山下栄一の発言 (本会議)
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○山下栄一君 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました学校教育法の一部を改正する法律案、社会教育法の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨説明に対し、小泉総理及び文部科学大臣に質問をいたします。
最初に、先日、私の地元の大阪で起きました校内児童殺傷事件についてお伺いいたします。
教室に包丁を持った男が乱入し、児童や教員を次々と刺し、小学校の一年生、二年生の子供たち八人が亡くなりました。平和な希望の世界が一瞬のうちに地獄と化しました。日本の教育史上、前代未聞の大事件となりました。亡くなられた子供たちや御家族に心より哀悼の意を表します。また、まだ入院されている方々を初め、心身深く傷を受けられた池田小学校の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
学校の安全管理のあり方が問われております。子供たちの命を断じて守ることは、すべてに優先する政治の仕事であり、学校の使命です。学校は決して無防備であってはならない。そのための警備のあり方を真剣に、また早急に検討すべきです。その際、地域に開かれた学校づくりの全面的見直しについては、私はそれは正しいのかと考えております。教員だけではなく、地域の大人の総合的連帯で、全力で学校、子供を支えるという考え方に立った安全管理制度を追求すべきではないかと考えております。総理、いかがでしょうか。
次に、精神医療体制の見直しです。
精神、心の専門家のニーズは高まる一方であります。精神疾患は、特定の人だけではなく、だれにも起こり得る病、そんな時代を迎えているのではないか。現代社会は精神的ストレス社会です。人間の豊かな心をはぐくんできた自然は周りから消え、さらに人間同士の直接的触れ合いは減少する一方です。人間精神の鍛えの場も機会も減っております。家庭、学校、地域も、時には永田町や霞が関も心の専門家を必要とする時代となりました。しかし、その数は絶対的に不足しています。精神医学も心理学も、その学問分野では中心的扱いを受けてこなかったのではないか。
心の専門家の養成と配置は緊急の国家的課題だと考えますが、総理、いかがお考えでしょうか。
触法精神障害者への対応が議論になっております。我が党も直ちに検討会を設置いたしました。
凶悪犯罪を犯しても、精神障害が認められれば責任が問われないのはおかしいという声が高まっております。無罪や不起訴となった精神障害者の方々の処遇のあり方を、法制度そして専門治療施設の設置を含めた保健福祉制度、再犯防止のための支援制度などの観点から早急に検討すべきであります。その際、精神障害者やその家族を孤立させない、地域みんなで支えるという理念に立つことが大事ではないか。総理の所見をお伺いいたします。
問題を起こす子供への対応について質問いたします。
今回の法改正で義務教育における出席停止制度がテーマとなっております。出席停止処分は、就学義務を課す今日の義務教育制度下の例外的規定であり、緊急避難措置であります。教室の世界に行政処分たる権力的措置は本来なじみません。今回の法改正は、この規定を発動しやすくするのではなく、発動に当たっての手続の明確化を図り、要件を厳しく規定したことは評価できます。それについての文部科学大臣の答弁を求めます。
私は、出席停止処分を発動するまでどんな努力を学校が行ったか、このことが問われなければならないと思います。どんな劣等児でも優等生にしてみせるとの迫力で教員が連帯して問題行動のある子供に当たる、場合によっては地域のおじさん、おばさんの協力も得る、児童相談所や警察の知恵も借りる、そのようなあらゆる努力を学校が地域の支援を受けて行う。文部科学省などが推進する学校サポートチームの考え方は、出席停止発動後だけではなく発動の前の取り組みとして大切だと考えますが、文部科学大臣の見解を求めます。
出席停止処分を受けた保護者そして当該子供は、昭和三十八年に制定された行政不服審査法の適用除外の扱いを受けております。学校教育における行政不服審査手続について、法律の創設を含め早急に検討すべきと考えますが、文部科学大臣の御所見をお伺いいたします。
兵庫県川西市が、平成十一年、全国に先駆けて設置した子どもの人権オンブズパーソン制度はそのすばらしいモデルになると考えておりますが、あわせてその評価を伺います。
問題を起こす子供は特別の子供ではない、だれでも起こし得るという認識が大事であります。安易な排除の論理は、問題児から守るつもりであった子供にもマイナスの効果を及ぼす可能性があります。
問題を起こす子供に対する教育はどうあるべきか、学校そして社会の教育力が問われております。安易な出席停止の発動は教育力を衰弱させると考えますが、文部科学大臣の所見をお伺いいたします。
次に、教員の資質向上の問題です。
一たん教師になれば生涯教師という考え方は見直す必要があります。教師の転職への道を開く今回の法改正は評価します。少子化時代、教員社会の高齢化は深刻な問題です。問題教員だから転職ではなく、教員経験が他の社会分野で生かされる前向きの転職が理想です。
私は、教員の教える技術そして人格の向上は、研修会方式ではなく、授業の公開がかぎを握ると考えています。教師は授業が勝負です。私は、百の研修会より一回の公開授業、参観日は特定日だけではなく毎日参観日、これが最大の資質向上策である、コストもかからない、このように考えますが、総理はいかがでしょうか。
最後に、子育て、後継者育成の重要性について総理のお考えを確認したいと思います。
本来、動物は激しい生存競争の中で後継者世代を育て上げることを至上命題としてきました。魚も鳥も動物も子育ては命がけです。他方人間は、この子育て事業の優先順位を社会の進歩とともにどんどん低くしてきたと言えないでしょうか。快適で便利な生活を求める中で、最も基本的な後継者育成を中心部から周辺に追いやってきたのではないか。心の空洞化が拡大する中で、また児童虐待が激増する中で、子育てのだいご味、我が子を自身が感動するような大きな人間に育てることができたと言える子育ての喜び回復運動が必要ではないでしょうか。
子供の専門家が大変少なくなってきました。医学では小児科の先生は主役ではありません。警察の捜査でも裁判所でも少年院でも、少年の心がわかる専門家が不足しています。児童の専門施設である児童福祉施設や児童相談所は予算も人員も貧弱です。日本は戦後五十年、子供を大切に扱ってこなかったのではないか。今日の青少年が引き起こすさまざまな問題は、そのしっぺ返しではないかとさえ思えます。
大人中心社会から子供を大切にする社会への転換こそ構造改革の柱だと訴えたいと思いますが、総理のお考えをお尋ねし、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕