海江田万里の発言 (本会議)
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○海江田万里君 私は、民主党を代表して、去る二十五日に行われた第二次補正予算についての宮澤大蔵大臣の財政演説に関し、総理並びに関係大臣に質問いたします。
まず、本臨時国会が召集されましたのは十月の二十九日であります。確かに、幾つかの指標において明るい兆しは見られているものの、相変わらず低迷を続ける日本経済を、確実な回復軌道に乗せるために必要な施策をとらなければいけないということで始められた臨時国会でありますが、政府が肝心の第二次補正予算案を閣議決定したのは、実に国会がスタートしてからおよそ一カ月たってからのことであります。
そして、本会議場で宮澤大蔵大臣が財政演説を行い、私どもがその財政演説に対する質疑を行おうとしたやさきに、厚生委員会でのあの暴挙であります。国民生活に多大な影響を与える年金制度の改悪を、実質たった三日間の審議で法案の採決日を決定するという、国民を無視した与党の議会運営を、私たちは満腔の怒りをもって糾弾するものであります。
現在、自自公の与党三党は、本院において七一%を占める巨大与党となっていますが、もちろん国民の選択によってできた与党ではありません。政権の維持というその一点で結ばれた野合政権で、到底国民の支持を得られるものではありませんが、国会の中では数を頼りにおごりの体質をあらわにしています。いずれ、与党のこのおごりの体質は、国民の審判で鉄槌を下されることになるだろうと私は確信を持っております。(拍手)
さて、現在の我が国の経済の状況でございますが、私は、これを東京の渋谷や原宿で若い女性に流行の厚底靴経済と名づけたいと思います。
厚底靴というのは、履いている若い女性に聞きますと、とにかく背が高くなって、むさくるしいおじさんたちを見おろすことが快感だというわけであります。もちろん、二十センチや三十センチという厚底靴は人体に悪い影響を与えるわけで、足首の捻挫や骨折の患者がふえているという実害も起きていますが、これを履いている本人は意に介さないわけでございます。
私は、冒頭、我が国の経済は多少明るい様相を呈していると述べましたが、これはまさに、日本経済が、何でもありの小渕政権のもとで、多額の借金を頼りに公共事業のばらまきによってかさ上げされた結果です。本来の身長は決して高くないのに、あたかも身長が高くなったと錯覚して町を濶歩しているわけで、この厚底靴を脱いでしまえばもとのもくあみです。
終戦直後、GHQの経済顧問であるドッジ氏が、アメリカの経済援助と各種の補助金によって支えられている当時の日本経済を竹馬経済と名づけたことはよく知られるところですが、現在の我が国経済は、赤字国債やじゃぶじゃぶの公共事業によって底上げされた、まさに厚底靴経済と言うことができると思います。
以下、具体的な質問に入ります。
まず、自自公の三党連立政権に至る過程で演じられたどたばた劇に対する質問です。
三党の連立政権合意書を見ますと、高齢化社会の生活の安心を実現するため、まず二〇〇五年を目途に、年金、介護、後期高齢者医療を包括した総合的な枠組みを構築する。それに必要な財源のおおむね二分の一を公費負担とする。基礎的社会保障の財政基盤を強化するとともに、負担の公平化を図るために、消費税を目的税に改め、その金額を基礎年金、高齢者医療、介護を初めとする社会保障経費の財源に充てるとありますが、総理は、二〇〇五年までに基礎年金を二分の一国庫負担にする意思があると考えてよろしいわけですね。介護についても、おおむね二分の一を公費負担ということは、基本的には社会保険方式を残すという理解でよろしいわけですね。
同じ質問を、自由党の二階運輸大臣にもしたいと思っております。自由党の従来からの主張は、介護は全額税で賄うということを主張していたはずですが、その主張を現在は撤回したのか、あるいは、今後の協議によっては介護は全額税方式になる可能性もあるのか、そこのところをはっきりお示しいただきたいと思います。
自自公三党連立に至るどたばたと言いましたが、特に、介護保険の高齢者保険料を取る、取らないの右往左往は、国民に大きな政治不信と、せっかく生まれたばかりの公的介護の制度に大きな不安を与えることになりました。小渕政権は早くもダッチロールの状態に入ったと断じざるを得ません。
小渕総理、一度決まった介護保険について、実施間際になってかくも大きな変更を行うなら、衆議院の解散を行って国民に信を問うべきだと思いますが、その覚悟はおありでしょうか。(拍手)
六十五歳以上の高齢者については半年間は保険料を徴収しないというのは、介護保険法の第百二十九条の規定、つまり、市町村は、介護保険事業に係る費用に充てるため、保険料を徴収しなければならないという規定に違反するのではないでしょうか。今回の決定は、政府みずから法律違反を犯していることにならないのでしょうか。これは厚生大臣にお尋ねをします。
また、何ゆえ六カ月の保険料徴収猶予なのか。期間を六カ月と区切った意味は一体どこにあるのか。これは総理に答弁をお願いしたいと考えます。
総理にはもう一つ、医療保険制度の改革も喫緊の課題であることは言をまたないところですが、総理は、二〇〇〇年度からの医療改革の実施は既に何度も口にされています。ですから、この二〇〇〇年度からの医療改革の実施は政府の公約だと思いますが、二〇〇〇年の四月から一体どんな医療改革を行うつもりか、内容を明らかにしていただきたいと思います。
また、総理が考えている将来の介護、年金、医療などの社会保障の将来像は一体どんなものなのか、これも明らかにしていただきたいと思います。
年金の問題では、まさにこれからも充実した審議が厚生委員会で行われると思いますが、ここで改めて一つだけただしておきたい問題があります。それは、本日の厚生委員会で我が党の菅政調会長も取り上げましたが、年金積立金百四十兆円の自主運用資金の株式運用の問題です。
これは大変大きな問題でございますが、何といっても最大の問題は、そもそも、国が国民から集めた老後の資金を、株式のようなリスク商品で運用していいものかどうかの問題です。
この問題について、最近株価が絶好調なアメリカで、クリントン大統領が年金基金の資金を使って株式を購入したらどうかという提案をしたところ、グリーンスパンFRB議長の猛反対によって提案を引っ込めた経緯があります。
アメリカでは、四〇一Kプランのように個人の老後の資金はどんどん株式に流れていますが、国が関与する年金基金については、やはり株式での運用はしてはいけないという歯どめがあります。しかし、我が国の場合はそうした歯どめが一切ありません。
もちろん、株式運用をするのはその一部に限られるでしょうが、国が百四十兆円という巨額の資金を使って株式市場になだれ込んだら、株式市場は混乱をします。マーケットをゆがめることになります。また、民間企業の株を間接的に国が保有することによるコーポレートガバナンス、企業統治の問題もあります。
それに、もし株式の下落などによって年金積立金に穴があいた場合の責任のとり方はどうするのか。国、年金資金運用基金、運用金融機関それぞれのレベルでどういう責任をとるのか当然明らかになっていなければならないと思います。
これまでの年金福祉事業団の自主運用でも、運用に失敗をしています。単年度で損益が黒字になったのは十三年間で四回だけ。いわば四勝九敗の成績で、累積赤字は簿価で約二兆円になっています。この損失の責任はだれがとったのか。だれもとらない体質になっています。積立金の運用に失敗しました、それでは保険料を値上げです、あるいは給付水準の引き下げですでは、済まされません。この年金積立金の株式による運用は直ちにやめるべきで、年金法案のこの部分の関連法案は撤回すべきだと思います。
この問題は極めて重大ですので、総理のお考えを伺いたいと思います。
先ほども申し上げましたが、グリーンスパンFRB議長は、アメリカ下院の公聴会ではっきりと、年金基金の株式市場での運用は支持しない、それだけ巨額の資金を政治と切り離せられるとは信じられないし、年金受給者に低いリターンしか残せないことを憂慮すると言い切っています。
どうしても法案のとおり年金積立金で株式運用を行うというのであれば、情報公開はどうするのでしょうか。損失が出たときの責任のとり方はどうするのでしょうか。そのことをこの場で明らかにしていただきたい。この答弁は厚生大臣に伺います。損失の出ないような運用に努めるですとか、今研究中だというおざなりの答弁では納得できないことを、事前に申し上げておきます。
そこで、今回の補正予算についてですが、何といっても今回の補正予算の特徴は、経済新生対策関連費などの財源として七兆五千六百六十億円の国債を発行して、この結果、九九年度の国債発行額は三十八兆六千百六十億円になって、地方交付税分を除いた国の税収、これは三十二兆六百億円でございますが、これを戦後初めて抜いたということにあると言えます。家計でいえば、働いて稼ぐ収入よりも借金による調達の方が多いことになります。これはもはや破綻した家計そのものであると言えます。
まず、総理は、こうした破綻財政を来したことに対する責任意識がおありかどうか伺います。
景気回復に失敗したのは、これまでの内閣が悪いのだ、自分はできるだけのことをやっているので、その結果、多少借金がふえても仕方のないことだと考えておられるのか。それとも、やはりこれでは財政がもたないから、もう借金に頼った景気浮揚策はやめにしようと考えておられるのか。国の借金がここまで膨らんでしまったことへ、国のかじ取りとしての責任あるお考えを聞かせていただきたいと思います。
宮澤大蔵大臣は、記者会見などで、この補正予算と来年度の予算で大規模な財政出動は終わりになると発言しておられるが、本当にそうなるのか。よしんばそうしたところで、これまでに大量発行した国債のツケは今後確実に我が国の財政を襲う。例えば、国債の新規発行分を抑えたところで、借りかえ分を入れると、二〇〇一年度にはどうしても百兆円を超える国債を発行しなければならなくなります。我が国の財政はさらに悪化をしていきます。
大蔵省は、ことしの一月、本予算の国会審議に際して中期財政試算を提出して、二〇〇三年度までの公債依存度、公債残高、公債残高の対GDP比などを明らかにしましたが、今回の補正に際しても、この中期財政試算を提出すべきです。補正後の二〇〇三年までの公債依存度、公債残高、対GDP比はそれぞれにどうなるか、明らかにしていただきたい。
さらに、問題は補正予算の中身です。
今次補正では、経済新生対策を踏まえて、社会資本整備関係の国費支出として三兆五千億円、事業ベースで六兆二千億円程度が計上されています。そして、その看板は、生活基盤充実特別対策費だとか、情報通信・科学技術振興等経済発展基盤強化特別対策費などと、一見して斬新な印象を与える言葉がちりばめられていますが、実態は、単に従来の農業土木事業を継承するだけの事業がほとんどであると思われます。
今次補正予算の社会資本整備関係費の中で、真に新規事業と呼べるものが一体どれだけあるのでしょうか。事業費ベースで幾ら、国庫支出で幾らと教えていただきたい。
そして、総理にもお尋ねします。
もともと、公共事業は景気の下支え効果しかなく、しかも、近年は建設資材の在庫が膨らんでいることや、海外からの安い建設資材の輸入などによって、乗数効果は年々低下傾向にあるというのが一般の理解であります。
また、ストック面から見ても、特に九〇年代に入って景気対策として行われた公共事業は、その費用対効果の十分な吟味が行われておらず、道路、港湾整備、農業土木などは、地域や生産者の生産性の向上に対する効果が極めて乏しいものであったわけでございます。
景気対策というとすぐ公共事業だというのは、我が国だけに際立っている日本の常識、世界の非常識であります。一体、世界の先進国のどこに、日本のようにGDPに占める公共事業の割合の高い国があるのか。そんな国があったら教えていただきたい。
総理は、このような我が国の公共事業のあり方について、基本的にどんなお考えを持っておられるのか、お示しいただきたいと思います。
今回の臨時国会は、中小企業国会と銘打って始まりましたが、補正予算に出てきた中小企業対策は、お粗末の一言です。
中小企業金融安定化特別保証を来年三月末まで一年間延長し、保証枠を十兆円追加するという経済新生対策を受け、補正予算では今年度分として五兆円を計上しています。十兆円の積算根拠についても甚だ不明確で、当初、通産省では二兆円程度と言っていたのが、選挙対策でいつの間にか四兆円という金額に膨れ上がったとも仄聞しています。
十兆円の根拠は何か。そして、そもそも、こうした融資を継続することが、中小企業の自立を妨げ、今国会で改正した中小企業基本法の精神と方向性に反することにならないか、総理にお尋ねをします。
そして最後に、企業・団体献金を廃止する政治資金規正法の改正案でございます。
現在、自自公の与党三党で協議中と聞きますが、総理は与党の総裁として、附則第九条に基づく法案をいつ提出することになるのか。さらに、附則第十条の取り扱いについて、自民党は削除の方針を打ち出しているとの報道もありますが、それは本当のことでしょうか。総理も、せんだってクエスチョンタイムで、我が党の鳩山代表とのやりとりの中で、はっきりと企業・団体献金は廃止すると言ったのですから、ここでも、現在協議中などと答えずに、はっきりと自民党総裁としての考えを述べるべきだと思います。
以上で、私の財政演説に対する質問を終えます。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕