鳩山由紀夫の発言 (本会議)
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○鳩山由紀夫君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、私の所信の一端と、主として総理に対して質問をいたします。
初めに、有珠山の噴火や伊豆諸島地震で被災され、不安な毎日を送られた方々、送っておられる方々に対し、心からお見舞いを申し上げます。また、特に被災によってお亡くなりになられた方の御冥福を心からお祈りをいたします。
私は、こうした大規模災害における生活の困難や事業の中断から生じた問題については、個人補償を含めて手厚い支援策を実施することが極めて重要だと主張し、政府にも申し入れてまいりました。公共投資は、本来こうした緊急性の高いところに最優先して配分されるべきものであります。政府としても、むだな予算は削減をし、真に必要なところに思い切った措置をとられますよう、改めて強く要請をいたします。(拍手)
さきの総選挙において、民主党は政権交代を求めて戦ってまいりました。残念ながら、その目的を果たすことはできませんでしたが、与党三党の議席は大きく減り、森内閣に対して厳しい評価が下されました。これは、国民の自公保連立政権に対する拒絶の意思表明であるとともに、総理自身が発言をふらふらさせて言いわけをし、果ては、あたかもマスコミが悪いかのような暴言まで繰り返したことへの当然の帰結と言えるでありましょう。
そもそも選挙というものは、相対峙する政党が国民の前に堂々と公約を示して、その審判を問うものでなければなりません。民主党は、経済の活性化と財政再建の両立、むだな公共事業の大胆な見直しと削減、課税最低限の見直しなど、痛みを伴う改革を掲げてこの選挙に臨んでまいりました。特に公共事業問題においては、国民的な関心を呼んでいる中海の干拓や吉野川可動堰の事業及び計画の中止などを具体的に提案してまいったのであります。
選挙とは、このように国民との約束を明確にして審判を受けるものであります。にもかかわらず、政府・与党は、選挙の際には甘い言葉ばかりささやいて、支持する者には予算をばらまくと言わんばかりの姿勢を示し、国民にとって厳しい話は一切触れぬまま、国民の歓心を買おうとしてきたのであります。そして、選挙が終わるや否や、税制調査会などを通じて増税をにおわせ、あたかも公共事業の見直しをやるかのようなポーズをとり始め、予備費についても慌ててその内容を修正するといった一貫性のなさを見せているのであります。
森総理、そして自民党の皆さん、あなた方はいいかげんに気づくべきだ、このようなやり方こそ、政治に対する国民不信を増大させ、政治家の言葉ほど当てにならず人を欺くものはないという世間常識を生み出してしまっていることを。
私は、まず最初に、久世公堯前金融再生委員長の利益授受問題及び辞任についてお尋ねせねばなりません。
金融再生委員長の久世公堯議員が、九五年までの約七年間、三菱信託銀行から利益供与を受けていたという事実が発覚しました。その規模は、事務所の提供、顧問料などを合わせて二億三千万だと言われています。事務所には、企業から事務局長や事務員の派遣も受けており、事務局長は、自民党の部会などに出入りをし、金融制度や土地対策、都市開発に関係した情報を集めていたと伝えられております。
これほどの問題に対して、自民党の幹部が、過去のことだ、済んだ話だ、法的問題はないなどと開き直る姿は、まさに非常識きわまりないものだと言わざるを得ませんでした。しかし、当然のことながら、国民の批判は厳しく、ついに辞任に追い込まれたのであります。
そこで、伺わせていただきたい。
まず、総理は、久世氏の閣僚就任決定時に、官邸において、この問題を指摘する投書を受けて事実関係を調べ、当人から事情聴取まで行った上で判断したと伝えられています。どのような事実を調べられたのか、また、いかなる理由をもって問題はないと判断されたのか、伺います。
特に、久世氏は、企業などからの利益提供を政治資金収支報告書で報告する義務を怠るという違法行為を行い、かつ、三菱信託の顧問として、農水政務次官を務めていた間にも顧問料を受け、明確な兼職禁止違反を犯しています。総理はそのような事実を承知しておられたのか、あわせて伺います。
しかも、あたかも突然発覚をし、辞任の理由となったかのようにスクープされたマンション大手の大京からの資金提供についても、既に知っていたのではありませんか。あわせてお答え願います。
次に、世論にさらされた上での久世金融再生委員長辞任劇についてであります。
大臣になる人物としてあるまじき不正行為を次々と行っておきながら、一億や二億の金で文句を言われる筋合いはないとばかりの態度を見せた久世氏及び久世氏の行動を弁護した自民党要人たちの余りの常識外れのセンスに、国民は改めて憤りを感じています。まさに、世間の感覚とはずれた自民党的体質が象徴的ににじみ出た一幕であったと言わざるを得ません。
久世氏はまた、辞任の理由を、国民に対するおわびと不正についての反省からではなく、専ら永田町への配慮と国会審議への影響を考慮してのものだと述べたのであります。ここに政治家としての誠実さは一切見られないのであります。こんなモラルも誠実さも感じられない人物を閣僚に任じた根拠はどこにあったのですか。もともと久世氏は、私は金融の素人と言い放ち、そごうに対する債権放棄もあくまで正しかったと言い張るなど、完全にミスキャストであったはずです。
したがって、総理は、辞任の申し入れを受理するのではなく、率先して解任すべきものでありました。それを行わず、あたかも健康上の理由で退任する場合と変わらない扱いとしたことは、森総理御自身、責任感覚が麻痺しているのではないですか。
さらに申し上げたい。
大京からの久世氏への利益供与は、参議院比例区での名簿順位を上げるために使われたではありませんか。まさに自民党は、業界・団体との金銭的癒着の程度でつくられている政党であることを天下に公表したことになります。こんな政党に、皆さん、日本の未来を託すことは断じてできません。
ここで、後任の相沢金融再生委員長にお尋ねします。
前任者である久世氏の辞任理由となった特定の金融機関からの利益提供について、とりわけ金融行政の責任者としてどう思われるでしょうか。また、仮にも、相沢新委員長におかれては、これまでに金融機関から受けた利益提供について、みずから公表し、透明性を保つことをお約束されるでしょうか。
そもそも、このような事実を知らされておきながら、派閥均衡を意識し過ぎて、みずからリーダーシップを発揮することもなく、ずるずると久世氏を閣僚に登用した森総理の政治責任は極めて重いと考えます。総理としてどう責任をとる用意がおありか、ぜひお示し願いたいのであります。
次に、さきに開催されました九州・沖縄サミットについて質問いたします。
七五年にスタートいたしましたサミットが、回を重ねるたびに、政治家同士の腹を割った討議の場から各国の官僚のおぜん立てに乗った儀式へと堕してしまったことは、残念ながら事実として認めなければなりません。そして、そのように形骸化の進むサミットの中でも、今回のサミットは、内容のなさでは歴史に残るものであったと私は思います。
私は、今回のサミットに協力をされた九州、沖縄の皆さん方の御努力に水を差すつもりはありません。ただ、サミットに八百十五億円と、ドイツやイギリスにおけるサミットの百倍もの費用をかけ、海外のマスコミからは宴会サミットとやゆされた上に、議長は官僚のつくった作文を読み、雑談には熱中されたと酷評されてしまっています。
議長として、我が国の総理がサミットでリーダーシップを発揮できずに終始したことは極めて残念なことでありました。リーダー同士が、NMDや中台関係など本質的な、しかし意見の合わない議題は避けてしまうのであっては、何のためのサミットでありましょうか。サミット本来の姿に立ち返るのでなければ、サミットなど要りません。
このような内外の評価を得た実情を、議長役を務めた総理としてどのように受けとめておられるのか、所感を伺います。
日本の昨年度の経済成長率は年率〇・五%でした。これは、サミット参加国中最低であり、他の七カ国の平均二・八%に比べて著しく見劣りがします。日本は世界経済のお荷物になっていると言ってもよいでしょう。この点、サミットで本当に議論されるべきは日本問題であったのです。だからこそ、サミット直前の党首会談において、私は、来るサミットを構造改革路線に転換することを世界に表明する場とすべきことを申し上げたのですが、総理は私の助言を聞き入れませんでした。日本は、経済運営をばらまき財政路線から構造改革路線に転換し、それを世界にアピールする絶好のチャンスを逃したのではないかと思います。総理の所見を伺いたい。
次に、朝鮮半島情勢に関連して総理に質問いたします。
先月、南北首脳会談が行われ、また、先般のASEAN地域フォーラムに北朝鮮が参加するなど、大きな変化の兆しが見えています。また、去る二十六日にはバンコクで初の日朝外相会談が行われました。河野外相は米の追加支援を検討すると表明し、また、森総理は、北朝鮮に対する補償問題についても当然やらないといけないと発言されました。
しかし、このような宥和的な発言の一方で、日本側は、ピョンヤンに対しミサイル問題や領海侵犯問題に関して主張すべき原則をあいまいにしてしまいました。まるで、韓国その他関係国の積極的外交攻勢を傍観し、バスに乗りおくれそうになったからと慌てて柔軟なポーズをとっただけに見えます。このような、戦略なき、国益なき、場当たり外交では、相手に足元を見透かされるのが落ちでありましょう。
北朝鮮の肯定的な変化を奨励し、我が国及び広く北東アジアの安全保障環境を改善するために、日本が経済的オプションを含めた外交的駆け引きを展開することが重要です。しかし、その大前提として、対北朝鮮外交における日本の国益とは何かを明確に掌握し、それを北朝鮮や関係国、国際社会に主張するのでなければなりません。日本の安全保障体制を確実なものとしておくことも重要不可欠であります。
総理に改めて質問をいたします。
北朝鮮に対する食糧追加支援や将来生ずるでありましょう賠償問題について、同国のミサイル開発配備問題や拉致問題との関連にも触れながら、日本政府としての原則的な考え方を伺いたい。
次に、IT革命に関連して質問いたします。
総理が所信表明の中で触れているIT革命は、どうも、構造改革という苦い薬をIT革命にすべてすりかえ、政権浮揚の道具に使われているようにしか見えません。一体、総理は日本の非常にお寒いIT環境の現実を認識しておられるのでしょうか。
サミットで、デジタルデバイド対策に百五十億ドル、他の参加国からは断られ、日本政府が単独拠出することを表明して得意がっている場合ではありません。南北のデジタルデバイド対策も確かに重要ですが、我々が肝に銘ずるべき別のデジタルデバイドが存在することを総理は国民に強く訴えるべきでありましょう。それは、欧米諸国や韓国、シンガポールなどと日本の格差であり、国内においても、大都市圏と地方の格差であります。
例えば、米国におけるインターネット利用料金は月額四、五千円程度であるのに対し、日本では、大都市圏でさえ八千円から一万円程度です。地方に至っては数万円以上というところも珍しくありません。
総理がもしIT重視を本当に打ち出すのであるのならば、会議や博覧会で体裁を繕うのではなく、具体的かつスピーディーに規制改革を行い、思い切ったインフラ整備に乗り出すことが最も重要であります。
総理に、日本のインターネット料金を、いつまでに、どの水準まで、どのような施策によって引き下げていくおつもりであるのか、質問いたします。NTT法改正や通信分野における競争促進をどのように実現していこうとされるのか、あわせてお答え願います。
政府が、一時的ではあれ、債権放棄というやり方で、税金を使って一民間企業であるそごうを救済しようとしたことについて、国民の怒りは頂点に達しました。
まじめに働いてきたが不幸にも経営に失敗した中小企業や個人は何ら顧みられることもないのに、なぜ、大企業だという理由だけで、一民間企業であるそごうが税金で救済されるのか。常識では考えられないほど巨額の報酬を得ていたそごうの経営者や株主の責任はろくに問われてもいないのに、なぜ国民にそごう救済のツケが回されるのか。国民のそのような疑問に対し総理はどのようにお答えになるのか、明快に御答弁願います。(拍手)
連立与党は、国民の強い反発を目の当たりにして、政府が一度決定した債権放棄策を撤回しましたが、一たんは政府がそごう救済を決定したことは動かしがたい事実でございます。この間、総理の声は全く聞こえてきませんでしたが、果たして総理はどんなリーダーシップを発揮したのでしょうか。そもそも、総理は今でも金融再生委員会の決定は正しかったと考えているのでしょうか。
そごう向け貸出債権を国が買い戻さざるを得ない根拠となった瑕疵担保特約について、民主党は、かねてからその違法性を指摘し、特約の撤回を強く主張してまいりました。自民党の野中幹事長は、金融再生法に譲渡後の債権の二次損失対策の規定がなかったことが瑕疵担保特約を結ばざるを得なかった原因だと述べられましたが、これは全くの偽りであります。そもそも、金融再生法の趣旨に従って問題債権を速やかに不良債権として処理していれば、二次損失を心配することもなかったはずであります。
どんなに性能のよい車をつくっても、ドライバーがルールを無視した運転をすれば、クラッシュは避けられません。法の趣旨に反し、国民に問題先送りのツケを押しつける瑕疵担保特約は直ちに破棄すべきであり、そのための交渉を行うべきであります。これは日債銀についても同様であります。総理にその意思があるかどうか、お尋ねをいたします。
さきの総選挙において、民主党は、公共事業を食い物にする自民党の体質を厳しく批判し、多くの国民の御理解をいただきました。自民党が都市部で惨敗したのもこのためであります。とりわけ都市部の方々は、税金のむだ遣いを助長する利益誘導政治という自民党のあしき体質そのものを問題視しているのであります。
しかし、政府・与党は、本来は予見しがたい予算の不足に充てるべき公共事業予備費五千億円を明らかに選挙目当てのばらまきとして利用するなど、改革の意思は全く見えないのであります。総理として、このようなばらまきを今後も続けるつもりなのか、ぜひ所見を伺います。
また、自民党は、総選挙において、公共事業予備費だけでなく補正予算までもほのめかし、ゼネコン業界への利益誘導を約束したと言われています。総理として、今年度も補正予算を組む考えはあるのか、組むとすれば、その規模はどのくらいで、どういう内容になるのか、お答えを願います。
自民党の利益誘導ばらまき政治の結果、我が国の借金は六百四十五兆円という途方もない金額にまで積み上がりました。今回、補正予算を組むとすれば、その額はさらに積み上がることになります。しかも、借金はふえても、GDPは縮小するありさまであります。もはや財政破綻は明らかではありませんか。速やかに、むだな公共事業を初めとする徹底的な歳出構造の改革を行い、厳格な財政規律を確立し、財政健全化への道筋を示さねばなりません。総理にそのような覚悟がおありかどうか、お尋ねをします。
中尾元建設大臣が、建設大臣在任中に建設業者からわいろを受け取り、公共工事の受注増のために便宜を図ったとして、受託収賄容疑で東京地方検察庁に逮捕されました。公共事業を食い物にする政府、与党一体の利権構造を背景とした今回の建設省汚職事件は、職務権限があいまいなために現行法では罪に問われない可能性のある与党政治家による構造汚職の氷山の一角にすぎません。イトマン事件や石橋産業事件の許永中被告によって二十億円もの政界工作資金が与党の有力な政治家に流れた疑惑や、自民党の亀井政調会長が、建設大臣当時、建設業界から三千万円の献金を受けていた問題なども浮上しており、徹底的な真相究明を行うべきであります。いかがでしょうか。
カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は、日本の政治に詳しい外国人の目には、日本列島の至るところに見られる全く不必要な公共工事は、主として自民党に政権を維持させるために存在していると映っていると、厳しい指摘をしているではありませんか。
このような問題を断ち切るためにも、民主党が他の野党とともに提案している国会議員の地位利用収賄等の処罰に関する法律案を、今国会中に成立させるべきであります。これは、議員が公共事業や許認可などに絡み、依頼を受け、その地位を利用して役所に口ききをし、見返りを受け取る行為を処罰する法案です。与党内には、あっせんの規制の範囲を公共事業の入札などに絞るべきだとの意見もあるようでありますが、問題は公共事業の入札だけではありません。逮捕者を出した自民党こそ立法化を率先すべきであり、問題の先送りや規制の骨抜きを考えるなど言語道断であります。
今国会中にあっせん利得収賄罪を制定する意思がおありか、総理及び扇建設大臣、続総務庁長官の三名にお尋ねをいたします。
以上に述べたすべての事業において、総理の政治的リーダーシップが見えません。このことが問題を一層深刻なものにしています。日本は今、歴史の転換点を迎えて、すべての分野で構造改革を断行していくたくましいリーダーシップが求められています。一国の総理がみずからの指導力を発揮して構造改革にチャレンジする勇気と行動力を欠くことは、国民生活と日本国の将来をますます危ういものとし、政治に対する不信はいよいよ強まるに違いありません。
率直に申し上げて、総理の所信表明演説には心に響くものがありませんでした。それは、他人の作文を読み上げるような演説であったということばかりではなく、構造改革に挑む毅然たる姿勢がみじんも見受けられなかったからであり、自民党政治そのものが制度疲労のきわみに来ており、既得権に縛られて、政権政党としての高い誇りを持って前進するという気概が全く欠如しているからであります。
構造改革とは一体何でありましょうか。それは、政官業の癒着を断ち切り、不正については厳しく対処するという政治の質そのものの変革なくしてはなし得ないものであります。その覚悟を持たないまま政権を担えば、予備費の取り崩しや久世不正問題、そごう債権放棄やあっせん利得収賄処罰法への対応の乱れなどの場合のように、時々の課題に直面しては一貫性のない場当たり的な政治を繰り返すことになります。あなた方は、さきの総選挙において示された国民の厳しい声に押されて、ただ右往左往するばかりではありませんか。
民主党は、総選挙を受けて、国民の皆さんに約束した公約を着実に実現するよう邁進する覚悟です。時代が求める構造改革を断行する政党として、勇気を持って前進してまいります。
民主党は、国民と日本国にとって今何が必要なのかを真摯に考え行動する政党として、みずからを鍛錬し、必ずや政権交代を実現することをここに改めて表明をし、私の代表質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕