緒方靖夫の発言 (本会議)
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○緒方靖夫君 私は、日本共産党を代表して、健康保険法等の一部改正案及び医療法の一部改正案について質問いたします。
初めに、先日の与党三党による衆議院厚生委員会での強行採決に強く抗議するものです。慎重審議を求める国民の声を踏みにじり、国民の命と暮らしにかかわる重大な法案をわずかの審議でごり押しするやり方は断じて許されません。日本共産党は、このことを厳しく指摘するとともに、本院での徹底審議を求めるものです。
十月から六十五歳以上のお年寄りの介護保険料徴収が始まりました。この保険料負担に対し、今、全国で苦情や怒りが広がっています。この介護保険料の負担に加え、さらに定率制の導入で高齢者への医療費自己負担を強いるのが今回の改正案です。
政府は、高齢者は豊かだなどと強調していますが、とんでもありません。高齢者の七六%が住民税非課税であり、四割を超えるお年寄りが月四万円台の年金で生活している、これが現状です。介護保険料徴収や利用料負担を合わせれば、今回の医療費負担の上乗せはまさに二重の苦しみです。
私は、東京都内の病院で患者さんと懇談いたしました。そこで、老人医療費は以前は無料だったのに、一体どこまで負担せよというのか、あるいは、人間だれでも年をとり、体は弱くなる、これでどうやって生きていけというのかという怨嗟の叫びを聞きました。
総理の耳には、こうした苦しみ、悲鳴は届いていないのですか。医療費の負担増がお年寄りの厳しい生活にさらに打撃を与えるものにならないのか、総理の認識をしかと伺いたいと思います。
改正案は、七十歳以上の患者負担に原則として一割の定率負担を導入するものです。現在、お年寄りの医療費は、外来で一回五百三十円、入院で一日千二百円です。そうした定額負担となっております。ところが、今回の改正案で定率負担が導入されれば、病院で検査や治療を受けても医療費が幾らかかるかわからない。自己負担額も会計の窓口に行くまでわかりません。懇談した患者さんは、買い物をするときに値段がわからないで買い物をする人はいない、そう言っておりましたが、支払い額がわからないほど不安なことはないではありませんか。結局、重症の場合や所得の低い患者ほど診療を手控えざるを得ず、診療抑制や中断を招き、お年寄りを病院から遠ざけることは必至ではありませんか。総理の答弁を求めます。
森首相、あなたは、今回の定率負担について、高齢者に無理のない範囲で現行制度とほぼ同じ水準の負担であると答弁されています。しかし、実態は違います。全国保険医団体連合会の試算によれば、現行の定額負担と比べると、通院、入院ともに平均で一・五倍の負担増となります。
白内障手術は、かつて全額自己負担でしたが、大きな国民運動の成果で、九二年四月から保険で安く受けられるようになり、お年寄りから世の中が明るくなったと大変喜ばれました。しかしこの費用も、手術で八日間入院した場合、現行の定額制であれば平均九千二百三十円、それが三万五千八百七十円と、約四倍の負担増となります。このことは、津島厚生大臣も審議の中で、入院期間が短いため、負担が非常に上がることは事実だと、現行の定額負担と比べて大幅な負担増になることを認められております。まさにお年寄りいじめそのものではありませんか。これでなぜ現行制度とほぼ同じ水準の負担などと言えるのですか。総理の明確な答弁を求めるものであります。
さらに、改正案は七十歳未満の高額療養費についても見直しを提案しております。高額療養費制度は、患者の負担が重くなり過ぎないように上限を設け、それを超える分の支払いを償還する制度です。現在の上限額は月六万三千六百円で、それ以上の患者負担はありません。ところが、改正案は、それに加えてかかった医療費に応じた額の一%を加算する仕組みなんです。これでは医療費がふえた分に応じて患者負担が無制限に増加する歯どめなき負担増となるではありませんか。総理の答弁を求めます。
さきの衆議院厚生委員会で参考人に立った連合の代表は、政府の高額医療給付を受ける人のコスト意識を高めるためという言い分に対して、心ならずも重病になった患者にコスト意識を持てというのかと強い怒りを表明いたしました。高額医療を受けている患者も家族もそれだけ重い病苦と闘っているのです。こうした重症者に制限なしに高い医療費負担を課すことは、行政による一種のペナルティーにほかならないではありませんか。総理の答弁を求めるものであります。
政府は、高齢者の医療費が急増し健保財政が危機であること、このことを制度改正の理由に挙げております。しかし、健保財政悪化の大きな要因は、本来果たすべき国の負担分をどんどん削ってしまったことにあります。一九八〇年から九七年までの負担割合を見ると、国庫負担は三〇・四%から二四・四%と、今の金額で年間何と一兆七千億円も減っています。健保財政の危機と言うなら、患者負担をふやすのではなく、国庫負担をふやすことこそ求められているのではありませんか。総理の答弁を求めます。
重大なのは、政府が今回の改定を抜本改革の第一歩と位置づけていることです。自民党などの与党医療保険制度改革協議会が九七年にまとめた「二十一世紀の国民医療」では、被用者保険の三割負担や大病院の外来五割負担を導入する案が打ち出されております。改革案は、まさにその第一歩としてもくろまれたものです。国費を減らし、そして国民負担への転嫁を強いる改正案は断固廃案とすべきであります。
次に、医療法の改正案についてお尋ねいたします。
日本医療労働組合連合会の調査では、看護婦さんの四人に三人が慢性疲労を訴え、七割が健康に不安を感じており、さらに月九回以上の夜勤が二割を超え改善の兆しが見えないなど、看護婦さんの労働条件はまさに依然として深刻であります。なぜこうした事態が起きているのか。それは看護婦さんの人数が圧倒的に少ないからであります。欧米諸国を見ても、病床当たりの看護職員の数は、日本に比べドイツで二倍以上、アメリカで五倍となっております。しかし、今回の改正案は、病院のベッドを一般病床と療養病床とに分け、療養病床を患者六人に対して看護婦一人という、世界に例を見ない低水準の基準を法定化するものであります。これでは、看護職員の労働条件の改善など到底図ることはできないではありませんか。答弁を求めます。
現在、精神病床の位置づけについて、特例として患者六人に対して看護婦一人など、極めて劣悪な配置基準を決めております。しかし、こうした精神科特例が日本の精神科医療をゆがめてきたことは明らかであります。我が党は、精神科特例の廃止を一貫して要求してまいりました。今こそ、精神科医療費の改善とともに、精神科特例の廃止に足を踏み出すべきではありませんか。答弁を求めます。
相次ぐ医療費の負担増は、国民の健康づくりにも逆行し、医療費の抑制には決してつながりません。国民の命を守るためにも、税金の使い方を医療、福祉、介護など社会保障重視に転換することを強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕