緒方靖夫の発言 (国際問題に関する調査会)

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○緒方靖夫君 日本外交のあり方と東アジアの安全保障について、日本共産党の見解を表明いたします。
 我々は野党でありますけれども、日本国民に責任を持った外交を提言しながら独自の活動を進めてまいりました。東南アジア諸国の政府・与党との交流、会談などを通じてアジアの平和を促進する活動、北朝鮮と日本の国交正常化について提案し、超党派の訪朝団に加わりその道を切り開いてきたこと、唯一の被爆国日本ですべての国の核兵器廃絶を要求してきた政党として原水爆禁止運動の中でも独自に世界に向かって核兵器廃絶のイニシアチブをとってきたこと、力の行使と威嚇による国際秩序でなく、他国への不干渉、紛争の話し合い解決など、国連憲章の目的と原則を擁護した国連中心の平和秩序のための活動を進めてまいりました。
 第一に、国民の立場に立ち、国民の利益を擁護する自主的な外交です。
 調査会の議論の中でも、独自性のない、顔や姿の見えない外交と言われました。その要因として、何人かの参考人の指摘もありましたけれども、アメリカ言いなりの外交を改めることが必要となっております。
 ハワイ沖で米原潜によるえひめ丸沈没事件がありましたが、日本共産党は直ちに現地に調査団を派遣いたしました。私が団長として現地での救出活動の促進や原因調査に当たってまいりましたけれども、そのときに遭遇した日本政府代表の言動は現地でも奇異なものとマスコミに伝えられました。
 救援活動が進められているさなかに、日米同盟の堅持と米原潜の救出活動には落ち度がなく適切だったと繰り返したのです。それだけでなく、森首相が日米首脳会談の中で、この事件に関連して、米側の迅速で誠意ある対応に感謝すると述べたことで、日本政府の出先だけでなく政府全体の立場が明らかにされました。
 これは最近の一例にすぎませんが、事実を把握せずにアメリカの軍事行動を支持したり理解を示したりすることは、国際機関でのアメリカの投票機械とやゆされてきたこととあわせて、日本の外交が主権国家のものであるのかという疑念をつくっていることを指摘せざるを得ません。
 道理と節度を持って自国の主張をする外交は、意見の違いを超えて尊敬されるし、日本よりも小さい経済力や国力の国でも、その政治力が高く評価されている国が幾らでもあることを想起すべきです。
 第二に、アジアに軸足を置いた外交です。
 世界の人口の六割を占めるアジアは、日本の属してる地域というだけではなく、二十一世紀に大きな飛躍が期待されている大陸です。アジアに生きるという点で、アジアに今あらわれている平和の流れを本格化する点でも、ASEANプラス3などの枠組みが定着し、そこでの政治、経済、さらには安全保障の対話が進みつつあるもとでアジアに軸足を置いた外交は一層重要となっております。
 アメリカとの外交は、密接な政治的、経済的な関係から重要であることは言うまでもありません。そして、対等、平等の友好関係を発展させることは当然です。また、全方位外交も重要です。アジア外交は、日本の基盤、足元が問われる問題です。
 日本共産党は、再三表明しているように、日本の国連常任理事国入りには反対です。それによって負う義務が憲法に抵触するという理由もありますけれども、アジアにどれだけ信頼を得ているのかという自己分析をすることが必要だと思います。
 マレーシアのマハティール首相は、日本がアジアの一員とならない限りは国連常任理事国入りには賛成できないと述べております。私は、どの国の意見も絶対視するものではありませんけれども、あれほど日本をよく理解している国のリーダーが、日本政府が多数派工作をしていることを承知の上でなぜこうした意見をあえて述べるのか、真正面から受けとめて考えてみる必要があると考えます。
 東南アジア非核地帯条約とその批准の推進が進められておりますけれども、これに日本政府がどういう態度をとるのか。かつて戦争と紛争の絶えなかったASEANは、外国軍事基地のない非同盟の地域になっておりますが、非核化と軍事ブロックの解消にどういう態度をとるのか。
 昨年、ASEAN国会議員総会に私は参加し、日本国会代表団との対話集会の席でインドネシアの代表が、日本からの経済援助やODAは特権的な階層への利益にはなったが国民には余り回ってこなかった、重要な援助を国民全体のものにしてほしいという要望が出されました。経済協力が各国の国民の利益になるように必要な見直しを行うことも課題になっていると思います。
 第三に、日本の軍部が進めた侵略戦争への反省を明確にし、平和原則の憲法を持つ国として軍縮への流れを大きくし、世界で唯一の被爆国として核兵器廃絶のイニシアチブをとることです。
 教科書問題が重大な外交問題として発展しておりますが、これは、日本の進めた戦争がアジアの独立と解放を促したといった記述を歴史の事実として承認できるかという問題であり、私たちは断じて容認できないという立場です。アジア諸国の政府も国民も抗議しているように、この問題は日本政府の戦争への反省に疑問が持たれている事態であり、このままでは絶対に終わらない、時間が解決する問題でもありません。
 さらに、小泉首相は、集団的自衛権の行使とそれを可能にする憲法改正を提起しております。
 この背景には、アメリカのブッシュ政権の国務副長官に就任したアーミテージ氏らが強調しているように、日本は集団的自衛権の採用をという強い要求があります。日本の憲法が集団的自衛権を禁じていることで米軍の軍事作戦が極めて複雑なものになっており、有事の際に日米が共同で紛争の処理に当たる場合に支障を来すという現実的な戦略作戦の対応として提起されているもので、有事法制化の動きとあわせて極めて危険なものです。
 小泉首相のこうした表明をアジア諸国の新聞は、アメリカの言いなりという日本政府の一番古いやり方を踏襲したものであり、到底改革とは言えないと批判しつつ懸念を表明しております。
 日本は、憲法で戦争を放棄し軍事力を持たないことを定めています。憲法九条をしっかりと守り、それに基づく外交こそアジア諸国との真の友好を築くものになると考えます。
 次に、アジアの安全保障の問題です。
 日本共産党は、ARF、ASEAN地域フォーラムを東アジア地域の平和と安全のための対話機構の枠組みとして重視しております。その重要性は、東アジアのすべての国が参加していることに加えて、その合意にあります。それは、どの国も敵視しないこと、軍事力による共同制裁を予定していないことであり、これを実行するならばアジアの平和の構築への大きな貢献になることは間違いありません。
 そもそも、世界には欧州のEU、米州のOAS、アフリカのOAUなどがありますが、こうした政治的プラットホームがない大陸がアジアでしたから、それだけにこの発展を喜んでおります。
 さらに、ASEANプラス3という枠組みがあります。ここで経済問題のみならず、安全保障・政治的イニシアチブを強めていくことを注目しております。
 九九年十一月、マニラで行われた第三回ASEANプラス3首脳会議では共同声明が採択されました。
 そこには、「政治・安全保障の分野」の項で、「各国首脳は、東アジアにおいてこの分野で共有する関心事項に対処する上での協力を強化することにつき意見の一致を見た。」と明記されました。
 さらに、共同声明には、「各国首脳は、国連憲章の目的と原則、平和五原則、東南アジア友好協力条約、及び普遍的に認められた国際法の諸原則に従って、相互の関係を処理することへのコミットメントを強調した。」と書かれてあります。
 平和五原則は、五四年に周恩来とネルーが確認し合った領土・主権の尊重、不可侵、内政不干渉、平等・互恵、平和共存の原則です。
 アジアでのアメリカ軍の存在について、アジア諸国でも日本国内でもいろいろな意見があります。しかし、各国の内政に干渉しないこと、軍事行動をやる際には国連の決議が必要なこと、それ以外で軍事力が行使されるのは、侵略への自衛、反撃の場合だけであることが国際社会で確認されるなら、平和と安全保障にとって大きな意義を持つことは間違いありません。これは、今日の国際関係、地域関係では非常に重い内容を持っております。
 台湾問題の平和解決は、日本にとってもアジア全体にとっても重要な課題です。その際、国際法の枠組みから見ても、日本がかつて台湾を占領、支配してポツダム宣言で中国に返したという経過を持つ国として、一つの中国の原則は明瞭であること、これまでミサイル演習などが行われ緊張が高まったことがあったわけですが、日本共産党は平和的な解決を中国側にも求めてまいりました。とりわけ、台湾の人々の共感を得られるようにすることが大事だという提起を直接、指導部間の会談の機会に行ってまいりました。
 そうしたもとで、この一月に行われた銭其シン副首相の台湾問題についての演説で、台湾についての表現を変えたことが注目されました。それまでの中国は一つであり台湾は中国の一部という表現から、中国は一つであり中華人民共和国と台湾は一つの中国を構成しているというふうに変えたわけです。三月、私が中国の代表団と会談したときに、その変えた動機として中国側は、台湾の人々の声を聞くべきだという日本共産党の提言を重視したと語っておりましたけれども、中国側の対応についても率直に意見を述べてきたことについても紹介しておきたいと思います。
 朝鮮問題は引き続き重要です。
 この点では、ブッシュ米政権の政策が、ペリー報告など、前政権と異なるものとなりつつあることがさまざまな影響を与えておりますが、ペリー報告は、北朝鮮について、願望からではなく、現実から出発して、理性的で現実的な方向を示した重要性を持っています。韓国の金大中大統領の太陽政策なども相まって、昨年六月に南北朝鮮首脳会談が行われました。最近のEU代表団の南北朝鮮訪問は、停滞を見ていた動きに活をもたらすものとなりつつあります。金正日氏は、二〇〇三年までミサイル発射を凍結すること、訪韓により第二回目の南北首脳会談を行う意思を確認いたしました。
 現在、停滞している日朝国交正常化交渉を前進させることが求められていると思います。侵略戦争と植民地支配の過去を清算するために積極的に対応することが必要です。その際、いわゆる拉致問題については、この間の国会質問でも明らかになっているように、七件十人の件は、直接の証拠が欠如していること、このことは政府も認めている問題ですけれども、捜査の到達点の現状に立って、それにふさわしい交渉による解決が必要だと考えます。
 日本共産党は、アジアで平和の流れを強く太くするために引き続き力を尽くすものであります。
 以上です。

発言情報

speech_id: 115114308X00720010523_010

発言者: 緒方靖夫

speaker_id: 18665

日付: 2001-05-23

院: 参議院

会議名: 国際問題に関する調査会