町村信孝の発言 (文部科学委員会)

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○町村国務大臣 第百五十一回国会におきまして各般の課題を御審議いただくに当たりまして、私の所信を申し上げます。
 初めに、去る二月十日にハワイ・ホノルル沖で発生いたしました、愛媛県立宇和島水産高等学校実習船えひめ丸の、米海軍原子力潜水艦グリーンビルとの衝突、沈没という大変痛ましい事故について御報告を申し上げます。
 まず、今回の事故によって被害を受けられた皆様、御家族、関係者の方々に心よりお見舞いを申し上げるとともに、今なお行方不明となっておられる方々の安否を心より案ずるものでございます。
 その後の調査により、えひめ丸の船体は、衝突現場から約九百メートル離れた水深約六百メートルの海底にあることが確認されました。
 日本政府としては、当初から米国政府に対し、人命尊重を第一とした救助活動の推進、事故原因についての早急な解明と情報の提供、えひめ丸引き揚げに向けた作業の推進を強く要請しており、米国側としても可能な限りの努力を払う旨繰り返し表明されているところであります。また二月二十日には、えひめ丸引き揚げ問題に関する関係省庁連絡会議を開催し、米国との協議のため、既に専門家を派遣いたしました。
 文部科学省としても、事故発生後直ちに対策本部を設置するとともに、現地に職員を派遣し、関係機関との連絡、情報収集や、生徒、保護者、学校関係者等の支援に努めてきたところであります。
 特に、事故に遭った生徒を初めとする生徒や教員等の心のケアにつきましては、愛媛県教育委員会が、同校に心のケアに詳しい職員を派遣したり、臨床心理士を常駐させるとともに、同校の養護教諭、保健所、愛媛大学教育学部の専門家等と連携をとり対策を講じているところですが、文部科学省としても、県教育委員会からの要望に応じ、迅速かつ積極的な支援を行ってまいります。
 また、今回の事故を踏まえ、改めて、全国水産高校実習船運営協会を通じ実習船管理校等に対し、特に入出港の際の沿岸航海において航行に十分注意するよう指導したところであり、さらに、ハワイに寄港する実習船の安全の確保について米国政府に要請するなど、引き続き安全の確保に努めてまいります。
 文部科学省としては、今後とも、関係者の思いを十分に受けとめ、可能な限りの対応をしてまいる所存でございます。
 私は、昨年十二月五日に文部大臣並びに科学技術庁長官を拝命いたしましたが、本年一月六日、中央省庁再編により、初代の文部科学大臣に就任いたしました。
 二十一世紀は、経済社会が急速に進展し、人類が克服しなければならない数多くの諸課題に直面する激動の時代になることが予想されます。その中で我が国が目指すべき方向は、主体性を持って国際社会に貢献し、世界から尊敬される、心の豊かな美しい国家の実現であります。また、少子高齢社会においても、国際競争力を維持し、経済社会の持続的発展を達成するための人材の養成、知的資産の創出を進めることこそが我が国の存立基盤であります。
 私は、これまで文部省が担ってきた教育、学術、スポーツ、文化の振興と、科学技術庁が担ってきた科学技術の振興に関する施策を一体的かつ迅速に進め、激動の時代の中、子供たちに夢を与え、我が国の明るい未来を切り開いていくことが、新しい文部科学省の使命であると考えております。
 このような認識のもと、以下に申し述べます事項についての施策を総合的に展開してまいります。
 我が国の教育は、第二次世界大戦後、機会均等の理念を実現し、国民の教育水準を高め、経済社会の発展の原動力になりました。しかし、現在の教育の状況に目を向けると、国民や社会の教育に対する信頼が大きく揺らぎ、我が国の教育は危機に瀕しています。
 新世紀を迎えた今、国家百年の計である教育を根本に立ち返って見直し、我が国の進路に誤りなきを期す必要があります。
 昨年末、教育改革国民会議が最終報告を取りまとめられました。文部科学省としては、その提言も踏まえ、先ごろ、二十一世紀教育新生プランを策定いたしました。今後、これに基づき、教育の新生を目指し、学校がよくなる、教育が変わるという実感が持てるような教育改革を迅速かつ果断に実行してまいります。
 今国会では、まず緊急に対応すべき事項として、一連の教育改革関連法案や、関連予算を盛り込んだ平成十三年度予算案の成立に全力を尽くしてまいります。
 また、中央教育審議会においては、新しい時代における教養教育のあり方について引き続き御審議いただくほか、社会奉仕体験活動の充実や今後の教員免許制度のあり方等について御検討願いたいと考えております。
 新しい時代にふさわしい教育基本法の見直しについては、教育改革国民会議最終報告を踏まえ、文部科学省内で検討を行った上で、中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深めるなど、しっかりと取り組み、成果を得てまいります。
 初等中等教育については、平成十四年度からの完全学校週五日制のもと、各学校で特色ある教育を展開し、子供たちの基礎学力の向上を図るとともに、みずから学び、みずから考える力などの生きる力がはぐくまれるよう、新しい学習指導要領のねらいの徹底とその実現に努めてまいります。
 また、人間性豊かな日本人を育成するため、社会奉仕体験活動や自然体験活動等の一層の充実を図るための所要の法改正をお願いするなど体験活動の充実に努めるとともに、心のノートを全児童生徒に配付するなど、道徳教育の充実を図ってまいります。さらに、子供たちの問題行動等に対応するため、スクールカウンセラーの配置の拡充など教育相談体制の充実を図るほか、出席停止制度の改善のための所要の法的整備を図る所存であります。
 また、実践的コミュニケーション能力の一層の育成を目指した外国語教育の充実や、二〇〇五年度までに全国の学校のすべての教室にコンピューターを整備しインターネットにアクセスできる環境を実現することなどを目指したミレニアム・プロジェクトの推進を図ってまいります。
 このほか、中高一貫教育校や単位制高等学校、総合学科など特色ある高等学校の設置促進、コミュニティースクール等の新しいタイプの学校についての検討、高等学校入学者選抜の改善、特別支援教育の振興、人権教育、環境教育の推進、読書指導の充実、教育内容・方法の多様化に対応した学校施設の整備等を推進してまいります。また、人間形成の基礎が培われる幼児期の重要性にかんがみ、幼児教育の充実に努めてまいります。
 教職員定数の改善につきましては、平成十三年度から新しい教職員定数改善計画をスタートさせ、基礎学力の向上ときめ細かな指導のため、基本的教科について二十人授業を可能とするなどの改善を行いたいと考えており、そのための所要の法的整備を図ってまいります。
 教員の資質向上につきましては、養成、採用、研修を通じた施策の充実、特に教員の社会体験研修の拡充や、社会人の一層の活用を促進してまいります。児童生徒への指導に当たることが不適切な教員については、分限処分など、迅速かつ適切な人事上の措置が講じられるよう取り組むとともに、教員以外の職に円滑に異動させるための方途についても所要の法的整備を図る所存であります。
 また、学校の自主性、自律性を確立し特色ある学校づくりを促す観点から、通学区域の弾力化を進めるとともに、校長の裁量の拡大を図ります。また、学校評議員制度の一層の活用など地域に開かれた学校づくりを推進するとともに、法改正を含め、教育委員会の一層の活性化を促してまいります。
 このほか、三宅島の噴火等により被害を受けた地域の子供たちの教育と心のケア等の支援を引き続き進めてまいります。
 高等教育については、社会の多様な期待や要請にこたえつつ、各大学がその役割を適切に果たし、国際的競争力のある個性輝く大学づくりができるよう、これまでも教育研究システムの柔構造化や、責任ある意思決定と実行を可能とする組織運営体制の整備、第三者評価を含む多元的な評価システムの確立等に努めてきたところであります。
 今後も、競争的環境のもとで、大学の自主性、自律性や国際通用性をさらに高めるため、昨年十一月の大学審議会答申「グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について」などの提言も踏まえつつ、今国会に、国立大学の講座等の組織編制の柔軟化や大学への十七歳入学、大学院への学部三年修了時からの入学の促進についての関係法律の改正をお願いしたいと考えております。また、教育研究拠点としての大学院の重点的整備、大学評価・学位授与機構による第三者評価の実施を進めるなど、さらなる大学改革に全力で取り組んでまいります。
 なお、大学入学者選抜の改善については、昨年十一月の大学審議会答申「大学入試の改善について」における提言を踏まえつつ、評価尺度の多元化や受験生の能力、適性等の多面的な判定がさらに進むよう、一層の工夫改善に努めてまいります。
 私立学校については、私立学校振興助成法の趣旨にのっとり、教育改革の推進や学術研究基盤の強化に配慮しつつ、私学助成の充実に努めてまいります。また、学生が自立して学べるよう、育英奨学事業の充実を図るとともに、学生生徒の就職指導の充実、インターンシップの拡充などに最大限努力してまいります。
 人々が生涯にわたり自己実現を図っていくためには、生涯のあらゆる時期に学習機会を選択して学ぶことができ、その学習の成果が適切に評価される生涯学習社会を築いていくことが極めて重要です。このため、情報社会に対応した生涯学習の環境整備、大学等への社会人の受け入れの促進、放送大学の充実、専修学校教育の充実等をさらに進めてまいります。
 また、学校教育及び社会教育を通じた男女共同参画社会の形成に向けた施策の推進に努めるとともに、幼稚園における子育て支援など、少子化対策についても積極的に施策を展開してまいります。
 青少年を取り巻く状況が著しく変化する中で、未来への夢や目標を抱き、豊かな社会をつくる営みに積極的に取り組むことのできる青少年を育成するため、子どもセンターの全国展開など全国子どもプラン緊急三ヶ年戦略の推進、今国会で関係法律の改正をお願いしております子供の体験活動等の振興のための子どもゆめ基金の創設、青少年を取り巻く有害環境への対策などに取り組んでまいります。さらに、運動部活動や地域におけるスポーツ活動の充実に努めるとともに、児童生徒への健康相談活動、薬物乱用防止教育、性教育、食に関する指導など、健康教育の一層の充実に取り組む所存です。
 また、すべての教育の出発点である家庭教育の充実を図るため、子育て講座の開設や親の悩みや不安に対する相談体制の整備など、家庭教育の支援を推進してまいります。
 さらに、家庭や地域の教育力向上のための法改正をお願いするとともに、異世代間の交流の推進、PTAや青少年団体の支援などの施策を積極的に展開してまいります。
 科学技術と学術は、我々に新しい発見や知識をもたらし、それをさまざまな問題の解決やより豊かな暮らしのために活用することを可能とします。我が国が国際的な競争環境の中で持続的に発展し、国民の生活水準を向上させていくとともに、その成果を世界に向けて発信し、人類共通の問題解決に貢献していくためには、我が国の最も貴重な資源である頭脳によって世界をリードする科学技術創造立国を目指して、たゆまぬ努力をしていくことが必要であります。
 現在、総合科学技術会議において、二十一世紀における我が国の科学技術振興の基本となる総合戦略が検討されており、三月末には、新しい科学技術基本計画が策定される予定であります。文部科学省といたしましては、本計画に基づき、政府における研究開発の主体を担うという立場から、科学技術と学術のそれぞれの長所を生かしつつ、両者の調和と融合を図り、創造性に富んだ世界最高水準の成果を生み出すための研究開発を総合的に推進してまいります。
 このため、科学研究費補助金を初めとする競争的資金の拡充などによる競争的研究環境の整備、若手研究者の活躍機会の増大、産学官連携の強化、研究成果の社会還元の推進、研究評価の充実と透明性の確保、大学などの研究施設の重点的整備など、我が国の科学技術システムの改革に努めてまいります。また、基礎研究を推進するとともに、地域の資源やポテンシャルを活用した、地域における科学技術の振興のための施策を展開してまいります。
 二十一世紀は生命科学の世紀と言われるように、生命についての理解は、医療、食料、環境等の分野に大きな変革をもたらすものです。我が国がこれらの分野でリーダーシップを発揮し、健康で活力ある社会を実現するため、ゲノム科学、免疫・アレルギー・感染症研究、脳科学等のライフサイエンスを重点的に推進してまいります。なお、生命倫理の問題について、人の尊厳の保持等に重大な影響を与えるクローン人間の産生の防止を初めとして、国民の幅広い意見をくみ上げつつ、慎重に取り組む所存であります。
 また、あらゆる科学技術の基盤となるナノテクノロジー・材料、社会全体のIT革命を先導する情報科学技術、地球温暖化などの環境問題の解決に資する研究開発などを重点的に推進してまいります。さらに、国民の安全な生活の確保にとって重要な地震調査研究などの防災科学技術の研究を積極的に推進してまいります。
 宇宙の研究、開発、利用につきましては、昨年十二月に宇宙開発委員会が策定した我が国の宇宙開発の中長期戦略に基づいて、我が国の次期主力ロケットであるH2Aロケットの開発などを着実に進めてまいります。
 原子力につきましては、昨年十一月原子力委員会が策定した原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画を踏まえ、加速器、レーザー、核融合等の先端的な研究開発、放射線利用、「もんじゅ」による高速増殖炉サイクル技術の研究開発などを、地元住民を初めとする国民の皆様の理解と協力を得つつ、着実に進めてまいります。
 原子力の研究開発及び利用に当たっては、安全の確保が大前提であります。一昨年の臨界事故による教訓を十分に踏まえ、厳正な規制と管理の実施、緊急時対応体制の強化、安全研究の推進などにより、所管の施設の安全確保に万全を期してまいります。
 独創的で創造的な研究成果を生み出すためには、将来の科学技術を担う人材の養成を積極的に推進することが重要です。このため、日本科学未来館などの場を積極的に活用し、青少年の科学技術に対する関心の喚起や創造性の涵養、国民の科学技術に対する理解の増進を図ってまいります。また、ITを活用した科学技術、理科教育の推進を図るとともに、若手研究者の流動化の促進等による優秀な研究者の養成確保、一流の技術者を養成するための教育システムの構築などに努めてまいります。
 以上の施策を実行するためには、政府研究開発投資の拡充が必要不可欠であります。昨年十二月に科学技術会議が出した科学技術基本計画に関する答申では、政府研究開発投資の総額について、対GDP比一%を目指し、平成十三年度から五年間で二十四兆円とすることが必要とされています。新しい科学技術基本計画に沿って、投資の重点化、効率化、透明化を図り、研究開発の質の向上に努めつつ、政府研究開発投資の拡充に全力を挙げて取り組んでまいります。
 明るく健全で活力に満ちた社会の形成のためには、スポーツの振興が重要であります。このため、昨年九月に策定したスポーツ振興基本計画に沿って、国民のだれもが日常的にスポーツに親しむことができる生涯スポーツ社会の早期実現や、本年十月に開所予定の国立スポーツ科学センターの活用などによる競技者の育成、強化など、競技力の向上に取り組んでまいります。また、二〇〇二年ワールドカップサッカー大会の開催、二〇〇八年夏季オリンピックの大阪招致の成功に向け努力してまいります。
 さらに、新たな財源として期待されるスポーツ振興くじが健全な制度として社会に定着するよう、十九歳未満の者に対する販売禁止措置の徹底を図りつつ、本年三月からの全国販売に向けて着実に準備を進めてまいります。
 文化は国の存立基盤であり、心豊かで活力ある社会を築いていくためには、我が国の特色ある伝統文化を大切にするとともに、文化の一層の振興を図り、文化大国の実現を目指していくことが重要です。このため、地域における個性的な文化の創出を支援するとともに、芸術創造活動の活性化、文化財の保存、活用、国語の改善、普及、文化を支える人材の養成確保、美術館、博物館等の整備充実などに積極的に取り組んでまいります。
 また、著作権制度については、情報通信技術の発達や国際的動向を踏まえつつ、今後ともその充実に努めてまいります。宗教法人制度については、信教の自由に配慮し、今後とも円滑な宗務行政の遂行に努めてまいります。
 さきの施政方針演説において、総理が「地球の世紀」と述べられたように、二十一世紀はあらゆる活動のボーダーレス化が進み、ますますグローバルな視点が必要となってまいります。このため、ユネスコやOECDなどの国際機関を通じた協力など、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化の各分野において、国際交流・協力及び国際貢献を積極的に進めてまいります。
 昨年の九州・沖縄サミットにおいては、今後十年間で学生、教員等の交流を倍増する旨がうたわれたところです。これに対応して、未来からの大使である留学生の受け入れ十万人計画の達成に向け、留学生に対する支援や国際研究交流大学村の建設など、留学生交流のための総合的な施策を推進してまいります。
 また、海外の優秀な研究者の積極的な受け入れや、そのための宿舎の整備などの環境整備を進めるとともに、国際宇宙ステーション計画などの国際協力プロジェクトに積極的に参加し、科学技術・学術分野における国際的な活動を積極的に展開してまいります。
 さらに、海外子女教育、帰国児童生徒教育や外国人児童生徒教育の充実、教職員交流の充実、我が国の文化の海外発信、日本語教育の普及、海外の貴重な文化財の保存修復への協力などに努めてまいります。
 以上、私の所信を述べさせていただきました。
 さきにも申し上げましたとおり、教育改革の推進を初めとして、国の将来にかかわる重要課題が山積しております。文部科学省といたしましても、最大限の努力を払ってまいりますが、委員各位におかれましても、特段の御理解と御協力を賜りますよう心よりお願いを申し上げます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 町村信孝

speaker_id: 34906

日付: 2001-02-23

院: 衆議院

会議名: 文部科学委員会