簗瀬進の発言 (本会議)
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○簗瀬進君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました産業活力再生特別措置法案について、総理及び関係大臣に質問を行います。
経済構造の大きな変化を予測してからもう十年を超える歳月がたちます。産業構造の変化は必然的に失業者をふやします。とするなら、この間の政治の最大の課題は、新しい雇用をいかにつくり出すかにあったはずであります。
第一に、新規雇用をふやす、第二に、効果的な労働転換政策を打つ、そして第三番目に、緊急避難的な失業対策を打ちながら失業率を押さえ込んでいく、これが望ましい政策の手順であります。
しかし、残念ながら新規雇用の拡大策はまさに十年一日のごとく、今回の補正予算のように長期的対策と緊急避難策が支離滅裂に列挙されるなど、政策手順は全く逆立ちをいたしており、後手後手に回っているではありませんか。さらには、今回の経済再生関連法案のように関連分野が広範な大きな施策については、小出しを避けて統合的に、網羅的な法案提出を心がけるべきではないでしょうか。
この十年、何もやってこなかったとは申しません。それなりにやってきたことも認めましょう。しかし、その効果は全く上がっていない。そして完全失業率は今や過去最悪の四・九%になり、いよいよ我が国は大失業時代に突入しようといたしております。
古来より、恒産なければ恒心なしと言うとおり、失業対策は政治の根本命題です。二十一世紀を目前にして恒産と恒心をともに失おうとしている我が国の現在、それはまさに政策的な失敗が導いたものであります。構造変革の波を乗り切る展望が今もって開けていない現状、これをどう認識し、またその原因をどう分析しているのか。まず、総理の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
さて、この間の政策的な失敗の原因を分析いたしますと、私は以下の五点に集約できるのではないかと考えます。
まず第一番目に、政府自身が世界的な経済構造変革の本質を十分にとらえていなかったということ。
第二番目に、従来と同様の対症療法的政策しかとらずに、規制緩和策に代表されるように政策実現のスピードがのろ過ぎるということ。
第三番目に、雇用拡大の方向を成長十五分野すべて、このように総花的に拡散してしまった結果、焦点がぼけてしまったということ。
第四は、関連する政策を時期をずらしながら分散的に立法化したために、政策のインパクトが極めて低くなってしまったということ。
第五は、結果評価についての仕組みが入っていなかったために、政策実現のチェック担保ができていなかったということが挙げられると思います。
そこで、このような反省と教訓が、今回の産業活力再生化法案にどのように生かされているのか、総理及び通産大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
さて、それでは、現在世界を襲っている構造変革の波、その本質をどうとらえるかということであります。
私は、その根本的な原因を、世界的規模の情報革命にあると考えます。コンピューターネットワークの世界的な広がりは、経済の姿を変え、軍事や安全保障の姿を変え、国境を越えた市民活動を生み出し、人々の意識やライフスタイルさえ変えています。まさにプロメテウスの火、あるいは原子の火、そしてそれに続く情報の光であり、農業革命、産業革命に続く第三の革命が情報革命であります。
これが日本のみならず世界を襲っている構造変革の本質であります。これを真っ正面からとらえながら対策を立てるべきでした。
ところが、今までは情報政策といえば、直ちに情報産業のための振興策としか理解されてこなかった。この短絡的な誤解と本質の矮小化が日本の経済や政策の全般的なおくれの原因になってきたものと考えます。
したがって、私はこれからは、例えば成長十五分野という考え方自体も、この情報革命を基本的な座標軸にしっかりと据えて、もっとめり張りのきいた形に見直しをすべきではないかと考えますが、以上の指摘について、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
さて、次に、今回の経済活力再生法に欠けている重要な観点を私は二つ指摘したいと思います。
まず第一は、国民の勇気を奮い立たせるようなメッセージであります。また第二は、不安な国民のよりどころとなるセーフティーネットの提案であります。
かつてケネディ大統領は人類を月に送ろうというナショナルゴールを提案いたしました。このビジョンは、アメリカ国民のプライドに訴えるとともに、科学技術を初め経済全般に大変大きな刺激を与えた。
今、我が国の政治に最も求められているのは、まさに難局に恐れずに挑戦できるような国家的な目標、すなわちナショナルゴールの提示ではないでしょうか。国民一人一人の名誉と誇りに訴えて、同時に経済的なインパクトを持つビジョン、政治は必死になってこのことを考えるべきであります。
総理、真空の掃除機のようになって人々の意見を吸収することも結構です。しかし、一国のリーダーとしての最も大きな責務は、難局に当たって国民の勇気を奮い起こすビジョンや理想をみずからの言葉で高らかに語ることだと思いませんか。ボキャ貧とうそぶきながらこの責任から逃れるのは許されないと思います。
そこで、総理、あえて提言いたします。
私は、我が国のナショナルゴールを情報による平和と安心の実現に置くべきであると考えますが、いかがでありましょうか。
情報は、福祉や医療そして教育の格差をなくすことに大きな力を発揮いたします。また、新しいビジネスのチャンスを拡大し続けています。それどころか、国境を越えた情報の交流は、世界的なNPO活動を生み出し、さらには戦争の背景に横たわる相互不信を取り除き、平和の実現に貢献することも可能であります。
幸いなことに、我が国は現在でも情報のハード面では世界でトップレベルであります。そして一貫して核兵器の廃絶を訴え、平和を希求してきた日本国民の誇りがあります。
このように考えたときに、情報を駆使し平和をつくろうではないか、そして安心な世界を実現しようではないかといったそんなナショナルゴールを設定して、すべての政策の根本にこれを位置づけたらどうだ、このように私は思いますが、総理の御意見をお伺いしたいと思います。
さて、経済の再生を図る場合に最も大切なこと、それは経営者の厳しい自己批判であります。その上での自助努力であります。過剰雇用、過剰設備、過剰債務の三つの過剰を、あたかも構造問題のように語りながら論点をすりかえてはなりません。失敗の原因はまずは経営判断にある、この点の反省をなおざりにして、苦しくなったから国の助けをというのでは、再び同じ過ちを繰り返すのは明らかであります。
そこで、この法案の中で、企業のモラルハザードを防止し経営責任を明確にする原則がどのように貫かれているのか、通産大臣にお聞きしたいと思います。
ところで、総理は施政方針演説で、旧来システムとの決別を高らかに宣言しました。そして事前コントロールの社会から事後チェック型の社会に改革すると明言したではありませんか。しかし、その言葉とは裏腹に、どうですか、今回の法案の枠組みは、まさに事前コントロールの復活強化ではないでしょうか。担当大臣による事業再構築計画の認定、あるいは都道府県知事による経営資源活用新事業計画の認定。認定、認定、お役所のお墨つきがなければ優遇措置は一切受けられないような枠組みになっています。総理、まさにこれは厚顔無恥の言行不一致と言うべきではありませんか。総理の御所見をお伺いしたいと思います。
また、この認定制度に関連してでありますが、今回の法律の仕組みでは、認定の有無によって優遇措置の適用が二つに分かれてしまう。このような大ざっぱな二分法では実情に応じた柔軟な対応ができないのではないか。通産大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。
さらに、今回の法案については、産業界の内部で実は大変激しい不公平感が出ていると聞いています。すなわち、大規模な設備や装置を抱える産業にはこの法案の恩恵はある、しかし、それ以外の産業には余り意味がないといった批判であります。この批判にどうこたえるか、通産大臣の見解をお聞きしたいと思います。
さて、次に法案の定める優遇措置の問題点を指摘したいと思います。
まず、過剰な設備を廃棄したときに出る欠損金についての優遇税制についてであります。
これについては、自力で競争力をつけて過剰設備問題を処理した企業よりも、その努力を怠った企業の方を優遇するといった大きな矛盾がある。
さらに、欠損金の繰越期間は、米国では二十年、英国やドイツでは無制限となっているが、今までの五年間を七年間にするといった延長でどの程度の意味があるのか、私は大変疑問であると思います。
また、恩恵の対象を機械装置・建物廃棄のみに限定している点もかなりこそくな感じがする。まさに出し惜しみの小出し政策の典型ではないでしょうか。
以上についての総理、通産大臣の見解を求めます。
次に、過剰債務の株式化、いわゆるデット・エクイティー・スワップと呼ばれるこの制度は、会社の債務を株式に振りかえるものであります。会計上は負債を消すメリットはあるものの、債権者としての金融機関にとっては資産の不安定化につながっていくのではないか、また、銀行と企業の株式の持ち合いが認められている我が国では、企業のモラルハザードを助長しかねないのではないかとの疑問があります。これについては、金融再生委員長の見解をお聞かせいただきたいと思います。
さて、この法案については、労働者のリストラを一方的に促進するのではないかとの大きな不安があります。
分社化や過剰設備の整理を中心にした事業再構築がさらなる雇用の削減につながらないような考慮、あるいは、経営失敗のツケが働く者に転嫁されないようなセーフティーネットが法案上どう考慮されているのか。総理及び労働大臣の見解を求めます。
そして、これらの懸念に対して、確かに法案の第一条には、雇用の安定等に配慮する、また第三条第六項第六号では、事業再構築計画の認定に当たって従業員の地位を不当に害するものでないとの文言が入った。さらに第十八条では、事業者に対して、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずる努力を求めています。しかし、いずれも具体的な内容は明記されていません。また、規定の仕方も単なる努力義務の宣言にとどまっています。これでは、セーフティーネットどころかクモの巣のような危ないネットではありませんか。実効性を担保するためには、努力規定ではなく事業主に対する義務規定に改めるべきであると考えますが、総理及び通産大臣の答弁を求めます。
さらに、この際、企業組織の変更における労働者保護についての一般的な法律を制定すべきであると考えますが、総理及び労働大臣から、政府の今後の取り組みについてお示し願いたいと思います。
次に、新規事業・ベンチャー企業支援策についてお聞きします。
衆議院において、民主党は起業家支援法案を提出しました。これは、政府案を上回る総合的な施策の集大成とも言える法案でしたが、残念ながら可決には至りませんでした。
そこで、まず通産大臣にお尋ねいたします。
大臣は、衆議院の論議においては明確に民主党案に反対との態度を示されたそうでありますが、例えば、民主党の提案している女性起業家を育成する必要性、補助金を交付されなかった理由の開示の必要性、あるいはエンゼル税制やストックオプション税制などを拡充する必要性、国立大学教官の民間役員兼務の必要性、これらの諸点について、よもやその必要性を否定するものとも思えません。もし、これらの必要性を大臣がお認めになるのなら、なぜ今回の法案とセットで立法化しなかったのか、小出しにする積極的な理由でもあるのか、通産大臣の見解をお伺いしたいと思います。
さて、アメリカの例を見るまでもなく、これからはむしろ中小企業やベンチャーこそ新たな雇用を生み出す主要な分野であります。そしてベンチャー育成のポイントは二つ。第一番目に、直接的な投資環境の整備、第二は、失敗が致命傷にならない社会環境、そしてもう一つつけ加えれば、産業と学術の連携の促進であります。この三点が早急に取り組まなければならないポイントであることは、今や共通の認識になっている。
しかしながら、今回の法案でとられた政策手段を見てみると、従来の制度金融の延長でしかない。多くの税制についての規定を置きながら、ベンチャーへの投資優遇税制について踏み込んでこなかったのは、画竜点睛を欠くとの批判を免れない。さらに、総理みずから補正予算の審議の過程で、ベンチャーへの投資の促進が不十分であるということをお認めになっているではありませんか。後出ししてはインパクトがありませんよ。なぜ一括でお出しにならないのか、総理の見解をお伺いいたします。
さらに、勇気を持って創業に挑戦した起業家たちが、失敗しても何度でも再挑戦できるような社会を目指すべきであります。この点、日本の倒産法制はどうしても清算を中心に規定されており、いわば企業の幕引き法制になっている。しかし、これからは敗者復活が容易にできるような新たな企業整理法の構築をしていくべきだと考えますが、この点について法務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
最後に、今回もまたしても小出し、後出し、先送りの法案が出てまいりました。フルコースを小皿料理で出されたって料理のだいご味は国民には伝わりません。関連法案を統合しインパクト強く出す、このようなダイナミックな政策展開を行わなければ第三次産業革命は絶対に乗り切れません。
政治的な思惑を優先させ、未熟児のまま法律を誕生させていく。モラルハザードを助長し、自己責任を放棄したまま経済の自立を妨げていく。真空という無原則と無定見、その中で失われていく我が国の未来。総理のにこやかな笑顔を見詰めながら、大悪は小善に似たりという中国のことわざを指摘し、私の質問を終わりといたします。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕