松本善明の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○松本善明君 私は、日本共産党を代表して、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案、いわゆるIT基本法案などについて質問をいたします。
法案に入る前に、国政上の重大問題である総理のいわゆる拉致疑惑発言と、この法案の担当大臣である中川官房長官の暴力団癒着疑惑問題について質問をいたします。
総理、あなたのいわゆる拉致疑惑に関するイギリス・ブレア首相に対する発言は、日本政府の外交能力が問われる重大問題になっております。これに驚いた総理は、行方不明者が第三国で発見という発言が与党訪朝団の副団長であった中山正暉氏の個人的発言だとして切り抜けようとしておりました。しかし、総理自身、ブレア首相との会談直後、記者団に、役割分担して訪朝団として発言したと述べていますように、これが団長であったあなた自身を含めた与党訪朝団の正式提案であったことは明白であります。しかも、当の中山氏が、正式の会談の場で提案した、冗談でないと正面から否定をしております。
そこで、具体的にお尋ねしますが、三年前の与党訪朝団で具体的にこのような提案を行ったのかどうか、第三国で発見という提案がその後どのように交渉されてきたのか、現時点でこの提案が生きているのかどうか、明確にすることを求めるものであります。
さらに、あなたがブレア首相に日朝交渉の現状を述べた中で、第三国で発見という打開策なるものまでなぜ発言する必要があったのか、わざわざ首脳会談に持ち出した真意は一体どこにあるのか、明確な答弁を求めるものであります。
私は、このようなあやふやな態度で果たして日朝交渉が進展するのか、深い危惧の念を抱かざるを得ません。総理の責任について明確な答弁を求めます。(拍手)
次に、中川官房長官の右翼幹部との癒着問題であります。
官房長官、あなたは国会での質問に答えて、日本青年社幹部との間に面識はないと答弁をいたしました。しかし、酒食をともにしている写真が報道されると、記憶にないなどと言い逃れをしております。報道されたのは、面と向かって平身低頭している写真で、面識がないというのは成り立たないし、記憶にないなどという言い逃れも通用いたしません。事は、国会でのあなたの答弁がうそだったのではないかという重大な問題であります。真相をみずから明確にすることを求めます。
さらに重大なことは、日本青年社の最高幹部には住吉会の最高幹部がついていることに示されますように、指定暴力団と一体ともいうべき深いつながりを持った団体だということであります。しかも、この団体が、尖閣諸島に上陸して灯台や神社を建てるなど、政府自身が遺憾なやり方と批判した挑発行動を行ってきたことは周知の事実であります。
尖閣問題に関するビデオを日本青年社から送られ、これに対して礼状を出し、日本青年社の機関紙上でこの七月にでかでかと掲載される。このようなつき合いの事実こそが政治責任を厳しく問われる問題であります。官房長官の立場とは断じて両立をいたしません。任命権者である総理と中川官房長官に答弁を求めます。
以下、IT基本法案について質問をいたします。
二十一世紀を前にして、コンピューターを初めとした情報通信技術の発展は、人類の文化、技術の発展の中でも画期的な一段階を開きつつあります。特にインターネットの発展と普及は、世界じゅうのコンピューター同士の通信を可能にし、既に国民の二割以上がこれを利用し、多様な情報を入手し発信する新しいコミュニケーションの手段となっております。この問題は、日本国民の二十一世紀の生存と生活の基盤を守る重要課題の一つであるだけに、長期的視野に立った本格的な対策が必要であります。
我が党は、特に新しい技術を社会全体が活用できるように国民の共有財産とし、その成果を国民すべてが受けられるようにする方策や、ITを利用した新たな犯罪を防止する対策、ITのもたらす否定的諸問題への対応などを当面特に重視する必要があると考えております。
この法案についてまず言いたいことは、民主主義の立場を徹底するということであります。政府案の、目的、理念、基本方針、どこから見ても民主主義の立場がありません。これは、基本法として最も重要な情報技術の発展、高度なネットワークの構築を日本の民主主義の発展につなげるという観点がないということであります。言いかえれば、多くの国民が情報を入手するとともに発信できるという言論の自由を新しい段階につなげるという基本的観点がないということであります。
情報通信技術の発展は、まさに民主主義の発展、国民生活、福祉の向上、文化の発展のために重要な貢献をいたします。現に、通信と密接にかかわる放送法でも、民主主義の発達をうたっております。
総理、この基本法にそうした民主主義的立場を徹底すべきではありませんか。はっきりお答えいただきたいと思います。
次に、すべての国民に情報へアクセスする権利を保障する問題であります。
法案の第十六条には「世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成を促進する」とあり、政府はこの最高水準をアメリカと考えているようでありますが、アメリカのゴア副大統領は、新しい通信方法は私たちに情報をもたらし、教育を助け、民主主義を広めると述べています。
アメリカ政府の高度情報通信ネットワーク建設の方針を定めた全米情報基盤行動アジェンダには、国民一人一人に対して情報源へのアクセスを保障することは行政の義務であると書き込まれております。そして、原則を掲げるだけでなく、九六年に改正した電気通信法で、インターネットへのアクセスが全国のすべての地域で提供されなければならない、全国すべてで都市部と同じ安い料金でできるべきである、小中学校とその教室、図書館、医療サービスの提供者にはインターネットへのアクセスが与えられなければならないと定めたのであります。
インターネットの普及率は、アメリカは日本の約二倍です。学校への普及率では約一・五倍、図書館は約三倍であります。アメリカのインターネットが普及しているのは、単に事業者の競争が盛んだからだけではなく、政府がすべての国民に情報へのアクセスを保障しているからであります。基本法案には、この近代国家のイロハがないのであります。
インターネットは、まさに画期的な情報へのアクセス手段であります。これをすべての国民に保障することこそ、高度情報通信ネットワーク社会の形成に当たって国の果たすべき第一の責務であります。法案第八条では、情報格差の是正が積極的に図られなければならないと言っておりますが、低廉な価格で高度情報通信ネットワークを利用することを国民の権利として保障することが重要であります。
総理、政府の責務と国民の権利を法案に明記する必要があると考えませんか。明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
情報格差の是正を国民の権利の問題としてとらえることの重要性は、身体障害者の問題を考えれば一番よくわかります。
難病で手足の機能が失われ、ベッド生活を強いられている身体障害者は、頭の中で文章を考えてもそれを表現するすべがなく、そういう人たちにとってパソコンは革命的だと言われております。こうした人で、家族の援助を得て農業をしている人がおりますが、ベッドの頭の位置につけたセンサーを唇で押す特別なスイッチを使って入力し、インターネットで作付や出荷状況をやりとりしているのであります。
こうした障害者にとって、ITは生活必需品であるだけではなく、文字どおり光明であります。また、こういう人の人生を知ることは、健常者の人生にも勇気をもたらします。
アメリカの九六年通信法は、障害者に使いやすい電気通信装置を開発することを事業者に義務づけております。EUでは、情報社会の恩恵を全欧州市民に漏れなく届ける十項目の計画の中に、身障者に対する一項目を起こし、年次計画を立てております。日本では、具体的条文どころか、重点計画をつくることにすらなっておりません。メーカーに対して電気装置開発を義務づけるとか、基本法に条項を設けて特別の措置を設けるなどすべきではありませんか。総理の明確な答弁を求めるものであります。
一方、IT化が進むと、リストラや下請中小企業を淘汰することなどによって、不安定雇用が大幅に増大するおそれがあります。また、情報通信ネットワークを利用できる者とできない者との間で所得の格差が拡大し、悪循環することも考えられます。既に、個人情報の流出やネット犯罪が多発しております。IT普及に伴うこれらの弊害について万全の対応が必要であります。総理、これらにどのように対処しようとしているのか、答弁を求めます。
次は、ITに名をかりて従来型の公共事業予算を推進するという状況が生まれているという問題であります。
日本の光ファイバー網の整備は、国土が二十五倍もあるアメリカの二倍であります。世界有数の光ファイバー大国と言っても過言ではありません。NTTを中心に、既に、全人口の三六%をカバーするだけの光ファイバー網があります。政令市と県庁所在地に限ってみれば五六%、ビジネスエリアでいえば九三%がカバーされております。しかし、料金が月額十五万円もするために、ほとんど使われていないというのが実態であります。
他方、建設省が国道のわきにつくる専用溝、いわばトンネルを掘る工事は、今年度末までに約一万六千キロが完成いたします。しかし、民間企業が借りて使用しているのは、わずか四百五十キロしかありません。一部人気地域を除けば、がらがらであります。マスコミから、全国各地に休眠状態の光ファイバー網がいたずらにふえることになりかねないと指摘をされているのであります。その上、下水道にまでも同様にしようとしています。こうしたやり方は改めるべきではありませんか。答弁を求めます。
私は、IT革命の看板を従来型の公共事業予算の推進策に使ったり、景気対策の手段にする目先の無責任な対応ではなく、長期的視野に立った本格的な国民的対策を行うことこそが必要であるということを強調して、質問を終わるものであります。(拍手)
〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕