高野博師の発言 (国際問題に関する調査会)

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○高野博師君 最初に、東アジアの安全保障について個人的な見解を述べたいと思います。
 東アジアの安全保障にとって重要な要素となるのは、台湾問題を含む中国と北朝鮮の動向であることは言うまでもありません。
 そこで、東アジアの安全保障を決定づけるのは米中関係でありまして、今後の米中関係は、基本的には協力と競争が混在する形をとると思います。ブッシュ政権は中国に対して、コンテインメント、封じ込めとエンゲージメント、関与の両方からとったコンゲージメント政策をとってくるのではないか、つまり競争的共存関係を求めてくるだろうと思われます。
 そこで、米中関係の中で日本がどう対応するのかがポイントになると思いますが、日米同盟の強化が不可欠であると思います。集団的自衛権の行使の問題は十分議論する必要があると思います。
 日米同盟の強化という中で、日中友好の深化が重要になると思います。日本が米中関係の橋渡し役あるいは調整者役を担う限り、日中友好と日米同盟の強化とは矛盾しないと思います。
 台湾問題が東アジアの安全保障を考える上で最大の問題になると思います。中国が武力を行使して統一を図ろうとする場合は、日本は強硬に反対すべきである。統一の方法については中台の自主性に任せるにしても、日本としては日中共同声明の立場を堅持すべきであります。なお、ブッシュ政権が最近台湾重視の姿勢を示していることから、米中関係に緊張が出てくる可能性があると思います。
 北朝鮮については、基本的には対話と抑止というスタンスがとられてきた。抑止という点で、日米安保条約による抑止効果はあると思いますが、日本独自に対北朝鮮に抑止の実態を有しているとは言えないと思います。微妙な問題でありますが、今後私自身も研究したいと思っております。
 昨年の南北首脳会談は画期的なものではありましたけれども、その後の和解への流れが本物であるのかどうか見きわめる必要があると思います。
 日本は、基本的には日米韓の協力関係の中で対北朝鮮政策を進めるべきであります。ブッシュ政権はクリントン前政権と異なって若干強硬な姿勢を見せており、我が国の対北朝鮮政策に変化が求められることもあり得るのではないかと思います。
 拉致問題については、日朝国交正常化の入り口論にはしないけれども、これを解決するよう主張し続けるべきであると思います。また、日朝国交正常化は、北朝鮮の軍事的脅威を削減させるという意味からも国交正常化に向けて努力を払うべきであると思います。
 北朝鮮に対する経済援助は、拉致問題もあり、核・ミサイル開発問題への警戒もあり、人道的援助に限定すべきであると思います。
 また、朝鮮半島の不安定化を避けるためにもっと中国の立場を活用できないか、対応を考えてもよいのではないかと思います。
 先般、金正男氏と思われる人物が不法入国しようとしましたが、政府は即強制退去をさせました。このような問題はきちんと調査すべきである。北側の無言の圧力とおどかしに屈したのではないか。金正男氏の来日目的は武器の取引という情報もあり、十分調査してしかるべきであったのではないか。もっとぎりぎりの駆け引きを行ってもよかったのではないか。日本は従来そういう対応を避けてきた。国民は必ずしも納得していないのではないか。
 私が東アジアに関して最も強調したい点は、以下の点であります。
 一つは、将来的には、日本がイニシアチブをとって、もっと構想力を発揮して、中国、台湾、南北朝鮮を含めた形で東アジアにおける自由貿易圏あるいは経済共同体を創設すべきではないか。これが東アジアの平和と安定と繁栄に貢献することは間違いないと思います。
 そしてまた、日本がイニシアチブをとって東アジア非核地帯を創設すべきであると思います。
 さらに、我が国に東アジア平和研究所を設立してはどうかと思います。
 日本には、中国、朝鮮半島を専門的に総合的に研究する機関が存在しておりません。寺島参考人も述べておられましたが、外交インフラなくして外交戦略なしということを想起すべきであると思います。こういう研究機関には、日本の研究者だけではなくて、中国など他の国からも専門家を招聘したい。後で述べますが、このような研究機関で歴史認識共同プロジェクト、こういうことを実施するのもよいのではないかと思っております。
 我が国の外交のあり方について、これも個人的な見解であります。
 戦後の我が国外交において特筆すべき外交上の成果というものは、言うべきものが思い浮かばない。これは、外交理念が明確でないためであり、また外交の自主性がないためであると考えます。二十一世紀の我が国外交においては、理念、原則を明確にする、相手国あるいは国際社会に対してこれを明確に発信し、メッセージ性を出していくことが重要である、国家としての信念ともいうべきものあるいは筋を通すべきではないかと思います。
 国家としての外交理念について考える場合に我が国が特に念頭に置くべきことは、世界の平和と国際貢献を行っていくということの重要性であることは言うまでもありません。そのために、地球の温暖化、エネルギー問題、貧困や難民、食糧問題、感染症といった地球規模問題群について国益、人類益の両者を追求しつつ、信頼と評価を得るよう努力すべきであると思います。
 また、我が国外交においては、これまでもあいまいな対応や、穏便に済ませるため、対立や摩擦あるいは政治問題化することを殊さら避けるような外交姿勢が見受けられた。真っ正面から問題解決に努力する姿勢が必要ではないかと思います。
 そこで、我が国外交の唯一ともいうべきてこはODAにありますが、もっと戦略的な活用を進め、また政治的、外交的発言をふやして、めり張りをつけるべきではないかと思います。
 我が国外交において日米関係が基軸であることは論をまちませんが、これも質的変化が求められていると思います。立体的な相互協力関係を築くため、対米追従、米一辺倒は脱却すべきではないか。対米関係においては、より我が国の自主性に基づいた外交をすべきでありまして、その結果、日本外交がもっとダイナミズムを持つことができるのではないかと考えます。
 米国のアジア太平洋及び東アジア戦略について、最近、米国側は二面作戦を捨てるとの報道がありましたが、これが実現すれば、東アジアにおける米軍の兵力は削減される方向になり、この結果、日米安保体制の中の地位協定の見直しの必要性も当然出てくると思います。
 対中関係について、これも日本外交には欠かせない重要な点であります。
 私は、先ほども述べましたが、真の日中友好の深化は日米同盟の強化とは矛盾するものではないと考えておりまして、我が国は日中友好関係の強化の努力を進めるべきであると思います。そのためには、過去の清算をきちんと行うことが重要であり、中国、韓国、東南アジア諸国と共同して、歴史に関する共同認識をまとめ上げるための歴史認識共同プロジェクトを立ち上げるべきではないかと思います。
 ドイツとポーランドは、三十年にわたって共同して教科書づくりを行うことによって相互の認識が相当深まったと言われておりますが、我が国はこのような例を参考にし、歴史認識をある程度共有できるような方向に持っていく必要があると思います。
 対中ODAについても、是々非々できちんと見直しを行うことも必要であると思います。中国に対してはODA大綱の原則も崩れている。我が国のODA原則はきちんと遵守すべきであると思います。対中関係では、対等の立場に立った明確な主張をしていくことが重要であり、例えば尖閣諸島の問題や海洋調査船の問題等について、はっきりと抗議すべきときには抗議すべきであると考えます。あいまいな外交姿勢をとっていると、米中関係の中で日本が埋没してしまうということが懸念されるからであります。我が国は、国家目標、戦略、政策を明確に打ち出す必要があると思います。
 次に、北方領土問題について、これも外交の理念と関連しますが、北方領土の交渉を行う際に、二元外交は足元を見られることになりかねないので排していくべきではないかと思います。世界には現在百四十四の領土問題が存在すると言われますが、中には数百年以上も解決していない領土問題もあります。このような息の長い領土問題を解決するには国内世論の支持が不可欠であり、そのため、国民に対してはっきりと経過がわかる交渉も重要ではないかと思います。そのような観点から、川奈提案のような外交秘密主義は排すべきではないかと思います。
 以上のような点を考慮しつつ、その底流においては、日ロ各般の協力関係、相互理解の促進への努力を引き続き継続していくべきであると思います。
 国連外交について、これは引き続き我が国外交において重要な位置を占めておりますが、中でも安保理事会の改革及び日本の常任理事国入りについて引き続きその努力を払うべきであると思います。また、PKOについても、我が国としてより積極的な貢献、支援をしていくべきであると思います。
 以上です。

発言情報

speech_id: 115114308X00720010523_008

発言者: 高野博師

speaker_id: 15245

日付: 2001-05-23

院: 参議院

会議名: 国際問題に関する調査会