水野誠一の発言 (本会議)
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○水野誠一君 私は、参議院の会を代表して、総理の所信表明演説と今国会における重要課題について、総理並びに関係大臣に質問をさせていただきます。
所信表明演説が従来の総花式ではなく、経済、安全、安心という三つの課題に絞られたことについては評価すべきだと思いますが、その内容は残念ながらいささか具体性を欠いていると言わざるを得ません。
例えば、事業規模で十兆円を超えるという経済新生対策について、公共需要から民間需要へのバトンタッチの具体策とは何か、あるいは個人消費や設備投資の喚起のための構造改革とは一体何を意味しているのかなど、具体的な政策が見えてきません。
また、事業規模のみを強調した大盤振る舞いの景気対策を続けた結果、さらに悪化した財政への対応である財政構造改革についても、経済が本格的回復基調に乗った段階でそのあるべき姿を示すという先送りでしかなく、ここでは何一つ具体的な方向性が示されていないのであります。これでは総理のおっしゃる建設的楽観主義とはほど遠く、せつな的楽観主義になりかねないのではないでしょうか。
総理は経済再生から経済新生への転換を強く意識されているようですが、この違いは一体何なのでしょうか。これは、経済再生対策において従来どおりの公共事業重視の一過性の需要刺激策に終始してみて、結果、根本的な経済活性化につながらなかったという自己反省に基づく転換なのかとも思えますが、総理の御所見を伺いたいと思います。
次に、総理御自身、今国会を中小企業国会と位置づけられております。中小企業政策の見直しについては、それが大きな波及効果を生む内容になっているかどうかという観点から今後の審議に臨みたいと考えております。
例えば、情報・ハイテク産業重視のベンチャーの育成は大変重要な施策ではありますが、こうした情報産業自体には、既存産業から生ずる失業を吸収するだけの雇用を質量両面から求めることは難しいことが通産省の調査などからも明らかになっています。
ですから、むしろこうした情報化技術を活用して生まれてくる高齢者介護などの新たなサービス業の創出、あるいはハイテク産業の高度機械化の陰で、日本の生産技術の質の高さを支えてきた小規模企業の職人的技能の保護育成などにもきめ細かい光を当てなければ、産業の合理化と雇用の確保という二律背反的な問題の解決にはならないのではないかと考えますが、通産大臣の御所見を伺いたいと思います。
さて、茨城県東海村の核燃料施設の臨界事故から一カ月がたちました。ずさんな工程管理、核燃料施設に関する行政の危機管理意識の希薄さなど、既に多くの問題点が明らかになっています。このことからも、政府が推し進める核燃サイクル構想は、依然、未完成のサイクルと言わざるを得ません。
高速増殖炉の実現性、核燃料施設における放射性廃棄物処理の問題点、安いと言われてきた原子力発電コストへの疑問点など、エネルギー政策のトータルな姿が描き切れていないことが今回の事故によって改めて露呈されました。
さらに、今回の事故を契機に各地でプルサーマル計画の延期なども発表されており、政府が推進する原子力発電所の今後の建設にはかなりの困難が予想されますし、また、既存の原発の安全性の再点検も必要になってきました。
そこで、原子力発電所の新規立地計画には今なおいささかも変更の余地がないものとお考えか否か、通産大臣に伺いたいと思います。
今回の事故により、我が国の原子力発電の安全神話が崩壊し、日本の原子力政策に対する内外の信頼が失墜したことは紛れもない事実であります。事故の再発防止に向けてあらゆる努力を傾けるべきであることは当然でありますが、失った信頼の回復は一朝一夕にできるものではありません。
今後は、ただ安全性を繰り返し唱えるばかりでなく、同時にそのリスクも正しく国民に伝え、あってはならない事態への備えや覚悟をしっかりと示した上で、国民と対話を積み重ねるという根本姿勢の転換こそが重要ではないかと考えますが、総理のお考えを伺いたいと思います。
次に、介護保険の問題に移ります。
急速に進む高齢化により、ますます深刻化する介護を社会全体で支えるという観点から、長年の議論を経て取りまとめられたこの制度がいよいよ来年四月からスタートしようとしており、各地の自治体で制度の運用に向けた準備が着々と進められてまいりました。
ところが、制度のスタートを五カ月後に控え、その重要な財源である保険料の徴収をおおむね半年の間行わないとする与党間の合意がなされたようであります。サービスの提供は始めるけれど保険料徴収はしばらく行わない、その理由を尋ねると、観察期間やならし運転期間が必要というあいまいな説明しか返ってこないことに極めて奇異な印象を持たざるを得ません。
加えて、おおむね半年の間とする理由、その期間が経過した後の保険料徴収の仕組み、新たな赤字国債に関する是非論、そして地域住民との綿密な連携を進めてきた自治体とのコンセンサスはどうなっているのかなどの重要な観点がすべて置き去りにされており、このような形でスタートすることが果たして安心して受けられる介護サービスのならし運転期間となり得るのか、甚だ疑問であると言わざるを得ません。
この期に及んでの制度の理念にかかわる方針の変更は、介護システムそのものの将来に新たな不安要素をもたらすものであり、各自治体はもちろん、制度の具体化に協力してきた住民や事業者の戸惑いは我々の想像以上と認識すべきではないでしょうか。
九七年当時、介護保険制度の取りまとめにおいて、丹羽厚生大臣が並々ならぬ御努力を傾けられたことを私はよく存じております。今になって介護保険をめぐるこうした混乱を迎えたことは大臣にとっても決して本意ではないのではと察しますが、今後のかじ取りをどういう姿勢でなさるおつもりか、伺いたいと思います。
次に、企業・団体献金問題についてですが、これも今までほかの質問者から指摘されたことですので多くは申し上げません。ただ、企業・団体献金を政治家個人が受け続けるために、「これを禁止する措置を講ずるものとする。」と一たび決められた条文が邪魔だからこれを削除、または書きかえるというようなやり方がもしまかり通るならば、国民の政治に対する信頼はますます失墜するのではないかということだけを指摘させていただきます。
当然、企業・団体献金そのものに関してはさまざまな議論もありましょう。しかし、「これを禁止する」と一たび立法府が決めたことであります。政治家みずからが約束を守る、法律を守ることを貫けずして、教育を最重点課題に掲げられる総理は、一体何を若者たちに語ることができましょうか。総理の御所見を伺いたいと思います。
最後に、この臨時国会より政府委員制度が廃止され、閣僚、政務次官が原則答弁することになりました。国の唯一の立法機関である国会が本来の姿を取り戻し、国会活性化へ向けて新たな一歩を踏み出したものと考えます。
総理は所信表明において、西村前防衛政務次官の不適切な発言に関連し、直ちに各政務次官に対し、みずからを厳しく律し職務に精励するよう重ねて指示したと述べておられます。
しかし、これでは問題のすりかえになりかねず、こういう不適切な発言をする政治家を政務次官という要職に任命した総理の不明こそが問題なのであり、この不祥事に懲りて大臣や政務次官の政治家としての発言が過度に抑制されるようなことにでもなれば、今まで同様政府委員が無難な答弁を繰り返すことと何らかわりばえのしないものになってしまうのではないでしょうか。
その意味からも、大臣、政務次官の人格と理性、感性、知性などの能力に基づいた厳格な人選こそが重要なのであり、従来の派閥順送り的人事は完全に排除されるべきだと考えますが、総理の御所見をお伺いして、代表質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕