小宮山洋子の発言 (本会議)

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○小宮山洋子君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題になりました健康保険法等の一部改正案及び医療法等の一部改正案について、反対の立場から討論を行います。
 まず、医療法、健康保険法の抜本改革の約束を再三先送りし、国民にツケだけを回す政府のやり方に多くの国民が怒りを持っていることを申し上げないわけにはいきません。特に、一九九七年の改正のときに、抜本改革を今年度、二〇〇〇年度に行うことを法律の附則に明記してあり、これは国会の意思であり、政府の公約であったわけです。にもかかわらず、またもや改革なき負担増を行おうとすることは到底容認できません。借金を重ねた大切な財源をばらまき、本当に国民が願っている医療などの充実による暮らしのセーフティーネットをつくり直していくことは先送りをしている自民党を中心とする森政権のやり方に国民が愛想を尽かしています。支持率が一〇%台の森総理には早くやめていただいて、国民の願う政治に変えていくべきであることを冒頭申し上げ、この法案に対する反対の理由を述べます。
 政府・与党は政府提出のこの法案を抜本改革の第一歩であるとしていますが、再三約束した抜本改革の目指すもの、方向も示されていないのに、どうして正しい方向への第一歩だと言うことができるのでしょうか。改革の理念のないつじつま合わせにすぎないことは、医療保険福祉審議会の答申で、急速な高齢化の進展に伴う医療費の高騰に対する有効な対応がなされておらず、当面の財政対策に終わっていると指摘されていることからも明らかです。これが基本的な反対の理由です。
 健康保険法の改正案に反対する第一の理由は、二年前に導入し、政府も薬剤の量が減るなど効果があったとしている七十歳以上の高齢者の薬剤一部負担を廃止し、定率一割負担を導入するという一貫性のない負担の求め方になっている点です。
 高齢者の薬剤一部負担の廃止は、日本医師会の意向を受けて自民党が打ち出したものです。このための財源や、同じくことし四月に政治決着した診療報酬の引き上げによって必要になった財源を患者負担、国民負担増によって賄おうという改革の理念のないつじつま合わせにすぎず、抜本改革の第一歩とはとても言えないものです。
 そして、今回の改正は、定率一割の導入に加えて、医療機関が二百床未満か二百床以上かで異なる上限額、診療所の定率、定額の選択、院内処方か院外処方かによって、同じ医療費でも自己負担額が十四通りもあるという大変複雑なものになっています。高齢者はどのようにして判断すればよいのでしょうか。政府は、市役所の窓口でわかるようにするなどと言っていますが、病気の高齢者にわざわざ市役所まで行けというのでしょうか。
 このように小手先で制度を変えるのではなく、老人保健制度にかわる新たな高齢者医療制度の創設に全力を挙げることが必要なのです。
 反対の第二の理由は、高額療養費制度の見直しで、重病にかかった患者の負担をふやそうとしている点です。
 この改正案には、年収九百万円以上を上位所得者として負担の限度額を大幅に引き上げること、また限度額を超えた医療費の一%を上乗せすることが盛り込まれています。この見直しは、自己負担を軽減するために導入された高額療養費制度の根幹にかかわる変更と言えます。高額の医療費がかかる病気になった人に、その分負担は多くても仕方ないというのでは二重の苦しみになってしまいます。保険料は所得に応じて、給付は公平にとする医療保険の基本理念を揺るがすもので、認めるわけにはいきません。
 このほかにも、患者は、保険外負担として、おむつ、テレビ、理髪などの日常生活に必要なサービスの費用、差額ベッド代、中には入院協力費などのあいまいな言い方で保険運用外の料金の負担を強いられていますが、その実態も明らかでないのが現状です。
 反対の第三の理由は、保険料率の設定の上限の見直しで、介護保険料を別建てにすることによって実質的な保険料の引き上げになっている点です。
 政府は当初、介護保険導入により社会的入院などが介護保険に移るので、医療、介護の両保険の料率を合わせても上限内におさまり、介護保険料率の上昇を抑えるためにも上限枠が必要だと説明をしてきました。ところが、見通しどおりにいかなくなると、一般保険料率のみを対象とするよう改めようとしています。このような場当たりの改正を繰り返し、医療保険制度に対する信頼を失わせている政府の責任は免れません。
 次に、医療法の改正案について申し上げます。
 日本の医療提供体制は諸外国に比べて質が劣っていると言わざるを得ません。多い病床数、長い入院期間は良質の医療が提供されていないからにほかなりません。医療の質の向上が改正のねらいであったはずです。ところが、考えられていたのに法案に盛り込まれていないことが多くあります。
 第一に、看護基準の見直しですが、現在の患者四人に看護職員一人から、三人に一人に引き上げられることになっていますが、当初の二・五人に一人にする案に日本医師会が強く反対して、三人に一人になりました。現在の基準は五十年以上も前の一九四八年に定められたものです。二人に一人か、少なくとも二・五人に一人に引き上げられるべきだと考えます。また、病床の面積も、既設のものについては野戦病院の基準のままの一病床当たり四・三平方メートル以上という狭さが残されることになっています。
 第二に、当初の案では、患者の状態にふさわしい医療を適切な療養環境のもとで効率的に提供する体制を確保するために、現在の一般病床を急性期病床と慢性期病床に区分することを基本的な考え方にしていました。ところが法案では、急性期病床、慢性期病床という名称を、一般病床、療養病床に変更し、それぞれの定義も不明確になってしまっている点も納得できません。
 第三に、カルテ開示の法制化はなぜ見送りになったのでしょうか。多発する医療事故によって、国民の医療に対する不安と不信が高まっています。患者の知る権利の観点からも、カルテ開示の法制化は早く実現する必要があります。
 第四に、広告規制は緩和されるべきです。広告できるものを定めるのではなく、虚偽広告、誇大広告などを除き、原則自由にすべきです。また、広告できる事項として、中立的な医療機能評価機関が行う医療機能評価の結果とされていたものが、医師会などが出資している財団法人日本医療機能評価機構が行う評価のみにされているのは問題です。
 最後に、抜本改革の必要性と緊急性は今回の法案審議の中で厚生大臣も再三述べられました。参考人から、このままでは保険制度そのものが崩壊してしまうという意見が述べられ、社会保障制度審議会、医療保険福祉審議会などからも、再三、緊急的な措置ではなく抜本改革がなければ国民の理解は得られないという答申が出されています。
 厚生大臣は、委員会審議の中で、来年度の国会に改革案を提出することを約束されましたが、二〇〇二年の抜本改革を今度こそ広く国民の声も聞きながら実現するために、来年の通常国会には改革案を提出するよう政府が責任を持って取り組むことを強く要望して、私の反対討論を終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 115015254X01520001130_022

発言者: 小宮山洋子

speaker_id: 492

日付: 2000-11-30

院: 参議院

会議名: 本会議