土井たか子の発言 (本会議)
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○土井たか子君 社会民主党・市民連合を代表いたしまして、森内閣総理大臣の施政方針演説に対して私は質問いたします。(拍手)
どうも本会議で総理大臣の御答弁を聞いておりますと、メモの棒読みなんですね。長い答弁でなくて結構ですから、どうかお心のこもった御自身のお言葉での答弁をお願いします。(拍手)
国民が森総理大臣から聞きたかったのは……(発言する者あり)静かにしてください。まず次の二つであります。
第一は、ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団、KSDによる自民党を中心とする政界への大規模な資金工作について、真相をどのように解明し、その責任をどうとるおつもりか。そして第二は、外務省官僚による外務省、総理官邸の機密費流用疑惑について、真相をどのように解明し、その責任をどうとるおつもりか。この二つです。
今国会最大の課題であるとだれもが考えているこの二つの疑惑について、総理の施政方針はわずかに四、五行ずつ、しかも、その内容たるや、残念のきわみなどとまるで人ごとのようであります。そして、昨日のこの本会議での御答弁でも、捜査当局による真相解明の進展を見るなどと相変わらずで、みずからの責任を徹頭徹尾放棄しておられる。それでだれが納得しますか。だれが政府を信頼しますか。
KSDは、民法の規定によって、特定の団体や職域や個人と結びついてはならないとされている公益法人です。その公益法人が、自分でつくった任意団体をトンネルにして、全国の中小企業の経営者たちから集めたお金の一部を特定の政党、特定の政治家に提供した。そして、そのことによって、国政に対する影響力を強め、利益を図り、国の政策をねじ曲げた疑いが極めて濃いというのが今回の事件であることは御承知のとおりです。
一説では、九一年から八年間で二十億円以上のお金がKSDから政界に流れ込んだと言われております。受け取ったのはほとんど自民党の方でしょう。一体、何のためにこれほど巨額のお金が自民党に提供されたのでしょうか。
KSDがつくった中小企業国際人材育成事業団、アイム・ジャパンのスピード認可や、外国からの研修生の在留資格基準の改正、埼玉県行田市のものつくり大学の設置などがその成果ではないかと強く疑われております。
中でも、小渕前総理の第百四十七回通常国会における施政方針演説には、ものつくり大学という固有名詞が突然登場し、この大学が国家的事業であるかのような錯覚さえ人々に与えました。さらに、この大学には八十五億円もの公費が投入されることになっており、KSDからしてみれば、自民党への巨額の資金提供はまさに絶大なる効果があったと言えるでしょう。
これまで社民党は、二回にわたってKSD事件にかかわるホットラインを開設いたしまして、電話とファクスで四百五十件以上の国民の皆さんの声を聞きました。
その中には、多くのKSD会員の中小企業の経営者がおられます。自分たちは労働省が監督する公益法人の共済組合に加入し会費を払ってきたつもりなのに、その会費が自民党や特定の議員への献金に化けてしまうなんて、まるで詐欺ではないかという声がありました。また、もし自分が知らないうちに自民党の党員にされているなら告訴したいという方もいらっしゃいました。ニュースを聞いて、一番の問題は、村上参議院議員や小山前参議院議員の選挙の際に無断で党員にされ、党費の立てかえにKSDの費用が使われたということくらいひどい話はないとはっきり言われる意見もあります。
一議席成って民主政治枯る。一将功成りて万骨枯るという言葉がありますが、私は、一議席成って民主政治枯る、こう言わなければならないと思うんですよ。
これらの声を総理はどう聞かれますか。これはあなたが総裁をされている自民党の問題なんです。政治家一般の自覚の問題などでは断じてありません。
自民党は一体何のために政治をしていると言えるんでしょうか。古関KSD前理事長は、自分は百人の自民党議員を動かせると豪語していたそうではありませんか。自民党は、KSDという一法人のために質問し、法律を改正し、そして、施政方針演説まで書きかえるんですか。「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」これは憲法十五条ですが、この原則は自民党には通用しないのでしょうか。
疑惑がかかっているのですから、まずは自民党みずから党内を調査する、そうして真相を国民に明らかにする、謝罪して責任者を処罰するのが当たり前ではありませんか。党員名簿をチェックして、どれだけが本人の了承を得ていない架空の党員なのかを調べた上で、それぞれの方に対して謝罪する、そして返金することは考えないんですか。総理、自民党総裁としての責任が総理にはおありになると思いますよ。いかがですか。
また、KSDは、労働省、厚生労働省の監督下にありますけれども、わかっているだけでも十七名の労働省の天下り職員が在職しています。その他、警察庁、通産省、大蔵省、法務省、文部省OBが天下りしています。KSD関連のアイム・ジャパンには、これも十三名の労働省OBがいると言われており、外務省、法務省、警察庁のOBが理事などとして働いています。事務次官を含む労働省幹部にKSDから広くお歳暮が配られ、接待も行われていたことがわかっています。これでは、監督官庁が監督する官庁として機能していなかったということになるではありませんか。それどころか、KSDと癒着し、丸抱えされていたと考えざるを得ないではありませんか。乱脈を見逃したどころか、共犯だったのではありませんか。
もう一つ、社民党のホットラインでわかったのは、中小企業経営者のKSDへの入会が、銀行や信用金庫、信用組合など金融機関からの半ば強制的な強力な勧誘によるものが多いということです。退会しようとしたら金融機関からストップをかけられたという方もありました。金融機関とKSDには何か特別な関係があるのではないか、このような不審の声が非常に多いんです。
金融機関がかかわったことによってKSDの会員が急増して、現在のような百七万人もの規模になったことはよく知られています。KSDの肥大化と現在の問題を発生させた根源は金融機関にあったと言っても過言ではありません。この両者の関係はいかなるものなのか、金融庁など監督官庁はこの問題にかかわっていないのか、疑惑は尽きないのです。
特に村上参議院議員は、現在の自民党の実力者であって、森内閣の生みの親の一人でございます。そして、自他ともに認める改憲派のリーダーであって、KSD事件が発覚して辞任されるまで参議院の憲法調査会の会長でもありました。その村上議員の名は、党費立てかえにも、豊明議連にも、アイム・ジャパンにも、ものつくり大学にも、KSD事件のあらゆる局面に登場いたします。議員になること自体が古関前理事長と一体だったとさえ言われる村上議員が、改憲を大上段に語る背後で何をされていたんでしょうか。既に御本人が証人喚問に応じると言われていますが、常々私は村上議員を政治家としてはっきり物を言う人だと思っておりますから、じっくりと聞かせていただきます。(拍手)
それにしても思うのは、リクルート事件が明らかになってから既に十年以上がたちます。それこそリクルート事件は、政界、官界、財界を巻き込んだ一大汚職事件と言われ、それが九〇年代の政治改革議論の契機となったことは、国民の多くの皆さんが覚えていらっしゃるところです。そして、選挙制度を変えて、政治資金規正法を変えてきたのですけれども、結局は何の役にも立たなかったことが今回の事件で満天下に明らかになりました。政治は、国会は、この十年の長い間にわたって一体何をしてきたのでしょうか。国民に対して申し開きができるでしょうか。
これまで、繰り返し繰り返し社会民主党は、政治とお金の黒い関係を切り離すには企業・団体献金の全面禁止しかないと訴え続けてきました。自民党と連立にあったときも、連立が崩れればなおさらのこと、一たんは企業・団体献金の禁止を約束した自民党は、実施を次々と引き延ばして、言を左右にしてごまかして、ついにはほごにしてしまったわけです。そうした姿勢こそが今回の問題の温床だったとはっきり申し上げたいと思うのです。(拍手)
政治とお金のくされ縁を断ち切るためには、政治家個人とともに、政党に対する企業・団体献金も禁止しなければなりません。この問題は、日本の政治の根幹にかかわることです。森総理には、この問題に真剣に取り組む決意と準備がおありになるのでしょうか。そもそもどういう認識を持っておられるのか、お聞きしたいと思います。
第二は、外務省の松尾前要人外国訪問支援室長による機密費流用疑惑と言われている問題であります。
この事件にも、国民は仰天し、怒り、あきれ果てています。この政府は一体どうなっているんでしょうか。
外務省は、前支援室長を懲戒免職として横領罪で告発するとともに、同室を廃止、これから要人の訪問に際しても、支出理由と請求書、領収書の提出を義務づけることにしたと言われておりますが、余りにも当たり前のことです。というよりも、こんな当たり前のことがこれまでどうして行われてこなかったのでしょうか。
一般の事業所は、税法によって、どんなささいな支払いに対しても領収書が発行され、受け取った側には保管の義務があります。領収書のない支出は経費として認められません。今回の問題は、外務省のずさんさや、個人犯罪で終わらせるには余りにも大きななぞをはらんでいます。
前室長が見積もりを出し、現金を受け取ったのは総理官邸です。外務省からではありません。そして、精算書類と残った現金を提出したのも総理官邸に対してです。つまり、これは外務省だけの問題ではなくて、総理官邸の問題なんです。流用されたお金は官房機密費と言われるものであって、外交機密費ではありません。
河野外務大臣は、首相から厳重注意された、こうしたことが二度とないよう再発防止に取り組むように言われたと記者会見で述べられて、外務省幹部の処分を発表されましたけれども、話が逆ではありませんか。厳重に公金の流れを把握し、チェックしなければならない責任者は、むしろ総理御自身ではないんですか。なぜ、いつの間に外務省だけの責任にすりかえられたのでしょう。この問題は、あるいは前室長個人の横領事件であるかもしれません。しかし、その横領を生み出したのは、機密費という巨額で不透明なお金とそのずさんな運用であることは間違いないのです。
二〇〇〇年度予算では、外交機密費約五十六億円、官房機密費約十六億円が計上されています。そして、外交機密費のうち、本省分約二十億円のかなりの部分が官房機密費に上納とも言われています。また、そういう上納がなければ、外務省が今回の事件で処分されなければならないいわれはないということでしょう。
しかし、まず、いわゆる上納したのならば、財政法上の問題が生ずるんじゃありませんか。財務省の査定はどうなっているんですか。
森総理は、この疑惑について、はっきり言えば細川内閣から小渕内閣までの話でしょと言われたと報じられております。何を考え違いされているんでしょうか。八百億円以上の経費をかけて、史上最大のむだ遣いサミットと言われた昨年の九州・沖縄サミット準備事務局の次長は、ほかならぬ元要人外国訪問支援室長その人が横滑りしていたのではありませんか。この疑惑はあなたに向けられたものであることを肝に銘じていただきたいんですよ。九州・沖縄サミットにおけるロジスティックについて、総理は調査され、問題はないとお考えなんでしょうか。
また、外務省と官邸をまたがっている機密費がこれまで何に使われていたのかも問題です。こうした不祥事が表に出てきた以上、機密費の使途について徹底して調査する必要があると考えますが、総理、いかがでしょうか。
ところが、一部で、これは政界と官界との裏金であって国会対策や外遊のためのせんべつにも使われてきており、与野党の国会議員も同罪だから追及はできないなどと、まことしやかに語られているとは聞いてあきれます。恥ずべきことだと思います。
機密費をめぐる疑惑を徹底的に解明するためには、政治家もまた襟を正さなくてはなりません。国会対策やら、せんべつやら、もしそのような慣行があるならば、きっぱりとやめればいいんです。国会の運営がお金で動かされるなどとあっては、国会が廃れます。その決断は総理にありますか、どうですか。どういう認識を持っておられますか。
機密費は公金であって、公金は国民の税金です。巨額の使途不明金の存在は許されないと考えますが、どのように調査し、どのように国民に公表されますか。総理、そしてまた外務大臣にもこれをお尋ねいたします。
平和外交に国の存立をかけている我が国としては、この公金流用ぐらい危ぶまれる問題はありません。
アジア各国との友好ということを森総理は強調されました。河野外務大臣は外交演説で、近隣諸国との強い信頼、友好関係を一層強固なものとすることが我が国外交の第一の柱と述べられました。そして、歴史を踏まえ、歴史を忘れず、日中、日韓両国間の相互理解と相互信頼を一層発展させていきたいとも述べられました。
その上で、気になることがありますので、お尋ねしたいと思うのです。
このところ、中国や韓国に参りますと、日本で侵略戦争や植民地支配を肯定したり賛美する中学の歴史教科書があらわれそうだということで、大変心配されております。
私は、日本政府はアジア各国との友好を基調として、村山首相談話や日韓共同宣言、あるいは日中パートナーシップを尊重しているんだから、まさかそんな教科書があらわれるはずはない、また、歴史の真実に反するような教科書を日本政府も日本の国民も許すはずはないと答えているのですが、総理、どうお考えですか。今の検定制度が存在する限り、教科書の内容は政府の責任となるわけです。総理と河野外務大臣から御見解をお聞きしたいと思います。
私は、昨年の秋には韓国の金大中大統領と、そして、この年明け早々には中国の江沢民主席と会って、我が党の提唱している北東アジアの平和と安定のための非軍事多国間信頼醸成構想について話し合いをいたしました。外務大臣の言われた我が国外交の第一の柱、近隣諸国との強い信頼、友好関係は野党外交においても同じです。
ところが、総理の演説では、アジア太平洋諸国との友好の後、唐突に有事法制の検討が出てまいります。言うまでもなく、有事とは戦争を意味します。国民の生命財産を守るのは、政治の崇高な使命などと言われていますが、現代において一たん戦争になれば、生命や財産を守ることなどできないのはいわば常識に属します。戦争をしない、してはならないという憲法を持つ私たちがなぜ戦時法制を持たなければならないのか、国民は納得しないでしょう。
この問題は、もともと一九六〇年代の防衛庁の秘密研究、いわゆる三矢作戦計画の中で示された、戦時の国民の権利、人権の制限あるいは動員の計画に端を発します。国民の反発で長く中断されていたのですが、一九七〇年代の末の福田内閣のとき、防衛庁の中で正式に研究が開始されました。以来二十年間、研究はされながら政治日程に上ってこなかったのは、事柄がそれだけ重大で難しいからです。いわば憲法の停止を意味するような事柄です。
こんな重大な問題をなぜ今の時期に、しかも、わずか一行で施政方針の中に出されたのですか。このことは総理とそして外務大臣にもお尋ねいたします。
私は何回も申し上げました。政府が国民から本当の信頼を受けない限り、消費は伸びず、経済は回復せず、財政は破綻すると。そのため、政府は責任を自覚して、常に国民に語りかけてほしい、また、公正であることに目を配り、損なわれた信頼を回復することに努めなければならないと。
さて、新世紀のスタートにふさわしい予算と森総理の言われた二〇〇一年度予算案を見ましても、公共事業偏重、ばらまき予算が相変わらずです。あれほど問題になった公共事業予備費が三千億円計上されています。総選挙が行われた昨年度の、ばらまきが取りざたされた予備費は五千億円でした。総理は、いわくつきのこの予備費をどう使われるおつもりでしょうか。
この中で、国と地方の借金は来年度末には六百六十六兆円に膨れ上がるというではないですか。こんな政治的思惑による予算を政府・与党が続けていく限り、財政の健全化など図れるはずがないと申し上げましょう。
有明海のノリやタイラギ、アサリが絶滅の危機に瀕しているありさまは、景気策として政府がどんどんどんどん財政の赤字をふやしながら奔走した公共事業のツケとも言えましょう。
国民の消費がなかなか回復しない理由の一つには、間違いなく、途方もない巨額の財政赤字がいつ増税となってはね返ってくるかわからないという将来不安があるからです。
財政構造改革の実現へ議論を進めると言われた総理、隗より始めよです。この場で、公共事業予備費は返上しますと、予算案から削除するくらいの決断を示されたらいかがですか。
経済財政諮問会議について伺います。
総理は、施政方針演説で「男女共同参画社会の実現は、我が国社会のあり方を決定する重要課題の一つであり、」とおっしゃったはずなんですが、この諮問会議には女性が一人も入っておりません。このことをどうお考えでいらっしゃいますか。この認識で、選択制夫婦別姓の民法改正に積極的になれない総理の姿勢が透けて見えます。これでは総理のおはこ、新生日本とは言えないでしょう。
私は、正直なところ、今回、森総理への代表質問はやめようと考えておりました。自民党の中からでさえ、三月だ、いや、あるいは参議院選挙前だと辞任がささやかれている総理に質問して何の意味があるのだろうか、また、各お役所の文章を寄せ集めただけの施政方針演説に質問してもむなしいだけじゃないかと思ったのです。
しかし、施政方針演説を聞くうちに、その余りの緊張感のなさに改めて危機感を深めないわけにはいきませんでした。総理は、KSDや機密費疑惑の意味や、今の危機的な状況を全く深刻に認識しておられない。ならば、言わなければならないと思ったのです。(拍手)
私は、これまで多くの代表質問に立ってきました。どんなに意見が違いましても、敬意を持って歴代の総理大臣にただしてきたつもりです。だからこそ、次のようなことを言うのはまことに残念であると言わざるを得ません。
森内閣総理大臣、あなたは一刻も早く辞任されるべきです。国民は、必ずや賢明な選択をするでありましょう。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕