緒方靖夫の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○緒方靖夫君 私は、日本共産党を代表して、組織的犯罪処罰等三法案、特にいわゆる盗聴法案について質問いたします。
 最初に、私は、衆議院における自民、自由、公明三党による強行採決の暴挙に対し、強い抗議を表明するものであります。新聞各紙にも、盗聴に対する国民の不安を除くのは国会の大切な使命である、衆議院での審議ではそれが果たされたとは到底思えないなど、拙速ぶりを批判しているのは当然であります。このような審議不十分のままの強行採決を総理は是認されるのかどうか、見解を問うものであります。
 結社の自由、言論の自由を保障する我が国の憲法第二十一条は、その第二項で「通信の秘密は、これを侵してはならない。」と明記しております。これは、電話などによる通信が、国家権力はもちろん、何人によっても侵されてはならないことを、民主社会における市民的、政治的自由を保障し、健全な人間関係を守る不可侵の原則として特に明らかにしたものであります。
 すなわち、社会が自由で民主的であるためには、人と人との自由なコミュニケーションが不可欠であります。こうして憲法第二十一条をかたく守り尊重することの意義は、今日、近代民主社会においてますます重要になっていると考えますが、総理の認識を伺うものであります。
 次に、盗聴できる対象を麻薬、銃器など四種の犯罪に絞ること等の修正案も、政府原案の憲法違反の本質を変えるものではありません。もともと原案は、予備的盗聴、事前盗聴、別件盗聴を認めており、事実上無限定な通信が対象となる基本的性格は変わらないものであります。これが実施されれば、犯罪と無関係な市民の会話、通信が大量に盗聴捜査の中に含まれる危険は極めて大きく、人権侵害と警察による監視社会への道を開くおそれがあると言わなければなりません。
 だからこそ、警察による私の自宅への電話盗聴事件に対する東京高裁判決は、「憲法上保障されている重要な人権である通信の秘密を初め、プライバシーの権利、政治的活動の自由等が、警察官による電話の盗聴という違法行為によって侵害されたものである点で極めて重大である」と断罪したのであります。国民の基本的権利を侵害するこのような捜査権力による盗聴という行為を、事もあろうに法律で合法化するなどということは、まさに権力犯罪の自由化に道を開くものであり、第二十一条を初め刑事手続における人権保障を定めた憲法の諸条項に違反することは明白ではありませんか。総理の見解を伺いたいのであります。
 政府は、G8の中で盗聴法がないのは日本だけと言っておりますが、日本のように電話などの通信の秘密を明白に不可侵の権利と宣言している憲法を持っている国は日本以外にありますか。総理、はっきり答えてください。
 また、盗聴を実行する部隊である警察の体質も厳しく問われなければなりません。
 十三年前、警察が不当にも私の自宅の電話盗聴を行っている事実が発覚いたしました。この事件は、神奈川県警の五名の警察官が近くのアジトに私の家の電話線を切断して引き込み、当時、日本共産党の国際部長であった私の職務上の電話を盗み聞きするために仕掛けたもので、東京高裁判決は、アジトに残されたカセットケースの日付から、少なくとも九カ月間は盗聴したと認定しております。この電話盗聴によって、党と私の政治活動の自由が侵害されただけではなく、私の家族と私の人権のみならず、電話で話をした相手の方々のプライバシーも深く傷つけられました。
 総理、こうした憲法違反の電話盗聴が公権力により実行されたことの重大性をどのように認識されているのか、しかとお答えいただきたい。
 東京地裁の判決は、少なくとも警察庁の警備局長、公安一課長ないし神奈川県警の本部長、警備部長において具体的内容を知り得る立場にあったとして、警察の組織的、計画的な行為であることをはっきりと認めております。
 さらに、下稲葉法務大臣は、昨年三月十一日、衆議院法務委員会でこの事件の認識を問われ、「神奈川県警の警備部の警察官による共産党の方に対する盗聴事件」と答弁しております。陣内法務大臣はどのような認識か、お尋ねいたします。
 ところが、事件発覚当時の山田長官から現在の関口長官まで歴代の警察庁長官は、私の質問にも同僚議員の質問にも、警察は過去も現在も電話盗聴をしていないと全面否定の答弁を繰り返しております。それでいながら、警察の組織的、計画的な行為を認定した東京高裁の判決に対しては、上告する理由がないと受け入れました。このようにみずから上告を断念しながら、確定判決に従わず、なおも警察庁長官が盗聴事件への警察官の関与を否定し続けるという道理に反することを国家公安委員長は是とされるのですか。明確な答弁を求めるものです。
 総理、警察庁長官がとっているこの対応は、みずからの誤りを絶対に認めず、国会でも法廷でも平然と虚偽を述べ、憲法違反の重大犯罪にも全くの無反省という警察の体質を如実に示すものと言うほかありません。このような警察の体質は、大きな社会的不信感をつくり出し、このような警察が通信傍受を実行したら歯どめがかからなくなるのではないかという不安が表明されているのは当然ではありませんか。
 警察が、これほど明白な組織的盗聴の事実を、そしてその責任をいまだ認めようとしない態度をとり続けていることは、本法案審議の根本的前提すら欠いていると言わざるを得ないではありませんか。
 しかも、この事件について、日本政府への国際的な批判も高まりました。私は、数度にわたり国連人権委員会のジュネーブ会議で発言し、警察、日本政府の対応を報告してまいりました。その際、各国人権委員の方々から、市民が盗聴すれば罰せられる、警察官が盗聴しても罰せられない、それでも日本は法治国家なのかという厳しい批判が行われました。総理、国連の場で出されているこうした批判にどうこたえられるのか、この際、日本政府の姿勢を明確にしていただきたい。
 次に、裁判官による令状が人権侵害をチェックできるかという問題であります。
 修正案では、令状請求者を指定された検事と警視以上の警察官に限定しましたが、人権侵害を引き起こす危険な本質は何ら変わりありません。また、令状発行者を地裁の裁判官としても、捜索・押収令状の地裁における現在の却下率が〇・一一%であり、また、盗聴先進国と言われるアメリカでも、そのうち八三%が犯罪と無関係であったという状況のもとで、人権侵害をチェックできるはずはないではありませんか。総理の答弁を求めます。
 さらに、立会人には、令状が示されるだけで、被疑事実も、何のための盗聴かも知らされないし、盗聴内容を聴取することもできません。捜査と無関係な通信傍受の切断権もないのであります。このような状態では、立会人に意見を述べる機会を与えても、それは全く役に立たず、人権侵害を防止できないことは明白ではありませんか。総理の答弁を求めます。
 最後に、盗聴の事後通知が犯罪関係者だけに行われ、それ以外の関係者の人権侵害救済の道がない問題であります。
 法案では、盗聴終了後三十日以内に当事者に書面で通知することになっていますが、それは傍受した通信の中に被疑事実が含まれ、刑事手続として傍受記録が作成される場合に限定されており、犯罪と関係ないにもかかわらず盗聴された国民には事後通知がされないことになっております。これでは、国民は公権力により人権侵害のされっ放しになるではありませんか。なぜ通知しないのですか。このような重大な国民の人権侵害を引き起こすおそれを総理は容認されるのですか。総理に明確な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 114515254X02719990609_010

発言者: 緒方靖夫

speaker_id: 18665

日付: 1999-06-09

院: 参議院

会議名: 本会議