり、減税規模が大きくなるわけではありません。報道されたところによると、年収七百万円以下の所得層では逆に増税になるおそれがあります。また、減税の需要創出効果はほとんど期待できないとも言われておりますが、恒久減税の具体的な内容とともに総理のお考えをお伺いいたします。
 また、緊急経済対策は二十一世紀を展望した先端電子立国の推進、大都市交通対策、情報ネットワーク化の推進などが盛り込まれており、その方向性はそれなりに評価できますが、景気浮揚効果に対するインパクトはまだ弱いと言わざるを得ません。今日の経済非常事態を考えると、もっと具体的で効果のある緊急対策が必要であります。
 そこで、これは私が常々考えていたことでありますが、景気浮揚対策の一環として全国の高速有料道路の無料化を提案したいと思います。
 総理、アメリカではハイウエーはほとんど無料であります。欧州でも、アウトバーンで有名なドイツを初めEU諸国はすべて無料と聞いております。そのため物流が大変スムーズであることは周知のところであります。
 高速道路は、人間の体に例えれば動脈に相当するものであります。血管が詰まれば病気になります。血管の流れがよくなれば元気になり、健康体になります。全国の高速有料道路を無料化すれば、渋滞の解消、輸送コストの低減、国内旅行の活発化など、相当の経済効果が期待できるのであります。年間十二兆円にはなるであろうとの話もあります。むだの多い公共事業を続けるより、一年間でも試験的に実施する価値が私は十分あると考えますが、総理、御見解を聞かせてください。
 次に、中小零細企業対策についてお伺いします。
 中小零細企業は我が国経済の基盤であり、活力の源泉であります。しかし、バブル崩壊後、仕事量の減少、相次ぐ倒産、金融不安による貸し渋りが中小零細企業の経営を大変圧迫しております。今回の緊急経済対策でも貸し渋り対策が強化されることになっておりますが、政府系金融機関による対応だけでは限界があると思います。総理、どの程度の貸し渋り防止効果があると考えているのか、しかと承りたいのであります。
 また、下請企業は、受け取り拒否、買いたたき、支払い遅延等に直面して非常に厳しい環境にあります。下請企業は、親企業の不当ないじめがあってもみずからその不当性を言い出すことができない状況にあります。下請企業を守るため、特別監視体制等を組み、この不当な企業圧迫を厳しく取り締まる必要があると思いますが、どのように守っていくのか、具体的対応策をあわせてお伺いします。
 次に、地域振興券について自治大臣に確認させていただきます。
 この地域振興券は、本年初めに我が党が総額十兆円規模の減税対策の一環として提案した四兆円規模の商品券構想に端を発するものであります。夏の参議院選挙でも、景気対策の一つとして国民にその実現を訴えてきたところであります。その後、商品券支給法案もつくり、国会へ提出し、いろいろ努力を重ねてきた結果、当初案より後退はいたしましたが、公明党と自民党の合意によって地域振興券という形で実現したものであります。
 この地域振興券は、市区町村が実施主体となって永住外国人も含め約三千五百万人に支給することになり、第三次補正予算案に七千六百九十八億円が計上されており、国民の間では大変期待されております。
 既に公的機関の発行するいわゆる商品券については、東京都港区、板橋区、千葉県野田市、京都府園部町など、地域の活性化に相当の効果を上げて大変好評な事例が各地で見受けられ、既に数百の地方公共団体で実施されたり、計画されております。地域振興券の使用できる範囲が原則として市区町村であることを踏まえると、消費拡大の呼び水として地域経済や商店街の活性化に多大な効果を期待できると私は確信をしております。
 ともかくも国が主導しての地域振興券は、我が国で初めての試みであります。国民の間に多少の戸惑いもあるとも思いますが、無事故でスムーズに実施できるよう万全を期していただきたいと思います。
 次に、少子化対策についてお伺いします。
 少子化の進行で、我が国の人口は二〇〇七年を頂点に減少に転じて、以後二十一世紀を通して減少を続けると予測されております。出生率が減少し、その結果、人口が減少することによい面もあります。しかし、そのことが経済社会と社会生活に深刻な影響をもたらすことも、また事実であります。国が少子化対策に総力を挙げることの重要性は、高齢者の介護対策の重要性に決して劣るものではありません。少子化社会を特集した平成十年版厚生白書は、「少子化の要因への政策的対応は、労働、福祉、保健、医療、社会保険、教育、住宅、税制その他多岐にわたるが、中核となるのは、固定的な男女の役割分業や雇用慣行の是正と、育児と仕事の両立に向けた子育て支援である」と述べております。
 この考えを私は全面的に支持いたしますが、現実には緊急保育対策等五カ年事業、いわゆるエンゼルプランは、財政構造改革法のあおりも受けて目標達成は絶望視されております。また、その他の少子化対策についてもさまざまな施策が展開されておりますが、子育て中の家庭でそれを喜んでいる人はだれもいないと言っても過言ではありません。
 私は、二十一世紀において子供を産み育てることに喜びを持てる社会にするには、その施策の対象となる方々が私たちのことを社会は十分に理解してくれていると実感できるような、例えば児童手当制度の支給額や支給年齢の拡大など思い切った対策が必要と考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
 次に、年金問題についてお伺いします。
 本来、年金制度など社会保障制度は国民の生活に安心感を与えるべきものであります。ところが、厚生省の年金制度改革は、保険料を引き上げ、しかも給付水準は引き下げというものであり、国民の不安心理をいたずらにあおるものであります。それでは国民は将来への希望を失い、また、老後の生活不安から財布のひもをかたく締めるのは当然であります。
 公的年金については、現在の年金水準を維持すること、現役勤労世帯の負担が過重にならないようにすることなどを勘案して、現在の基礎年金の国庫負担率三分の一を少なくとも二分の一に直ちに引き上げることが必要だと私は考えております。総理の忌憚のない御意見をお伺いいたします。
 次に、二〇〇〇年四月にスタートする介護保険制度についてでありますが、我が党は、介護保険制度が混乱することなくスタートし、公平かつ安定した運営がなされるよう、党本部に設置した介護保険対策本部を中心に、全国調査と関係団体からヒアリング等を行ってまいりました。現地では、加速度的にふえる要介護者に追いつかない介護施設の整備やマンパワーの確保、それに追い打ちをかける厳しい財政事情など、まことに深刻であります。
 去る十一月九日に開かれた医療保険福祉審議会の老人福祉部会では、各市町村が第一号被保険者の保険料を設定する際、未納者の保険料分をそれ以外の被保険者に転嫁するという案が厚生省から提案されました。国民健康保険の割り戻し上乗せと全く同じ手法であります。これに対し、出席した複数の委員から、まじめに保険料を払う人が減ってしまうとか、保険徴収が困難な国民健康保険の二の舞になるといった意見があったと聞いております。
 相互扶助として加入者が助け合うことは保険の精神ではありますが、これでは助け合いではなく、まじめに保険料を払っている人に一方的にしわ寄せするだけではないかと大変心配しております。政府は、このような諸問題を排除して、二〇〇〇年には介護保険制度が円滑にスタートできるように総力を挙げるべきだと考えますが、具体的対応策と今後の見通しについてお伺いいたします。
 次に、教育問題についてお尋ねいたします。
 二十一世紀を目前にして加速度的に少子・高齢社会へ進展する中で、我が国の教育を取り巻く社会状況も大きな転換期を迎えております。硬直化した学歴社会、管理型教育を根底から改革し、将来の日本社会の発展を支える豊かな人間性と多様な価値観を持った人づくりが急務であります。
 ところが、教育現場では、いじめ、校内暴力、登校拒否、子供の自殺、未成年者による残虐な凶悪犯罪などが多発し、残念なことに増加傾向にあります。長期経済不況のもと、教育費を捻出するため、家計費の切り詰め、貯蓄の切り崩し、さらに共働き夫婦の増加で少なくなる親子の対話など、教育環境は大変に深刻であります。
 ところが、抜本的な教育改革が一刻の猶予も許されない状況にあるにもかかわらず、相も変わらぬ学術的な議論に終始し、何ら具体的な対策を講じない政府に対し、国民は激しい憤りといら立ちを覚えております。
 今、一番求められていることは、子供たちが強く正しく生き抜くための強靱な心を培う訓練、他の人々の痛みに思いをはせる心、命を大事にする優しい心をはぐくむ教育環境であり、子供たちの多彩な個性と無限の可能性を開花させ、よりよき生き方を教える人間教育の実現であります。
 そこで、私は、次の三点について質問いたします。
 第一点、仮称学生手当制度の創設であります。
 経済不況の中で、高校生、専修学校生、大学生を持つ家庭は過重な教育費に家計を大変圧迫されております。二十一世紀の日本を担う人を育成する教育は、まさに壮大な人材開発事業であり、重要な公共投資であるとの認識に立つべきであります。そして従来の公共投資を抜本的に見直して、人材育成のための公共投資を重点的かつ優先的に予算措置をすべきであります。
 そこで、我々の主張で実現した特定扶養控除に加え、児童手当制度の学生版として、学生一人につき年額二万円の学生手当を出費のかさむ年度末に支給する仮称学生手当制度を創設してはどうかと考えますが、いかがでしょうか。
 第二点は、奨学金制度の拡充についてであります。
 長引く経済不況のもとで、奨学金制度の拡充は急務であります。我が党は、希望するすべての学生に奨学金を貸与する新教育ローン制度の早期創設を主張してまいりましたが、その主張が今年度の第一次補正予算案では、奨学金貸与人数の増加という形で一部実現をしました。さらに、来年度の文部省予算要求では、日本育英会の有利子奨学金の貸与人数を二十万人に倍増すること、貸与月額の選択制の導入などが盛り込まれ、一歩前進の内容となっておりますが、ぜひこれは実現を目指したいのであります。
 また、多額の資金を必要とする入学時と年一、二回の学費納入時期に学生が希望すれば奨学金をまとめて貸与するなど、ニーズに即した弾力的かつ適切な対応策を講ずべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 第三点は、新学習指導要領についてであります。
 先日、文部省が二〇〇二年度からスタートする学校週五日制の完全実施に対応した小中学校の新学習指導要領を公表しました。これまでの知識詰め込み型教育からの脱却という点では全体的に評価できますが、新学習指導要領を定着させるためには、教員の資質の向上、少人数学級の実現、高校、大学の入試の改善が急務であります。また、多彩な才能を持つ教員の確保と育成には、教員採用試験の年齢制限撤廃、社会人採用枠の拡大、研修制度の充実等を図らなければなりません。新学習指導要領の導入のためにどのように対応されるのか、あわせてお伺いをいたします。
 最後に、深刻の度を増す環境問題についてお伺いいたします。
 ダイオキシン類、廃棄されたPCBの処理、内分泌攪乱物質、いわゆる環境ホルモンなど化学物質による環境汚染問題が重大な社会問題となっております。約十万とも言われる化学物質が世界じゅうではんらんしており、これらの物質の環境リスクを評価して、どのように管理し、安全を確保していくかが我が国のみならず世界各国の緊急課題となっております。
 世界有数の経済力、技術開発力を持つ我が国は、化学物質の環境及び生態系に与える影響の大きさを踏まえ、化学物質の管理や安全使用、環境基準等について基本方針を改め、内外に明らかにすべきであります。
 そこで、環境保全を重視する視点から、化学物質の安全性に関する仮称化学物質安全基本法の制定が急務であると考えますが、環境庁長官の見解をお伺いいたします。
 また、環境庁が先ごろまとめた土壌中のダイオキシン類に関する検討会中間報告によれば、ダイオキシンで汚染された土壌の対策が必要な暫定基準値として土壌一グラム当たり千ピコグラムと決めました。ところが、WHO、世界保健機構が本年五月に提案した新しい一日許容摂取量、TDIの考え方が反映されていないばかりか、暫定基準値以下であれば対策を講ずる必要がないとも読め、かえって汚染の懸念されている地域周辺住民の怒りを買うことになるのは必至であります。大阪府能勢町の豊能郡美化センターにおいて、国内最高のダイオキシン濃度が発覚し、既に一年も経過しているにもかかわらず、今回の環境庁の対応は余りにも後手であり、全く中途半端と言わざるを得ません。
 今後、最終報告を取りまとめるに当たっては、我が党が既に提案しているように、子供の遊び場や今回の報告で見送られた農用地や公共用水域、事業所など、用途ごとに基準値を定める等、ダイオキシンに汚染されない生活環境の保全と地域住民の不安を解消することが重要だと考えますが、環境庁長官の見解をお伺いいたします。
 以上、小渕内閣が早急に取り組むべき内外の諸問題についてただしてまいりました。
 総理、徳川家康の有名な言葉に、「およそ人の上に立って下の諌めを聞かざる者の、国を失い、家を破らざるは、古今ともこれなし」とあります。政治に携わる者は民の声をしっかりと聞け、さもなくば民を苦しめ、必ずや国を滅ぼすことになるとの言葉でありましょう。
 小渕総理、あなたは我が国のトップリーダーであります。国民の声を真摯に受けとめ、これらの諸問題を一日も早く解決されるため、なかんずく経済の立て直しに総力を挙げて取り組まれることを強く要請いたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 114415254X00319981202_006

発言者: 鶴岡洋

speaker_id: 7814

日付: 1998-12-02

院: 参議院

会議名: 本会議