野沢太三の発言 (憲法調査会)
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○野沢太三君 自由民主党の野沢太三でございます。
江田団長初め訪米調査団の皆様には、正月早々から米国のワシントン、サンフランシスコを訪問されまして、多数の要人と面会され、政府、議会、研究所などを訪れて意見を交わしてこられました。ただいまその報告をお聞きし、感銘を新たにしたところでありますが、まことに御苦労さまであり、改めて御礼を申し上げます。
米国の憲法は、皆様御承知のとおり、一七八七年に制定以来二百年以上経過した世界最古の成文憲法でありますが、今日まで二十七項目の修正を経まして、今なおアメリカ社会を支える国家原理として機能していることは注目に値するところと思います。
アメリカの憲法成立過程は、イギリスなどからの植民地支配を脱して独立をかち取り、連邦制を基本としながら大統領に権限を集中し国の統一を実現している点は民主主義政治の一つのモデルとして評価されてまいりました。また、州を単位として二人ずつ選出する上院と、人口に比例して選出する下院との役割分担もわかりやすく明確であります。
現在の日本国憲法が、戦後、GHQの指導のもとにアメリカ憲法の影響を受けて制定されたことは周知の事実でありますが、一九四六年以来五十五年の年月を経た今日、多くの問題点を抱え、衆参両院で見直しの議論が始まっておるところでございます。今後の憲法論議の中で、アメリカ憲法と関連法規につきましては、一つの先例、実例として、国情の違いはありますけれども、絶えず参考にすべき存在であると考えられます。
それでは、調査団の報告に基づきまして幾つかの意見を申し上げたいと思います。
今回皆さんが訪問されましたブルッキングス研究所におけるフレンゼル研究員とウィーバー研究員と交わされました討議の中で、上院と下院のあり方、二院制の是非について示唆に富む御意見が出ております。これから私どもの進めてまいります参議院制度の改革についても積極的な方向を示しているように思われます。特に、立法府が政策形成機関として大統領府、行政府と渡り合うため、独立した調査機関、独自のスタッフ、外部の専門機関への調査委託の制度が大変充実整備されていることは注目に値することと思います。また、議員個人や委員会付のスタッフも恵まれており、議員立法中心の議会運営が保障されていることは、民意を代表して立法作業に従事し、政策目的を実現する国会という機能の実行のために極めて有効と考えられるわけでございます。
また、インデペンデント・セクターの訪問で米国のNPOの活動ぶりが示されていますが、成熟した民主主義社会における市民活動と行政サービスあるいは政治のあり方について、これからの日本社会にとって注目に値する動向と考えられます。
連邦議会調査局への訪問でナント専門員とトーマス顧問に会見をされておられますが、ここでは憲法の修正条項とその手続について調査されていらっしゃいます。
大変この修正にかかわる問題については有益な示唆がたくさんあろうかと思いますが、当初の合衆国憲法制定時には入っていなかった人権条項というものが少しおくれて加えられまして、さらには大統領の任期、副大統領の継承権等が追加されて今日まで至っておるわけでございます。そして、憲法の改正には、先ほど大脇先生からも御報告がありましたように、両院の三分の二の発議が必要であり、四分の三の州の批准が必要であります。修正条項二十七については、何と二百年ぶりに発効するというようなそういう事態も起こったように伺っておるわけでございますが、比較憲法を研究してこられたマーク・タシュネット教授の言うように、一九四七年に採択されました日本国憲法は、イメージ的には上から押しつけられたような印象があるわけですが、比較的これは成功している憲法であるという指摘をされております。
そして、米国憲法が今日世界で最も修正が困難な憲法の一つであるにもかかわりませず、これまで二十七項目の修正を実行され、さらに最高裁の判例を通じて実質的な修正の役割を果たしまして必要な状況に対応してきたことは評価されるところと考えます。特に、人権に対する認識が近年発達しまして、憲法で明記されていない権利がどうすれば尊重されるかという点で最高裁の判断は神聖な意味を持つとの指摘は重要であります。
いずれにしましても、二世紀以上も前に制定された合衆国憲法が時代おくれとか現代に適応できないなどの批判を受けながらも、今日、米国の国家規範の大黒柱として、日常の政治、経済、社会の生活の隅々まで影響を及ぼし、確固たる地位を築いていることは貴重な歴史的実績と思います。
我々は、さらなる調査と議論を重ねまして、二十一世紀の日本の望ましいあり方を決める憲法をみずからの考えで生み出し、みずからの手でつくり上げていく努力を重ねる必要がございます。この場合、米国憲法の修正過程は大切な参考例となり得るものと思います。
訪米調査団の皆様に重ねて感謝申し上げ、討論を終わりたいと思います。
ありがとうございました。