水野誠一の発言 (本会議)

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○水野誠一君 私は、参議院の会を代表いたしまして、ただいま議題となりました産業活力再生特別措置法案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 この法案の提案理由にも述べられているように、産業界は設備、債務、雇用の三つの過剰から危機的な時代を迎え、我が国企業の生産性伸び率はOECD平均を下回る水準に低迷し続けております。
 バブル崩壊後、政府も景気回復への甘い期待を抱いて、真の改革を先送りしてきました。しかし、市場競争のグローバル化の進展がもはやこうした態度を許さないことから、現在、我が国の経済社会が置かれている非常に厳しい状況を招いているものと考えます。
 必要なことは、競争力のなくなった業種や部門を大胆に縮小し、人材や資金を成長力ある分野に投入するという大構造改革であり、産業再生法案がまさに選択と集中を重要なキーワードとしていることは評価したいと考えます。
 長い間、日本企業の経営目標は売り上げとマーケットシェアの拡大にありました。しかし、経済のグローバル化により、企業は売り上げそのものよりも利益率を上げ、格付を高めなければ株式市場によっていや応なしに淘汰されるという厳しい時代を迎えております。企業が生き残っていくためには、設備投資の削減、過剰債務の解消、過剰雇用の削減という事業のリストラクチャリングが避けられず、現にマーケットでは、実効あるリストラ計画を発表した企業はリストラ銘柄と呼ばれ国内外の投資家からの評価が上がるという、過去には見られなかった現象が出てきています。
 しかし、我々は、失業の増加が社会不安につながらないように十分な対策をとりつつも、一方で産業構造の転換を迅速に進めていくという極めて高度な政策の選択を迫られています。
 これまで国は、景気対策というカンフル注射一本やりの政策をとり続けてきました。しかし、これからの経済社会を構造改革していくシナリオにおいては、構造改革と雇用確保を単純に二律背反的にとらえる発想では何も問題を解決できないわけであり、そこにはそれを両立させるための全く新しい知恵が求められているものと考えます。
 私自身、二十一世紀はこの構造改革と雇用問題に限らず、環境問題や人口問題などあらゆる分野で構造的矛盾が噴出してくる時代であり、そこでは二十世紀的な知識偏重ではなく、人類の歴史に立ち戻った真の知恵を働かせない限り問題を解決していくことはできないだろうと言い続けてまいりました。
 堺屋長官も、人類は近代工業社会を超越して新しい知恵の時代を迎えていると繰り返し発言されております。改めて、この経済社会の転換期に求められる知恵とは何か、また、あるべき知恵の社会とはどんなイメージの社会かという点について、長官の御認識を伺いたいと思います。
 次に、宮澤大蔵大臣に伺います。
 今回の産業再生法案の一つの柱に、分社化手続の簡素化があります。機動的な経営を図るために、事業ごとに収支や人事を独立させる手法に対する関心が一部民間企業の中に高まっており、それを後押しする意味で一定の効果が期待できるものと評価しております。しかし、分社化の真のメリットは連結納税制度が導入されないと生まれてこないという指摘があることも事実であります。
 連結納税制度のもとでは、短期的には利益を上げにくい研究開発部門などを子会社として独立させても、グループ全体として税負担を軽減できるというメリットがあり、企業にとっては、二十一世紀の国際競争をにらんで、より積極的、創造的な研究開発活動、長期的な視野に立った事業活動に弾みをつけられる可能性が期待できるものであります。
 企業が構造改革しやすい環境を整備する観点から、また、やせた企業から当面の税収を搾り取るよりも企業や経済に活力を復活させてから税収をふやすべきという観点からも、連結納税制度を含めた法人税のあり方について、抜本的な改革論議を行うべき時期を迎えているものと考えますが、大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
 私は、現在の日本経済は、過去の投資決定の誤りに基づく膨大な過剰設備を抱える一方で、今後の潜在的なニーズの増加に対応すべき新規・成長分野への資源投資が十分に伸びてきていないというアンバランスの中にあり、この構造的なアンバランスは産業構造調整を経ずして解消できる性格のものではないと考えています。
 もちろん、大がかりな産業構造調整を実施していくとすると、縮小すべき産業から拡大すべき産業に労働力の大規模な移動が必要であり、一たんは雇用が失われるという過程も生じましょう。現に倒産やリストラによる非自発的失業者が大幅に増加しており、今後リストラがさらに本格化すればその傾向が一層強まる可能性が大きいと思われます。
 そこで、既存産業に対する需要を刺激しようとする従来型の政策から、産業構造転換の促進に重点を置いた政策への本格的な転換を、細心の注意を払いつつ、かつ速やかに行うべきであると考えます。そして産業構造転換の過程での労働力の移動を速やかにするためにも、日本の労働市場を真のマーケットとして十分機能するものに改めることが不可欠であり、このための制度的基盤の整備が最優先課題であると考えますが、通産大臣並びに労働大臣、それぞれの御所見を伺いたいと思います。
 最後に、総理に伺います。
 今回の産業再生法案は、産業構造の抜本的な再構築を推し進めることに目的がありながら、事業再構築計画の申請期間を平成十五年三月までとしていることが示すとおり、この法案自体には産業社会のその先のあり方、すなわち二十一世紀産業社会の明確なビジョンが込められていないのではという危惧を抱いております。
 九九年度経済白書は、「新しいリスク秩序の構築に向けて」という章を設けています。序文で堺屋長官は、重大な問題として「長い社会的安定と経済的成長の中で、終身雇用慣行が定着し」「青少年もリスクのある自営や起業を避け、安全確実とみられる大組織への参加を選ぶようになっていること」を述べ、さらに、「今や日本は、外国に手本のない段階に入っている。」として、リスクをとる社会を提唱しておられます。
 経済社会において、リスクは分散させても決してなくなるものではなく、必ずどこかへ回されるものであります。必要なのは、リスクの不透明なつけ回し、先送りを断じて許さないことであると考えます。そしてどのようなリスクがいつどこでどの程度あらわれるのかを明らかに示し、そしてそのリスクをどのようなルールに従ってだれが負担するのか、正面から明確に説明し続けることであり、それを欠いては、政策のバイパスをたくさんつくるのは結構だが一向に向かっている未来の方向性が見えないという批判を免れられないものと考えます。
 総理御自身のビジョンと御決意を伺って、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕

発言情報

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発言者: 水野誠一

speaker_id: 844

日付: 1999-08-02

院: 参議院

会議名: 本会議