佐々木知子の発言 (国際問題に関する調査会)

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○佐々木知子君 自由民主党の佐々木知子です。
 本調査会は、平成十年八月のスタート以後、「二十一世紀における世界と日本──我が国の果たすべき役割──」について、世紀の節目をまたぐ形で精力的な調査を進めてまいりました。特に、二年目以降は国連の今日的役割について多角的観点から重点的な調査を行い、内外の二十名にも及ぶ有識者、研究者、加えて河野外相や現職の国連大使にも本調査会に出席賜り、積極的な議論を行ってまいりました。
 国連が創設されて五十六年、我が国が国連に加盟して四十四年がそれぞれ経過いたしました。そんな時期に本調査会がみずから国連をテーマに設定し、体系的かつ集中的に調査することは国会史上初めてと申し上げて過言ではなく、これまで能動的、積極的に議論してきた意義は極めて大きく、中長期的観点に立った参議院らしい調査であったと考えております。
 その締めくくりに当たり、私は、新世紀の国連の役割、とりわけ我が国の積極的な参画による国連改革について意見を申し述べたいと思います。
 昨年五月の本調査会において、同僚委員であった河本理事、鈴木理事、武見委員、野沢委員から意見表明がなされた国連の今日的役割についてはそれぞれ同感でございますので、本日は主として、国連に関する三年目の調査と国連ミレニアム・サミット以降の動きを踏まえ、論点を絞った形で意見を述べてみたいと思います。
 まず最初に、我が国の安保理常任理事国入りについてでございますが、結論として我が国は常任理事国になるべきと考えます。そのためにあらゆる外交の場をとらえて常任理事国入りの意思を明確に表明し、国際社会に強く訴えるべきであります。
 国連において国際の平和と安全を守る中心的役割を担っているのは安保理ですが、冷戦後、国連ではその改革の論議が続けられております。国際社会において紛争の性格や形態が変化し、伝統的な安全保障の分野のみならず、人道、開発等の分野でも安保理の重要性が高まっていて、軍事面のほか経済社会分野で貢献できる国の役割が増大しているのでございます。
 これまで我が国は、世界有数の経済大国として、平和、安全から経済、社会、文化に至るまで、国連の多岐にわたる活動に積極的に取り組み、財政面でも多大な貢献をしてまいりました。これはこれとして一定の評価を受けていることでございますが、我が国がその責務に合った国際社会の期待にこたえるためには、国際の平和と安全により能動的、積極的に取り組める地位を与えられなければなりません。
 世界のGDPの一五%を占める我が国は、貿易や資源の面で世界じゅうの国々とかかわりを持ち、各地で多発する紛争の影響を直接間接にも受けております。北東アジアの多国間安保など、我が国を取り巻く国際安全保障環境を考えた場合でも、我が国が常任理事国という地位を得て発言することはその議論に重みを増し、国益を守る上でも望ましいと考えます。
 常任理事国という地位は、国際社会及び他の国連加盟国に推されて受け身でなるものではなく、国益にのっとってみずからかち取るべき座であります。日本が国連改革の先頭に立てば、その地位はおのずから手に入るとの見方もありますが、多国間外交で最も重要なことは、まずは有力な発言の場を常に確保しておくということでございます。実際、国連本部に行ってみればわかりますが、安保理の理事国でなければ安保理の会議場に入ることさえできず、外の待合室にいて中の審議状況をうかがうということしかできないのです。
 また、我が国が常任理事国入りを目指すことをはっきりと示さなくては、我が国外交は顔の見えないという評価を受けることでしょう。その意味で、改革された国連においてなし得る限りの責任を果たす用意があるといった姿勢では、これまで国連の内外でさまざまな貢献をし、米国に次ぐ財政貢献をしてきた日本が、国連改革に一歩腰が引けているといった印象を与え、常任理事国入りのメッセージとしては十分ではないと考えます。
 日本の常任理事国入りが国連や国際社会にどのような利益をもたらすかについては、主として以下のことが言えると考えます。
 第一に、非核三原則を国是とし、戦争をしないことを明言している国が常任理事国の一角を占めること自体に大きな意味があるということです。日本が平和、軍縮・核不拡散について国連の中枢部で議論をすることで、核廃絶という人類の悲願達成に寄与することができるのではないでしょうか。
 第二に、第二次世界大戦戦勝国である五つの常任理事国に加え、そうでない国が加わることは安保理の正統性を高め、二十一世紀にふさわしい国連をつくることができるということです。
 第三に、紛争防止や紛争原因の除去への取り組みの中で、個々の人間の生存、生活、尊厳を守る人間の安全保障の考え方が重視されるようになってきており、人間の安全保障を外交の柱とする日本が安保理で果たせる役割は大きいということでございます。
 第四に、我が国が北からは先進国としての、南からは途上国の事情を理解し主張を代弁してくれるという期待を背負ったユニークな国だということです。
 国連がグローバリゼーションの負の部分に対処していくには、NGOも交えて国連改革の論議を進めていく必要がありますが、日本はこうした論議をより望ましい方向へと導いていくポジションにあります。
 安保理改革作業部会での論議が始まって七年余りが経過いたします。昨年九月に採択されたミレニアム宣言に、「全ての面における安保理の包括的な改革の実現のための努力を強化することを決意する。」とございますが、これで我が国の常任理事国入りに道筋がついたとは言いがたいと考えます。我が国は、G8沖縄サミットにおいて安保理を含む国連の改革や強化が確認されたことも踏まえ、安保理改革について各国首脳が政治レベルでの議論を行うよう訴えるべきです。
 九五年の国連創設五十周年は安保理改革の一つの目標とされましたが、その後、安保理改革の機運が弱まったことを考えれば、国連創設六十周年に当たる二〇〇五年を目標に改めて具体的な戦略の詰めを行うべきであります。多国間、二国間のあらゆる場を用いた外交努力が必要であり、国会議員もこうした動きを支援する議員外交を展開すべきであると考えます。
 なお、常任理事国たるにふさわしい実績をつくるという観点から、来年の非常任理事国選挙にはぜひ立候補するよう政府に求めたいと思います。
 次に、新世紀の国連の課題については、三点あると考えております。
 第一に紛争への取り組み、第二に人間の安全保障、第三に文化の分野における活動です。
 紛争の予防には、国際社会全体に予防の文化を育てていくとともに、紛争発生前から紛争発生後の幅広い段階で多様な政策手段を用いて取り組む包括的なアプローチが必要です。すなわち、紛争の予防から平和維持、平和構築、さらには貧困など紛争の潜在的要因の除去、紛争の解決まで段階に応じた対応が必要であり、平和と開発とのリンケージが重要です。また、コミュニティー、国、地域組織の各レベルに応じた対応能力の強化が必要であると考えます。
 この意味において、ODAは国内の社会集団間の不平等や対立の緩和のためのプログラムに充てるべきではないでしょうか。また、開発政策や治安政策が不平等や対立を増幅させ紛争の発生を招くことのないよう、幅広い対話や協議を行う必要がございます。
 平和と安全の確保のための取り組みと、経済社会開発のための取り組みは連携すべきです。紛争が起こって緊急人道援助が要請されれば、各国の政府から支援があり、NGOも支援活動を行いますが、紛争が解決の方向に向かってしまうと、国際社会の関心は薄れて緊急人道援助支援が減り、一方で安定した政府が樹立されていないため、開発のための長期的な資金援助も受けられません。紛争後の平和構築においては、緊急人道援助から長期的な開発援助までの空白の期間を解消し、紛争の再発につながる状況を防止するため、国際支援を途切れなく行う必要があります。
 また、紛争が平和に向かって進んだとき、内戦や民族浄化によって互いに恨みや恐れを抱いている人々がともに生きられるよう、共生の基盤づくりが求められております。複数の民族を同じ工場で働かせたり、紛争後の社会に生き残った女性を中心とするUNHCRのプロジェクトは多くの示唆を与えてくれます。こうした取り組みには我が国を初めとする国際社会の腰を据えた息の長い支援が必要です。
 紛争への取り組みにおける国連平和維持活動、PKOについてでございますが、今日、PKOの任務は伝統的な停戦監視から難民支援、行政部門、復興開発などにまで広がっており、アナン国連事務総長が設置した国連平和活動検討パネル、紛争後の平和解決を組み込んだ複合型のPKOに我が国も可能な協力を行うべきであると思います。
 PKO協力法が制定されて既に八年余りがたち、これまでカンボジアやゴラン高原、東ティモール等で着実に協力の実績を積み重ねてまいりました。昨年十二月の世論調査でも、こうした活動に現在と同じ程度あるいはそれ以上に参加すべきと考える人は全体の八割近くを占めており、PKO協力は既に国民の幅広い理解と支持を得たと考えてよいと思います。PKF本体業務の凍結解除や必要な法整備を早急に行い、PKO活動への人的貢献を一層強化していくべきであります。
 第二に、人間の安全保障についてでございますが、二十一世紀を迎えた国際社会は、紛争、貧困、難民、人権侵害、エイズなどの感染症、犯罪、テロ、環境など、さまざまな問題に直面しています。また、女性や子供などの社会的弱者がその権利を尊重され、才能を発揮し、すべての人々が共生できる社会を築いていく必要があります。こうした問題への取り組みにおいて、人間の安全保障の考え方がますます重要になっています。
 我が国は、これを外交の柱に据え、国連に設けた人間の安全保障基金への拠出により、個々人に直接成果が行き渡る事業の実施支援に力を注いでまいりました。今後は、こうした具体的な取り組みもさらに拡充強化するとともに、人間の安全保障を政策概念として整理し、各国の政策の立案や実施に役立つ実際的な手段に発展させることが求められていると考えます。緒方貞子さんが共同議長に就任される人間の安全保障に関する国際委員会での論議を初めとして、知的な営みの積み重ねが必要であります。
 人間の安全保障は、日本がそのユニークさを生かすことのできる政策概念であり、世界に通用するスタンダードをつくり出し、それを多国間外交の場で生かせれば国際社会をリードできることにもなります。
 第三の文化の分野につきましては、時間の制約上、同僚議員の発言に譲りたい思います。
 最後に要望的意見でございますが、本調査会は、二年目に国連の今日的役割について多角的かつ重点的な調査を行い、事前の各会派合意と中間報告を踏まえて国連ミレニアム総会に向けた調査会の提言を目指し、その過程で、当時の井上会長から各会派に「新生国連に向けて」と題する試案が提示されました。
 これは、国連に対する日本国民の熱意と多様な民意を伝えることによって、国連を新世紀の諸課題に取り組める機構に発展させる一助とし、日本の議会と国連との橋渡しの役割を担おうとしたものであり、多くの会派の代表から妥当かつタイムリーとの基本的賛意が寄せられましたが、残念ながら全会派一致の成案には至ってはおりません。
 冒頭にも申し上げましたが、国連に関する体系的かつ集中的な国会の調査は今回初めてのことであり、昨年提示された会長試案は本調査会の議論の水準を示すものでございます。したがいまして、最終報告におきましては、国連ミレニアム総会に向けた提言の試みについて審議経過で触れるとともに、会長試案も今後の幅広い議論の資料として報告書に盛り込んでいただきたいとの要望を申し上げて、私からの意見表明を終わらせていただきたいと存じます。

発言情報

speech_id: 115114308X00620010418_002

発言者: 佐々木知子

speaker_id: 33745

日付: 2001-04-18

院: 参議院

会議名: 国際問題に関する調査会