田英夫の発言 (本会議)
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○田英夫君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、外交・防衛問題に絞ってお尋ねいたします。
その外交・防衛問題の質問に入る前に、緊急の問題として、参議院の選挙制度についての昨日の総理の御答弁に重大な事実誤認がありますので、それを指摘し、総理の答弁を求めます。
総理は、昨日の本会議で、同僚議員の参議院協議会の結論についての質問に対し、定数削減をまずやろうということで結論が出たと伺っていますが、非拘束名簿式については、問題はあるが、これは否定していないと報告を受けていますと答弁されました。しかし、これは全く誤りであります。
協議会報告は、一つ、「抜本的な改革は、次回の通常選挙に間に合わせることは時間的に困難であること、」、二つ、「当面は現行の比例代表制と選挙区制という制度の基本的な枠組みは維持することを前提としつつ、何らかの改革を行う余地があるかどうかを検討することとし、抜本改革案については、参議院の役割と在り方を踏まえつつ引き続き検討が行われるべきであることで意見が一致した。」、これが正しい協議会の報告であります。
つまり、来年の通常選挙は現行制度で行うことで協議会は合意しているのであります。今回のこの臨時国会に非拘束名簿式比例代表制の採用を内容とする参議院選挙制度の改正案を提出すること自体、参議院の協議会の合意に違反するものであります。
総理の明快な御答弁を強く求めます。
さて、森総理は、先日の所信表明演説で、私たちには二十世紀から二十一世紀ににじの橋をかけていく責任と役割がありますと述べられました。しかし、今のような政府・与党の姿勢で果たしてにじの橋がかけられるでしょうか。答えはノーです。それは、政府・与党には世界の新しい胎動に対する鋭い認識が全く欠如しているからであります。
去る六月十三日という日は、日本では衆議院総選挙の始まった日ですが、この日はアジアの、いや、世界の歴史に平和への一歩として確実に深く刻まれるに違いない日であり、韓国の金大中大統領と朝鮮民主主義人民共和国の金正日総書記が、長年にわたる厳しい対立を乗り越えて、ピョンヤンで会談をしたこの日の意義を総理はどう受けとめておられるのか、まず伺いたい。
南北朝鮮は、その後も首脳会談で合意した自主的統一に向かって、離散家族の相互訪問を初め着実に平和に向かって歩み始めています。シドニー・オリンピックの入場行進では、南北の選手が一つの旗のもとで手を握り合ってともに行進をし、世界に大きな感動を与えました。現実がこのように動いているにもかかわらず、日本政府は相変わらず北の脅威論にとらわれて、金大中大統領が熱海会談で森総理に対して求めた北朝鮮への経済支援にも冷たく反応しただけだったと伝えられています。
アメリカは、北朝鮮をイラン、イラク等とともにローグネーション、ならず者国家と呼び、これを敵視してきました。独立した国家を公然とならず者と呼ぶ無礼を森総理はどう思われますか。一九九七年には森総理は私たちとともに北朝鮮を訪問した経験をお持ちです。総理はよもや北朝鮮をならず者と思っておられないと思いますが、いかがですか。
今や朝鮮半島に関する認識を改めなくては、新しい状況に対応できません。総理は、金大中大統領とひざを交えて語られたのですから、彼の太陽政策の奥の深い考えを十分に把握されたと思います。米などの食糧の北朝鮮に対する支援はもちろん、さまざまな分野での経済協力を積極的に行うべきです。その一歩として既に南北間で合意し着工されている京義線の鉄道の連結にも日本政府が支援してはいかがですか。在日朝鮮・韓国人の人々の間でも、今既に立場の違いを超えてこのための募金活動が始められています。
次に、現在既に交渉が始まっている日朝国交正常化交渉についてです。
両国の国交を正常化しようというならば、まず相手国を国家として承認すべきだと思いますが、いかがですか。その上に立って、日本は、率直に過去の誤りを謝罪することから出発しなければなりません。そして、交渉する部屋の入り口に障害物になる石を置かないことです。かつて、日ソ平和条約交渉についてソ連のゴルバチョフ大統領の右腕と言われたヤコブレフ顧問が私に、日本政府は交渉する部屋の入り口に領土問題という大きな石を置いて、それを片づけなければ交渉の部屋に入らない、こういう態度をとっていると非難しておりました。このことは日朝交渉でも言えると思います。石を部屋の入り口に置くのではなくて、部屋に入って交渉を進める中でその石をどうやって片づけるか、解決するかを話し合うべきではないでしょうか。総理のお考えを伺いたい。
次に、森総理は、最近のコーエン・アメリカ国防長官との会談で、いわゆる在日米軍の瓶のふた論を認める発言をされたと伝えられています。それは、アジア諸国は日本が再び軍事大国になると懸念を持っている、だから在日米軍は周辺諸国にとって日本の軍事大国化を抑える安心材料になる、こう総理が言われたというのです。これは総理が、日本が再び軍事大国化することを認められたと受け取られても仕方がありませんが、総理の真意を伺いたい。
このことと沖縄の米軍基地の縮小問題とどう関連するんでしょうか。アメリカ海兵隊の普天間基地の名護移転問題はどうなるんでしょうか。沖縄県知事が提起した名護新基地の使用期限を十五年とするという要請についても、河野外務大臣はさきにニューヨークで行われた2プラス2では全く触れなかったようですが、このまま名護への移転を強行するつもりですか。明確にお答えいただきたい。
アジアに十万人のアメリカ軍を展開する戦略を提起したジョセフ・ナイ元国防次官補さえ、一九九六年に、北朝鮮の脅威がなくなればアジアに米軍のプレゼンスを確認する程度の兵力があれば十分だ、こう述べています。朝鮮半島の緊張が緩和しつつある現在、政府は沖縄県民の平和への願いをもっと真剣に考えるべきです。政府は普天間基地の名護移転を中止すべきです。総理の決断を伺いたい。
冒頭から繰り返して申し上げてきたとおり、六月十三日を出発点としてアジアが平和の方向へ進み始めているにもかかわらず、政府は逆に、日米安保条約に基づく日米間の軍事協力体制を強化する方向を強めています。
その一つがTMDの共同研究の推進です。既にここ数年研究費を計上してきましたが、来年度はこれをやめるべきです。アメリカのNMD計画は、実験のたび重なる失敗と、ロシア、中国を初めドイツなどヨーロッパの国々からも批判を受け、実現の判断を先送りしました。TMDもNMDも、これを強行すれば必ずミサイルとこれを迎え撃つシステム開発の軍拡競争を誘発することは間違いありません。それは、二十一世紀をもまたまた戦争の世紀にしてしまう危険を増大させます。TMDは即時中止すべきです。
また、政府は、中期防で世界最大の百機体制を完成させたP3C、対潜哨戒機の更新を計画していると言われています。もともと、P3C百機体制はアメリカ軍の要請を入れて冷戦時代にソ連の原子力潜水艦に対処するために一兆円近い巨費を投じて完成されました。先日のロシア原潜の沈没事故で明らかになったとおり、ロシアの原潜は激減しています。それなのに、何のために更新するんですか。その研究費だけで三千四百億円と言われています。配備には数兆円を要するという。
また、防衛庁は、来年度予算に空中給油機の導入の計画を計上しようとしています。この問題は、既に二十年以上前から我々が強く反対し、実現を阻止してきた問題です。これは自衛隊が保有する戦闘機の航続距離が無限に延長され、爆撃機として攻撃兵器に変身します。
昨年、ユーゴのコソボ紛争の際に、アメリカ軍が中国大使館を爆撃して大きな国際問題に発展しましたが、中国側によると、米軍がステルス爆撃機をアメリカ本土から飛ばし、空中給油機を使って大西洋を越えて爆撃したと主張し、アメリカもこれを否定していません。空中給油機の導入はしないと確約をしてください。
さて、政府の外交・防衛政策は、朝鮮半島の目に見えた具体的な平和の進展にもかかわらず、全くそれに逆行している幾つかの例を今申し上げましたが、そこで、このアジアの、特に北東アジアの緊張緩和という現在の変化に対応する我が国の安全保障政策をいかに展開をしていくか、これについて私ども社会民主党の具体的な構想を提案したいと思います。
冷戦構造が崩壊し、米ソ対立という世界の緊張が緩和して以来、世界各国の安全保障に対する対応が大きく変わってきています。日米安保条約のような二国間軍事同盟という対応は影を潜め、数カ国による地域の軍事だけでなく、食糧や環境その他、総合的な面からの安全保障を関係国が協力して対処するという地域総合安全保障機構の構築が世界各地で進められています。
私どもの身近なところでは、ASEAN地域フォーラム、ARFがその例です。これはASEAN各国を中心に結成されましたが、日本も参加をし、ことしは北朝鮮も参加を認められて注目されました。他にヨーロッパのOSCEもあります。
そこで、朝鮮半島の平和が進みつつある現在、日本と韓国、朝鮮民主主義人民共和国、中国、ロシア、モンゴル、アメリカ、カナダの八カ国で北東アジア総合安全保障機構の構築を目指し、そのための関係各国の話し合いの場を設けよう、これが私どもの構想です。
この種の構想を実現するためには、まず具体的な雰囲気づくりから始める必要があります。その第一歩として私ども社会民主党が提案したいのは、北東アジア非核地帯条約の締結です。それは、日本と韓国、朝鮮民主主義人民共和国、モンゴルの四カ国を非核地帯とする条約を締結しようというものです。
日本には国是としての非核三原則があります。南北朝鮮は、対立が続いていたにもかかわらず、一九九二年に朝鮮半島非核化宣言を発効しています。そして、モンゴルは一九九二年に非核国家宣言を発表し、それを一九九八年国連総会がコンセンサス方式で承認をしています。つまり、この四カ国は非核という点で既に一致しているんです。
私ども社会民主党は、この構想を持って土井党首を先頭に既に、八月二十五日、韓国を訪問して金大中大統領にこの北東アジア総合安全保障機構の構築と北東アジア非核地帯条約の締結を提起し、説明しました。金大中大統領は、私たちの共通の願いは非核と平和です、皆さんのお考えを支持しますと答えられました。
その後、九月十六日からモンゴルを訪問し、エンクバヤル首相を初め、人民革命党幹部及びモンゴル社会民主党幹部と会談をし、同様の提案を行いました。モンゴルは、ロシアと中国という核大国の間に挟まれ、その中でいかに非核を堅持するか苦悩した結果、非核国家宣言を行ったという経緯を説明してくれて、我々社会民主党の提案に全面的に賛成しました。
私たちは、引き続き、朝鮮民主主義人民共和国にも同様の提案を行いたいと思っています。
さらに、この四つの国を取り巻くロシア、中国、アメリカという核保有国に対しても、私たち社会民主党の構想を理解してもらうための努力が必要だと思います。
世界で非核地帯条約は、南半球は既にすべてこの条約のもとにあります。一九六八年に発効した中南米非核地帯条約、トラテロルコ条約と呼んでいますが、これを最初として、南太平洋、アフリカ、ASEANの各非核地帯条約があり、すべての軍事的利用を禁じた南極条約によって南極大陸も非核地帯と言えます。
これらの非核地帯条約は、いずれも、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の五つの核保有国に対し、この非核地帯に対しては核兵器を持ち込まないこと、核攻撃をしないことを約束する条約附属議定書の署名を求めています。北東アジア非核地帯条約も同様の手続が必要と思います。
以上が、私ども社会民主党が提起した北東アジアの平和の確立を願っての提案であります。
森総理の御決断によってこの提案が実現するように願って、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕