緒方靖夫の発言 (本会議)

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○緒方靖夫君 私は、日本共産党を代表して、土地収用法の一部を改正する法律案について質問いたします。
 初めに、与党三党などが本法案を、衆議院で公聴会も開かず、わずか二日間の審議で強行し本院に送付してきたことに対して、遺憾の意を表明するものであります。
 そもそも土地収用法は、公共事業に必要な用地を確保するため、その土地の権利者に必要な補償をした上で強制的に所有権を放棄させる手続を定めた法律であります。憲法第二十九条は、財産権を侵してはならないとし、私有財産を取り上げるには、「正当な補償の下」、「公共のため」と厳格な制限を設けております。今回の改正案は、地権者の権利を制限してその手続を簡略化させようというものであり、極めて重大であります。
 改正案は、土地収用を実施する公共事業の事業認定の手続で、透明性、公正性、合理性を確保するとして、事前説明会や公聴会の開催、第三者機関による意見聴取、認定理由の公表を義務づけております。これらは現行法の運用実態を見れば当然のことであります。これまで事業認定は昨年度も全国で七百八十三件を数えましたが、事業者が地権者側に説明の限りを尽くしたケースは見られません。
 重要なことは、こうした住民軽視の従来の政府の姿勢を根本的に反省して改めることであります。そうでなければ、事前説明会や公聴会の義務づけも結局は形式的な措置で終わることは明白ではありませんか。大臣の御認識を伺います。
 第三者機関による意見聴取について、改正案は、その任に当たる機関を、事業認定庁が国土交通大臣の場合は社会資本整備審議会にゆだねるとしております。しかし、同審議会は国土交通大臣の諮問機関として設置されたものであり、そのメンバーも国土交通大臣が任命することとなっております。第三者機関による意見の聴取とはいいながら、その聴取機関が事業を進める国土交通大臣の任命というのでは、中立性を担保することにはなり得ないではありませんか。明確な答弁を求めるものであります。
 認定手続における重大な問題は、事業認定庁が国土交通大臣または都道府県知事である現行法を改めず、本来分離すべき事業者と事業認定庁とが同一だということであります。事業者が国土交通大臣の場合など、同大臣みずからが申請も認定も行う仕組みになっております。これでは事業認定の公正性など確保できないことは明白ではありませんか。
 そこでお伺いしますが、過去五年間の大臣認定事業のうち、申請事業は何件であり、そのうち認定されなかった事業は一体何件ありますか。あわせて御答弁いただきたい。
 ことし一月の省庁再編により、国直轄の公共事業の大部分が国土交通省の所管下に入ったことで、事業者と事業認定庁との同一性の弊害がさらに大きくなることは明らかであります。事業官庁の長が事業認定を行うといったお手盛り的なやり方を見直し、事業認定は事業官庁から独立させ、住民も参加した第三者機関で行う制度こそ検討すべきではありませんか。責任ある答弁を求めるものであります。
 改正案は、事業認定段階の見直しとともに、収用委員会の審理で事業認定が違法だと主張することを禁止するとか、地権者が多数の場合も審理で発言者を制限するとか、収用手続の調書への署名押印を廃止し、補償金も郵送で送りつけるといった措置を盛り込んでおります。
 その理由について政府の説明資料は、収用手続にかかる膨大な労力とコストが事業計画をおくらせている、そのように述べております。しかし、事業者内部の事務処理負担にすぎない問題を、権利者の財産権収用の簡便な手続によって解決しようとするのは本末転倒であります。すべては早期収用を最優先させ、そのためにトラスト運動を初めとする反対運動対策を意図したものであることは明らかであります。
 これまでにも収用委員会には、公共事業そのものへの批判や公益性に対する疑問が数多く持ち込まれてまいりました。なぜでしょうか。現行法が計画策定の段階から事業の公益性や公共性を議論できる場を全く保障していないからであります。その根本を見直さずに、地権者や住民の意見の封殺を図るのでは、公共事業をめぐる問題を解決するどころか、紛糾させることになるのではありませんか。大臣の答弁を求めるものであります。
 改正案は、手続の簡略化に加えて、土地収用の適格事業として、地方自治体が設置するリサイクル施設や廃棄物処理センターが建設する廃棄物処理施設を追加するものとしております。しかし、第三セクターは情報公開法や関連する条例の適用外であり、住民が用地選定の適否を判断するための知る権利が保障されておりません。これでは、廃棄物処理施設用地の選定への住民参加や環境影響評価が万全でないまま、用地不足の解消だけを優先することになり、地権者のみならず周辺住民の不安と不信を今以上に大きくするだけではありませんか。大臣の答弁を求めるものであります。
 現在の公共事業は、その計画段階において関係住民にすら情報が十分に公開されず、公共性や公益性について住民を含め議論して合意形成を図る仕組みがありません。東京では、高尾山の自然を破壊する圏央道計画や、土壌、地下水、飛灰汚染の危険が無視され、そして強行されようとしている日の出町のごみ処分場拡張などに批判が高まっております。特定区間が長期間凍結されている東京外郭環状道路にしても、住民の合意なく線引きされたものであります。
 事業の計画段階から透明性や公正性、住民参加が保障されないもとで土地収用手続を簡略化することは、最終段階での意思決定への住民参加の場をこれまで以上に狭め、むだな公共事業の推進を一層容易にするだけではありませんか。
 事は、憲法の保障する国民の財産権を守るかどうか、住民の意思を尊重するのかどうか、自然環境を守るのか破壊するのか、税金のむだ遣いを許すのかどうか、民主主義の根本にかかわる大問題であることを強調して、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣扇千景君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 115115254X03320010620_008

発言者: 緒方靖夫

speaker_id: 18665

日付: 2001-06-20

院: 参議院

会議名: 本会議