広中和歌子の発言 (本会議)
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○広中和歌子君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました林業基本法の一部を改正する法律案について、農林水産大臣並びに関係大臣にお伺いいたします。
私たち日本人は、古来、森林と深いかかわりを持ち、森林から多くの恵みを享受してまいりました。すなわち、森林は単に家や家具をつくるための木材や、料理し、あるいは暖をとる薪炭を提供する場としてだけではなく、水源の涵養やCO2の吸収など環境面で多面的な機能を持ち、かつ多様な野生動植物の宝庫としても人々に広く利用されてまいりました。
また、日本人になじみの深い神社や寺の境内に広がる鎮守の森は、多くの船に水先案内の役を果たしてきたとともに、想像力をかき立てる空間でもあり、数多くの伝説や物語を生んできました。私たちが子供のころからなじみのある「こぶとりじいさん」、「竹取物語」など、寓話の多くが森にかかわっております。すなわち、鎮守の森は日本人の伝統、知性、感性と一体化し、魂の宿る森であったと国際生態学センターの宮脇昭氏は述べております。
最近、私は、世界自然遺産に登録された屋久島や白神山地を訪れる機会に恵まれましたが、日本人がいかに森林と深くかかわり共生してきたかということを実感いたしました。森林の持つこのような文化的、環境的視点が急速な経済発展の中で忘れられ、単に木材やパルプとして利用され、あるいは経済性がないからという理由で輸入に置きかえ、他国の森林はもとより我が国の森林の荒廃を招いていることへの深い反省を込めて、以下、質問させていただきます。
我が国の林業は、これまで、昭和三十九年に制定された林業基本法のもとで行われてまいりました。
この基本法の背景には、戦後の復興期を経て経済の発展期に差しかかり、建築用材、パルプ用材としての木材需要が急速に拡大する一方で、戦中戦後の乱伐からようやく復旧した山林では生産供給が追いつかないため、林業の安定的な発展への要請の高まりでした。第二点として、経済成長に伴い第二次産業、第三次産業が発達するに伴って、労働力がこれらの産業に吸収され、第一次産業を担う農山村から人口が流出する社会の変化を背景として、林業従事者の経済的、社会的な地位の向上が要請されるようになりました。これら二つの課題に対処することを目的として林業基本法が制定されたのであります。
この二つの目標を持って制定された林業基本法の果たしてきた役割について、農林水産大臣にお伺いいたします。
申し上げるまでもなく、現在、日本の林業の置かれている状況は非常に厳しい。円高などによる外材の輸入価格の低下、小規模林業経営者が多く、経営効率が改善しにくいなど、生産コスト抑制の限界から、国産材は安価な外材に太刀打ちできません。それに伴い、林業経営は成り立たなくなり、若い後継者の確保にも困難を来しております。
林業の弱体化は、森林の状態の悪化にもつながっております。手入れの行き届かなくなった山では、伐採後に植林されることもなく放置されております。間伐が行われないところでは、木の一本一本の育成状況が悪く、下層植生が育たないために表土が流出し、本来の森林としての機能を失っています。つまり、林業経営が厳しい状況に陥り、そのため人手が入ることを前提としている人工林は崩壊の危機に直面しているのです。
このような状況のもとで、国民の森林に対する期待も大きく変わってきております。昭和五十五年には、森林に対する期待として第二番目に挙げられていた木材生産は、平成十一年には九番目になる一方で、平成十一年には温暖化防止機能が第三位に入っています。森林の持つ公益的機能を重視し始めてきたのです。森林を木材産出の場というよりも自然環境保全の場としてとらえ、そうした森林の機能を持続的に発揮させることが重要であるとの認識が高まってきたというのが昨今の状況と言えます。
本改正案において基本理念の大幅な見直しが提案されております。従来の理念である国内林業の発展の上位に、森林の有する国土保全、その他の多面的機能の発揮について規定されていることがそれです。
そもそも、理念法としての基本法の趣旨を考えるならば、現行の基本法のように林業に焦点を当てるのではなく、改正法のように、まず森林を守り育てることを主とし、その森林を経済活動の場とする林業の発展を規定することが本来のあるべき姿ではなかったかと思われます。林業が発展するためには、まずその業を行っていくための場としての森林が必要で、その場がなくなってしまえば産業も立ち行かなくなるのは当然だからです。
このため、本改正案の趣旨には評価する点があると考えますが、森林の多面的機能の発揮を基本法に加えることに至ったいきさつと、新たな基本法のもとでの今後のビジョンについて農水大臣にお伺いいたします。
また、こうした状況を見れば、私はもっと早期に基本法を見直すべきであったと思います。二十数年前には現在の森林・林業のありようが予測できたという意見もございますが、このような状況になるまで見直しを行わなかったことについての御見解をあわせてお伺いいたします。
次に、本法の改正によって林業経営はどのような形になることが望ましいと考えていられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
平成十一年度の林家経済調査の結果によると、林家の林業所得は一戸当たり平均三十五・八万円にすぎません。保有山林規模別に見るならば、二十から五十ヘクタール保有林家では二十四・七万円、五十から百ヘクタール保有林家では五十八・五万円、百ヘクタールから五百ヘクタールの林家で百十・九万円にすぎないのです。百ヘクタール以上を保有する大規模林家でさえ年間所得が百十一万円にすぎないのでは、新たに林業に取り組もうとする人が出てくるか疑問です。
所得政策を含めて林業を考え直さなければ、林業の消滅のみならず森林環境の破壊につながります。あるべき林業経営の姿、そしてそのビジョンに対する施策をお伺いいたします。
次に、国民参加による森林の保全についてお伺いいたします。
冒頭申し上げたとおり、我が国は一見緑豊かでありますけれども、その内情はお寒い限りで、森林の荒廃が進んでおります。このように荒廃が進んだのは、林業経営が立ち行かなくなり、森林所有者の自助努力では管理できなくなっている状況があるからです。こうした森林については、国や自治体などの公的な関与により整備を進めるとともに、国民の自発的な活動によって整備を進めることも重要です。例えば、ナショナルトラストのような形で森林を愛する国民に森林を守る運動に参加していただく方法も考えられます。
このような国民の自発的活動についてどのような支援を行っていくか、農林水産大臣の御見解をお伺いします。
我が国では、都市集中化が進み、宅地開発により緑が減少してまいりました。欧米のように郊外と呼ぶにふさわしい緑地が十分に存在しないのが現状です。例えば、都市近郊に残されたトトロの森のような貴重な里山林を子孫に残していくことが我々の責務ではないでしょうか。一昨年騒動となった所沢のダイオキシン問題などは、相続税の負担によって林地が産廃業者に切り売りされたことが要因になっていると聞いております。
都市近郊において緑が十分に保全できるような税制の見直しを含むさまざまな施策が必要ではないかと考えますが、農水大臣及び財務大臣のお考えを伺います。
林産物は、森林の環境に寄与する多面的機能を考えれば、当然、自由貿易のルールから除外することが妥当であるにもかかわらず、貿易上、鉱工業製品同様の扱いを受けてまいりました。その結果、諸外国、なかんずく途上国の熱帯雨林は違法伐採などにより絶滅の危機に瀕しており、これまでこうした木材が我が国に大量に輸出され、大きな国際問題となって、日本が名指しで非難されることもありました。
他方、我が国の林業は、人手難や労賃の高さ、また円高によって国際競争力を失っております。このため、日本の森林面積は日本の国土の六七%と先進国中非常に大きいにもかかわらず、森林は荒廃し、持続可能な森林経営からはほど遠い状況にあります。
農業、なかんずく米は保護されたのに、なぜ林業にはそれがないのでしょうか。WTOのルールに環境の視点から例外をつくるべきではないかと考えます。つまり、輸出入国双方の持続可能な森林経営を確保するために、林産物に対して関税をかけ、これを国内外における植林などの森林整備費に充てるよう、WTOの小委員会で検討することを我が国は提案すべきだと思います。
また、我が国では林業経営者が少数であり、個人経営者であることから、横の連絡が少なく、貿易ルールに対しても政治的圧力団体としての主張を行うことが難しい状況を見れば、そうした方々の声なき声を吸い上げる必要があるのではないでしょうか。
これらの点について、農水大臣のイニシアチブをとっていただきたいと考えますが、御見解をお伺いいたします。
森林に関しては、単に国内問題ではなく、国際的な協力のもとに森林資源の保全を図っていかなければなりません。これまで森林に関しては、リオの地球環境サミットで森林原則声明が出されて以降、IPFなど政府間で討議が重ねられておりますが、各国の利害の調整が難しく、余り進展していないのではないかと思われます。
こうした中、昨年十月、NGOである世界森林委員会と国連大学の共催で森林と持続可能な開発に関する国際会議が東京青山の国連大学で開催され、森林保全について世界的な取り組みの必要性が確認されました。その際、森林の地球環境に果たす役割を評価し、持続可能な森林経営を推進するため、国際世論喚起の一助として国連世界森林年を設けることが提案されました。
日本政府として、この提案を受け、国連総会で取り上げられるよう行動を起こしていただきたいのですが、環境大臣、農水大臣のお考えはいかがでしょうか。
最後に、京都議定書についてお伺いいたします。
残念ながら、アメリカ・ブッシュ新政権は京都議定書に断固反対の立場をとっております。しかし、我が国は、こうしたアメリカの動きにとらわれず、早期批准を明確にして七月のCOP6再開に臨むべきと思いますが、環境大臣の御決意を伺って、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣武部勤君登壇、拍手〕