野田毅の発言 (本会議)
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○野田毅君 私は、保守党を代表して、森総理の施政方針演説に対し、質問をいたします。
質問に先立ち、先般のインド西部の大地震によって被災されました方々に対して、心よりお見舞い申し上げますとともに、速やかな復興をお祈りします。保守党としても、昨日、私たちの微意をインド大使館にお届けしましたが、政府におかれても、可能な限りの支援措置を講じていただきたいと思います。
また、有明海のノリの被害については、漁業関係者への金融支援を決定しましたが、政府におかれては、原因の徹底究明と必要な対策を早期に講じていただきたい。そして、宝の海を取り戻すため、総合的、抜本的な有明海再生計画の策定を要請いたします。
さて、二十一世紀の巻頭に当たり、国家百年の国の礎を築く責任に思いをいたすとき、改めて緊張を覚えるものであります。総理は、施政方針において、最初の十年は今後の百年の大計を律する十年と指摘されました。まさにそのとおり、将来を決する重い意味を持つ十年であります。この十年の間に、前世紀から積み残した課題を集中的に処理すると同時に、二十一世紀の新しい時代に対応した改革を徹底的に進めなければなりません。
保守党のモットーは、変えるべきは敢然として変える、守るべきは断固として守るであります。私は、この十年の間になすべき課題として、特に次のことを強調したいと思います。
第一は、二十一世紀日本の国づくりの根幹として、新しい憲法と教育基本法をつくることであります。(拍手)
戦後日本の歩みを方向づけてきた現行憲法も、半世紀を経て、現実との乖離が目立ってきております。国家主義や全体主義に陥るのではなく、二十一世紀の新たな国づくりの理想に向かってつくり直すべきであります。国会に憲法調査会が設置されたことは一歩前進ですが、さらに五年後の制定を目指して作業を進めるべきであります。
また、教育基本法は、権利、自由、個の尊重などを重視する余り、日本の歴史、文化、伝統、そして、ともに形成している家族や社会、国という共同体に対する責任を軽視しています。このため、人倫の基本がないがしろになり、自己中心主義がはびこる一方、日本人としての自覚に欠ける人がふえていることは憂慮にたえません。
敗戦から五十五年、来年は主権回復五十年、新しい世紀の幕あけに当たり、新しい憲法と教育基本法の制定を進めることこそ、今の時代の政治家の責任と考えます。総理の見解を求めます。(拍手)
第二は、構造改革のスピードを加速させることであります。
少子高齢化、国際化、情報化、こういった内外情勢の急激な変化に対応するため、経済、行政を初め、あらゆる分野の構造改革の必要性が叫ばれて既に久しく、産業の分野を初め、金融システムや規制緩和などの改革は現在進行中であります。しかし、社会保障制度や財政構造、司法制度などの改革はほとんど手つかずであり、行政改革や地方分権などもこれからがまさに本番であります。
今までのテンポでは、改革する前に国が衰退してしまうでしょう。したがって、この十年の間に、三年あるいは五年といった目標年次を定め、それぞれの分野の進行管理をしながら、強力な推進体制をつくるべきであります。総理の決意のほどをお伺いします。
この点に関連し、一言申し上げます。
中央省庁の再編がこの一月からスタートしました。環境庁が省に昇格した一方、防衛庁は内閣府の下部組織として庁のまま据え置かれております。国の内外において自衛隊の果たす役割は大きくなっており、また、世界の国々はすべて省であります。日本だけが何ゆえに省であってはいけないのか、合点がいきません。(拍手)
保守党は、一日も早く防衛庁を省に昇格させ、隊員諸君が使命感と誇りを持って任務を遂行できるよう、これからも総力を挙げる決意であります。
今急いでなすべきことの第三は、危機管理に強い政府をつくることであります。
中でも急がれるのは、いわゆる有事法制の整備であります。国の形としての欠陥の是正でもあります。総理は、施政方針で、検討を開始すると述べられました。この問題は、着手した以上は断固としてやり遂げなければなりません。中途挫折は許されません。改めて総理の決意を伺います。
また、緊急事態への即応体制の整備も急がれます。現在、自然災害などについては一応の体制ができておりますが、重要な施設等に対するテロやゲリラなど、さまざまなケースに十分対応できるかといえば、いまだ不十分であります。また、北朝鮮の不審船事件で明らかになった領海・沿岸警備体制も十分とは言えません。
自衛隊、警察、海上保安庁という縦割りの壁をどう超えるのか、情報の収集と管理の問題もあります。法律の整備と並んで、平素からさまざまなマニュアルに基づいて、省庁の壁を超えた訓練をしておくことが必要であることを強調しておきます。総理の所見を伺います。
さらに、最近の多発する事件や犯罪の発生も、国民の日常生活の危機管理という面から切実な問題であります。
特に、凶悪、異常な犯罪の被害者や遺族の無念を思うとき、現行の刑罰が余りにも犯罪者に甘く、被害者や家族の立場が軽く扱われ過ぎているのではないかという思いがいたします。
また、我が国の場合、異常性格者の犯罪は、精神鑑定の結果、責任能力を理由として罪が軽くなるのが通例であります。しかも、これらの者が釈放後再び犯罪を起こす例が多々見られます。このままでよいのでしょうか。
また、飲酒運転により相手を死亡させた場合も問題です。飲酒運転が重大事故に結びつく可能性のあることは常識であります。相手を死亡させるのは殺人と同じであるにもかかわらず、重過失致死罪で最高七年の刑しか科せられないのでは、国民は納得できません。道路交通法の改正を機に厳罰化を検討すべきです。
ストーカーやピッキングなども国民の生活を脅かしています。未然に事件の発生を防ぎ、犯罪の被害者をつくらないためにも、警察は、民事不介入や人手不足を理由として逃げてはいけません。犯罪が起きてからしか警察が動かないのでは、国民はだれを頼りにすればいいのでしょうか。
以上の諸点について、総理の御見解を伺います。
次に、社会保障構造改革について伺います。
社会保障の構造改革は、経済成長との関係のほか、財政改革、税制、地方財政などが密接に関連しており、総合的視点からの取り組みが不可欠であります。本日は、時間の制約上、社会保険方式が実質的に破綻していることを指摘するにとどめたいと思います。
自己責任の原則に立った社会保険方式と言われますが、これは負担と給付を対応させるということであり、保険料を払った者だけが年金や医療給付を受けられるということであります。
しかし、現実は、国民年金の三分の一は保険料未納であるにもかかわらず、国民皆年金という形を維持しております。また、医療保険の世界では、現役の収支だけなら十分ペイするのに、老人医療費の拠出のために赤字となって、健康保険組合は次々と破綻しております。さらに、基礎年金、高齢者医療、介護の三分野においては、保険料収入だけでは給付を賄えないがために、三分の一や二分の一の国庫負担によって初めて成り立っております。
このような状況で、果たして自己責任、すなわち給付と負担が対応していると言えるのでしょうか。少子高齢化が進む中で、政府が自己責任を強調すればするほど、保険料の引き上げか給付の大幅引き下げを意味するものとして、国民が将来に不安を覚えるのは当たり前であります。
私は、社会保険方式へのこだわりを超えるところから社会保障改革の議論がスタートすべきだと考えます。以下、現行の社会保険方式の問題点を指摘しておきます。
第一に、職業間の不公平の問題であります。
現行制度のもとでは、サラリーマンとその他の職業の人との間で大きな不公平があります。例えば、サラリーマンの場合、保険料の半分は雇用主が負担しますが、自営業や農業では、本人以外だれも負担してくれません。一方で、厚生年金などの被保険者の払った保険料が、厚生年金とは関係のない国民年金の財政支援に使われているという問題もあります。また、同じ女性の間でも、専業主婦は保険料を負担しないけれども、働いている女性は保険料を負担しているという不公平があります。このような不公平をそのまま放置してよいのでありましょうか。
第二は、社会保険料が雇用不安を増大させているということであります。
第一の裏腹ですが、雇用主は従業員の保険料と同額を負担しております。しかも、老人医療や介護など、従業員の福利と直接関係のない部分まで負担をしています。このことが経営を圧迫して、結果として、常用雇用を減らし、パートや派遣労働にシフトさせております。今後、保険料がさらにアップすれば、雇用への影響が大きくなることは目に見えております。
第三に、国民年金の保険料や国保税については徴収上の不公平があります。
所得の把握が困難なほかに、徴収上の困難もあります。結果として、正直者が損をするということも言われております。さらに、国民年金の保険料は、収入の大小にかかわらず一人当たり月一万三千三百円で、これは人頭税と同じく逆進的であります。六十五歳以上の方の介護保険料も同様の問題があります。
第四は、社会保険料の引き上げは経済の活力維持に大きな影響をもたらすということであります。
社会保険料といっても、給料から天引きされる点において、所得税、住民税と何ら変わりません。保険料引き上げの経済効果は所得課税の引き上げと同じであり、手取り、すなわち国民の可処分所得を減らします。この可処分所得こそが消費と投資を生み出す源泉であります。だからこそ、小渕内閣は直接税の大減税をしたのでしょう。国民負担率は同じでも、社会保険料か間接税かによって、経済の活力に与える影響は大きく異なります。私は、所得課税と社会保険料を加えた直接負担率を低くすることの方が経済の活力にとって大事であることを特に指摘しておきたいと思います。
第五は、社会保険制度が赤字国債の原因の一つとなっているということであります。
現在、保険料の引き上げが困難なため、給付費の半分を国庫負担に求めています。つまり、社会保険制度といえども、半分は税か赤字国債に依存しているということです。少子高齢化に伴う財政負担の財源を何に求めるのでしょうか。財政再建のテーマの一つは、まさにここにあります。また、この問題にメスを入れない限り、社会保障制度の永続性もあり得ないのであります。
保守党は、これからの少子高齢化社会において、老後生活の安全保障という視点から、基礎年金、高齢者医療、介護、この基礎的三分野については、基本的に消費税をもって財源を賄うことを提唱しております。今直ちに全額を税に切りかえるということではなく、そういう展望のもとに段階的に移行すべきということであります。
今後、高齢化に伴う必要財源は、保険料の引き上げで対応するのではなく、消費税で賄うようにすべきであります。消費税を名実ともに社会保障税に切りかえ、使途をこの三分野に限定すると同時に、内税とし、その際、飲食料品については軽減税率を設けること、このため、インボイス方式の導入を主張しております。
以上、社会保障の問題について、総理に御意見があれば伺います。(拍手)
最後に申し上げます。
二十一世紀の最初の国会、国家百年、国の礎を築く政策を議論すべきこのとき、KSD事件や外交機密費流用疑惑が発生したことはまことに遺憾であります。司法当局の厳正な捜査を期待するとともに、疑惑の対象とされる政治家はみずから進んで真相を説明すべきであります。
総理は、みずから任命した閣僚の辞任と党所属議員の逮捕、議員辞職に至ったことについて、総理・総裁としての責任を痛感され、疑惑解明に対するリーダーシップを発揮されんことを強く求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕