谷本巍の発言 (本会議)

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○谷本巍君 私は、社会民主党・護憲連合を代表し、小渕総理の所信表明に対し、質問いたします。
 昨年の参議院選挙が示したものは、与野党接近の中で緊張ある議会政治を求めるというものでありました。巨大なる自自公政権を望むような声は全くなかったと言ってよいのであります。
 その三党連立内閣は、これまでの政治、行政のうみが吹き出すがごとき汚職事件などが相次ぐ中で発足いたしました。
 総理の所信表明に期待したのは、国民の多くが賛同せぬ三党連立政権について、なぜ今巨大与党が必要なのか、そしてその理念と目指すべき方向が明らかにされることでありました。しかし、総理が述べられたのは、国民の皆様に御納得がいただけるような成果を上げるとの一片の言葉でしかありませんでした。
 総理、所信表明を補足する意味も含め、三党連立の理念と、この政権が目指す方向性について述べていただきたいのであります。
 さらにこの際伺いたいのは、新内閣発足早々の西村発言と、それにかかわる核問題についてであります。
 西村前防衛政務次官の日本核武装発言と、それにまつわる女性差別発言は、公的立場の責任者の発言としては許しがたい妄言と言わなければなりません。任命者としての小渕総理の責任は、単なる謝罪だけでは済まされないものです。国際的影響を考えれば、西村氏の国会議員辞職は当然であり、小渕総理自身、この責任はどのようにおとりになるつもりなのか、伺いたいのであります。
 また、核問題についてでありますが、日本は、非核三原則を国是とするだけでなく、核廃絶を全世界に向かって強く主張すべきであります。小渕総理は、所信表明で核軍縮・不拡散政策に取り組んできたと述べられましたが、これでは唯一の被爆国としての責任は果たせません。期限を切り、それまでにすべての核兵器を廃絶せよと全世界に向かって主張すべきです。総理の見解を伺います。
 次いで、第二次補正予算について伺います。
 政府は、経済新生対策として総事業規模十兆円を超える二次補正予算を取りまとめ中だと聞きますが、国会を召集しておきながら、いまだに国会に上程せず、内容を明らかにできないというのは一体いかなることなのでありましょうか。私は、これが真実景気対策であって、選挙対策ではないことを心から願いつつ、総理の補正予算に対する基本的な考え方をお伺いいたします。
 最近、政府の経済政策とその帰結について明白になり始めたことは、銀行や製造業大手については、公的資金の導入を含め政府がこれを支える反面、勤労者は自助努力のもとで厳しい市場原理の貫徹にさらされるという二極化現象であります。
 そのもとで、例えば大型量販店の地域進出で見るなら、商店街を閉店街と化すばかりか、金融や物づくりにおける地域循環のあり方や、地域社会まで崩壊に導く例が多発しております。労働者へのリストラの嵐と同様、中小企業や農家など自営業者もまたリストラ同然の状態に追い込まれつつあります。それがまた男性の異常な自殺率の急増にも連なりました。勤労者向けの行き過ぎた市場原理の徹底は、他面では家庭崩壊とともに地域社会の崩壊さえ引き起こし、それが家庭と地域社会が持つ子育て生活教育機能の消失に連なるもとで、小学生低学年の学級解体さえ生み出すに至りました。市場原理は、生活の原理など調整の原理で支えられてこそ、そのよさを発揮するものです。総理はこうした現実をどう見ておられるか、御見解を承りたいのであります。
 総理は所信表明の中で「未来に向け経済を新生させる」と語りました。国際競争力強化を念頭に置いてのことと思われますが、むき出しの市場原理の徹底は、雇用と賃金等の抑制が続くもとで実体経済が縮小し、過剰な資金が生み出す投機など擬制経済の肥大化とともに、日本経済はさらなる対外進出へと傾斜せざるを得なくなっていきます。
 時あたかも、さきの国会では、新ガイドライン関連法とともに国旗・国歌法を初め問題法案の軒並み成立が強行されました。いわゆる有事法制の一部を整備し、海外派兵準備が進められました。
 歴史的に今の経済状態を見たとき、昭和恐慌から戦争への時代を経験した私たちが気づくことは、不良債権処理をめぐる施策にしましてもほとんど戦前と共通的であり、そしてその処理は、戦前の場合、戦争景気によって仕上げられたという事実であります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 総理、今なさねばならぬことは、実体経済の縮小ではなく、どう拡充するかに心血を注ぐことです。エネルギー問題一つを見ても、再生可能エネルギー産業を新たな基幹産業としてさまざまな事業を興すことができますし、市民参加型の実験的社会システムも取り入れつつ、必要な施策を整備するなら大きな需要開発となります。
 国民生活に大きなひずみを生み出すむき出しの市場原理ではなく、人と環境に優しい市場をどうつくっていくかを二十一世紀に向けての最大の課題とすべきではないでしょうか。総理、どうお考えでしょうか。
 次に、中小企業対策について伺います。
 小渕総理は今国会を中小企業国会とすると前宣伝し、耳ざわりのいいことだけを言ってこられました。しかし、基本法改正案のもとである審議会の答申は、中小企業は生き残りをかけ自助努力で新技術や製品開発を行うべしとし、政府はそれを支援するというものでありました。
 これは大企業との格差是正を目指したこれまでの中小企業政策を百八十度変え、弱肉強食経済への転換を図ろうとするものです。それがいかに冷酷なものかは、政府の言う新技術、新製品の開発にしても、実際に市場に受け入れられるかどうかは極めて難しく、大企業とは違い財政基盤の弱い中小企業にとりどんなにリスクが大きいかを見ても明らかであります。これらの点について総理はどうお考えなのでしょうか。
 また、中小企業予算は二千億にも満たぬものです。それをそのままに、こうしたリスク分野への船出を奨励するのは僣越であります。総理はこの点どうお考えか。政策転換前に当初予算ベースで大幅にふやすことの方が先決なのではないでしょうか。
 また、政府は、民事再生法案に見るように、倒産関連法制度を整備し、当該倒産・廃業中小企業への共済制度の拡充適用や失業従業員再雇用への国の配慮などを基本法に盛り込みましたが、これは国自身が大リストラ時代容認を前提としてのことであります。
 日産自動車のリストラ計画でも明らかなように、今後の中小企業の経営や雇用情勢はこのままでは想像を絶する大規模なものとなると見られ、同法案に規定する雇用への配慮などは絵にかいたもちになるほどの悪影響が想定されます。
 にもかかわらず、本法案には、下請企業に対する親企業のリストラ、特に超大企業のリストラが与える影響への実効ある対策が見当たらぬのであります。総理、これはどういうことなのでしょうか。大企業のリストラに伴う下請企業の経営悪化や雇用不安に視点を置いた政策理念が全く無視されているのはなぜなのか、御説明をいただきたいのです。
 続いて、政治献金、衆議院定数削減について伺います。
 総理、五年前を思い出していただきたい。政治家個人に対する企業・団体献金の禁止は、リクルート事件など贈収賄事件を受けて各党が合意したもので、国民に対する公約でもあります。しかるに、自民党は、来年一月一日の期限を迎え、これを先送りしようとしております。選挙制度については民意の反映に逆行する比例区定数の削減をもくろみ、企業献金はもらい放題を続けるというのでは、五年前の政治改革論議は一体何だったのでありましょうか。事が重大だけに、総理の真剣な態度表明を願いたいのであります。
 また、比例区選出議員定数の削減ですが、与野党の選挙制度等に関する協議会と今回の三党合意との関係はどうなっておるのでしょうか。
 今回の政策合意はあくまでも三党間の合意であって、国会における選挙制度に関する制度的取り扱いとは全く別なものです。選挙制度改正は、あくまでも各党の一致が前提であり、協議会で各党が合意したものを立法化するという協議会における確認を尊重すべきであります。総理のお考えはいかがでしょうか。
 次に、介護保険制度について伺います。
 与党三党は、保険料の徴収凍結等の合意をしました。これは制度の理念を根底から覆し、懸命に準備を進めてきた自治体に大混乱を持ち込むばかりか、政治不信を助長することに連なります。円滑なる実施を進めると言明した総理が制度の理念に反するこうした見直しを行うことはないと思いますが、いかがでしょうか。
 必要なことは、選挙目当ての一時的負担軽減ではなく、まず介護基盤の整備を最優先課題として取り組むことです。総理の御所見を伺います。
 また、年金改革ですが、言うまでもなく最大の課題は基礎年金の空洞化であり、国庫負担問題です。今年度中に二分の一に引き上げることは、前回の法改正で、法律の附則だけでなく、自民党も含む全会一致の附帯決議に明記されており、これが立法府の意見なのであります。政府案はこの問題を二〇〇四年まで先送りしていますが、改めて総理の決断を求めます。
 次に、東海村の核燃料加工施設の臨界事故について伺います。
 あってはならぬはずの事故が起きました。国民のだれもが驚いたのは、現場の作業も政府の安全管理も信じがたいほどずさんであったことです。総理は、所信表明の中で、国民の皆様に多大な御心配と御迷惑をかけたと述べながらも、起きるはずのない事故がなぜ起きたのか、再発防止策についても何らの具体的見解も示さず、国民の不安感をさらに広げました。
 最近の技術体系は一人一人の創意工夫が入り込む余地がないほど巨大化し複雑化したことから、現場における浅はかな効率化が重大な結果をもたらすことが少なくありません。そうしたことが事もあろうに核燃料加工施設に実在したことの驚きは禁じ得ません。この背景にあるものは、いたずらに生産現場に厳しい効率化を迫る誤った風潮であります。その意味で、この事故は偶然とは言えぬ背景を持っております。総理、どうお考えでしょうか。
 そうした問題点と、原因の追及とそれに伴う対策との関連で重要なのは安全審査であります。行政と一体的に原子力を推進してきた専門家による審査ではなく、原子力の危険性を喚起してきた専門家を加えた審査とするとともに、審査機関を行政から独立させることも含め見直しを行うべきです。その点もあわせてお伺いいたします。
 次に、次期WTO交渉についてお伺いいたします。
 十三年前、ウルグアイ・ラウンド交渉開始の閣僚会議を控えた第百七回国会で当時の中曽根総理は、所信表明で交渉に臨む考え方を明らかにいたしました。期せずして同様の局面で行われた小渕総理の所信表明は、ただ包括交渉を立ち上げるよう努めるという、極めて内容の乏しいものであります。
 総理は、次期交渉が、その成り行きいかんによっては、さきの国会で成立した食料・農業・農村基本法が描いた食糧安全保障や多面的機能の確保も水泡に帰するという重大な問題をはらんでいることを肝に銘じ、今こそ確固たる姿勢を国の内外に明示すべきであります。
 この点について、所信表明を補完する意味合いを込めて、腰の据わった御答弁を求めます。
 また、さきに政府は、次期WTO交渉において、遺伝子組みかえ農産物にかかわる貿易に関し議論を行うよう提案しております。しかし、遺伝子組みかえには、安全性のみならず生物多様性、地球環境への影響など、貿易や表示問題以前の究明しなければならない多くの問題が内在しています。また、種子を通じた食料世界戦略に日本農業を従属させる結果をもたらし、環境保全型農業や家族農業を崩壊させる危険性を持っております。
 こうした遺伝子組みかえが持つ負の側面をどうお考えになっておるか、また慎重な態度をとるEU等との連携強化をどう図っていくか、お聞かせいただきたいのであります。
 さらに、もう一つ重要なのはサービス分野の交渉であります。それは、公共サービス事業の民営化、営利化が迫られようとしているからであります。
 すべての人にあまねく提供されるべき公的教育や福祉、医療を初め、公共料金や年金、エネルギーから上下水道、ごみ処理などの分野に国内外の企業を分け隔てなく参入させることが目指されております。これらの事業が営利化されれば、遠隔地や貧困層に対しても公平に提供されてきたサービスのあり方は一変し、例えば遠隔地の郵便局は閉鎖されるなど、もうからないエリアと地域が切り捨てられていきます。
 また、このサービス分野の自由化で、地方自治体がみずからの地域の公共サービスのあり方を主体的に決定できなくなっていきます。
 これらの点について、総理はどうお考えでしょうか。
 最後に、森林・林業問題について伺います。
 二十一世紀の最大の資源問題は水資源となると言われております。日本とて例外でないことは、最近の集中豪雨による洪水等の例を見ても、いかに山が荒れ、保水力の低下が著しくなりつつあるかが明白であります。森林の整備が急がれなければなりません。
 第二次世界大戦後、荒廃した森林・林業の再建に向け造成された一千万ヘクタールに及ぶ膨大な人工林にしても、その多くは整備を要する状態にあります。にもかかわらず、それがなされぬことが森林の衰退と林業不況を招き、担い手不足を深刻化する悪循環を生んでいるのであります。
 食料・農業・農村基本法に続き、林業基本法が早急に制定されなければなりません。その柱は、森林の整備計画の具体化、国産材の需要拡大、森林所有者及び林業労働力担い手対策など、流域管理システムを一体化し、総合的に発揮するために国の責任を明らかにすべきであります。
 総理がいかがお考えかを伺い、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕

発言情報

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発言者: 谷本巍

speaker_id: 27165

日付: 1999-11-04

院: 参議院

会議名: 本会議