西田良一の発言 (農林水産委員会)
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○参考人(西田良一君) 私、全国漁青連の西田でございます。
私ども漁業者が一番待ち望んだ水産基本法案並びに関連法案の改正について、当委員会で御審議いただいておりますことに対し、まずもって御礼を申し上げます。また、本日は漁業の現場から声を述べさせていただく機会を与えてくださいましたことに対し、心より感謝を申し上げます。
先生方の御努力により、漁業が国民に対し水産物を安定的に供給するための重要な産業として、この健全な発展を図ることを理念とした基本法が制定されることになれば、私たち青年漁業者が将来に託すことができる漁業づくりにとってまさに時宜を得たものと考えます。
私は、薩摩半島の西に位置します日本三大砂丘の吹上浜、そして薩摩焼の発祥の地として有名な東市来町の江口漁協の組合員でございます。現在、四・九トンの漁船で息子と二人で刺し網やゴチ網漁業を営んでおります。昨日も深夜二時に出港して午前九時ごろまで漁をしまして、沖合七、八マイルのところでございますが、チコダイというタイをとる漁業を終えて、それから午後の便で上京いたしました。私自身、息子と一緒に漁業ができる喜びは非常に大きなものを感じております。しかしながら、次世代の水産業を考えると、大きな不安もあるわけでございます。
本日は、基本法を初めとする新たな法律の整備と新政策の展開が漁業や漁村の二十一世紀を切り開くものとなりますよう期待し、全国の青年漁業者を代表いたしまして意見を述べさせていただきます。
最初に、漁家の経営の現状について申し述べます。
先生方御承知のとおり、漁村の高齢化が一段と進んでおり、私どもの漁協でも、正、准合わせて二百六十名の組合員の平均年齢は六十にもなります。こうした中、地域の漁業を立て直すためには、若い漁業者を育て、魅力ある漁業としていかなければなりません。
しかし、漁業の現状は、私の江口漁協でも組合員の漁獲数量が減少し、水揚げ単価も大幅にダウンしております。漁家全体が苦しい経営を強いられ、漁業継続が困難となっている者も出てきております。現に、私の仲間の青年漁業者の中にも、おかに上がりトラックの運転手として転業した者もおります。
江口漁協の統計ですが、タイ類の平均単価は、平成七年のキロ千四百四円に比べ、五年後の平成十二年は八百三十六円と、約四割もダウンしております。管理型漁業を実践しておりますが、魚価のダウンで漁業収入が減少し、漁船の建造費の返済、それに償却費や資材、油代、氷代、保険料、その他経費を差し引きますと、年間の漁業実収入としては三、四百万円が精いっぱいのところでございます。育ち盛りの子供を抱えた我々青壮年層にとっては特に厳しく、教育費や住宅費を考えると、漁業の将来に夢を持てないどころか大きな不安を抱かざるを得ないというのが現場の実情でございます。
江口漁協では、水揚げの約三分の一を漁協で買い取り、鮮魚の出荷や加工販売などをしながら努力しておりますが、小規模の漁協では自助努力だけでは限界があり、どうか政策的な経営安定対策をぜひともお願いいたしたいと考えます。
次に、水産基本法のもとに、次の世代を担う私たち青壮年層が夢を持てる重点的な政策展開への期待について申し上げます。
その期待される政策の第一は、魚価・流通でございます。
かつては、大漁貧乏という言葉のとおり、大漁で価格が下がり不漁になると値段が上がるという構造でしたが、今は全くさま変わりし、不漁でも値段が上がらないという状態が続いております。これは、まさに無秩序な輸入水産物の増大も大きな原因ではないかと思います。流通環境の変化に産地が取り残されてしまったことも原因の一つではないかと考えております。
さらに、魚はないごてこげん高かとや、これは鹿児島弁でございますが、魚はなぜこんなに高いのと町の人からよく言われます。生産者の手取り価格と、複雑な流通を経て消費者に届くときには、価格が四倍にも五倍にもなっていることにびっくりさせられます。
幸い、基本法の中には、漁業生産だけではなく、流通や加工、そして魚価への対応が盛り込まれております。これからは、供給する側、生産者サイドがいかに力をつけて消費者にダイレクトに届くような流通の改革を行うことができるかにかかっているのではないでしょうか。
もちろん、私たちも努力をしなくてはなりません。私は、漁協に水揚げされました魚や自分でとった魚の一部を、毎日車で約三十分かけて隣町の食堂に届けております。そこは百名ぐらいのお客さんの収容能力がありまして、江口浜の新鮮な魚を喜んで食べてもらっております。その町の町長さんも、江口漁協の魚が町を元気にしてくれると喜んでもらっております。私も、おかげさまで魚食の普及と私の収入安定に少しですが役立っております。
全国各地でも、漁協青年部が核となって、朝市を開いたり、ブランド化したり、地元の旅館組合と提携したり、個々に流通の対策に取り組んでおりますが、自助努力には限界があります。消費者に喜ばれ漁業の再生産が可能となる魚価・流通対策が図られることを大いに期待しております。ぜひよろしくお願いいたします。
また、期待される政策の第二は、環境保全と資源管理対策です。
漁場で網を引くと、ビニール袋などのごみが潮の流れによっては大量に絡んできます。おかや川などで捨てられたごみは必ず海に、そして漁場に流れていき、資源に影響を及ぼしているのではないでしょうか。私たち漁業者は、毎日このごみを回収して漁協の集積所まで持っていっております。
このような現状ですから、漁場環境の保全には川上、川中の協力は絶対に不可欠なことであります。水産庁と他省庁とが横断的に連携して、企業や自治体の協力による、川上から海に至る一貫した環境保全のための政策を確立していただきたい。私たち青年部、婦人部も、ことしから措置していただいた漁民の森づくり活動推進事業に積極的に参加し、森、川、海を通じた環境保全への取り組みを強めていきたいと考えております。
資源の管理については、私どもの漁協でも、マダイやヒラメについて小型魚を再放流する運動や、放流事業を行うため、ヒラメ貯金といって水揚げ金額から一定の拠出も行うなど、将来の資源のためにみんなで努力をしております。
しかし、ここで問題なのがプレジャーボートでございます。遊漁者がふえ、漁業とのトラブルが起きていることです。我々青年部の集まりでも、マナーやルールがない遊漁の横行が資源や漁場を破壊しているといつも不満の声が出されております。資源管理の面から、プレジャーボート等の規制や遊漁についての一定のルールづくりや調整の枠組みがどうしても必要でございます。それがなければ、若い漁業者の資源管理の意欲を失わせかねず、資源の将来に不安を持ちながら漁業を続けなければならないという状態は解決できません。
第三は、漁協の強化対策です。
私たち漁業者の基盤は漁協にあります。しかし、今のままの漁協では経営も不安定で、組合員から期待される漁協とは言えません。水産基本法の理念にこたえることができ、組合員や地域の人たちから信頼され、存在感のある漁協がどうしても必要でございます。このためには漁協合併を進め、自立できる漁協をつくり上げなければなりません。このため、合併協議の委員会にぜひとも青年部や婦人部の代表を入れていただき、漁協の改革のため、国や地方自治体の強力な御支援をお願いいたしたいと思っております。
最後に、私ども漁協青年部、婦人部活動への御支援のお願いでございます。
地域において漁業は基幹産業であり、漁業の発展が地域全体の発展につながることを考えますと、若い中核となる漁業者をいかに残し育てていくかにかかっていると考えております。幸い、水産庁の新事業として、将来の漁業の担い手となる中核的な青年漁業者の集団による意欲的な取り組みを支援し、活力ある経営体を育成していく政策が今年度よりスタートしております。私ども青年漁業者も積極的な取り組みを行いたいと考えておりますので、この政策を効果的で大きなものに仕立てていただきたいと切に熱望いたします。
二十一世紀の漁業を支える若い担い手を育てる人づくりの視点から、水産業改良普及事業をぜひとも拡充していただき、例えば都会からのIターン、Uターン者などを含めた、漁業に魅力を感じる若い男女をリードするコーチャー制度を漁業士を活用して取り入れるなど、今後とも担い手の育成に向け、地域の特性や実情に応じた国の施策の拡充が図られますようにお願いする次第でございます。
さて、七月二十日は海の日でございます。この海の日には、私ども全国の漁協青年部、婦人部が全国一斉の海浜清掃運動に取り組んでおりますが、私たちは今、農協の青年部組織との連携も深めております。今後、各地での交流を深め、一緒に環境保全の運動を進めようと話し合っているところです。環境を守る運動を手始めとして、地域を活性化する運動に発展するように、各地で農協青年部との交流、連携がもっと深まればと願っているところです。
このように、漁協青年部、婦人部の育成は活力ある地域づくりの広がりにつながるものと信じております。ぜひ先生方のお力添えをお願いいたしまして、私の意見陳述とさせていただきます。
ありがとうございました。