山本一太の発言 (国際問題に関する調査会)
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○山本一太君 自由民主党の山本一太です。持ち時間の十分で、少し早足でプレゼンテーションさせていただきたいと思います。
まず最初に、東アジアの安全保障及び日本外交のあり方について私の意見を表明させていただきます。
まず第一点目として考えなければいけないことは、東アジアにはヨーロッパのNATOやOSCEのような集団的安全保障のメカニズムが存在しないということだと思います。朝鮮半島の情勢、また台湾海峡の問題等、依然としてこの地域には冷戦構造の残滓が残っているということで、この地域の安保の環境は依然として不安定だというふうに言えると思います。
そして、東アジア地域には集団安保のメカニズムが成立しにくいという幾つかの理由があると思うんですけれども、最も根本的な問題は、実は文化の共通点がいろいろあるように言われていますが、アジアは一様ではないという事実ではないかと私は考えています。文化的、歴史的な共通点は多いんですけれども、アジアにはいわゆる多様性が存在していると思います。ですから、この地域に必要なのはコミュニティーファウンデーションみたいな話ではないかと思います。すなわち、共同のコミュニティー意識をこの地域に醸成するということではないかと思います。
最初のステップは、恐らく各国の経済レベルをできるだけ近いものにすることではないかというふうに考えますし、価値観を改めて共有するために、共通の文化や慣習といったものにこだわらずにみんながこの地域で共有できるものを求めていく必要があるんじゃないかと思います。例えば、若者層を中心に今広がりつつあるアメリカ文化、こういったマクドナルド文化みたいなことも実は一つのコミュニティー意識になり得るのではないかというふうに考えます。
さらにまた、この東アジア地域の安全保障の枠組みを構築していく中で日本が果たすべき役割、日本の安保政策の方向性は、次の五点に集約されるのではないかと思います。これも駆け足でお話をしたいと思います。
まず第一点は、日米安保体制を引き続き堅持するということ。
日米安保体制は、朝鮮半島情勢の悪化を防ぐためにも、中国の覇権的行動と言うとちょっと言い過ぎですが、こうした動きを抑止するためにも、この地域の安定装置、よく公共財という言葉が使われますが、安定装置として機能するということだと思います。日本をこの地域のより重要な同盟国と位置づける米国ブッシュ政権、この間アーミテージ国務副長官も来日をしたわけですが、このブッシュ政権のもとで日米同盟をあらゆる側面で深化させる、深めるということを目指すべきだと思います。
二つ目ですけれども、これは日本、韓国、米国の三国の協調体制の強化ということだと思います。
日本にとってこの地域における戦略的パートナーは、民主主義という共通の価値観を有する米国と韓国であるというのが私の長年の考え方です。三カ国の共同歩調は、これは最近の北朝鮮のより開かれた外交姿勢というものを生み出した最も大きなファクターではないかと考えています。将来的には、日米韓三国の同盟関係の中で、安全保障についてはいわばバーチャル、空白になっている日韓の安保条約をこれも視野に入れていくべきではないか。そう簡単に実現することではありませんけれども、こういう長期的なビジョンも今考えてみる必要があるんじゃないかというふうに考えております。
さらに三つ目として、集団的自衛権の問題をやはりクリアしていかなければいけないと思います。
小泉政権はこの点について積極的と言っていいと思うんですけれども、この集団的自衛権の問題というのは、解釈の変更ではなくて、国民の意識の変化やコンセンサスというものを十分に見きわめながら、やはり憲法改正によってこの権利を担保する、国民の議論の中からきちっとそういう方向性をつくっていくということがベターだと思います。この集団的自衛権の問題をクリアすることによって、実はアジア太平洋地域における日本と他のメンバーとの二国間の安保システムのようなものも可能になりますし、一言で言うと日本外交のアングル、視野が拡大するんではないかというのが私の考えです。
四番目なんですけれども、日米安保体制の強化とか集団的自衛権の行使の問題等は、今までもそうでしたけれども、常に東アジアの隣国の懸念を誘発するという、こういう事実を踏まえていかなければいけないと思います。
こうした政策を推進する上で、中国を初めとするアジアの隣国との間の信頼醸成というものがやはり何よりも重要ではないかというふうに考えています。バイやマルチの外交の舞台を活用し、最大限の説明努力が求められるのではないかというふうに考えています。
五番目として、ASEAN地域フォーラム、いわゆるASEANリージョナルフォーラムというこのフォーラムは、この地域を全体を網羅する唯一のフォーラムと言ってもいいと思うんですけれども、将来は、よく言われる議論ですが、このARFをより進化させアジア版のOSCEに育てていくということが東アジアの最も現実的な安保システム構築の道筋と思われます。雑誌の「選択」でも何回か連載をしまして投稿したんですが、ARFはよちよち歩きだとは言われますけれども、OSCEができるまでには何十年という期間がかかっていることを思えば、決して望みがないわけではないというのが私の印象です。
続きまして、日本外交のあり方も駆け足で御説明をさせていただきたいと思います。
まず、日本外交のあり方を考える上で指摘したい第一点、これはODAは依然として重要だということだと思います。
日本は、世界最大のODA供与国として今後とも貢献をしていくべきではないかということだと思います。ODA大国としての哲学を世界に発信すると同時に、これは国際問題調査会でも過去いろいろと議論になったんですけれども、国内におけるODAの認識を高め、その透明性をさらに担保するために、ODA基本法の制定を改めて真剣に検討するべきだと思います。このODAについての考え方が、日本外交のあり方の第一点に挙げたいと思います。
第二点ですが、ODAのみに頼らない新しい外交を開発するということもこれからの日本外交の私は課題になると思います。
この関係からいきますと二つほど申し上げたいことがあるんですが、一つは、知的イニシアチブを発信するということだと思います。国連や国際社会、国際会議等の舞台において新しい知恵、哲学、これを提案し発信する体制を国家戦略の中できちっと整備していくことが急務だと思います。例えば、大国ではありませんけれども、国連等の場で大きな存在感を示す北欧諸国の発信力から学ぶ点は多いのではないかと常日ごろから考えております。
私が昔勤務しておりました国連開発計画というところがあるんですが、このUNDPがつくった人間開発報告書というのがありまして、これが提唱した人間の安全保障のコンセプトを、実は日本政府が独自のコンセプトに高めて発信しているというのは一つの成功例として挙げていいのかなと思います。
第二点目、そのODAに頼らない新しい外交の開発という点で、これも常日ごろから考えていることなんですが、一言で言うとクール・ジャポニカ戦略の確立ということなんですけれども、これは別の言い方をすれば、トニー・ブレア政権の戦略に学び、外交に文化の力というものを最大限に活用する、ブランディングといわばよく言われるんですけれども、そういう戦略をとっていくべきではないかと思います。
ブレア政権において採択されたクール・ブリタニカ戦略、英国は古いものばかりじゃない、新しいイメージがある、料理もおいしい、ファッションの中心地、留学生もいっぱい招いていると。こういうイメージを世界に発信することで外交能力を高める。こういう戦略に学び、例えばサブカルチャー、若者文化も含めた総合的クール・ジャポニカ構想に基づく新しい文化交流を打ち出すというのを八月以降に早速チームを立ち上げてやりたいと今計画をしております。
日本外交のあり方、ODAのみに頼らない新しい外交の話をいたしました。あと一分ちょっとなんですが、三番目として、リーダーがみずから主導する首相外交の強化というものを挙げたいと思います。
パブリックディプロマシーの推進がまずその第一番目として挙げられると思うんですが、今後の外交においてはリーダー自身のパブリックディプロマシーが極めて重要になってくると思います。パブリックディプロマシーには、国民に対して働きかけるもの、いわゆる議会に対するもの、そして国際社会や他国の世論に働きかけるものという私は三つのジャンルがあると思いますが、総理大臣のイメージ、自身の発信力というものがこれからより重要なファクターになってくるのではないかと思います。
もう一つは、経済外交等との総合的なリンクが求められると思います。これは一つの例ですが、経済外交を例にとると、アメリカの大統領の外国訪問の際、しばしば経済人を同行させ、市場開放の要求をしたりビジネスチャンスを広げるための経済外交というものを展開していますが、こうした姿勢をやはり日本外交が学んでいくべきではないかと思います。
四番目。外交の基本は対話と抑止のバランスだということは、これはもう異論のないところだと思いますが、常々思いますのは、日本外交にはもちろん対話のシステムはあっても抑止のシステムがない。これをきっちり確立する必要があると思っています。北朝鮮のテポドンショックの際に議論された、例えば外為法の改正によってより機動的に経済制裁を行う体制を整備したり、輸出管理法案の整備を通じ軍事目的に転用される民生技術の流出を防ぐ体制をつくる。これは文芸春秋の論文にも私自身が書いたことがあるんですけれども、この抑止のシステムをつくるということも新しい日本外交の懸案として取り上げなければいけないと思います。
最後、東アジアの安全保障についても申し上げましたが、集団的自衛権の問題は、これはしっかりクリアしていくべきだと思います。もちろん慎重な議論が必要だと思います。先ほど申し上げたとおり、集団的自衛権のこの問題をきっちりクリアすることで日米安保を基軸とする日本の外交・安保政策に幅が出るということを最後に強調して、ちょっと一分ほどオーバーしましたが、プレゼンテーションにかえたいと思います。