清水達雄の発言 (憲法調査会)

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○清水達雄君 アメリカを訪問し、多くの人から話を聞きまして、アメリカの国民の憲法観もかなりわかったという気がいたします。
 アメリカの憲法では、人権、特に社会権に関する規定が希薄で、また大統領選挙に関しても議論があってもおかしくないというふうに思われるのに、改憲あるいは憲法の修正の議論はほとんどなく、建国以来歴史的に定着してきた憲法に国民は安定した信頼感を持っているように思いました。
 例えば、大統領選の選挙人制度、州ごとに勝った陣営が州全体の選挙人を独占し、全州で選挙人を多く獲得した者が当選する。しかし、これはアメリカ全国の総得票数が多い方が勝つことにならない。今回の選挙でも、ゴア候補の方が全体の得票数は多かったというわけでございますけれども。そういう場合がありますけれども、これについては結局、州の代表者である選挙人が一堂に会して連邦の大統領を選ぶという建国以来の大義であり、ロックフェラー氏が、選挙人団は私たちの憲法であり、変える必要はありませんとおっしゃったことに集約されていると思います。
 また、二院制については、上院議員は州議会の選出だったのが一九一三年の第十七修正で投票制になったわけですが、いずれにしても州の代表であり、下院は国民の代表という感覚であると思います。さらに、州議会もネブラスカ州を除いては二院制であります。二院制で来たものが特に困った点がなければ変える必要なしという考え方のようであるように思いました。ただ、ブルッキングス研究所の客員研究員は、法案審議を慎重に進めるため創設されたという発言もありました。
 そして、新しい時代の基本的人権、社会権、教育権、環境権、プライバシーの問題などについては、憲法の修正は難しく、法律の方が時代の変化に対応できますというオコナー最高裁判事の発言に集約されていると思います。さらに、ジョージタウン大学のタシュネット教授が言うように、新しい権利について憲法に明記されていなくても人々がこれを守っている理由は、最高裁の判断こそが権利の根源であり、人々がこれを神聖なものと考えているからですという、さっきも団長の報告にもありましたけれども、そういう国民意識があるということだと思います。
 一方、日本では憲法論議が盛んでありますが、これは、現行憲法の制定過程の問題と憲法第九条の戦争の放棄の規定が世界に例を見ないものであり、自衛権とそのための軍事力の保持、集団的自衛権の行使、PKO等をめぐって具体的な規定がなく、また確立した解釈が出し得ないという欠陥があり、自国や世界の安全保障に対する国のあり方と国民のあり方についてコンセンサスが形成されていないという大問題があると思います。
 私は、あえて言えば、日本の憲法は、九条を中心とした安全保障問題に対する国民のコンセンサスを形成させ、それに基づく改憲をすればいいのではないかと、これが最も重要な課題であるというふうに思います。他の人権等の問題は、アメリカの例を見るように、憲法によるのではなくて個別立法による解決、あるいは最高裁の判断等への依存等の考え方もあるわけですけれども、この点については国情の違いもありますから慎重に検討すべき課題ではないかというふうに思います。
 以上でございます。

発言情報

speech_id: 115114184X00220010221_004

発言者: 清水達雄

speaker_id: 3445

日付: 2001-02-21

院: 参議院

会議名: 憲法調査会