直嶋正行の発言 (本会議)

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○直嶋正行君 私は、民主党・新緑風会を代表して、森総理の所信表明演説に対して質問をいたします。
 質問に入ります前に、小渕前総理を心からお見舞い申し上げ、一日も早く健康を回復されますことを念願いたします。
 また、有珠山の噴火で不自由な生活を余儀なくされておられます被災者の皆様方に、激励とお見舞いを申し上げます。
 森新総理は、我が国が目指すべき姿の一つとして、安心して夢を持って暮らせる国家を掲げられました。しかし、残念ながら、現在、国民の大半は将来に不安を抱いており、安心して夢を持つどころか、逆に心配の種は大きくなりつつあります。このことが財布のひもを引き締め、経済が本格回復しない原因ともなっております。
 国民の生活不安は、経済企画庁の調査に顕著にあらわれています。八割前後の国民が暮らしよい方向に向かっていない、老後の見通しは明るくないと思っており、さらに五割の方が失業の不安なく働けると思っていない状況です。いずれも調査開始以来最悪を記録しています。
 森総理は、小渕前総理の政策を継承すると述べられましたが、それは選挙目当ての公共事業を中心とした業界や団体へのばらまき対策を続けることにほかならず、国民生活に係る不安を解消するための有効な手だてを打ってこなかった先送り内閣の継承を意味します。
 国民の先行き不安の主たる原因は、一、雇用情勢の悪化と所得の低下、二、一向に抜本改革が進まない社会保障制度に対する不信、三、累増する財政赤字に対する増税不安、この三つであります。
 森総理にこの三つを中心に御見解をお伺いいたします。
 まず、雇用対策について伺います。
 二月の完全失業率は、これまで最悪であった四・八%を超え、四・九%に達しました。完全失業者数は実に三百二十七万人であります。三月の完全失業率は、新卒未就業者が加わること、企業倒産が前年比で昨年末以降急増していることから、さらにワースト記録を更新すると言われています。
 また、失業の内容も構造的な深刻さを増しております。
 一つは、倒産やリストラによる非自発的失業者が百十五万人にも上っていることです。
 二つ目は、リストラのあらしにさらされている中高年、つまり世帯主の失業率が過去最悪を記録していることであります。平成十年には二・九%であったものが、平成十一年は三・三、そして本年二月には三・六%に達しています。
 三つ目は、失業期間も長期化していることであります。失業期間が一年以上の方は全体の約二割もおられ、また年齢が高くなるほど厳しく、五十五歳以上では約三割もの人が一年以上職につけないでいます。つまり、我が国の雇用失業情勢は最悪の事態と言わざるを得ません。
 総理には、家族を抱えて職のない人々の苦しみがおわかりになりますか。現下の雇用失業情勢の深刻さをどのように認識しておられるのか、伺います。
 このような状況は、政府によるばらまき型財政出動や雇用創出と銘打った助成金が雇用情勢の回復には全く役立たなかったことを雄弁に物語っています。政府は有効な手だてを全く打たなかったのです。むしろ逆に、雇用面の手当てをせずに、企業の競争力強化を理由に、その組織変更を容易にできる法整備や産業活力再生法など、リストラ促進のための制度だけを急ごしらえで整えるという失政を犯したのです。これらの法律が効果を発揮するのはこれからであり、事態はますます悪化すると思います。
 総理は、政府のこれまでの雇用対策をどう評価されますか。そして、万全を期すと言われた総理の雇用対策は具体的にどのようなものなのか、お答えいただきたい。
 具体的な雇用対策のあり方について、二点、総理の見解を伺います。
 一つは、企業組織再編に伴う労働者の保護についてであります。
 今国会に企業分割の場合の労働契約の承継を規定する労働契約承継法が提出されておりますが、営業譲渡や合併は対象としておらず、また企業再編を理由とする解雇の禁止や労使間の事前協議も規定されていないなど、極めて不十分な内容であります。雇用情勢のさらなる悪化を回避するためにも政府案の全面的な見直しが必要と考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。
 もう一つは、雇用対策の財源の問題であります。
 平成十二年度の労働省予算を例に挙げますと、雇用関連の主要施策の一般会計の額は約四千億円ありますが、このうち約三千三百六十億円が雇用保険の国庫負担分として失業給付等に充てられるのです。したがって、政策的な雇用創出などに使うことのできる財源はわずか六百億円程度で、それも大半は雇用対策以外に使われています。政府の雇用対策のほとんどは、事業主の共同連帯事業である雇用保険三事業を財源としています。
 つまり、政府は失業手当の補助金以外は自前で政策を打っていないということなのです。これでは、政府は雇用対策をやる気がないと言われても返す言葉がないと思いますが、総理、いかがですか。
   〔議長退席、副議長着席〕
 次に、社会保障制度について伺います。
 総理が所信表明で述べられた、将来にわたり持続的、安定的で効率的な社会保障制度の構築に異論を唱えるものではありません。しかし、このことは何年も前から指摘されてきており、政府も国民にその実現を約束してきたことで、今さらの感がぬぐえません。
 いつまでたっても抜本改革の道筋を政府が示すことができないため、国民が自分の将来設計を描けず、不信と不安から自己防衛せざるを得ない状況に追いやっているのです。
 政府は、例えば基礎年金の思い切った見直しや医療保険制度の抜本改革など、基本的な改革、構造的な改革を先送りする一方で、介護保険の保険料徴収の凍結や高齢者の薬剤費の一部自己負担免除など、場当たり的な継ぎはぎにより制度をないがしろにしてきました。その結果、国民の社会保障制度への信頼を失わせてしまったのです。
 特に、先月、与党のごり押しで成立した年金法改正は、現下の厳しい雇用情勢や経済情勢を考えると、まさに最悪の時期に最悪の法案が成立したと言わざるを得ません。本来、国民に安心感をもたらすはずの年金制度が逆に不安と不信をあおっているのです。
 総理は、こうした国民の社会保障制度への不信や不安をどのように受けとめて、どう対処されようとしているのか、お伺いいたします。
 我が国の年金制度運用の歴史を振り返ると、五年ごとに財政再計算を行い、その都度、抜本改革と称して給付の切り下げと保険料の引き上げを繰り返してきました。こうしたやり方が国民の信頼を失うことにつながっており、もう限界に達していることはだれの目にも明らかであります。
 国民年金の空洞化の問題や女性年金権の確立などの問題とあわせて、老後の所得保障として年金制度を根本的に再構築すべきと考えますが、総理はどのような構想を持っておられるのか、お伺いいたします。
 次に、医療制度であります。
 政府は、平成九年の医療費負担増額の際、国民に医療制度及び医療保険制度の抜本改革をすると約束しました。平成十二年度には薬価制度や診療報酬のあり方、医療提供体制や高齢者医療制度等の抜本改革を行うというものでした。ところが、今回提出の健康保険法等の改正案の内容を見ると、そのような抜本的な改革の中身は何も織り込まれず、すべて先送りされています。
 ちなみに、この法律も予算関連の重要法案として今国会に提出されていますが、衆議院の方でお伺いをいたしますと、審議をどうするか、与党の皆さんの方からいまだに何の相談もないようであります。これはなぜそうなっているのかよくわかりませんが、巷間さまざまに言われていることは議員の皆さん御承知のとおりであります。
 この議論はまた改めて別の場で行うといたしまして、総理にお伺いしたいことは、約束したことを守れない社会保障行政にだれが信頼してついてくるのでしょうか。総理の御見解をお聞かせいただきたい。
 三つ目の不安である財政赤字についてお伺いいたします。
 小渕前総理は、二兎を追う者は一兎をも得ずという例えで財政問題への着手は景気の回復が軌道に乗ってからとおっしゃったが、その考えも継承されるおつもりですか。まずお聞かせ願います。
 相次ぐ国債の増発により、国と地方を合わせた借金は六百四十五兆円にも達します。この二年間の景気対策と称した借金の上乗せ額約百十六兆円は、それにふさわしい効果があったと総理はお考えか、御説明願います。
 国民は、膨大な借金を抱え、一向に減らない財政赤字の解消にはいずれ増税が待ち構えていることを看破しています。総理に伺いますが、財政再建の一つの選択肢として増税もお考えになっておられるのか、御見解をお聞かせいただきたい。
 また、財政再建に着手するタイミングは別としても、国民の将来不安を払拭する上でも財政構造改革のビジョンを早急に示す必要があると思いますが、いつごろ取りまとめるお考えか、お聞かせいただきたい。
 次に、公共事業について伺います。
 総理は二十一世紀型社会資本の戦略的整備を公共事業に臨む姿勢として述べられましたが、公共事業のあり方にも問題が指摘されています。
 各省庁の固定的な予算のシェア配分によって、現状では国民が本当に必要としている社会資本に対して十分な投資が行われていないなどの問題点が明らかになり、マスコミでも多数取り上げられています。
 長期計画策定の段階から事業の完成まで、どの段階においても事業の目的、必要性について十分な説明をしているとは言いがたく、外部からのチェックが働いていないのが現状であります。
 民主党は、国民の代表である国会議員が、国民に開かれた場である国会で、公共事業の全体像、個別事業について十分に審議できるシステムをつくることをコンセプトとした、公共事業をコントロールする法案を検討いたしております。
 ぜひ、総理のリーダーシップを御発揮いただき、こうした法案に御賛同いただければと思いますが、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
 最近の予算編成を見ますと、財政規律が緩み、放漫財政の傾向が一段と顕著であります。
 例えば、予算上予備費という枠があるにもかかわらず、それとは別に設定している公共事業等予備費や、総額の七割を補正予算で充当し、シーリング逃れを繰り返してきたウルグアイ・ラウンド農業対策費、総理枠、与党枠と言われる選挙対策の地域ばらまき型の公共事業予算等であります。総理に伺いますが、前内閣を継承し、これらを容認して予算編成に臨まれるのでしょうか。御見解をお聞かせください。
 次に、森総理の経済構造改革への取り組みについて伺います。
 総理は、我が国について経済は明るさを増しつつあると表現されました。しかし、個人消費は、将来不安が原因で回復に向けた動きは不透明なままであります。設備投資も、IT関連産業の伸びは高いものの、全体としてはまだ不安定な状況にあります。皮肉なことに、政府が百十六兆円もの借金の多くを費やした公共事業関連の従来型産業は全く回復していないのであります。極論すればこれらはむだ金であったとも言えます。
 この事実が意味するところは、従来型の公共事業がもはや景気回復の有効な手段になり得ず、まして構造改革には結びつかないということであり、一兎を追おうとした前総理の経済政策は間違っていたということではないでしょうか。総理はこの政策の誤りを正していくおつもりがあるのか、御見解をお伺いいたします。
 一方で、規制改革は、財政を深刻化させることなく民間活力を引き出すことができるわけで、情報通信や金融サービス分野などでの規制緩和の効果を見ても、国民経済発展への貢献は実証されています。
 総理も規制改革の一層の推進を掲げられましたが、つい先日、三月三十一日に決定された規制緩和推進三カ年計画の再改定の過程では、規制緩和に反対する自民党内の議連に名を連ね、タクシー事業や酒類小売免許の需給調整規制の廃止に反対されていたと聞いております。既得権益擁護と規制改革は両立せず、二兎を追うことは不可能と考えますが、総理はどちらを追うおつもりなのでしょうか。明確にお答えいただきたい。
 規制改革の着実な実施に向けてかぎを握るのは実行体制にあります。以前の行政改革委員会は、法律に基づき内閣への勧告権を持つ組織として設置され、大店法の見直し、航空事業の参入規制見直しなどの成果を上げました。しかし、現在の規制改革委員会は、総理を本部長とする行政改革推進本部の下部組織の位置づけで、勧告権も与えられていません。このため、規制改革のテンポや内容が明らかに後退しています。
 そこで、総理が規制改革の一層の推進を言われるなら、勧告権を持つ強力な規制改革推進組織をつくるべきであると考えますが、御見解を伺います。
 ペイオフ凍結解除の一年先送りについて伺います。
 越智前金融再生委員長就任以来、金融改革のスピードが後退しているように見受けられます。このままだと、日本の金融は再び市場の信認を失うことになりかねないと危惧されます。ペイオフについては、既に九五年に政府は二〇〇一年三月末の凍結解除を決めており、五年もの猶予期間があったにもかかわらず有効な対策を実施せず、ペイオフ凍結解除の一年三カ月前、昨年末になりますが、ごたごたの末、また延期を決定しています。総理に、決定の経緯と理由について御説明願います。
 ペイオフ解禁の圧力が緩んで金融界の危機感が薄れれば、再編整理は進まなくなります。また、金融機関は、預金者の選別というプレッシャーから経営健全化に向けた努力を急いできましたが、ペイオフの凍結解除の延期はその機運をそぐことになります。総理の御見解を聞かせていただきたい。
 また、そのために、交付国債を原資とする公的資金枠を存続させる必要が生じ、財政の悪化を招くことになります。小渕前総理や宮澤大蔵大臣は、再三、延期はしないと発言されていたにもかかわらず、与党の選挙対策優先の先送りに屈しました。政府の見識と責任が問われると思いますが、御見解を聞かせていただきたい。
 最後の質問になりますが、先ほど田名部議員もお触れになりましたが、史上空前の金融不安をもたらした原因と真相の解明及び経営責任を厳格に追及するため、国会で徹底した真相究明ができるよう、一九三〇年代の米国の例に倣い、日本版ペコラ委員会を設置することを提案いたしたいと思います。総理に御賛同いただけるかどうか、お伺いいたします。
 最後に申し上げますが、森総理は、前政権から閣僚も政策も継承し、さらにキャッチフレーズまでもお借りになって内閣をおつくりになりました。所信表明演説でも、目新しい理念や政策はみじんも感じ取ることができませんでした。私がるる述べてまいりました国民生活に関連する諸課題に対し、総理が前政権と同様の政策をそのままお続けになるのであれば、国民の将来不安や政治不信はますます高まるだけであります。政策転換の決断ができないのなら、一刻も早く解散・総選挙を決断されることが森総理に課せられた唯一の使命であることを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 114715254X01520000412_020

発言者: 直嶋正行

speaker_id: 7583

日付: 2000-04-12

院: 参議院

会議名: 本会議