水島広子の発言 (本会議)

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○水島広子君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、森総理の所信表明演説に対し質問いたします。
 初めに、有珠山や伊豆諸島における噴火、地震により亡くなられた方の御冥福をお祈りするとともに、被災者の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
 今の日本の社会において子供の問題がかなり深刻であるということは、私も総理と同じ見解を持っております。私は、精神科医として、問題行動を起こす子供たちを数多く治療してきた経験から、日本の将来に非常な危機感を感じております。それが、精神科医である私が政治家を目指した最大の動機でもありました。少年犯罪についても、加害者に対する更生システムを専門化し徹底すると同時に、被害者のケアを充実するといった課題に目を向けずに、少年法を改正することで安易に厳罰化を図ろうとするような政治の姿勢には大きな危惧を抱いております。(拍手)
 総理は、所信表明演説の中で教育の新生について述べておられました。しかし、その具体的内容を見ると、余りにも形式的、表面的なことばかりに思え、今子供たちの教育の場に最も必要とされている視点が欠けているように思えてなりません。精神科医として現場で子供たちや親たちと向き合ってきた私の目には、総理のおっしゃるような教育改革で問題が解決できるとはとても思えません。
 総理は、なぜいじめの問題が解決されないばかりか、年々悪質化していると思われますか。
 いじめというのは、自分と違う他人の存在を受け入れることができない結果起こるものです。人間の多様性を認められない排他的な行動とも言えます。いじめの問題を根本的に解決するには、人間の多様性を尊重して、自分も他人も大切にできる子供を育てる教育が不可欠です。教育勅語の復活を期待するような発言や、問題を起こした子供たちに便所掃除をさせろと発言されたことなどを考えますと、また、今回の所信演説を聞いても、どうも総理は単一の価値観を押しつけようとしている気がしてなりません。
 教育基本法の見直しにしても、本来、他者との触れ合いを通して自発的に育てるはずの奉仕の精神や道徳心といったものを法改正によって一方的に押しつけようとするのであれば、逆効果となり、取り返しがつかないことになると思います。押しつけるのではなく話し合って考えさせるのが教育だと思いますが、総理のお考えはいかがでしょうか。
 自分と異なる他人を尊重できる子供に育てるには、まずは大人社会を多様性が認められるような社会にしていかなければならないと思います。今の日本社会は単一の価値観の押しつけに満ちあふれています。その代表的な例が、結婚したら夫婦は同じ名字にしなければならないとする民法の規定であります。
 夫婦のこと、子供たちのことは基本的にそれぞれの家庭で責任を持って決めていくべきことです。ある夫婦にとって一番よい方法が別の夫婦にとっても一番よいとは限りません。自分たちにとって不本意な方法を強いられた結果、心が不健康になって子供を虐待してしまう、そんな親や子供たちを治療してきた経験から、私は、家族のあり方を一つの枠にはめ込もうとする法律は弊害の方が大きいと思います。
 私自身も夫とは別の名字を名乗っています。そして、通称使用している私の夫が、自分の名字を守るために、必要なときに離婚届を提出し、数日後に用事が済んだらまた婚姻届を提出するという、ペーパー上の離婚、再婚手続を行っております。このことが、先日三度の離婚歴があるなどと報道されて騒ぎになりました。たとえ書類上のこととはいえ、離婚届という手段を選ばなければならないことは、円満な家庭生活を営んでいる者として極めて不本意なことであります。役所の手間もかかります。一方では、同じ名字の夫婦であっても完全に崩壊している家庭もあるわけで、名字が同じか否かということと家庭の円満とは何の関係もないということは、夫婦別姓を認めている諸外国のデータからも明らかであります。
 民法の改正は、別姓夫婦の利益のためだけではなく、あらゆる人々が他人の価値観を尊重しながら生きていくという、人間としての基本的な考え方の確立につながるものだと思います。国民の同意が得られていないなどという理由で今までも見送られてきたようですが、多様な価値観を尊重できる社会づくりのために、まずは率先して法改正するのが政治の役割だと思います。
 夫婦は皆同じ名字にするというのは、明治維新に西洋のまねをして導入された制度であり、日本独自の伝統とは何ら関係がありません。また、先進諸国のうち、現在でも選択的夫婦別姓を認めていないのは日本だけであります。男女共同参画社会の実現を所信表明演説でもうたわれた総理は、希望する夫婦には夫婦別姓を認めるよう民法を直ちに改正することについて、どのようにお考えでしょうか、お尋ねいたします。
 今の民法には、もう一つ重大な欠陥があります。それは、非嫡出子、つまり法律上結婚していない母親から生まれた子供に対する差別を明文化したものだということです。どういう事情で生まれてきた子供であっても、子供には何の罪もありません。当事者である大人たちがとらなければならない責任と子供に対する処遇とは、全く別の次元の問題として法律上も区別すべきです。
 非嫡出子は、法律上相続のときに差別を受けるだけではなく、普通に社会生活を送る上でも、就職や結婚の際に差別を受けています。そうした、ある立場の子供に対する生まれながらの差別を正当化するような大人社会のあり方が、いじめなどの根本的な原因になっているのではないでしょうか。非嫡出子の差別をやめるように直ちに民法を改正することについて、森総理のお考えを伺いたいと思います。
 総理御自身も触れられている大人社会のあり方ですが、これが子供たちに大きな影響を与えるのは事実だと思います。子供たちは大人のまねをして成長します。大人社会のモラルがこれほど低下した今の日本で、子供たちのモラルだけが高まったら、むしろおかしなことだと思います。
 モラルの低下の一つの例として、子供の目に触れるテレビや雑誌、ゲームなどの影響も無視できません。だれでも簡単に目にするメディアに暴力や性暴力がはんらんし、町じゅうに売春情報があふれているというのが今の大人の社会です。子供たちを批判する前に、総理御自身も含めて、私たち大人がまず反省すべきではないでしょうか。(拍手)
 子供たちの問題行動とメディアによる有害情報の関係を指摘する専門家はたくさんいます。仮に犯罪に直結しなくても、幼いころから有害情報に当たり前のように触れることが子供たちの精神面の発育に及ぼす影響は無視できません。諸外国でも進められているように、子供たちを有害な情報から守る法律を日本でも早急につくる必要があると思います。
 これはもちろん、国家による検閲というような形をとるべきではありません。例えば、子供にとって有害な情報であるか否かを親が判断して選べるようなシステム、また、町中でも子供が有害情報に触れるのを防ぐような社会的なバリアをつくるなど、地域社会の大人たちが子供たちを守るようなシステムをつくるべきだと思います。子供を有害情報から守るための立法の必要性について、森総理はいかがお考えでしょうか。
 私は、精神科医としての経験の中から、人生の質を決めるものはコミュニケーション能力であると思っています。自分の意見を言い、相手の意見を聞き、お互いに納得のできる結論まで話し合える能力、それが人生のあらゆる場面で必要とされる能力であり、相手への思いやりや社会のルールを学ぶために必要とされる能力であり、また、国際社会の中で日本人に特に欠けている能力でもあります。
 私は、教育改革もコミュニケーションを重視したものであるべきだと思います。また、日本じゅうのだれもが注目している国会という場こそ、よいコミュニケーションの見本を子供たちに示すべき場だと思っています。
 しかし、最近の国会運営を見て、民主主義とは話し合いよりも多数決で押し切ることだという誤った理解をしている人たちがふえているように思います。言論の府としての国会の威信を取り戻し、子供たちにコミュニケーションの見本を示せるように、ぜひ私たち野党と十分な話し合いをして、途中で切れたりせずに、お互いに納得のできる結論に達するまでの辛抱強さを見せていただきたいと希望いたします。
 民主主義とは、少数意見をいかに尊重できるか、そのためにコミュニケーションを尽くすことだと思います。まずは党首討論を毎週行うことで総理みずから模範を示されるべきだと思いますし、あわせて、各大臣についても同様な場を設けるべきだと思いますが、総理のお考えをお願いいたします。
 次に、子供の医療について質問させていただきます。
 今、日本の小児科医療は危機に瀕しております。患者数が少ない、大人の医療と比べてもうからない、手間がかかるなどという理由で、小児科医の数が減り、医療の質の低下、小児科医のますますの激務につながっています。小児科救急の不備のために命を落とした不幸な子供の例も多数報道されています。また、心を病む子供に対しては、大人を中心とした医療体系では対応し切れません。
 小児の医療は、国の将来を担う貴重な人材を社会全体で守るという発想で行わなければいけないと思います。国が特別な予算枠を確保し良質な医療を提供すること、また、数少ない小児科医を効率的に活用するためにも、各都道府県に子供病院をつくり、人材を集中させ、包括的、専門的な子供医療ができるように国としても取り組むべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 現行のように各都道府県の自助努力に任せていると、いまだに全国で十九都道府県にしか子供の総合医療施設がありません。そして予算不足を理由に、いつまでたっても達成されないと思います。これらの問題はかなり緊急性があると思われますが、総理並びに厚生大臣のお考えをお聞かせください。
 最後に、私は、選挙で当選した六月二十五日からの任期であるのに、六月分の歳費が満額いただけたことに驚きました。なぜ働いていない二十四日分に国民の税金が支払われるのか、何か正当な理由があるのでしょうか。永田町の常識は国民の非常識と言われていますが、永田町は日本の縮図だと思います。まずは永田町から日本のモラルを直していくためにも、歳費を日割り支給にするように直ちに法律を改めるべきだと思います。この点での総理の御意見をお願いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

発言情報

speech_id: 114905254X00220000731_016

発言者: 水島広子

speaker_id: 5835

日付: 2000-07-31

院: 衆議院

会議名: 本会議