入澤肇の発言 (国際問題に関する調査会)
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○入澤肇君 私は安全保障の前提となる諸条件の整備がまず第一だと思います。
一つは、住民の生活の向上が十分になされているかどうか。貧富の格差が余りにもひどい。そこから要するに東アジア各国の政治の不安定が生じているということを認識すべきだと。
二つ目は、我が国は法治国家ですが、法治のシステムが十分に確立されていない。どちらかというと人治のシステムになっている。これを法治のシステムを確立するように誘導することが必要じゃないかと。
それから三つ目は、生活の安定のために、その国々の経済社会の発展状況に応じてですけれども、やはり大事なことは、一次産業の安定した基盤をつくるということが大事じゃないかと。
こういう前提に立って、まずどんなことをやったらいいかと申しますと、一つはそれぞれの国の生活状況についてもう少し詳しく貧富の状況を調査すると。二つ目は、今申しましたように法治の実態についての調査を行う。三つ目は、東アジアのそれぞれの国の軍事状況について私どもは余りにも概括的なこときり知らされておりませんけれども、もっと詳細に軍事バランスについて情報を公開していただくということが必要じゃないかと思います。
そういうことのために我が国は何をなすべきかということが次の課題でございますけれども、実は、戦後、我が国、特に一次産業の発展のためにやったことで唯一成功したのがフィリピンにおける緑の革命であります。IRRI、フィリピンの稲研究所に相当な開発投資をしまして新しい品種を開発して、そして食糧の増産に成功した。その後、その計画が必ずしも発展につながっていない。なぜつながっていないかというと、農地改革というのをあわせて指導したんですけれども、これがなかなか住民の抵抗に遭ってうまくいっていない。
我が国は、戦後、財閥の解体、労働組合の結成、それから農地改革によって不安定な社会の一掃に成功したわけでございますけれども、何といっても、私は農地制度の改革ということについてもう少し我が国のノウハウを伝えるべきだと思います。同時に、経済社会の発展段階説がありますけれども、中小企業も含めて、いきなりハイテクの産業に移行する前に、すそ野を広くするための産業基盤の整備ということについて我が国のノウハウをもっと伝達することがいいというふうな感じがしております。
さらにその次の課題は、どうも宗教によるあつれきがかなりあります。私は、ヨーロッパ各国を中心に世界の宗教家が集まって、フォーラムを形成したり、対話の集会を開いたりしていますけれども、東アジアにおきましても宗教家によるフォーラムの開催というのも提案していいんじゃないかと。
こういうことを総合してやるために、この前もちょっとこの国際調査会で申し上げたんですけれども、アメリカが戦後日本を占領するときに、これは不十分でありますけれども「菊と刀」という本に象徴されていますように、日本の社会、経済、文化についての分析をやりました。これをもう一回、それぞれの国の研究者を多数動員して、多角的な角度からその国の発展のために何をなすべきかということを見出すための調査をここで行うべきじゃないかと思います。
さらに、特記的に申し上げますと、軍事面について、私は、東アジアですぐ集団安全保障条約みたいなものをつくるということについては慎重でなくちゃいけないと。まずそれぞれの国の国情を十分に把握し、どうしても安全のために必要であるという判断ができたときに初めてそういうふうなことに取り組むべきであって、まずは生活の安定に最大の努力をすべきじゃないかと思います。
さらに、もう一つ特記的に申し上げますと、北朝鮮対策であります。これについては、太陽政策と北風政策、それぞれ二者択一的なことを言われていますけれども、私は、もう少し柔軟なしかも毅然とした対応策が模索されていいのではないか。具体的な内容については、これはなかなか外交の一番重要な問題ですから政府もなかなか言いにくい面があるかもしれませんけれども、太陽政策と北風政策の中間で具体的なドクトリンをつくっていくことが必要じゃないかというふうに考えております。
以上です。