広中和歌子の発言 (国際問題に関する調査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○広中和歌子君 まず初めに、冷戦後の世界情勢の変化と問題点について指摘させていただきたいと思います。
 二十世紀は戦争の世紀と言われるように、我々人類は二つの世界大戦とその直後に始まる核の均衡による東西の冷戦を経験し、そしてその間、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラン・イラク戦争に代表される世界各地で起こる米ソの代理戦争が続いて、多くの人々が紛争に巻き込まれてまいりました。
 日本は第二次世界大戦後、冷戦構造の中で平和憲法を堅持しつつ、米国との間に安全保障条約を結び、外交、安保の面でその判断と責任の多くを米国に依存してまいりました。そして、世界の紛争に巻き込まれることなく、防衛支出はGDPの一%にとどめ、みずからは経済の回復と成長に専念することができました。その結果、世界第二の経済大国となったと言えると思います。
 さらに、いわゆるアジアNIESと言われる韓国、香港、シンガポール、台湾などが日本に続けとばかりに経済発展を遂げ、タイ、インドネシア、マレーシア、そして改革・開放路線をとり始めた中国を巻き込みながら、アジア全体としては高い経済成長を誇ってまいりました。今後、人口の点でも経済の点でも、世界の中でアジアの影響力はますます大きくなると思われます。
 その間、ベトナム戦争の後遺症で経済の低迷に苦しむアメリカからは、日本に対してアメリカの核の傘ただ乗り論などがあり、一部アメリカの議員たちからは、我が国は別の形で、例えばGDPの一%を途上国支援に回すといった国際社会への貢献が求められたものの、日本外交は、全体として余り顔の見えぬ、後手に回る対応に終始してきたと言えると思います。
 日本が国際貢献で最も厳しい対応を強いられるようになったのは、一九八九年のベルリンの壁崩壊以降でございました。一時期、地球環境問題を人類共通の敵として世界が協調し合うといったムードがあったものの、イラクのクウェート侵攻に端を発する湾岸戦争では、日本は国連軍に参加する人的貢献ができぬまま結局資金を提供するにとどまり、それ以降、我が国の国連平和維持活動への参加をめぐり多くの議論が、国会の中はもとより、マスコミを通しても行われてまいりました。PKOや集団的自衛権をめぐる議論は、憲法改正にかかわる議論と相まって、いまだに前に進んでいるとは言えません。
 冷戦後、湾岸戦争を経て、世界は決して平和ではなく、むしろ地域紛争や国内テロが多発する中、こうした他国の問題にどこまでかかわりいかに対処すべきか、国連が十分に本来の機能を果たし得ぬまま、世界の中ではいまだにコンセンサスは生まれておりません。
 EU諸国は、地域統合と市場の規模を広げ、軍事の面でも経済の面でも大きなブロックを形成しており、そうした中アメリカは、特にブッシュ新政権では中南米への傾斜を強める可能性が強まるのではないかと予想されます。
 こうしたブロック化の動きの中で、南北の経済格差はかつてより増大しつつあり、貧困、人権侵害、テロ、麻薬、難民、感染症、核兵器拡散など、新たにグローバルな課題も世界には山積しております。地球環境問題も二十一世紀にはより大きく顕在化することが予想され、そこからさらに貧困、難民といった悪循環につながっていくと思われます。
 そこで、日本の外交でございますが、まずODAについて触れさせていただきたいと思います。
 我が国としては、九〇年代、ODAを通じて国際貢献を強め、ODAの拠出額では世界第一位となっております。そして、その方向性は私は正しいと思います。
 しかし、その中身を見ると、依然として大型のインフラ支援に偏り、顔の見える小規模支援への取り組みもまだまだの状況であります。また、自助努力を期待するという理由で贈与よりも借款に重点が置かれており、重債務貧困国ではその焦げつきが問題化し、拡大HIPCイニシアチブが求められております。
 一九九〇年代、ODA大綱ができ、その目的は平和、人権、環境、そして基礎教育や保健等の人間の基本的ニーズ等に配慮されるようになったとはいうものの、その実行段階の透明性は明らかとは申せません。ODAの情報公開は今後の大きな課題です。
 東アジアの安全保障政策について、これまで日米関係を基軸として多くを米国に依存してきた我が国ですけれども、我が国が第二次大戦中アジアの諸国に対して行った過ちについては、いまだに尾を引いた問題となっております。
 一応、賠償については政府間で法律上解決済みの問題となっておりますけれども、経済力の増大に伴い、ODAで大盤振る舞いをすることで賠償の埋め合わせをしているとも受け取られるこれまでのあいまいなやり方は、戦争被害者個人にとっては納得のいきかねるところだと思います。今後とも引き続き、謝罪と補償問題は課題となっていくことと思います。
 これに対しては、歴史の過ちを謙虚に受けとめ、謝罪の気持ちを繰り返すとともに、被害者が納得のいく形を後手にならないように模索することが大切だと思います。これが信頼醸成の基礎になると思います。
 さて、東アジアの現状と将来でございますが、二十一世紀の東アジアの情勢を見ますと、何といっても中国の存在の巨大さがあります。二〇五〇年の人口は約二十億と予想され、改革・開放路線に沿って経済発展がさらに順調に進み、WTOへの加盟がかなえば、アジアにおける中国の存在感はますます大きくなってまいります。
 また、中国を含め北朝鮮など社会主義国の存在は、経済、貿易の面で多少自由化され始めてはいるというものの、中国での天安門事件などまだ記憶に新しいものがあります。また、韓国金大中大統領の太陽政策にもかかわらず、北朝鮮の政権がいまだに厚いベールに包まれており、今後彼らが民主主義国家とどのような折り合いをつけるか注目されるところです。
 さらに、現在の中国と台湾との間の緊張関係も、今後のアジアの行方、そして日米を含む関連諸国にとって大きな影響を与える要因となると考えられます。
 さて、これについてのアメリカの対応でございます。
 クリントン政権からブッシュ政権へかわりました。湾岸戦争後のクリントン政権は、社会主義国中国と北朝鮮を国際社会の場に引き出すべく、いわゆるエンゲージメント政策をとり、中国へはWTOへの加盟を、北朝鮮へは韓国の金大中政権の太陽政策等を支持してまいりましたが、二〇〇一年に政権の座に着いたアメリカのブッシュ新政権は、冷戦後の再来と思わせるほど中国や北朝鮮に対して挑発的路線をとり始めていることが気にかかります。ブッシュ大統領の側近の多くは父親ブッシュ政権下で冷戦を経験した人たちであり、中国、北朝鮮など社会主義国への姿勢と反比例して、アメリカの対日政策はより緊密なものになっているのは皮肉なことでございます。
 さて、日米安保、そしてアジアの中の日本の位置づけについて触れたいと思います。
 世界の、なかんずく東アジアの平和と繁栄に大きく依存する日本の立場でございますけれども、冷戦が終わったにもかかわらず、防衛費は一向に削減されず、平和の配当はありません。ITが駆使されるという二十一世紀の戦略・戦術にとって、従来型の兵器や輸送手段の見直しが当然と思われますけれども、それにはいまだにほとんど手がつけられておらず、また兵器の調達コストは国際価格を大きく上回っております。技術力を温存するという理由で同じ企業に時代おくれの軍事部品の発注を続けることは、第二のゼネコン問題になりかねないと思います。真剣な検討が望まれるところでございます。
 また、ブッシュ新政権に国務副長官として参加しているアーミテージ氏などによる米国防衛大学国家戦略研究所の特別リポートによると、日本を戦略的パートナーと位置づけ、平等な関係を求めておりますが、平等なパートナーとは一体何を意味するものなのか、日米でゆっくり話し合う必要がございます。アメリカは、武力行使のレベルの平等性までも求めているのでしょうが、日本はそれにどのように対応するつもりなのか、また日本が東アジアの平和と安定に日米安保を通じてどう貢献するのか、日本側の考えをはっきりすべきだと思います。
 日本が現憲法下でアメリカにできる最大の貢献は基地の提供であり、いわゆる思いやり予算です。アメリカがこの極東地域において、中国と北朝鮮を競争的相手と位置づける以上、またロシアを引き続き牽制し続けるという意味においても、米国の世界戦略にとって日本の米軍基地、なかんずく沖縄の地政学的価値は潜在的により高まると考えられます。日本にとっても防衛上、中国や北朝鮮等のアジア諸国との関係においても、在日米軍基地の存在意義は決して小さいとは申せませんが、基地の縮小についてはさらなる話し合いをするべきだと思います。特に、沖縄が戦争中にこうむった筆舌に尽くしがたい苦難と、戦後も日本における米軍基地の七五%を負担している事実に思いを深くすべきであり、日本がアメリカの独自の軍事戦略に一方的に巻き込まれることは絶対に避けるべきだと思います。
 冷戦後、日米安全保障は引き続き日米関係の基軸として位置づけられておりますが、その目的やあり方は冷戦中とは異なることは当然です。それまでのソ連その他の国々からの脅威への対処という側面から、アジア太平洋全体の危機管理の側面を持ってまいります。
 そうした中で、安保を基軸とした包括的二国間同盟から多国間協調体制へ、そして仮想の敵を意識した戦術から、治安を維持する戦術へ移行すべきだと思います。そのために、PKOのような平和維持活動への準備、その際の集団的自衛権の問題も早急に結論を得なければなりません。
 また、我が国の沿岸において、密入国者あるいは不審船警備のための海上警備行動が必要だと思いますが、沿岸警備隊と海上自衛隊の共同作戦も今すぐ準備する必要があるのではないかと思います。その際、当然これまでの装備から新しい戦術に沿った組織や兵器、輸送体系をつくっていくことが大切だと思います。
 アメリカは既にサイバー戦略に重点を置き始めておりますが、アメリカにいながらにして、つまり、本国にいながらにして全世界を動かしていくというこの戦略に対して日本はどういう対応をとっていくのか、どう参加し貢献できるのか、自衛隊のさらなる高度情報化が急がれると思います。
 以上でございます。

発言情報

speech_id: 115114308X00720010523_006

発言者: 広中和歌子

speaker_id: 7185

日付: 2001-05-23

院: 参議院

会議名: 国際問題に関する調査会