松崎俊久の発言 (本会議)
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○松崎俊久君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました健康保険法等の一部改正案、医療法等の一部を改正する法律案について質問いたします。
二〇〇〇年四月に行うとされていた医療保険制度の抜本改革が今回さらに先送りされ、増加する医療費のすべてが被保険者、患者負担となっています。特に、高齢者の一律一割負担は断じて許すことができません。
総理は、医療保険制度の抜本改革をどうされるおつもりなのか、医療費の増大にどのように対処するのか、破綻に瀕した健保財政再建をどうするつもりなのかをお答えください。
国民に負担引き上げを強いるだけで、国民の生命と健康を守る医療保険制度の抜本改革の約束を果たさないというのでは、総理には国民の生命と安全を保障する資格はございません。
厚生省の資料説明、「健康保険法等の一部改正案の概要」によれば、今回の制度改革は医療保険制度の抜本改革の第一歩と、先ほど大臣もそうおっしゃいました。しかし、行き先と方向を明示しないでは、第一歩は危なくて踏み出せないのであります。
さらに、資料、「医療法等の一部を改正する法律案の概要」によれば、制度改正の趣旨は、高齢化の進展などに伴う疾病構造の変化などを踏まえ、良質な医療を効率的に提供する制度を確立するため、入院医療を提供する体制の整備、医療における情報提供の推進及び医療従事者の資質の向上を図るとされています。
しかし、その内容を見ますと、継ぎはぎだらけで正確な現状認識の上に立つ論理に全く欠けております。
総理大臣にお尋ねします。
今日の健保財政の危機は単に急速な高齢化に原因するとお考えですか。日本の国民総医療費はGDPに比例して高い水準にあると認識されているのでしょうか。
国民総医療費の対GDP比を見ますと、一九九七年、日本は七・三二に対して、ドイツは一〇・四五、アメリカは一四・〇一であり、G7諸国の平均値は九・三二であります。諸外国に比べて日本の医療費はむしろ低いのであります。だからといって値上げが当然などと短絡されては困ります。
次に、病床数を見ます。
人口一億二千万の日本は百二十六万床、人口二億五千万のアメリカは五十万床で、人口割にすると日本はアメリカの五倍の病床を持つ世界一の病院大国であります。
OECDの一九九八年ヘルスデータによれば、一九八〇年から九六年の十七年間に、単位人口当たりの病床数は、主な国では二七・四%減少しております。これは、在宅医療の流れが強まり、ナーシングホームの整備、医療技術の進歩の結果でありますが、我が国はひとり例外で、病床数は十七年間に一七・四%の増加を示しております。この現象を厚生大臣はどのように解釈されているのでありましょうか。
入院患者の平均在院日数を見ますと、一九九五年、我が国が四十四・二日なのに対しアメリカはたったの八日、何と日本は五・五倍も長い入院日数なのであります。世界の平均と比べても三・五倍長く、一般病床に限定すれば二・七倍も長いのであります。厚生大臣、この事実をどのように分析されているのでありましょうか。
我が国の病床数が多いのは、一九八〇年代に厚生省が無原則的に老人病院の開設を許可した結果であります。在院日数が長過ぎるのは、病床当たりの職員数が少なく診療密度が薄い、言いかえるならば生産性が低いということであります。
では次に、病院職員、特に看護婦の数を比較してみましょう。
我が国で医療水準が最も高いとされている病院は、入院患者二に対して看護婦一、アメリカのハワイ大学では入院患者一に対し看護婦三・五、何と日本の一流病院の七倍なのであります。入院患者一に対し日本の看護婦は最高の病院で〇・五、アメリカの病院は二以上、西ヨーロッパでは一以上、シンガポールでさえ一なのであります。せめてシンガポール並みの医療水準にしようとは思いませんか。
入院経験のある方なら御存じだろうと思います。夜間に五十人の入院患者を抱える看護一ユニットにいる看護婦は二、三名であります。この現実こそが今日問題になっている医療事故の最も大きな原因であります。再びこのような事故を起こさぬよう努力しますなどと病院長に謝らせても、絶対に問題は解決しないのであります。
厚生省は、当初、入院患者二・五人に対し一人の看護婦という案を示しながら、今回は三人に対し一人と大きく後退しました。
総理は、過日、沖縄サミットで顔を合わされたG7の首脳たちにこの惨たんたる医療の現状を恥じなければなりません。IT革命を主導されるのは結構なことでありますが、国民の生命と健康がOECDの中で最も低い医療構造で支えられている現状を省みず、抜本改革をおくらせ、負担増のみを押しつけていることを反省するお気持ちはないのでしょうか。
与党のリーダーの中に、世界一高いガソリン税のうち四兆二千億円を毎年道路建設に回しているのを再検討し、その一部を医療に回すという構想があるやに聞いております。仮に一兆円を看護婦人件費に回したとしますと、看護婦の給料に夜間勤務手当、年金、保険料を含めて一人一千万円かかると仮定しても、十万人の看護婦の増員が可能なのであります。
以上、述べましたように、病床数と平均在院日数、職員、特に看護婦数という三要素は極めて強い相互関連を持っております。看護婦の増員は、手厚い看護を患者に提供し、看護婦を重労働から解放し、ゆとりの医療を実現し、医療事故防止にも大きく貢献するでありましょう。看護婦の増員は診療密度を濃くし、患者の在院日数を短くすることに役立ち、さらに後に述べる、病名主義から、国際疾病分類で一万以上もある病名をマンパワー、医薬品、医療材料などの医療資源の必要度から統計上で意味のある五百程度の病名グループに整理し分類する方法、すなわちダイアグノスチック・リレイテッド・グループ、DRGの採用を実現することによって、在院日数短縮に役立ち、病床の回転率を高くし、病床削減、医療機関の収益増と生産性の向上をもたらします。このことは諸外国の例が実証しております。医師会や歯科医師会の診療単価引き上げ、この要求をも可能にいたします。
昭和二年、我が国の健康保険が制定され、安い負担と医療をすべての人にという理念は、勤労者へのあめの役割を演じつつも大きな効果を上げてまいりましたが、量的拡大を追求し、質的転換を遂げなければならない時期を逸し、制度疲労に陥ったのが現在の医療保険制度の危機の実態にほかなりません。
抜本改革とは、在院日数、病床数、職員数、診療単価という一見独立した項目を中心点に固め、グローバルな視点で改革に臨むことであります。
脳卒中、すなわち脳血管疾患の患者の治療は約三カ月で終了いたします。次は、リハビリテーションの段階、すなわち機能回復訓練のレベルで対処すべきなのに、中には、何年も血管拡張剤投与などの治療が続いても認められているのであります。アメリカでは、こんな治療は意味がないとされ、保険診療は認められません。我が国の脳血管疾患の発生はアメリカの五倍近くもあり、健保財政に大きく響いております。こうした矛盾をなくすために、医療の標準化、診断群別包括支払い方式、DRG—PPS導入を考えるべきであります。
麻痺の部位、程度、症状などを複合させ実態を把握する方法、DRGの採用が、アメリカでは、医療の標準化に有益であり、在院日数の短縮、診断名と処置の記載が正確になったとされております。日本に適したDRG方式を確立し、病名主義一辺倒から脱却することが健保財政に大きく貢献するのであります。厚生大臣、いかがでございましょうか。
厚生省健康政策局のもとに設置されましたカルテ等の診療情報の活用に関する検討会は、公表した報告書において、医療従事者は患者の求めがあった場合、治療効果に悪影響が明らかな場合を除いて診療記録またはこれにかわる文書を開示すべきであるとの見解を明らかにし、それを医療従事者の義務として法律化すべきだと提言いたしました。この提言を受けて、厚生省は法律化に向けて具体的作業に入る責任があると考えておりますが、厚生大臣は提言を率直に法制化する意思がおありでしょうか。
国民福祉委員会で私の質問に対し、百二十六万床のうち約十九万床を療養型にするという答弁を厚生省がされたことがありますが、今回の法改正には急性期病床という概念が消えてしまっています。
急性期病床という医療の中核がいわゆる慢性期を扱う療養型と混合している病院が多く、設備がそのためむだになり、医療費合理化の妨げとなっていることは周知の事実であります。
仮に、十年間で在院日数を半減させ、二十日になったとするならば、単純な計算で約四十万ベッドが余剰となります。現在の世界の入院平均値の十二日になったとするならば、約六十万床が余剰となり、少なくともその中から余剰の五十万床は慢性期病床にして残りを急性期病床にするというぐらいの決断を持つべきであります。
改正案では、病床区分はあっても目標の比率は全く見られません。厚生省は、区分だけで目標を持っていないのでありましょうか。厚生大臣にお尋ねいたします。
以上述べましたように、今回の改正案は、健保法、医療法ともに抜本改革の視点を欠き、国民への一方的な負担を強いるものであり、到底国民の賛成が得られないことを申し添えて、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕