水野誠一の発言 (本会議)
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○水野誠一君 私は、参議院の会の代表として、ただいま議題となっております組織的犯罪対策関連三法案に関して、小渕総理並びに関係大臣に質問をいたします。
これまでも重ねて指摘のあるとおり、この三法案の中でも最も世間の関心を集めているのがいわゆる通信傍受法案であります。この法案の本質は憲法が保障する通信の秘密と公共の福祉や安全とのバランスをいかに適正に図るかという極めて重大な点にあり、こうした重要法案が衆議院では十分に論議されないまま可決され、参議院に送付されるに至ったことを大変遺憾に思います。
法務省によると、我が国における組織的犯罪は増加の一途をたどっており、これ以上一刻も放置することはできない、また、我が国の法制度に大きな欠陥があることを国際的に指摘されていることなどが今回の法改正の理由だと説明しています。
しかし、この通信傍受法案に関しては、国民の基本的人権にかかわる極めてデリケートな問題を多くの点で含んでいるものと考えます。にもかかわらず、衆議院法務委員会においては、大半の委員が欠席する中で沈黙のまま何時間もの質疑時間が経過し、そのまま採決に及ぶという、まさに異常事態とも言える光景を国民に見せつけることになりました。こうした秩序を欠いた法案審議のあり方が、立法府の歴史においてあしき先例となるばかりか、国民生活の将来に重大な禍根を残す結果を招きかねないということを強く懸念しています。
さらに、この法案の審議に当たり、万が一にも良識の府である参議院においても同様のことが起これば、これはまさに立法府の機能不全をみずから露呈するものであり、真摯な議論を望む国民からの信頼を政治が取り戻すことがますます難しくなるであろうことを肝に銘じるべきだと思います。
そのためにも、拙速に結論を急がず、十分な審議を尽くすべきだと思いますが、まず小渕総理に、衆議院審議の経緯についての所見と、参議院で審議に入るに当たっての新たな覚悟と姿勢を伺いたいと思います。
次に、近年の国内犯罪においては、その凶悪化、巧妙化といった著しい質の変化が進行しており、国民生活の安全を確保する観点から、捜査機関にも時代に対応した能力の向上が求められていることは確かだと言えましょう。
しかし、捜査手法としての通信傍受はまさに一種の劇薬であることも事実であります。その効果のみを期待して安易に導入を図るのは危険な発想であり、また、通信傍受が必須であると言わなければならないほど現在の我が国の捜査機関の能力が他国に比して劣っているとも思えません。
まず、本法案においては、捜査官は令状記載容疑と無関係な会話を聞くことは原則できないとされ、傍受の中断を義務づけるとされています。一方で、傍受すべき通信に当たるかどうかを判断するための傍受、いわゆる該当性判断のための傍受や、傍受実施中に令状記載容疑以外の犯罪で本法案に定める対象犯罪の実行を内容とする通信が行われたとき、いわゆる別件傍受は、これは許されるとしています。
しかし、会話というものの性質上、現場における実際の判断は極めて困難ではないかと予想されます。この点について政府からは、当該事件の担当捜査官が傍受するので内容はすぐに識別できる、内容によって中断・再開を繰り返すことになるので、不当にプライバシーを侵すことはないなどの説明がなされています。
しかし、この説明が十分な説得力を持つものとは言いがたく、また、情報収集のための通信傍受に本法案が拡大運用されるのではないかという懸念も、結局はこの捜査官の裁量部分に関する不信感に起因するものであると考えます。
重ねて申し上げますが、通信傍受はまさに劇薬であります。これを扱う捜査機関に対し、国民からこれほどまでに不信の声が上がっている今日の現状はまさに憂慮すべき事態であり、国民生活の安全確保という重責が十分に果たされ得ると実感するには、この不信感が大きな障害になっていることも事実であります。
警察による違法傍受だと既に司法の判断が出ている過去の事件を考えるにつけても、今日の捜査機関に対する不信感の高まりについて、またその信頼回復のためには、行政の長として責任ある対応をすべきだと思いますが、総理並びに国家公安委員長の御所見を伺いたいと思います。
次に、電子メールなどのコンピューター通信について伺います。
電子メールなどの通信形態は、電話やファクシミリとは多くの点で異なる性質を持つものであります。複数の当事者による通信内容が同時・非同時に混在すること、数秒のうちに送受信される情報量の多さ、あるいは発信元の隠ぺいや匿名でのやりとりなどの特性にかんがみると、本法案において電話と全く同様に傍受対象とされることにいささか違和感を覚えます。
電子メールなどの通信においては、多くの場合、ホストコンピューターなどに一時的に情報を蓄積する技術が用いられています。これを傍受する際、傍受すべき通信とすべきでない通信を適切に判断し、傍受すべきでない通信について排除することが果たして可能なのだろうか、あるいは重要な論点となっている傍受の最小化のための措置が適切に図られるのだろうかなどの疑問が当然生じますが、これは電話の傍受における場合以上に困難であることが懸念されます。
さらに、手続が適正であるか否かを外形的な面につき監視するとされている立会人の知見の問題や、通信事業者の規模や設備も電話に比べてまだ未成熟であることから一般利用者に対するサービスに支障を生ずる可能性など、議論を尽くすべき問題は依然多く残されています。
法制審議会においてコンピューター通信を対象から外す提案があったにもかかわらず、これが本法案に盛り込まれている理由としては、既に広く普及した情報手段であること、犯罪組織が既にこれを用いている現状などが示されております。
しかし、そうであれば、なお実際の傍受の機会は少なくないものと予想され、現実的かつ慎重な審議を尽くすべきものと考えますが、法務大臣の御所見を伺いたいと思います。
最後に、現在、我が国においては、電気通信事業法、有線電気通信法に規定する以外に通信の秘密を侵す行為一般を処罰する法律が存在していないということを指摘したいと思います。
法制審議会の議論においても、委員からこれを整備する必要性についての指摘があったところ、なぜか、現行の電気通信事業法、有線電気通信法に厳密な規定をした上で通信の秘密の侵害罪を規定しているが、一般的な処罰規定を設けるとなると、それらの枠組みを一たん崩さねばならず、それによって通信の秘密の範囲が不明確になりかねないなどとして、これを今後の課題として先送りした経緯があります。
また、いわゆる盗聴器という商品が安価に大量に市販されていることが悪質な犯罪行為である盗聴を助長している事実も見逃してはならないと考えます。
スポットモニタリング、いわゆる傍受の最小化はアメリカの通信傍受の手法を参考にしたものであるなどの指摘が繰り返しなされておりますが、もしアメリカを参考にするというのであれば、むしろ、まず一般的に通信傍受を禁止し、傍受機器の製造や利用を禁止し、違反行為を厳しい処罰の対象とし、その上で、一定の要件を満たした場合に裁判官の許可を得て犯罪捜査のための通信傍受を認めた体系であるというアメリカの通信傍受に関する概念こそを参考にすべきだと考えます。
そこで、盗聴器の製造、販売の禁止、また通信傍受の一般的禁止、厳しい処罰規定のための具体的な法整備を進めることが急務であると考えますが、この点について法務大臣の御所見を伺います。
最後に、マネーロンダリング、証人保護に関する他の二案件についても、この通信傍受法案の影にかすむことなくしっかりとした審議がされることを切に希望して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕